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   米軍経ヶ岬通信所(Xバンドレーダー基地)

      ~闘いの現局面と発展方向

       
       

 京都府京丹後市の経ケ岬に、米軍経ケ岬通信所(Xバンドレーダー基地)が建設されてから二年余が経過した。地元では、「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」をはじめとした住民の粘り強いたたかいがつづき、これを支援する米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会/近畿連絡会のたたかいが大きく発展してきた。京都連絡会第三回総会と近畿連絡会旗開きが二月四日に開催され、新しい年のたたかいが始まっている。本小論では、われわれが全力で推進してきたこのたたかいの現局面とこれからの発展方向について提起したい。

 ●1 継続する基地建設と住民被害

 京丹後での基地建設は、二〇一五年十月のレーダー搬入と同十二月の基地運用開始によって終わったわけではない。それ以降も、米軍基地に隣接する民有地の取得と基地拡張が画策され、米軍基地建設の二期工事(基地内の米軍の居住施設建設など)が来年には予定されている。また、米軍基地に隣接する航空自衛隊経ケ岬分屯地もまた、すさまじい勢いで拡張・強化されてきた。さらに、昨年十一月二十九日にはこのXバンドレーダー基地に所属する米軍人・軍属の実弾射撃訓練の陸上自衛隊福知山射撃場への移転が強行された。この射撃訓練は、これまで静岡県の米軍キャンプ富士で行われてきたものだが、遠いなどの理由から福知山に移転されたのである。防衛省の説明では、一年に二十日ほどここでの実弾射撃訓練が行われる。これにともなって、陸自福知山射撃場は日米地位協定にもとづく米軍と自衛隊の共同利用施設に新たに指定された。まさに、米軍基地は一度建設されれば、さらに増殖していくという実例である。
 このような基地建設のもとで、住民の安全・安心は脅かされてきた。最初に問題になったのは、基地の発電機やレーダーからの騒音であった。低周波を中心とした騒音のもとで、「夜も眠れない」などの住民の怒りが集中した。この事態は、米軍・防衛省にとっても「想定外」のことであった。あわてた防衛省は防音壁の設置などの応急措置をとり、被害は多少軽減したが現在でも騒音問題は解決されていない。
 また、米軍人・軍属の交通事故が続発しつづけている。昨年末までに、人身事故三件を含めて四十一件の事故が発生した。駐留する米軍人・軍属が百六十人程度であることを考慮すれば、他の米軍基地周辺にくらべても異例の事故率の高さである。昨年十二月十日には、携帯電話を操作しながら運転していた軍属がセンターラインを越えて住民三人が乗る対向車と正面衝突し、住民一人が頚椎損傷の重傷を負った。まさにいつ深刻な死亡事故が発生してもおかしくない状況である。このような交通事故は、交通法規の異なる日本での車輌の運転に米軍人・軍属が不慣れであることからだけ発生しているのではない。日米地位協定によって米軍人・軍属に特権的地位が保障されていることがある。公務中の事故であれば第一次裁判権は米軍にあり、交通違反・交通事故をおこしても道路交通法など日本の法律にもとづいて免停などの行政処分を受けることもない。まさに治外法権と言うべき特権が、このような交通事故を頻発させてきたのだ。防衛省は、米軍人・軍属を対象とした「安全運転講習」を実施してきたが、事故をおこした軍人・軍属の約半数はそれを受けていなかった。住民の怒りの声におされて、京都府や京丹後市は「安全運転講習」を受けていない軍人・軍属には運転させないことを米軍・防衛省に要求しているが、なお返答はない状況である。そして、十二月十日の事故をおこした軍属はこの講習を受けていたのであり、講習の実施だけで事故を抑止できないことは明らかである。
 騒音、交通事故、レーダー波による健康への影響、自然環境破壊など、基地の存在と住民の安全・安心が両立しないことがますます明らかになっている。他方で、「もう基地ができてしまったのだから仕方がない」というあきらめが住民に浸透し、また基地交付金が流入することによって、京丹後の経済や社会が基地に依存したものへと歪められ、住民内の分断と対立も強まってきている。京丹後は過疎地であり、人口の減少と産業の衰退が進行してきた。基地に依存しない京丹後をつくろうとする住民の努力を支援しつつ、決してあきらめることなく、基地撤去にむけてたたかうことを呼びかけ続けていくことが大きな課題となっている。京都連絡会は、この二年間、月に二度地元の宇川地区を訪問し、ビラの配布や住民との対話を行ってきた。すぐに成果が期待できるわけではない地道な活動だが、われわれもまたその一翼を引きつづき担っていかねばならない。

