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   もんじゅ廃炉をめぐる動き

     
核燃料サイクルと高速炉研究開発をあくまで追求する日帝
       


 ●1章 「もんじゅ」廃炉と核燃料サイクルの破たん

 九月二十一日、第五回原子力関係閣僚会議が開催され、高速増殖原型炉「もんじゅ」の事実上の廃炉が決まった。会議においては、①核燃料サイクルの推進と高速炉の研究開発は堅持する、②官民で構成する新たに「高速炉開発会議を設置する、③会議では、閣議決定する高速炉開発方針案を検討・策定する、④もんじゅについては、年内をめどに廃炉を含めて抜本的な見直しをすることが決定された。これにより、もんじゅの事実上の廃炉が決定されたわけだが、一方で核燃料サイクルと高速炉の研究開発を続けるという詭弁が弄されている。実際には、もんじゅが動かなければ高速増殖炉の実用化への道はほぼ閉ざされ、核燃サイクルは全体が回らなくなるのだ。戦後日本のエネルギー政策の柱は二つ。「エネルギー政策の中心に原子力を置き、多くの原発を建設する」「将来は核燃料サイクルの確立をめざし、要の高速増殖炉は国産技術で開発する」というものであった。しかし、核燃料サイクルの要であるもんじゅの廃炉は、核燃料サイクルの破たんを意味し、戦後六十年にわたる原子力を中軸とするエネルギー政策の破たんそのものを意味するのだ。決定された内容についてより詳しく見てみよう。
 まず①核燃料サイクルの推進と高速炉の研究開発は堅持するとしている点だ。これは明らかに原子力関係者、あるいは核サイクル施設をもつ地方への「基本政策は変わりません。御安心を」というメッセージだ。しかし、高速炉の研究開発は堅持するとしつつも、「増殖」の文字が消滅している点が重要だ。新たに設置される「高速炉開発会議」の名称にもあきらかなように、従来の「夢のエネルギー」あるいは「夢の原子炉」といわれた「増殖炉」の開発からの撤退を明確にしたのである。今回の決定のきっかけは、昨年十一月に原子力規制委員会がもんじゅを管轄する文部科学省に対して半年をめどにもんじゅの新たな運営主体を示すように勧告したことに端を発するが、規制委員会は廃炉を求めていたわけではない。しかし、六八年の設計・建設着手以降一兆円を超える国費を投入したにもかかわらず、約二十年間停止したままだ。九四年に初臨界をむかえるも翌九五年にナトリウム漏れの事故を起こしたり、約一万点の機器の点検漏れが発覚するなど、規制委員会は一三年に運転再開の準備を禁止する命令を下していた。そして、安倍政権は今回の決定を前に参議院選挙が終わるまでもんじゅの存廃をめぐる論議の「棚上げ」を指示していた。それはまさに「もんじゅの存続」では、世論が納得するはずもなく政権基盤を揺るがす問題へと転化する可能性があったからである。そして、参議院選挙での「勝利」を確認したうえでもんじゅの廃炉を決定したのである。それは原発再稼働に反対する世論が今もなお国民の過半数を超え、鹿児島、福島、新潟の知事選挙での再稼働推進派の敗北にみられるように反原発、原発再稼働反対のたたかいと世論の前に廃炉へと追い込まれたということなのである。
 では、もんじゅを廃炉としたうえで核燃料サイクルの堅持は、可能であろうか。日本の核燃料サイクルは、もんじゅのような高速増殖炉でプルトニウムを増やす高速炉のサイクルとMOX燃料を使うプルサーマル発電によって成り立っている。高速増殖炉をめぐっては、すでに世界的には九〇年代に大きな転換をむかえていた。フランスは九八年実用化直前の実証炉「スーパーフェニックス」を閉鎖。原型炉「フェニックス」も一〇年に運転を終えている。イギリスではすでに九四年には高速増殖炉開発から撤退しており、アメリカは実験炉の段階で運転を停止しているのである。つまり、世界ではすでに高速炉開発は、通常の原発よりコストが高く、プルトニウムの増加によって使いきれないまま核拡散の危険が拡大することなどにより、撤退を余儀なくされていたのである。もんじゅは、原型炉の段階であり実証炉の段階にすら達していないにもかかわず二十年以上も稼働させることができなかった代物であり、〇五年の原子力政策大綱でもその実用化は五〇年ごろと当初計画されていた三〇年頃から大きく後退していたのである。さらに、今後もんじゅを継続する場合、十年間で五千億円以上が必要とされることが予想され、廃炉以外に道はなかったのである。そして、もんじゅ廃炉後の高速炉をめぐっては、今後フランスの次世代高速実証炉である「ASTRID(アストリッド)」で共同研究を進め、その間をもうひとつの柱であるプルサーマルを推進することで核燃料サイクルだと日帝政府―経産省は強弁しているのである。しかし、アストリッドは一九年に基本設計、二五年に完成をめざすとういまだ机上の計画に過ぎない。アストリッド計画に参加することで、あたかももんじゅを引き継ぐことができるかのように装い高速炉開発を断念したわけではないと、その破たんを言いつくろうとしているのだ。いかなる詭弁を弄そうとも、核燃料サイクルの破たんは明確であり、共同研究の名のもとにさらなる国費の浪費がおこなわれようとしているのだ
 次に②官民で構成する新たな「高速炉開発会議」が設置決定され、十月七日に第一回目の会議が開催されている。この会議は「新たな司令塔機能」をもつ組織とされ、今後の高速炉開発方針案の策定を主任務とするとされている。その構成と運営は1)すべての関係主体(国、メーカー、電力、JAEA)が参加した「オールジャパン」体制で臨み、2)経産省大臣を中心に文科省大臣の協力も得て、運営するとなっている。これは、八方塞がりとなったもんじゅを管轄する文部科学省からその利権を経済産業省が奪い、経産省を筆頭とした原発利権集団が勢ぞろいして、新たな核燃料サイクル推進を旗印にそのため投入される莫大な予算を利権分配をする場であるということだ。会議は大半が非公開とされる。第一回目の会議では、破たんしたもんじゅに関する総括もまったくないまま、「高速炉ありき」でのスタートを切っているのである。

