共産主義者同盟(統一委員会)






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   ■朝鮮半島・東アジア情勢とわれわれの当面の課題
        
                                
 
 
 ●1章 「オリンピック休戦」と南北の対話

 朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の平昌(ピョンチャン)オリンピックへの参加表明とそれに関連するさまざまな南北会談が開催されてきた。韓国・文在寅(ムンジェイン)大統領の要請にもとづいて、米韓両国は予定していた米韓合同軍事演習(キー・リゾルブ、フォール・イーグル)の実施をオリンピック後にまで延期した。トランプは、「南北対話が継続している間は北朝鮮への軍事的攻撃は行わない」と表明した。東アジア・朝鮮半島の軍事的緊張は一時的にではあれ少し緩和し、「オリンピック休戦」とでも言うべき状態にある。
 そして、オリンピック開会式に参加した共和国の高位級代表団は、金正恩(キムジョンウン)国務委員長の親書を文在寅大統領に手渡し、早期の訪朝と平壌(ピョンヤン)での朝鮮南北首脳会談の開催を提案した。文在寅政権は、共和国の高位級代表団・選手団・応援団などを大歓迎し、南北首脳会談の提案に対して「条件を整えて実現したい」と積極的に対応し、共和国代表団に対して米朝の直接対話の重要性を提起した。われわれは、これらの対話への動きを歓迎する。朝鮮半島・東アジア情勢は、南北首脳会談を次の焦点として大きく流動していこうとしている。
 しかし、東アジア・朝鮮半島をめぐる情勢が基本的に変化したわけではない。トランプ政権はオリンピック終了後に米韓合同軍事演習を実施することを公言しており、共和国への軍事的圧力と経済封鎖を継続している。さらにトランプ政権は、核戦略の見直しを行い、先制使用のための小型核兵器や核装備の巡航ミサイルの開発を進めようとしている。
 安倍政権はトランプ政権に同調し、共和国への圧力の強化に奔走している。日米両国は、共和国の動きは日米韓の間に亀裂を生みだそうとする策略ととらえ、対話への流れに警戒心をむきだしにしている。とりわけ安倍政権は、「対話のための対話は意味がない」として、二月一〇日の日韓首脳会談において「米韓合同軍事演習を延期すべき段階ではなく、予定通り実施すべきだ」と迫った。そして、日本軍「慰安婦」問題についての二〇一五年の「日韓合意」の履行をあらためて要求した。
 このような中で文在寅政権は、米韓合同軍事演習やTHAAD配備など共和国への圧力を維持しつつ、トランプ政権が共和国への武力攻撃に踏み切ることを回避するために、南北間の対話を推進しようとしている。共和国のオリンピック参加が「朝鮮半島の平和的な非核化につながることを期待する」(文在寅)という表明は、この局面での文在寅政権の立場を表明したものだと言える。そして、米韓合同軍事演習の予定通りの実施を迫った安倍首相に対して、非公表の日韓首脳会談の内容を明らかにし、「内政干渉だ」と厳しく批判した。
 共和国は、朝鮮半島の非核化とオリンピックへの参加を別の問題として切り離してきた。そして、共和国の核・ミサイルはアメリカに対する「抑止力」であり、米朝間で解決すべき問題だとして、米韓合同軍事演習の延期ではなく中止をあらためて要求している。朝鮮半島・東アジアでは、日米両国と共和国と韓国の間での激しい攻めぎあいとなっている。