 ●2 東アジアのMD戦略と京丹後

 アメリカは、オバマ政権のもとでアジア重視へと転換し、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)への軍事的包囲と戦争態勢の維持・強化、海洋進出を強める中国の封じ込めを推進してきた。そして、これを実現するために辺野古新基地建設や岩国基地の大強化などの出撃拠点となる米軍基地の新設・強化、東アジアにおけるアメリカ主導のミサイル防衛(MD)戦略を推進し、日米軍事一体化をおしすすめてきた。トランプ政権は、就任直後の一月二十日に公表した「基本政策」において、安全保障の分野の最初に「力による平和」を掲げ、「いかなる国もわが国の軍事力を上回ることがあってはならない」として、共和国などからの攻撃を防ぐために「最新鋭のミサイル防衛システム」を開発するとしている。出撃拠点となる米軍基地の新設・強化、ミサイル防衛戦略、日米軍事一体化は基本的な部分で継承されるであろう。とりわけ、米軍駐留費の各国による大幅な分担を主張しており、日本に対しても集団的自衛権にもとづく自衛隊の役割の増大や日米軍事一体化、米軍駐留費負担の増額を強く要求してくるであろう。
 はっきりとさせておかねばならないことは、ミサイル防衛戦略とは決して防衛的なものではなく、アメリカにとって敵国に対する先制攻撃のために不可欠なものだということである。例えば、アメリカが共和国への先制攻撃に踏み切ったとしよう。アメリカは、共和国の核・ミサイル施設をミサイルや爆撃などによってまず破壊し、共和国全土の制圧と共和国指導部の殺害などに向かう。しかし、地下にある核・ミサイル施設を最初の一撃で完全に破壊できるとは限らない。共和国が最初の一撃に耐え、アメリカ本土に向けて核を搭載したミサイルを発射する可能性は否定できない。このようなミサイルを探知し、迎撃することができなければ、アメリカは共和国を先制攻撃できない。ここにミサイル防衛戦略の決定的に重要な位置がある。
 東アジアにおけるアメリカ主導のミサイル防衛戦略はなお形成途上にある。これまでのシステムは、人工衛星と米・日・韓が保有するイージス艦でミサイルの発射を探知し、飛来するミサイルを大気圏外においてSM―3で迎撃すること、ミサイルが地上に到達する直前にPAC―3で迎撃すること、この二段階で構成されてきた。しかし、SM―3の命中精度は決して高くなく、PAC―3は射程距離が十キロメートルしかないので、仮に迎撃に成功したとしても落下物による地上の被害を避けられない。アメリカはこの弱点をカバーするために、XバンドレーダーとTHAADミサイル(終末高高度迎撃ミサイル)によって構成されるTHAADシステムを各地に配備しようとしてきた。THAADミサイルは、敵国のミサイルが大気圏に再突入する段階で迎撃するもので、ミサイル防衛システムは三段階のものとなる。東アジアにおいては、まず日本の青森県・つがる市の自衛隊車力分屯基地と京都府・京丹後市の経ケ岬にXバンドレーダーを配備した。そして、昨年七月に、韓国・星州にTHAADシステムを配備すると決定した。さらに自衛隊は、THAADミサイルの自衛隊への配備を準備している。このようなTHAADシステムの各国への配備は、共和国への先制攻撃を可能とするだけではなく、韓国に配備されるXバンドレーダーの探知可能距離が中国にまで及ぶことから共和国だけではなく中国も韓国へのTHAADシステム配備に激しく反発してきた。米軍Xバンドレーダー基地は、米軍基地としては決して大きくはないが、その戦略的重要性がますます高まってきているのだ。

