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■非正規労働者の均等待遇を勝ち取ろう 郵政労契法二〇条裁判 東京・大阪両地裁で格差是正判決 日本郵便で働く郵政ユニオン所属の非正規労働者が、二〇一三年四月に施行された労働契約法二〇条の「有期雇用の非正規労働者と正規労働者間に不合理な格差があってはならない」との趣旨にもとづき、東日本では東京地裁(原告三名)へ、西日本では大阪地裁(原告八名)へ提訴していた、いわゆる「郵政労契法二〇条裁判」の判決が、東京地裁では昨年の九月一四日に、大阪地裁では本年の二月二一日に出され、それぞれ一部ではあるが格差是正が勝ち取られた。 現在、日本の労働者の40%、約二〇〇〇万人が非正規労働者であるという状況の中で、非正規労働者の置かれている現実を打ち破っていく為にも、一部勝訴ではあるが今回の両裁判での判決の意義は大きいものがある。 郵政の職場では、正規が約二〇万人、非正規が約一九万人でほぼ半数をしめており、その大半は郵便関係職場で働いている。 原告達も日々、それぞれの職場で正規職員と同じ仕事をしており、その中で非正規を理由に各種手当や制度で不利益を被っている事に対し、「労契法二〇条に照らして違法である」として両地裁への提訴となった。 ▼1 両地裁判決で認められた手当と制度 図表を参照して頂きたい。各種手当や制度について原告側の主張が認められた部分と、認められなかった部分との一覧表である。 その前に、前提としての原告側、被告側(日本郵便)のこの裁判に対する主張を簡単に見ていきたい。要約すると原告側は「正社員と同じ仕事をしているのに、手当や制度に大きな格差があるのは不合理だ。期間雇用社員の仕事の実情・実態から見るべき」とした。 被告側は「管理職以上の社員も合わせて、正社員全体と比較すれば期間雇用社員の職務の内容も配置の転換の範囲も大きく差違がある。だから、正社員には長期雇用のインセンティブを与えなければならない」とした。要するに、正社員は配転もあり、仕事への責任の度合いも大きい。将来への期待も大きいので、各種手当や休暇制度に大きな格差があって当然だと言うのである。 このような中で争われてきた両裁判において、図表にあるように①年末年始勤務手当、②住居手当、③扶養手当、④夏期冬期休暇、⑤病気休暇について非正規社員にも付与せよとした。 しかし裁判では、それ以外の外務勤務手当、郵便外務業務精通手当、早出勤務等手当、祝日給、夏期年末手当(賞与)などは認められなかった。 判決ではまず、年末年始手当について「繁忙期の労働対価を契約社員に全く払わないのは不合理」とし、正社員への手当の八割分を支払えとした。(大阪地裁で全額の支払い命令) 扶養手当については「労働者と扶養親族の生活を保障する為、基本給を補完する生活保障給にあたる」ので支払えとした。(大阪地裁) 夏冬期休暇については「国民的な意識や慣習が背景にある」として付与を命じた。また、病気休暇について、正社員では有給で一八〇日間が認められ、契約社員には無給で一〇日間という現実に対して、「労働者の健康維持の為の制度」として有給での付与を命じた。(大阪地裁はこの二つの制度については判断を示さず) この判決に則り、東京地裁は約九二万円、大阪地裁では約三〇四万円の損害賠償を日本郵便は原告に支払えと命じた。 また、両裁判で原告が求めた「正社員と同じ地位にある事の確認」については棄却された。 この両裁判に対し、原告側、被告側双方とも控訴し、東日本での裁判は現在東京高裁で審理が行われているが、二回目となる四月一九日で結審の運びとなっている。わずか二回の審理での結審ということで判決の中身は予断を許さないところだが、注視していかなければならない。 ▼2 労契法二〇条裁判闘争勝利・正規、非正規の分断打ち破ろう 以上、簡単に郵政二〇条裁判の流れを見てきたが、この労契法二〇条に係わる裁判は、他業種で争っている中身も異なるが、不利益扱いを許さないという趣旨で、全日建連帯長澤運輸、東部労組メトロコマース、ヤマト運輸事案等々、各地で闘われてきている。 しかし、残念ながら裁判では全面敗訴になるか、あるいは一部勝訴となった場合でも裁判所は高裁段階で逆転敗訴の判決を出している。(長澤運輸事案は、一審勝訴、二審敗訴であったが、他の一件と共に最高裁での口頭弁論が決定した) このような中で、一部ではあるが東京・大阪の両地裁での郵政労契法二〇条裁判で勝訴判決が出された意味は大きなものがある。 いすれにせよ、非正規労働者は長年にわたり、景気や雇用の調整弁、無権利で安価な労働力という構造の中に置かれてきているという状況がある。これを打ち破っていくためには、より多くの非正規労働者の立ち上がりが必要であり、また正規労働者の意識の変革も必要である。 労契法二〇条裁判の勝利に向け、正規・非正規の分断化攻撃をはねのけるためにも、共に闘い抜こう。 |
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