 ●2章 朝鮮戦争阻止の闘いに立ちあがろう

 現在の「オリンピック休戦」とも言うべき状況を東アジアの平和への転換点としていくために、当面する最大の焦点は米韓合同軍事演習を中止へと追い込み、合同軍事演習への自衛隊の参加を阻止することにある。そして、中長期的には共和国に対する制裁を撤回させ、朝鮮戦争の休戦協定を平和条約に転換させること、在韓米軍・在日米軍をはじめとした米軍の東アジアからの総撤収を実現するために闘うことである。そのために日米両国政府の共和国敵視政策に反対し、米朝・日朝の直接対話と南北朝鮮の自主的平和統一をめざす動きに支持・連帯していかねばならない。
 なぜならば、東アジアの軍事的緊張の主要な責任は、朝鮮戦争の平和条約の締結を拒否し、朝鮮に対する軍事的包囲と威嚇を強化してきたアメリカにあるからである。このアメリカによる軍事的包囲と威嚇が、共和国を「抑止力」としての核開発・弾道ミサイル開発に追い込んでいったのだ。とりわけ、イラク戦争において、全世界で数千万人の人民がイラク反戦運動に立ちあがったにもかかわらず、アメリカによるイラク攻撃を阻止できなかったことは共和国にとって核開発に向かう大きな転換点であった。
 われわれは、核兵器であれ原発であれ「核と人類は共存できない」という綱領的立場に立つものであり、アメリカに対する「抑止力」として核開発を推進するという共和国の路線を支持することはできない。それはかつてのスターリン主義のソ連が、ぼう大な核戦力をはじめとした国家軍事力の強化によって帝国主義に対抗しようとしたことと同根の誤りである。われわれは、あくまでも全世界の労働者人民の階級闘争、反戦運動の力に立脚してアメリカをはじめとした帝国主義による戦争を阻止し、帝国主義と対抗していくべきだと考える。
 われわれは、韓国の民衆の闘いへの連帯を推進しつつ、日本国内では在日の仲間との共同闘争を支持し、全国各地において推進してきた。にっこりネットの結成はその第一歩であり、以降の在特会による朝鮮初級学校襲撃事件に対しては、在日の仲間と共に闘った。そして、東アジア情勢が緊迫するなかで、京都では昨年に引きつづいて三月三一日に米韓合同軍事演習に反対する集会&デモが在日青年団体との共同闘争として組織されようとしており、全国各地で在日の仲間との共同行動が取り組まれようとしている。
 われわれは、このような取り組みを断固として支持し、発展させていく。われわれは、米韓合同軍事演習とそれへの自衛隊の参加に反対するという共通のスローガンのもとで在日団体と共に闘いつつ、歴史認識を踏まえ、それぞれの路線や意見の違いを尊重し、ともに闘う仲間としての同志的議論を積み重ねていく。

