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   安倍政権と対決し
   「働かせ方法案」を粉砕しよう
     
 


 安倍政権は、森友・加計問題などの疑惑を隠蔽し、朝鮮半島における戦争に労働者人民を巻き込むため、衆議院の解散を宣言し選挙に突入した。われわれは、安倍政権の悪辣なたくらみを許さず今こそ立ち上がろう。そして、このたたかいの中で「働き方改革」なる「働かせ方法案」を完全に葬り去ろう。

  ●1章 企業活躍を最優先にした「働かせ方法案」

 九月十九日、自民党は厚労部会や働き方改革特命委員会などの合同会議で「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)などの導入を目論んだ「働き方改革関連法案」(「働かせ方法案」)の了承を見送った。これは、安倍首相が九月二十八日の臨時国会冒頭に衆議院解散を企てていることを受けた見送りであり、来年の通常国会での成立を目指した先送りである。われわれは、こうした動きを許さず、安倍政権もろとも法案を粉砕しよう。
 安倍は「日本を世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」と産業競争力会議や働き方改革実現会議に資本家どもを集めて会議を繰り返し、「日本再興戦略2010」「働き方改革実行計画」をまとめ発表した。ブルジョワジーのペースで法案づくりが進められていくことに動揺した連合指導部は七月安倍と会談し、「残業代ゼロ法案」に「年間百四日以上の休日」などを加える修正を要請した。この「修正」なるものが労働者への裏切りであることが暴露されると、連合の内部からも批判の声が沸き上がり、連合指導部は「修正」の要請を撤回した。われわれは、こうした連合指導部の裏切りを決して許さず、引き続きたたかいを強化する決意である。そして今回は見送られたとは言え、「働き方改革関連法案」として関連する法案を一括して出すという、「安保関連法」の強行採決時に行った手法をまた使おうとしていることを絶対に許さない。
 「働き方改革(働かせ方)関連法案」のポイントは以下の通りである。
①時間外労働(残業)の上限規制を導入。月四十五時間かつ年三百六十時間を原則とし、特例でも単月百時間未満などの条件を付け、最長でも七百二十時間までと明記する。
②終業から次の始業の間に一定の休息時間を設ける、インターバルの導入を努力義務とする。
③一部専門職を残業代支払いなどの労働時間規制から外す、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ)を創設する。
④実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決めた時間を働いた時間とみなす、裁量労働制(定額働かせ放題)の対象労働者の拡大
⑤非正規労働者と正社員の不合理な格差を禁止する、「同一労働同一賃金」の導入。
 これらのどれをとってもウソとペテンに満ちたものであることを見抜き徹底して批判をしていこう。
 まず、残業時間の規制であるが、条件規制の罰則があるとはいえ、「忙しい時の一ヵ月間は百時間未満であれば可能。また、繁忙期の二~六ヵ月も月平均八十時間は可能。総残業時間の上限は七百二十時間」とするとなっている。これは明らかに過労死ラインを超える労働である。また、運輸や建設業、医師などは当面除外される。多くの残業代未払い裁判、過労死・過労自殺の裁判で明らかになっているように、「上限規制」は合法的に働かせる(残業代が支払われる)上限であって、実際の労働時間はこの時間を超える未払い残業が行われている実態がある。法を超えた労働時間で働かされていても、「自分の要領が悪いから残業代は請求できない」という自己規制や、「仕事が終わらなければ終わるまで働くのは当たり前」という労働環境で働いている労働者にとって、この法律は過労死すれすれで働く、働かせ方改革になるのである。また、一部の企業で行われている、「残業をしない、させない働き方改革」が仕事量の増加があっても人を増やさない中で行われている結果、過密な労働を強いられている実態をより悪化させ、残業代の規制から外れる管理職を増やすなど抜け穴が横行するようになる。勤務と勤務の間にインターバル(休息時間)を設けることになっているが、これは努力義務にすぎない。過重な労働から命と健康を守るはずの労働組合も、連合のように上限百時間未満を容認し、年間百四日以上の休日(週休二日と変わらない)で良としている。われわれはこうした労組幹部の裏切りを許さず職場から闘いを作り過労死、過労自殺を一掃しよう。残業代未払い裁判を支援しよう。
 次に「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ)の新設」の問題である。法案では「年収千七十五万円以上の高度な専門職の労働者」に適用するとしている。この法律が適用される労働者には労働基準法の働く時間の規制が行なわれず、休日・深夜労働をした時の割り増し賃金も支払う必要がないとされる。為替ディーラー、証券アナリストなどがイメージされているが明確に定められているわけではない。労働時間や働く場所を自己管理できる「柔軟な働き方」「働いた時間ではなく成果で賃金が決まる制度」などと喧伝されているが、法案のどこにもそんなことは書いていない。しかも、二〇〇五年に同趣旨の「ホワイトカラーエグゼンプション」が提案された際に経団連は年収の要件を四百万円としていたという例を見ても、一旦成立してしまえば年収要件や適用範囲はどんどん広げられる可能性がある。
 同時に「企画業務型裁量労働制(定額働かせ放題制)の対象拡大」が目論まれている。裁量労働制は、一九八七年に労働基準法の「改正」により初めて導入された。この制度が適用されると、定額の残業代(みなし残業代)のみでいくら残業しても残業代は支払われない(深夜と休日の割り増し残業代の支払いはある)ので「定額働かせ放題法」と言われている。
 この制度は当初対象を研究開発の業務等に限定していた(この制度は一般に「専門業務型裁量労働制」とよばれる)。しかしその後、一九九八年の労働基準法「改正」の際、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」も対象に含まれた(この制度は一般に「企画業務型裁量労働制」とよばれる)。「専門業務型裁量労働制」の場合、対象業務は厚生労働省令で定められ、職場の労働者の過半数代表と使用者との間の協定により導入できる。他方、「企画業務型裁量労働制」の場合、職場の労働条件に関して調査審議し、使用者に提言するための労使同数の委員からなる委員会(一般に「労使委員会」とよばれる)が一定の法定事項を決議し、それを行政官庁に届け出ることにより導入できるとなっている。今回目論まれているのは「企画業務型裁量労働制」の対象範囲を企画や立案、調査を行う営業職にも広げることである。つまり、ある新商品の営業に行った際、その新製品の販売促進のために売り込み先企業が行う特別セールの企画や立案などセットで提案するという、よく行われている営業の仕事もこの「裁量労働制」が適用される仕事となる。総務省の労働力調査によれば営業職の労働者は三百六十万人いる。このほとんどの労働者には年収の規制はないので、みなし残業代を含んだ年収三百万円の労働者は、何時間働いても三百万円しか支払われない。
 更に許されないことは、この法案が一括法案として提出されようとしていることである。一方で、ざる法とは言え残業時間を規制しておいて、同じ関連法の中に残業代を払わなくてもいい労働者とみなし残業代を払えば働かせ放題の労働者を創り出す法律が織り込まれている。本来なら一つ一つの法律に対して時間をかけて審議する、可決、否決を決めるはずなのに「安保関連法」の時の手法が用いられ十分な審議もすることなく強行可決成立が目指されているのである。
 今、先進的な労働組合、労働者は「一日八時間働いて当たり前に暮らせるキャンペーン」を行っている。このキャンペーンに多くの労働者の怒りの声が寄せられている。一括法案を粉砕する闘いとしてこうしたキャンペーンを全国各地、全国の職場で繰り広げよう。

