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■労働者派遣法改悪強行弾劾! 労働者使い捨てを許すな! 職場・生産点から反撃しよう! 戦後七十年を迎えた本年八~九月、国会を包囲して十二万人の労働者・市民・青年・学生が、そして全国で百万人が、「戦争法案反対、安倍倒せ!」「沖縄は屈しない、辺野古新基地建設反対!」「雇用破壊許すな、派遣法改悪反対!」と怒りの声をあげた。 「戦後レジームからの脱却」を掲げ、戦争のできる国と世界一企業が活躍しやすい国をめざす首相安倍は、九月十一日改悪派遣法、九月十九日戦争法を強行成立させた。断じて許すことができない。低賃金・不安定で使い捨ての非正規労働者を増大させ、格差・貧困社会を極限までおしすすめ、労働者の分断支配で、戦争への道を掃き清めようというのだ。 派遣労働の自由化・全面化をもくろむ今回の派遣法改悪こそ、貧困・格差社会の深刻さに拍車をかけるものだ。職場・生産点から断固たる反撃をはじめよう。 16春闘にむけてすべての労働者は、戦争法廃止、沖縄連帯、労働法制改悪阻止をかちとっていこう! ●1章 改悪派遣法強行成立を徹底弾劾! ▼1章―1節 派遣労働とは何か? そもそも派遣労働とは、派遣元が自己の雇用する労働者を派遣先の指揮命令下において労働に従事させることをいう。敗戦後の一九四七年、現憲法による労働者保護法制の整備の中で、職業安定法により労働者供給事業は原則禁止となった。これは、労働者への不当支配やピンハネ・中間搾取を禁止するためだが、土木建設現場での飯場(はんば)制度・タコ部屋は実態的に残されてしまった。 労働者供給事業禁止の例外はこれを無料でおこなう労働組合だけであった。しかし、一九八五年の労働者派遣法制定によって例外的措置として認められた。したがって、労働者派遣制度は「直接雇用原則」のもとで、一部の専門業務に限定し、かつ「臨時的・一時的業務」に限る「常用代替禁止」を基本的理念とした。しかし、その後の規制緩和などによって、偽装請負や違法派遣、日雇い派遣、さらには低賃金・雇用の細切れ、賃金からの不当な天引きなどが社会問題化した。 対象業務は、当初の十三業務から十六業務、二十六業務と拡大して、ついには原則例外を逆転させて臨時的・一時的業務解禁と派遣期間一年限定から三年延長へ、さらには二十六業務の三年期間制限の撤廃と改悪は続いた。そして禁止業務は港湾運送業務・建設業務・警備業・条件付きの医療関係の四業務だけとなっている。 実際に派遣労働者の派遣元への要望の第一位は「賃金制度を改善してほしい」(56・5%)、第二位「継続した仕事を確保してほしい」(42・6%)、第三位「派遣契約が中途解除された場合に他の派遣先を確保してほしい」(25・9%)となっている(厚労省二〇一二年派遣労働者実態調査)。 この派遣労働者の声に、派遣労働の実態が端的に表われているではないか。 ▼1章―2節 改悪派遣法の問題点 二〇一四年以来派遣自由化めざす改悪案が出されたが、労組や法曹界の反対運動で二回廃案となった。 今回の法改悪のポイントは、①派遣元との無期雇用契約派遣労働者については派遣期間制限を撤廃する、②有期派遣契約は業務規制を撤廃して期間制限を三年とする、③派遣先の労働組合等の意見聴取によって派遣労働者を入れ替えれば期間制限なく派遣利用可能とする、④派遣業を許可制として二十六業務区分を廃止する、以上四点だ。 この問題点は、①派遣元において無期雇用契約であれば期間制限のない派遣が可能であるとして、派遣労働の永続化を容認し、②他方で有期雇用派遣は労働者を交替すれば三年を超えて受け入れ可能として、派遣労働を一般化するものであり、常用代替防止の理念を根底から覆すものである。それ故に、今回の法改悪は派遣の自由化・全面化を容認するものである。さらに、③これまでの二十六政令指定業務区分の廃止と、派遣期間制限の撤廃は、派遣先があらゆる業務業種において永続的に派遣労働を使うことができ、正規雇用が派遣労働に置き換えられ、ますます非正規雇用を増大させるものであること、また、④派遣労働者の処遇改善のための具体策が何もなく、生涯低賃金で不安定雇用に固定化されてしまうものだ。 しかも、⑤「10・1問題」回避のための九月十一日強行成立・九月三十日施行をはかったものだ。リーマン・ショック後に派遣労働者の安定雇用をめざす運動の成果としてかちとられた「労働契約申し込み制度」が、本年十月一日施行の予定であったが、これによって直接雇用申し込みの殺到と膨大な違法派遣の顕在化として社会問題化することを事前封殺するものであったのだ。 ●2章 派遣自由化と非正規拡大は一体の攻撃だ ▼2章―1節 非正規労働者がついに四割に増大 先の十一月四日発表された厚労省二〇一四年「就業形態の多様化に関する総合実態調査」によれば、昨年十月一日時点で官公営を含む「非正規率」が初めて40・0%に達したという。約五千百九十三万人全労働者のうち約二千七十七万人が非正規労働者(そのうち七割が女性)ということだ。その内訳は、パートタイム58%、契約社員9%、嘱託再雇用7%、そして派遣6%など、となっている。他方で、派遣法成立の一九八五年に全労働者三千九百九十八万人のうち非正規率16・4%(六百五十五万人)から、二〇一三年には全五千二百万人のうち非正規率36・7%(千九百六万人)へと、比率と数で二倍から三倍と増加の一途をたどってきた。