 ●2章 プルサーマルと原発再稼働

 核燃料サイクルのもう一方の柱であるプルサーマルについて、見ておこう。プルサーマルは、原発から出た使用済み核燃料を再処理して、プルトニウムを抽出してウランと混合した「MOX燃料」を一般の軽水炉で使うものである。高速炉ほどではないが、ウラン資源の有効活用と核兵器の原料になるプルトニウムの保有も減らすことができると位置づけられているものである。電力会社は、九七年に一〇年までに全国の十六~十八基の原発でプルサーマルを導入するという計画を発表している。しかし、〇九年には目標時期を一五年度に延期している。
 核燃サイクルは通常の原発を運転し、使用済み燃料を直接処分するより費用が高くつく。ではなぜ、日本は核燃料サイクルを推進しようとしてきたのか。日本は全量再処理路線を掲げているので、すべての使用済み燃料は六ケ所再処理工場に送られ、そこで再処理され、プルトニウムは高速増殖炉やプルサーマルで消費されることになっている。もんじゅがなくなっても、プルサーマルだけで回すプルサーマル・サイクルが実施される。こうした計画があれば、使用済み燃料は、あたかも処理されるシステムがあるかのようになるからだ。いま六ケ所再処理工場は操業停止中であるがが、もし仮にフル操業させれば、プルトニウムが余ってくるし、逆に動かなければ、使用済み燃料がたまってくるなど、問題が発生するのだ。また、電力会社にとっても使用済み核燃料の「再利用」ではなく、ゴミとして扱った場合に「資産」としての価値がなくなり、財務状況を悪化させることにつながるからである。
 しかし、ここで注視しておかなければならないのは、高速炉開発が行き詰まる中、プルサーマルの導入が一層強まる情勢に入っているということである。現在、原子力規制委員会のもとで原発再稼働が強行されているが、高浜や川内、伊方原発の再稼働が優先されてきた背景には、プルサーマル発電を急いだことが予想される。次に再稼働が近いとされる玄海原発三号機や泊原発でもプルサーマル発電がおこなわれようとしている。さらに、全炉心にMOX燃料を装荷できる大間原発の稼働を急ぐ背景にもプルサーマルの「中継ぎ役」としての位置がある。核燃料サイクル維持のために大間原発は重視されており、原発再稼働の中にしっかりと位置づけられているとみることができるのだ。MOX燃料は、ウラン燃料に比べて毒性が強く、原子炉の「制御棒」の効きが悪くなるといった危険性が以前から指摘され続けている。プルサーマル優先の原発再稼働は、原発事故の発生と放射能汚染の危険を一層強めることを意味するのであり、プルサーマル発電の停止と原発再稼働阻止を一体のたたかいとして進めていかなければならない。

 ●3章 日帝の核武装と日米原子力協定

 日帝は核兵器を製造しないことを条件に原発の燃料となる濃縮ウランの約七割をアメリカから輸入しており、日帝の核政策を規定しているのは、日米原子力協定である。現在締結されている日米原子力協定は、八八年に締結されたもので、有効期限は三十年である。つまり一八年に協定の期限切れを迎える時期にさしかかっているのである。アメリカは、核兵器非保有国で唯一再処理を認めてきた日本にプルトニウムが増え続けることを警戒してきた。また、日本は「利用目的のないプルトニウムは持たない」と言い続けてきた。しかし、現在、その保有量は約四十八トンで、原爆六千発分にも相当するといわれている。さらに、もんじゅの廃炉が決定的となった現在、一方で六ケ所の再処理工場を稼働させ、一層のプルトニウムの抽出をおこなうならば、プルトニウムの量は増える一方となり、アメリカはもちろん、国際的にも日本のプルトニウム保有への懸念が高まる恐れがあるのだ。そしてこうした事態の中で自前の再処理禁止を避けるためにもなんとしても核燃料サイクルを維持するようにしなければならないのだ。それは、あくまでも核兵器開発のための潜在的能力の保有のためである。そのためには現在結ばれている原子力協定を維持しなければならないのだ。一八年七月の期限切れをひかえ、原発再稼働を推しすすめつつ欺瞞的な核燃料サイクル体系を確立することで、核武装の潜在的能力をあくまでも維持しよういうのである。原発再稼働と核燃料サイクルの体系維持の目的の一切はここにあるのだ。核武装論者である安倍による原発再稼働と欺瞞的「もんじゅ」廃炉決定の真の意図を徹底して暴露し、安倍政権による核武装-原発再稼働を絶対に阻止しなければならない。原発再稼働と新規建設を阻止し、全原発の廃炉にむけてたたかおう。原発輸出に反対しよう。



 

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