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■迫り来る戦争前夜攻撃と対決し、 障害者解放―日帝打倒をかちとれ! 河原 涼 全国のたたかう仲間の皆さん。 安倍政権による戦争前夜攻撃の中、国内における差別排外主義が跋扈し、障害者差別糾弾、障害者解放―日帝打倒の利害をかけた攻防が、熾烈に闘われている。 今や安倍政権が打ち出すあらゆる政策は、差別抹殺と、貧困化を進め、格差をさらに拡大するためだけに行われており、これと全面対決することを通してのみ、障害者の解放の展望がこじ開けられることが明らかとなっている。 一月三〇日、優生保護法(一九四八年成立)下で「優生手術」と称して不妊手術を強制されたとして、宮城県の女性が国賠訴訟を起こした。ナチスの断種法を元に成立した国民優生法(一九四〇年)よりもさらに強力に、「不良な子孫の出生を防止する」として、多くの障害者が差別され、殺されてきたことを忘れてはならない。国家賠償と謝罪を絶対に勝ち取ろう! 一切の障害者差別を許さず、労働者人民の生活破壊を許さず、戦争と排外主義攻撃に対決し、障害者解放―日帝打倒を勝ち取ろう! ●1 差別排外主義の跋扈、抹殺攻撃を許すな 二〇一六年七月やまゆり園での障害者大量虐殺を受け、精神保健福祉法の改悪案が再び上程されようとしている。措置入院から退院後の精神障害者に対して、警察を中心とする監視網の強化を法案に盛り込もうとしている。絶対に許してはならない。安倍政権は、日本社会に根深く浸透する天皇制優生思想の総括を全く行わないまま、虐殺の責任を一人加害者個人の人格に帰着させ、事件の火消しを行った。その上で、精神障害者の治安対策を一層強化する政策を行ったのである。 二〇一六年、国連による障害者権利条約を制度として法文化した障害者差別解消法が施行されたが、昨年新聞のアンケート調査で「障害者を取り巻く環境が悪化した」と回答したのが全体の七割を占めた。差別解消法そのものが形骸化しているどころか、公共施設での被差別体験や、インターネットを利用したヘイト記事の蔓延や匿名による個人攻撃による炎上など、むしろ凄まじい勢いで差別排外主義が広がっている。 奄美大島の奄美空港で、昨年六月五日車椅子利用の障害者が、LCCバニラ・エアの飛行機に搭乗する際に、自力でタラップを上らされた。これがインターネット上で取り上げられ話題になるや、「障害者だからって威張るな。障害者は死ね」「クズのクレーム人間」という罵詈雑言が飛び交った。 車椅子の使用を「事前に連絡しなかった」ことによる非難で「障害者の敵」とまで言い切る排外主義を許してはならない。 事前に連絡すれば最初から搭乗拒否を受ける可能性が高いのであって、航空会社の差別姿勢を一切問わず、全ての責任を障害者におしつける排外主義の跋扈を許してはならない。 千葉の石郷岡病院で起きた虐殺事件の裁判は、事件が起きて数年もたってからやっと開かれた。一部始終がビデオに映っているのにも関わらず、裁判において、一人は無罪、もう一人は罰金刑で、虐殺の原因は何も解明されていない。それどころか精神障害者に対する医療現場は、暴力であふれているが、それが正当であるということを、医療現場が主張し、司法がそれを追認しているのである。 二〇一七年年七月、ニュージーランド人の男性が日本で措置入院中に、一〇日間身体拘束されて死亡した。 厚労省による精神科病院での身体拘束された患者数の統計によれば、二〇一五年度九八七〇人で、二〇〇五年の五六二三人から一〇年間で75%以上増加している。二〇一四年度は一万人超えで、過去最多となっている(二〇一七年八月一三日神奈川新聞)。日本国内の精神科病院での身体拘束の平均日数は九六日であり、ほかの多くの国では数時間から数十時間である。明らかに異常な状態である。「非人道的」という当然すぎる批判が各国から寄せられている。加盟国の人権状況を審査する国連人権理事会は昨年一一月、日本に対し二一八項目の勧告を行った。