その中で、この非正規のうち年収二百万円以下のワーキングプア千百万人が喘いでいる情況がある。 ▼2章―2節 不安定・低賃金の派遣労働者の増大 他方で、この間の派遣労働者は、派遣法施行の一九八六年十四万人(全体比0・3%)から、政令等による対象業務の拡大で一九九四年六十三万人(全体比1・3%、非正規率20・3%)に、対象業務を十六から二十六業務に拡大した一九九六年には七十二万人になった。さらに派遣法改悪により二〇〇四年二百二十七万人(全体比4・6%、非正規率31・4%)へ、そして二〇〇八年三百九十九万人(全体比7・7%、非正規率34・1%)と最大数となるが、この年のリーマン・ショックで大規模派遣切りが「派遣村」などで社会問題化して、二〇一二年法修正もあり、二〇一三年二百五十二万人(ただし常用換算百二十六万人、全体比4・8%、非正規率36・7%)といったん減少して現在に至っている。 非正規率が一九八四年15・3%から二〇一五年40・0%と2・6倍となり、同時に派遣は一九八六年十四万人(全体比0・3%)から二〇一三年二百五十二万人(全体比4・8%)へと激増してきた。 安倍政権は、「世界で一番企業が活動しやすい国」にすると、労働者保護の最低基準である労働規制の緩和・撤廃の雇用破壊攻撃を成長戦略の切り札にしている。その突破口が派遣法であり、その改悪をテコにして、不安定・低賃金の非正規労働者を増大させ、大企業利益の源泉としているのだ。 ●3章 職場・生産点から改悪派遣法を跳ね返そう 現在の階級的労働運動の最大の課題は、パートや派遣などの非正規労働者が二千百万人と全体の四割を超えて拡大しつつあり、非正規の労働条件改善と労働組合への参加を実現することだ。 とくに、改悪派遣法は二度も廃案に追い込まれ、先の国会でも「10・1問題」の瀬戸際での強行成立と拙速施行のために、三十九項目もの付帯決議がつけらたように、改悪派遣法の見直し改正につながる多くの矛盾点がある。その改悪派遣法と付帯決議を武器にして職場・生産点から反撃していこう。 ▼3章―1節 改悪派遣法との闘い 例えば改悪派遣法では、①これまでの届出制を廃止して許可制に一本化された点について、派遣法と職業安定法違反に対して、事業許可の取り消しを求めてたたかうことが必要である。②派遣元と労働契約の期間ありの場合は、事業所単位で三年の期間規制があるために、その導入と延長のためには過半数労働組合または労働者過半数代表から意見聴取しなければならない。ここで、代表者の適格性を問い、また聴取手続きとして、書面通知、考慮期間、資料提供、聴取意見の三年保存、周知が必要であり、これを厳格に求めることによって、常用代替防止、違法派遣・派遣条件改善のための職場闘争を推し進めなければならない。③人単位の期間制限三年では、同じ組織単位という条件付きであり、脱法行為を許さないために課やグループという名称の違いにとらわれずに、業務としての類似性、関連性があり、組織の長が業務配分や労務管理上の指揮監督権限を有するものとして実態に即して判断する必要がある。その他、④雇用安定措置、キャリアアップ措置、福利厚生はじめ均等待遇の推進、違法派遣に対する労働契約申込「みなし」制度(ただし軽微な違反は対象とならないとの通達あり)を活用したたたかいをめざすことが重要だ。 ▼3章―2節 付帯決議を武器に闘おう また、付帯決議では、①「五・派遣労働者の待遇について」では、労政審において均等・均衡待遇の実現のため法改正を含めた必要な措置の在り方について論議を開始すること、とある。同一労働同一賃金法と合わせて今後の焦点となっていくだろう。②「七・派遣先の責任について」では、派遣先の団体交渉応諾義務の在り方について法制化を含めた検討を行うこととあり、派遣制度が容認する派遣先の使用責任逃れを許さない決定的なたたかいとなる。③同じ「七」の3と4には、派遣労働者の特定行為、事前面接禁止、グループ内派遣八割規制などの違反行為に対して「みなし制度」を拡大する検討が求められている。 こうして、とくに雇用期間三年をめぐる雇止めの大量発生に対処すべく、派遣労働者の相談窓口体制を構築しておかねばならない。とくに、労働契約申込みなし制度からの逃れるために脱法的な職種転換や違法契約をしっかりと告発しなければならない。また、派遣労働者を正規雇用として労働契約を切り替えるよう要求していくことが重要だ。職場・生産点における正規と非正規・派遣の団結でストライキも構えて要求実現をしていこう。 日本経団連と人材派遣業界は、「日雇い派遣」の年収要件緩和について諦めていない。「時期を置かずに労政審であつかう」としており、これを許してはならない。 ▼3章―3節 労働法制改悪を阻止しよう この他、労働法制改悪をめぐるたたかいは、喫緊の課題として、①「解雇の金銭解決」制度導入の問題、②労働基準法を改悪して「高度プロフェッショナル制度」なる、八時間労働制を解体する定額働かせ放題・残業代ゼロ・過労死促進の制度を導入しようとする問題、③外国人技能実習適正化法案などがある。その権利確立を要求して共にたたかい、すでに国家戦略特区法で導入された外国人家事労働者についてはILO条約(家事支援を行う労働者の権利保障第百八十九号条約:二〇一一年六月採択)批准を求めていかなければならない。 すべての労働者は、16春闘の勝利にむけて、労働法制改悪阻止を断固かちとっていこう! |
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