 ●3章 日本人民の立場と課題

 このような局面において、われわれの立場をよりはっきりとさせていくために、つけ加えていくつかの点を提起しておきたい。
 第一には、「行動対行動」の原則にもとづいて、米韓合同軍事演習と共和国による核開発・弾道ミサイル開発の双方を停止すべきだという主張(双停止)についてである。これは中国が主要に主張している立場であり、日本でも東アジア情勢を憂慮する人々のなかに存在している意見でもある。しかし、双停止が実現されたとしても、アメリカの圧倒的な核戦力はそのまま維持される。すなわち、双停止は結果として共和国の核開発を停止させるだけで、アメリカをはじめとした国連安保理五大国による核戦力の独占(イスラエルやインド・パキスタンの核開発によって実際には破たんしているが)という事態は変わらない。ただし、現在の戦争の危機を打開し、東アジアの平和に向かうためのプロセス、米朝の国家間交渉の原則という意味では「行動対行動」の原則は遵守されなければならない。
 第二には、日本の位置と危険な役割についてである。日本は米軍の占領下にあったとは言え、朝鮮戦争に事実上参戦し、米軍の出撃拠点・兵站拠点としてフル稼働し、海上保安庁は米軍と行動を共にした。また朝鮮戦争休戦後もかつての植民地支配への真摯な謝罪と賠償を行わないままに一九六五年日韓条約を結び、戦争責任を反故にした。アメリカによる共和国への政治的軍事的包囲と威嚇に加担し続けてきた。
 そして、現在安倍がオリンピック開会式に乗り込み、文在寅政権に「速やかな米韓合同軍事演習の実施」を迫ったように、日本はアメリカとともに東アジアの戦争の危機を高める元凶となっている。
 日本は、歴史的にも現在的にも朝鮮人民に対する加害者の位置にあり続けてきた。そのような日本の労働者人民は、「アメリカも悪いが北朝鮮も悪い」などとあたかも米朝対立における「第三者」であるかのような態度をとること許されない。帝国主義本国の労働者人民の責務は、アメリカによる共和国への軍事的包囲と威嚇、武力攻撃に反対し、東アジアの戦争の危機を高める自国政府・安倍政権に向けて闘うことにある。
 このことは、日米同盟において「第一列島線」(東アジア)の防衛が主要に自衛隊に委ねられようとしているなかで、ますます重要になっている。現在の日米同盟においては、アメリカは南中国海や東中国海において中国と軍事衝突した場合に、中国の対艦弾道ミサイルの射程外となる日本の伊豆諸島からグアム、パプアニューギニアまでの「第二列島線」まで後退し、潜水艦やイージス艦に搭載したミサイルによる長距離攻撃や海上封鎖を実施するという構想だ。安倍政権はこの想定に基づき、「第一列島線」の軍事行動を担うべく、自衛隊の海兵隊仕様への転換や航空母艦・敵基地攻撃能力の保持など、東アジアの防衛に責任を負う帝国主義への飛躍をおしすすめている。
 まさに自衛隊がアジアの人民に銃口を向ける時代が始まっているのだ。われわれは、東アジアからの米軍の総撤収に向けたたたかいと集団的自衛権行使・自衛隊の海外派兵に反対するたたかいをしっかりと結合させて推進しなければならない。
 第三には、排外主義とのたたかいをあらゆる戦場において強化することである。
 文在寅政権は二〇一五年一二月の元日本軍「慰安婦」問題に関する「日韓合意」の検証を行った。そして、「日韓合意が真実にも正義にも反する」とした上で、「日韓合意」の破棄や再交渉は求めないが、日本政府の自発的な謝罪を求めるという新方針を決定した。
 これに対して安倍政権は、「日韓合意は一ミリたりとも動かさない」と拒否した。そして、「国家間の約束を反故にすることは許されない」というすさまじい韓国および文在寅政権に対するバッシングが吹き荒れている。その基底には、かつての朝鮮植民地支配とアジア侵略戦争の歴史を歪曲し、正当化していく歴史修正主義や朝鮮半島の人民に対する蔑視が存在している。
 そして、「北朝鮮脅威論」にもとづく排外主義が深く広く浸透してきた。共和国は、何度も核開発・ミサイル開発はアメリカに対する「抑止力」であることを表明してきた。在日米軍基地を別とすれば、日本の国土や人民が共和国による攻撃対象となっているわけではない。しかし、安倍政権はJアラートを用いた避難訓練などをくり返してきた。労働者人民のなかに共和国への恐怖心・敵がい心を煽りたててきたのは歴代自民党政権である。また、共和国に対する国連安保理決議による制裁や日本の独自制裁は、共和国や在日朝鮮人を苦しめ、民族的諸権利と生活を迫害するものに他ならない。
 二月二〇日には、朝鮮学校を高校無償化制度の対象から除外する文科省通達がだされてから六年になる。このような制裁が当たり前のように横行することによって、共和国や在日朝鮮人には何をしてもよいのだという排外主義がさらに強化されてきたのである。われわれは、これらの排外主義攻撃と断固として対決していかねばならない。
 朝鮮半島・東アジア情勢は、大きく流動していこうとしている。「ろうそく革命」を背景に登場した韓国・文在寅政権は、南北対話へと進むことで米日両国からのすさまじい圧力に直面している。日韓民衆の国際的に連帯し闘いによって日米両国政府と対決し、新たな朝鮮戦争を阻止し、東アジアの平和への歴史的転換点を切りひらいていこう。

 

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