沖縄、朝鮮学校、福島、ヘイトスピーチなど、多岐にわたる勧告の中で精神障害者に関する勧告も数多く寄せられている。 死亡したニュージーランド人男性の遺族は、死亡の原因は精神病院で身体拘束を受けたことだとして、支援者らと「精神科医療の身体拘束を考える会」を設立し、提訴している。 二〇一七年八月二三日の東京新聞朝刊には、次のような記事が掲載された。「障害者が働きながら技術や知識を身に付ける就労事業所が、経営悪化を理由に廃業し、障害者を大量に解雇するケースが相次いでいることが二二日、関係者への取材で分かった。七月には同一グループが運営する岡山県倉敷市と高松市の計七事業所で約二八〇人が解雇された。名古屋市や関東地方で事業所を展開する企業も八月末までの廃業準備を進めており、さらに計百人前後が影響を受ける可能性がある」。 ここで問題となっている「就労継続支援A型事業所」は、障害者と雇用契約を結び、最低賃金以上を払った上で受け入れる施設である。障害者の人数によって助成金を受け取ることができるため、各地で参入が相次いだ。だが、事業収益が見込めなくても助成金欲しさに参入するケースが相次ぎ、国が補助金の支給要件を四月に厳しくしたところ、相次いで倒産し、障害者の大量解雇が発生した。障害者の雇用の確保、働く場の創造といった理念はさらさら持ち合わせるはずもなく、ただただ助成金の確保のみを目的とした詐欺手法で、障害者が路上に放り出されるのである。断じて許すことはできない。 貧困の連鎖、格差の拡大が止まらない。生活保護費の大幅削減は、当初13%であったのが、批判を受け、5%に止まった。しかし前回の見直しですでに6・5%されて、さらなる削減。母子加算はさらに削減されるなど、もはや殺人的である。 二〇一七年八月の毎日新聞によれば、かつて、生活保護の保護基準は、一般市民の六割になるように設定されていた。これは高度成長期に一般市民の生活水準が急速に改善されたにも関わらず、生活保護世帯の水準が著しく低かったことを受けて徐々に引き上げられたのである。 一九八四年、一般世帯の六割に達したため、その後は一般世帯の動向に合わせて変動されている。近年、それは「保護基準が高すぎる」という批判を受けて「所得分布の一番下の一割の人々」の平均に合わせるということが打ち出された。二〇〇〇年以降日本の貧困率は15%を超えているので、貧困層よりもさらに下部の人々に合わせるということになっているという。 こうした下方圧力のなかで保護基準が年々引き下げられ、母子家庭はさらに引き下げられる。約一五万人に上る子育て世代の四割近くが減額となり、ひとり親世帯の「母子加算」を平均二割カットし、「児童養育加算」も一部を減らす。生活保護を受けていない低所得世帯の子どもに支給する「就学援助」の要件も厳しくなる。 ●2 戦時政策を跳ね返し、解放運動の展望勝ち取れ こうした凄まじいばかりの殺人的差別、貧困、格差の拡大の現実の中で、怒りを持ってこれと対峙する動きが確実に起きている。 厚労省は、障害者の就労支援を行う通所施設での食事の負担軽減策を二〇一七年度かぎりで一旦廃止するということを方針化したが、あまりの批判の高まりに圧倒され撤回した。 精神科病院での身体拘束で死亡した患者家族による訴訟や、医療観察法下、入院を強制されたとした国賠訴訟(家族)もたたかわれている。女性障害者が不妊手術を強制されたとして、訴訟を起こした件で、個人名などが記された資料が全国に二七〇〇人分現存していることが明らかにされた。また、宮城県内においては、九歳の子供にまで手術を行なった資料が見つかった。障害者抹殺を正義とする優生保護法がいかに反障害者的であったかを物語るものである。これまでの差別虐殺への怒りは頂点に達している。戦争と差別攻撃をはねかし、障害者解放―日帝打倒をかちとろう! |
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