  ●2章 まやかしの「同一労働同一賃金」を許さない闘いを

 この一括法案には安倍流「同一労働同一賃金」が含まれている。これは、使用者側が正社員と同じ成果を上げていると評価する非正規労働者の賃金などを極端に低い場合に平準化するというもので、実際の現場ではほとんど適用されないものである。
 こうしたまやかしの「同一労働同一賃金」に抗して今裁判闘争がたたかわれている。九月十四日、郵政労働者ユニオンが提訴していた労働契約法二十条裁判において東京地裁で画期的な判決が下された。
 この判決について、「郵政産業労働者ユニオン声明」は次のように述べている。「正社員との年末年始勤務手当等の労働条件の相違を不合理だとして、原告三名全員の請求を認容し、会社に対して合計金九十二万六千八百円の損害賠償を命じた。この判決は、日本の非正規労働者の未来に希望を灯す大きな意義のある画期的な判決となった。(中略)二〇一三年四月に労働契約法二十条が施行されてからこれまでいくつかの判決が出されたが、これまでの判決は同条の立法趣旨を正しく解さず不合埋な格差について、管理職への登用など将来の人材活用の仕組みの可能性や定年後の賃金減額が社会的に容認されているなどといった誤った根拠に基づき、同条の不合理性について慎重に判断すべきとして、長潭運輸事件、メトロコマース事件、佐賀中央郵便局事件、ヤマト運輸事件などにおいて、労働者側全面敗訴か一部勝訴かの極めて消極的な判断を示してきた。しかし、本日の東京地裁民事第十九部の判決は、これまでの消極的な司法判断の流れを変えて、今後の非正規労働者の労働条件格差を是正していくための扉を開いたといえるものである」。
 われわれは安倍流働き方改革を粉砕するたたかいとして、労契法二十条裁判闘争を支援し更に勝利判決をつかみ取っていこう。



 

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