 ●3 これからの闘いの課題

 京都連絡会/近畿連絡会は、二月四日の総会・旗開きにおいて、これからのたたかいの方向を次のように提起した。われわれは、これを断固として支持し、その実現のために奮闘していかねばならない。
 第一には、京丹後に闘いの拠点を建設していくことにある。米軍基地の撤去を実現していくためには、何よりも地元の住民が主権者として声をあげ、たたかいに立ち上がっていくことが不可欠である。京都連絡会/近畿連絡会は、そのために「憂う会」を全力で支援し、また月に二回の宇川訪問や京丹後市議会開催時の現地展開を組織してきた。これらを通して、京丹後にたたかいの拠点を建設していくことがますます重要な課題となってきている。
 第二には、京都府北部・近畿地方北部における新たな軍事拠点建設と対決していくことにある。京丹後の米軍基地は、決して孤立したものとしてあるのではない。京都府北部・近畿地方北部には、京丹後の米軍基地・航空自衛隊経ケ岬分屯基地、イージス艦が配備されている海上自衛隊舞鶴基地、陸上自衛隊福知山駐屯地・射撃場、陸上自衛隊饗庭野駐屯地・饗庭野演習場が存在している。また、この地域はXバンドレーダーと連動するTHAADミサイルの配備先となる可能性が高い。京丹後における米軍基地建設は、これらの散在してきた米軍基地・自衛隊基地を結びつけ、京都府北部・近畿地方北部における新たな軍事拠点の建設へと再編されていこうとしている。昨年の福知山への実弾射撃訓練の移転は、米軍・防衛省がこれらの施設を一体のものとしてとらえていることをまざまざと示した。福知山への実弾射撃訓練の移転に対して、京都連絡会/近畿連絡会は四回の福知山展開を組織し、また京丹後市・京都府・福知山市・近畿中部防衛局への抗議申し入れ行動に取り組んだ。これらを通して、京都府北部・近畿地方北部における新たな軍事拠点建設と対決するという基調的方向を明確にしてきたのである。
 第三には、沖縄・岩国・京丹後・神奈川・横田など全国各地の反基地運動との結合を強化し、集団的自衛権行使・改憲に向かう安倍政権の打倒にむけてたたかうことにある。京都連絡会/近畿連絡会は、これまでも京丹後での現地集会に各地の反基地運動からの結集を呼びかけ、京丹後を各地の反基地運動の交流と結合のための拠点にしようとしてきた。また、昨年には京都連絡会として高江・辺野古派遣団を送りだした。そして、秋の岩国行動には、一昨年・昨年と「憂う会」の代表が参加した。また、「憂う会」が呼びかけた「米軍基地いらんちゃフェスタ」には、沖縄からの代表が参加してきた。これらのたたかいをさらに発展させていかねばならない。
 第四には、アメリカ主導の東アジアにおけるミサイル防衛戦略・米日韓軍事同盟と対決し、米韓合同軍事演習やTHAAD配備に反対する国際連帯にもとづくたたかいを発展させていくことにある。韓国へのTHAAD配備が公表されて以降、配備推進派と反対派の双方が京丹後の米軍Xバンドレーダー基地に着目し、調査や交流のために京丹後を訪問してきた。このような中で、京都連絡会/近畿連絡会はTHAAD配備に反対する韓国民衆のたたかいへの国際連帯、とりわけ星州の住民のたたかいとの連帯を追求し、日韓共同闘争で米日韓のミサイル防衛戦略と対決しようとしてきた。こうして昨年十一月二十五日から二十七日にかけて、京都連絡会と「憂う会」の韓国・星州への合同派遣団が組織された。派遣団は、星州と金泉のローソク集会に参加し、地元住民から大歓迎をうけた。これらの努力をさらに発展させていかねばならない。
 また、京都連絡会をはじめとする京都の反戦反基地運動などの共同呼びかけで、四月一日(予定)には、米韓合同軍事演習(キー・リゾルブ/フォール・イーグル)に反対する集会・デモが在日団体も含めた共同のたたかいとして組織されようとしている。この米韓合同軍事演習は、共和国に対する軍事的包囲と戦争態勢をさらに強化するもので、東アジアの軍事的緊張をさらに高めていく。そしてまた、韓国における朴槿恵政権打倒闘争やTHAAD配備反対運動を威嚇し、おしつぶしていこうとするものである。安倍政権もまた、沖縄・日本の米軍基地を出撃拠点として提供し、集団的自衛権にもとづき米韓合同軍事演習への参画を模索している。このような米韓合同軍事演習を絶対に許すことはできない。東アジア・朝鮮半島情勢としっかりと向き合い、排外主義と対決し、国際主義にもとづくたたかいをさらにおし広げていかねばならない。
 京都連絡会/近畿連絡会は、これらのたたかいを推進しつつ、今年の前半(六月ごろ)に京丹後現地で総決起集会を開催することを準備している。その成功のために努力し、近畿・全国からの結集を組織していかねばならない。


 

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