共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

   中小零細・低賃金労働者の団結で、

         2015年最低賃金闘争を闘おう

       


 七月中央、八月地方の最低賃金審議会にむけた最低賃金闘争を断固たたかおう!
 昨年七月一日に開始された中央最賃審は、同月二十九日の答申で全国平均十六円(概ね2・1%相当)引き上げ目安を提示した。そして、八月末頃までに地方最賃審が結審した。Aランク地区東京八百八十八円からDランク地区沖縄六百七十七円となり、全国加重平均七百八十円へと改定され、同十月発効となった。
 しかし、昨年四月消費税3%引き上げに加えて、安倍政権の円安・株高誘導によって食料品などの生活必需品は高騰し続け、2%アップ程度の改定でしのげるはずがない。非正規労働者二千万人、うち年収二百万円以下のワーキングプア一千百万人は、塗炭の苦しみだ。
 また、東京や大阪の大都市圏Aランク地区と、沖縄や島根などの地方Dランク地区では、引き上げ幅二百十一円と大きく差がつけられ、一カ月当たりでは三万七千百三十六円の差となり、いっそう地域格差が拡大された。
 現在の地域別最賃制度は、審議会方式で、厚生労働大臣と地方労働局長が決定できるものだ。
 本年の最低賃金闘争を、二〇一〇年雇用戦略対話における「できるだけ早期に全国最低八百円、二〇二〇年までに全国平均一千円をめざす」という政労使合意の実行を要求して、中小零細・下層労働者の団結と個別企業を越えた地域闘争・全国闘争として断固たたかおう。

  ●1章 18年間にわたる実質賃金の低下

 五月八日発表の二〇一五年三月期連結決算でトヨタの純益は二兆円超、二年連続過去最高益を更新したという。また、五月九日発表された厚生労働省の「毎月勤労統計調査の二〇一四年度まとめ」によると、実質賃金は3・0%減少、四年連続のマイナス、下落率は調査開始の一九九一年度以降で最大、と発表された。そもそも、一九九七年アジア通貨危機から始まった経済危機の深刻化と消費税5%への増税と合わせて、実質賃金は下がり続けてきたのであり、地方公務員の給与水準を国家公務員と比較したラスパイレス指数で一九九七年を100とすれば二〇一三年は94・9という。また、六月のNHK「景気回復の実感調査」では、12%が実感有り、33%が無し、44%がどちらとも言えない、という結果である。アベノミクスの円安・輸出収益増大の恩恵は自動車などのグローバル企業だけであり、労働者の七割を雇用する中小企業では依然として改善していないことを物語っている。


  ●2章 低賃金不安定雇用の拡大

 アベノミクスにおけるトリクルダウン理論(浸透効果論)に基づく新自由主義政策は、労働者の非正規化と貧困格差を拡大させてきた。
 図1は、「正規及び非正規職員・従業員の推移」(総務省「労働力調査詳細結果」から作成)である。これによれば、労働者総数は、一九八五年の約四千万人から二〇〇五年には五千万人を超え、その後には五千二百万人ほどで推移している。その中で一九九五年から非正規労働者は増加し続け、その代りに正規労働者は減少に転じている。非正規労働者は、二〇一四年一~三月平均では一千九百七十万人と、今や二千万人に迫っている。この非正規率は、一九九〇年代にほぼ二割、二〇〇五年に三割、二〇一四年一~三月平均で37・9%と四割に迫る勢いだ。
 この雇用の不安定化は、低賃金労働者を大量に生み出してきている。
 図2は、「民間給与年間二百万円以下の数と割合」(国税庁「民間給与実態統計調査」より作成)である。これによれば、年収二百万円以下の労働者は、ほぼ一千百万人であり、そのうち女性が44・9%(二〇一四年)を占めている。若年単身者の最低生活費は、マーケットバスケット方式によれば十六万~十七万円であり、生活保護基準を想定したものとされているが、これに税金や保険料を含めれば二十万~二十三万円(年間二百四十~二百七十六万円:時給換算千百五十六~千三百二十九円)の水準となる。しかし年収二百万円以下とは、月平均で十六万七千円、時給換算九百六十五円となり、生活保護基準を大きく下回る、「健康で文化的な最低限度の生活」など望むべくも無い金額だ。
 「一九九八年以降、給与の減少額は毎年平均九・四兆円、その累計は百三十一・四兆円にも上り、内部留保の急増が始まったのは労働法制の全面改悪が行われた九八年からである」との二〇一四年の試算もあるように、労働者の非正規化と貧困格差の拡大を、企業利潤の源泉としてきたともいえるのだ。

