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■安倍政権の労務政策を許すな 労働者に競争と分断を強制 さらなる差別と分断、安倍の「同一労働同一賃金」 安倍政権は、六月二日「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定した。同一労働同一賃金については、「非正規という言葉を無くす決意で臨む。プロセスとしては、ガイドラインの策定等を通じ、不合理な待遇差として是正すべきものを明らかにする。その是正が円滑に行われるよう、欧州の制度も参考にしつつ、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定の整備、非正規雇用労働者と正規労働者との待遇差に関する事業者の説明義務の整備などを含め、労働契約法、パートタイム労働法及び労働者派遣法の 一括改正等を検討し、関連法案を国会に提出する。これらにより、正規労働者と非正規雇用労働者の賃金差について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す」と記載されている。 参議院選挙後の内閣改造に際しても「同一労働同一賃金を実現し、非正規という言葉この国から一掃する」と語った。これは、安倍政権が選挙や長期政権目当てにリップサービスをしているのではない。七月九日に発表された経団連の「同一労働同一賃金に向けて」(以下「経団連提言」)という政策提言の結語にある「官民一体となった非正規従業員の処遇改善に向けた取組みの加速により、個々人の『就労ニーズ』と『処遇の納得性・仕事のやりがい』の両立する多様な働き方を促すことで、正規・非正規という二分論を超え、非正規従業員という言葉や概念のない社会の実現が期待できる」を安倍流に表現したものである。まさに政府と財界が一体となった労働政策なのである。 では、彼らのいう「同一労働同一賃金」とはいかなるものか。 日経連は、「二〇一一年版経営労働政策委員会報告」において、非正規従業員と正規従業員の処遇、あるいは正規従業員同士の処遇を比較する際の、わが国の「同一価値労働同一賃金」の考え方を示した。それは、「将来的な人材活用の要素も考慮して、企業に同一の付加価値をもたらすことが期待できる労働(中長期的に判断されるもの)であれば、同じ処遇とすると捉えるべきである。外見上同じように見える職務内容であっても、人によって熟練度や責任、見込まれる役割などは異なる。それらを無視して同じ時間働けば同じ処遇とすることは、かえって従業員間の納得性は低下することになる」というものである。これは通常の用語法における同一価値労働同一賃金とは逆に、同一労働であっても(中長期的に)同一価値でなければ同一賃金にする必要がない、という論理である。資本にとって有用付加価値を作りだす労働者には「同一賃金」を与えるというものである。 この考え方は今回の「経団連提言」においても貫かれている。「欧州型の同一労働同一賃金(職務内容が同一または同等の労働者に対し同一賃金を支払う原則)の導入は困難」であると断言したうえで「日本型同一労働同一賃金」として「職務内容や仕事・役割・貢献度の発揮期待(人材活用の仕方)などさまざまな要素を総合的に勘案し、自社にとって同一労働と評価される場合に同じ賃金を支払うことを基本とする」、このために「ガイドラインを策定、法制度の見直し、簡易な救済制度の活用等により、現行法の実効性を高め、正規化や教育訓練の充実など、非正規従業員の総合的な処遇改善を推進」することによって「雇用形態にかかわらない均等、均衡待遇の確保につながる」としている。つまり、同一労働か否かの判断は資本の側が行い、ランク付けを行い、雇用形態にかかわらず「均等、均衡待遇が受けられる」ということである。この論理でいけば資本にとって有用な付加価値を生まない労働者の賃金の引き下げが正規非正規を問わず「同一労働同一賃金」の下に可能となる。まさに労働者が要求している「同一労働同一賃金」と同床異夢の代物でしかない。労働者の間に更なる競争がもたらされ、「付加価値を生む」人間か否かの差別、分断が強制されるのである。 世界的な常識が意味する「同一労働同一賃金」とは、一九四六年の「ILO憲章」において「同一価値の労働に対する同一報酬の原則の承認」として前文に掲げられ、一九四四年の「フィラデルフィア宣言」において「雇用及び職業における差別の排除」を基本的権利に関する原則として挙げられているものである。ILO加盟国すべてが「尊重し、促進し、かつ実現する義務を負う」としている。安倍政権の行おうとしている「同一労働同一賃金」はこうした世界の常識からもかけ離れた代物でしかない。 差別・分断を許さない団結を そもそもこの「同一労働同一賃金」を労働者が要求しているのは、非正規労働者が40%を超えている中で、正規非正規の賃金格差が、「日本における労働者の賃金水準はフルタイム100に対し、パートタイム56・8(二〇一三年)とおよそ半分強となっています。同じ基準で見るとフランス89・1(二〇一〇年)をはじめヨーロッパ諸国ではおおむね七~八割の水準となっている」(第一回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」厚生労働省提出資料3)、という現実を変えていくたたかいとして、同じように働いているのにこんなに賃金格差があるのはおかしいという怒りがあるからだ。そして同時に本当の意味で非正規労働者をなくすための正規化や正規雇用の増大せよという要求も強まっているからだ。 しかし、現実には、一部企業で「限定正社員」制度や「非正規(短時間)労働者の正社員化」が「非正規の一掃」という掛け声と軌を一にして始まっている。これは、二〇一三年四月一日に施行された改正労働契約法18条「有期労働契約が反復して更新されて五年を超えた時には、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約にすることができる」という二〇一八年に向けて様々な動きでもある。 たとえば、四十万の労働者の約半分の十九万人を超える非正規労働者(期間雇用社員)がいる郵政の職場では、今年の十月から前倒しで正規化(期間の定めのない雇用契約)への転換を行うと会社側は提案してきている。その内容は「賃金は非正規の時とほとんど変わらない。九十日間の病気休暇や一年以内の休職を無給だが付与する等」となっている。しかも、「他の事業所への異動を認めない=事業所が閉鎖されたときは解雇」「二〇一六年十月以降採用された期間雇用社員は連続して五年を超える直前の人事評価がすべて『Bなし』以上」などの条件が付くものだ。郵政産業ユニオンの労働者は、こうした会社側の提案と闘いながら、正規・非正規の格差を禁じた「労働契約法20条」を武器に裁判闘争を続けている。そして、非正規の待遇改善を要求したストライキを続けている。 ここで表れていることは自分たちの労働条件の改善は自分たちの団結したたたかいでかち取るという労働者としての当たり前の行動だ。安倍政権や資本が狙っているのは労働者の団結を破壊し、労働者の要求を捻じ曲げて自分たちに都合のよい労務政策を行うことである。彼らは、「非正規をなくす」と言いながら「解雇の自由」や「残業代ゼロ法」などをあきらめてはいない。資本によって価値のある労働者は死ぬまでこき使い、価値がなくなれば捨てる(解雇する)というのが彼らの狙いであることは変わらない。労働者の団結で差別・分断を打ち破り安倍政権と対決していこう。 |
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