共産主義者同盟(統一委員会)






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   戦争国家に向けた政策進める

       危険な勢力「おおさか維新の会」
  
     


 大阪を中心に橋下徹らが率いる維新の会(現「おおさか維新の会」)が「大阪都構想」「統治機構の改革」や「政界再編」などを声高に叫び、新自由主義、能力主義あるいは差別排外主義をさかんに扇動している。橋下の差別的思想や極右としての政治的立場が明らかになるにつれ、勢いは登場したときほどではないが、大阪を中心に国会議員、自治体首長や議員を一定数抱え、何より自民・安倍と共通の改憲、戦争国家に向けた政策を進めている危険な勢力である。全国の労働者・人民の力でこうした危険な動きを葬り去らなければならない。

 ●1章 住民への施策を切り捨て、新自由主義政策の八年間

 「タレント弁護士」として関西を中心に知名度を上げていた橋下徹は、二〇〇八年に大阪府知事に就任した。一〇年に「大阪維新の会」を設立して代表に就任し、一一年の統一地方選挙では大阪市、堺市の二つの政令指定都市で第一党になり、十一月には橋下自らが知事の座を投げ捨てて市長選に立候補し当選。大阪府と市に大きな影響力を獲得するにいたった。
 一二年に、国政への進出を表明し「日本維新の会」を設立。直後に「日本創新党」を糾合し、その後に石原慎太郎らの「太陽の党」が合流して十二月の総選挙では五十四議席を獲得し、第三党となった。
 一三年には、橋下の「慰安婦発言」などの影響もあり、影響力の拡大はかつてほどの勢いを失っていった。七月参院選で八議席にとどまり敗北宣言。
 一四年六月、設立当初からの原発や憲法などについての政策の対立から石原らが「次世代の党」をつくって分党すると、次には「結いの党」を吸収して「維新の党」を結党(九月)。
 しかしその維新の党も、内部対立が解消できずに一年あまりで解散、「おおさか維新の会」を結成(一五年十一月)。この時点では衆議員十三名、参議員七名となり、国会議員数では民進、共産に次ぐ野党第三党の位置を維持している。
 橋下徹自身は、一五年五月の住民投票で「大阪都構想」が否決されると政界からの引退を表明し、十二月の市長任期切れと同時に政界から引退した。今では再びタレントとしてテレビに登場している。しかし、市長退任の翌日には安倍晋三と会食するなど、政界への影響力は保持しており、おおさか維新の会では法律政策顧問という立場である。また、橋下が退任したあとの大阪市長には、橋下の側近の一人である吉村洋文(元衆議員)が当選し、松井一郎(大阪府知事、おおさか維新の会代表)とともに、おおさか維新の会は大阪になお影響力を保持している。
 橋下は、大阪府知事・大阪市長の時代を通じて一貫して、自治体労働者とその労働組合を敵視し人件費をカットし、高校や男女共同参画施設、青少年や障害者のための施設、図書館や体育館などの住民向け施設や施策を効率化・見直し・廃止、民間への売却などの方向で縮小してきた。
 維新の勢力は、橋下の知名度や求心力に支えられながら、政界再編を標榜して保守・反動勢力を寄せ集めて議席を増やすことを優先し、理念や政策の一致をないがしろにして、分裂を繰り返してきた。しかし、ある程度の数の国会議席を保有し、また大阪を中心とした地方議会や自治体首長を一定確保しており、自公政権の反動政策を右から支える役割を果たしている。

 ●2章 「百害あって一利なし」大阪都構想

 昨年五月十七日、「大阪都構想」をめぐる住民投票が行われ、「反対」が七十万五千五百八十三票(50・38%)、「賛成」が六十九万四千八百四十四票(49・42%)という、一ポイントにも満たない小差ではあるが、大阪都構想は否決された。
 このときに住民投票に付されたものは、大阪府と大阪市が法律に基づいて定めた「特別区設置協定書」への賛否である。この協定書とは、政令指定都市である大阪市を廃止し、現在二十四ある大阪市の行政区を五つの「特別区」に再編するというものであり、大阪都構想の設計図ともいうべきものである。したがって住民投票の対象となったのは大阪市民のみ(有権者数は約二百十万人)である(仮に賛成票が多数であったとしても、「大阪都」を設置するには、さらに新たな法律などの整備が必要だが、ここでは広く使われている「都構想」という用語を使うことにする)。
 当初は、同じ政令指定都市である堺市や大阪府内のいくつかの市、さらには兵庫県の一部をも含む大規模な自治体再編をもくろんでいたが、堺市をはじめ周辺自治体ががこれらに同意しなかったため、最終的には橋下・松井が市長・知事である大阪市・大阪府しかこれに賛同せず、また、両議会の中では維新の会以外は都構想そのものに賛成しなかったため、協定書は、維新の会が単独で作成したものとなった。
 大阪の各政治勢力は、軒並みこの住民投票には反対の姿勢でのぞみ、維新対すべての政治勢力という構図で運動が展開された。議会内では維新を除くすべての会派(自民、公明、民主、共産)、労働組合はもちろん、商工会や商店街までもが反対運動に参加し、自民と共産の議員が同じ宣伝カーで演説をするなどの光景も見られた。その一致点は「大阪市をなくすな」というものであり、各政治勢力の利害や思惑には大きな違いがあった。
 橋下や松井らは当初、「都構想の実現で、府と市という二重行政の弊害をなくして年間四千億円の経済効果が見込める」(一一年の発言)などと宣伝していたが、その額が徐々に縮小していき、「年間平均百五十五億円」(府市の行政的試算、一四年十月)、さらにここから地下鉄の民営化など都構想と関係のないものを差し引いていくと「年間約一億円に過ぎない」(同、大阪市議会での答弁)となっていった。
 そもそも、二重行政による弊害は、大阪府を都に変えなくとも、府と市の調整で協議・解決しうるものであるし、都を作ったとしても都と特別区との間でも二重行政の無駄は発生する。さらに、都構想が実施されれば都と特別行政区に加えて、健康保険・介護保険・水道事業やシステム管理・施設管理など区を横断して担う「一部事務組合」という新たなそして巨大な自治体の設置が必要になり、二重行政の解消どころか三重行政となる危惧すら指摘されている。そしてこれらの初期設置費用や運用コストを計算すれば、経済効果はむしろマイナスになるとの試算もある。
 特別区設置協議会資料によれば、大阪市の一般財源の約四分の一に当たる二千二百億円が、特別区(つまり現大阪市)の予算から大阪府の予算へと移行されることになる。加えて、大阪市は都市計画の作成など、政令指定都市としてのさまざまな権限を失うことになり、大阪市民にとっては、行政サービスが低下することは避けられないとされている。
 大阪都構想が実現すれば、東京に次ぐ大規模な経済圏ができ、都市間競争に勝ち抜いて沈下しつつある関西経済が復権する、という宣伝は全くの妄想に過ぎない。それどころか、関西経済を牽引している政令指定都市・大阪市が解体され、財源と権限を失うことによって、関西全体の活力が損なわれることになりかねない。
 では「大阪市の権限、力、お金をむしり取」(橋下)った上で、それをどこに振り向けようとしているのか。大阪城西の丸庭園に盛り土をしてモトクロス大会を開催、道頓堀川に巨大なプールを設置(そのための会社まで設立したが、計画は破綻)、カジノの誘致、さらには、リニア新幹線や高速道路網の整備といったインフラ整備など、奇抜というよりも無責任な思いつきとでも言うべき計画が出されてきた。これらを通して外資導入、企業誘致を狙っているものの、たとえば「プール計画」は、これを推進した堺屋太一(元経企庁長官)は「東京オリンピック以上の経済効果」などと吹聴しながらも、計画は頓挫した。
 こうした誘致型経済政策はすでに国際的には時代遅れとなっているのである。住民向け施策・サービス・施設の縮小や切捨て・廃止によって財源を確保し、投資に振り向けるという新自由主義的政策は、歴史的にも破綻が明らかだ。
 しかし橋下らはなおあきらめようとしていない。昨年十二月に、大阪府と大阪市は共同で「副首都推進本部」を設置した。ここには堺屋太一、猪瀬直樹(元東京都知事)らが顧問として関わっている。橋下は、「大阪都構想に再度挑戦する」としているが、一方で大阪府・大阪市・堺市による「大阪戦略調整会議」も設置され、さらに今年四月からは地方自治法による「調整会議」が設置されることになる。こういった混乱の中で、維新と自民は主導権争いを激化させ、事態をさらに複雑にしており、府・市民生活を大混乱に陥れている。

 ●3章 全国の労働者が共同して橋下を追い詰めている

 こうした維新の策動に対して、大阪の労働者・労働組合はたたかいを続けてきた。「大阪都構想」に対しては、先に見たとおり、党派・政治勢力の違いをこえて反対運動を繰り広げ、維新が全体重をかけ、六億五千万円を投入して推進した住民投票で、小差ではあるが否決した。
 一方、労働組合活動妨害や「日の丸・君が代」の強制などに対しては、労働委員会や裁判闘争で次々と勝利を勝ち取ってきた。組合事務所を市庁舎から退去させた件については、大阪地裁、高裁でともに違法性を認める判決を、市職員に対する組合・政治活動アンケート(思想調査)についても地裁、高裁でともに「団結権の侵害、プライバシー権の侵害」「憲法上の権利を侵害する設問があった」などとする判決を勝ち取った。また、立ち退き問題に関しては中労委に不当労働行為を認定させ、橋下に謝罪させた。
 小中学校の卒業式での君が代斉唱の強制に反対し、処分を覚悟の上での不起立のたたかいも続けられている。そしてこうした自治体職員・教員のたたかいを、大阪をはじめとする全国の民間労働者・公務員労働者が支援し、橋下・維新を追い詰めているのだ。こうしたたたかいをいっそう強めよう。

 ●4章 改憲・戦争国家化を進める維新の会と闘い

 おおさか維新の会は三月二十六日に大阪市内で党大会を開催し、憲法改悪や昨年住民投票で否決されている大阪都構想推進などを盛り込んだ活動方針を決定した。この中で政調会長・下地幹郎は「自民党ができなかったことをやる。自民党が先延ばしにしていることをやる」と発言。また、維新の会代表の松井は昨年十二月に、自公とともに「(改憲の発議に必要な)三分の二勢力に入る」と発言しており、三月二十九日には米国のドナルド・トランプの在日米軍をめぐる発言を受けて「日本の核兵器の保有について議論をしなければならない」とも発言した。さらに今年三月に施行された安保関連法施行についても「手付かずのままより良かった」と評価している。維新の会が、安倍政権の右からの補完勢力であり、労働者人民を侵略戦争とへと引きずり込むきわめて危険な勢力であることが改めて明らかになった。
 こうした勢力と断固としてたたかい、打ち倒していこう。



 

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