  ●3章 最低賃金の影響を受ける労働者の増大

 表2は、最低賃金の未満率と影響率を示している。未満率とは、最低賃金額を改正する前に、最低賃金額を下回っている労働者の割合である。影響率とは、最低賃金額を改正した後に、改正後の最低賃金額を下回ることとなる労働者の割合である。
 影響率は二〇〇六年までは1・5%程度の低率で、また未満率とも大差が無かったが、二〇〇七年から上昇して二〇一〇年に4%を超え、二〇一三年には7%を超えた。すなわち最低賃金の改定にともなって賃金改定を行なわなければならない労働者の範囲が二倍から五倍と増加していることを示している。最低賃金以下の労働者は、二〇一三年度は約四百万人と推定される。

  ●4章 最賃引き上げ効果の影響は大きい

 新聞折込み求人紙を発行するA社による調査分析『二〇一三年度の地域別最低賃金改定によるパート・アルバイトの募集時時給への影響について(二〇一三年十一月発表)』をみると、十七都府県の二〇一三年一~六月の「募集時賃金」データから、広告掲載の募集時時給が最低賃金を下回る地域別上位三位は、大阪府35・0%、神奈川県32・1%、東京都二十三区以外32・6%であり、改定額が八百円を超える地域での影響が大きくなっている。二〇一三年度の影響率は平均7・4%だが、Aランク地域の東京・大阪・愛知・千葉は10・7%(二〇一五年経労委報告)とされており、同様に影響率の増大傾向が示されている。
 そして、改定影響率が高かった影響率10%以上の職種は、「販売職」が十五都府県中十一地域と最も多く、「サービス職(飲食料理)」九地域、「技能・製造職」八地域であり、中でも「技能・製造職」は東京都59・4%、「サービス職(飲食料理)」は神奈川県55・9%と大阪府59・5%、「販売職」も神奈川県55・9%と大阪府42・8%で高い値が出た。このA社発表を報道した産経新聞は、「採用困難職種と言われているこれらの職種ではあるが、最低賃金額近辺での募集が多い状況」と解説している。
 また、大阪府と神奈川県では、前年(二〇一二年)の最低賃金額が募集時時給の最多階級であるため、最賃改定額に合わせて多くの企業が賃金額を引き上げざるを得ない状況となった。大阪府は前年度最賃額八百円のところ最多賃金階級八百円台(八百~八百九円)が33・0%、神奈川県が前年度最賃額八百四十九円のところ最多賃金階級八百五十円(八百五十~八百五十九円)が26・7%であった。
 さらに、募集時平均時給と最低賃金額の関係では、東京都で二〇〇七年度の地域最賃七百三十九円から二〇一二年八百五十円までの五年間で百十一円(15%)と大幅な上昇となった。しかし、東京都における専門・技術・管理職を除いた募集時の平均時給は、二〇〇八年一~六月九百三十八円、二〇一三年一~六月九百四十八円で、この間は金額十円(1・1%)上昇にとどまっている。A社分析は「程度の差があるものの調査地域においてほぼ同じような傾向となっている」、最賃引き上げは「求人全体の平均賃金の上昇には影響していないようだ」という。だが最賃引き上げが、パート・アルバイトの最賃近辺時給の上昇に大きな影響を与えていることは確かだ。
 最後に、分析十七都府県における地域格差について、東京の最賃最高額と他地域を比較して、パート・アルバイトの募集時平均時給の差額が最大のものは、二〇〇八年一~六月期では和歌山県のマイナス18・2%、五年後の二〇一三年同期では福岡県のマイナス16・9%で、地域間格差は1・3ポイント減少した。他方で、最賃改定状況は、二〇〇七年度時で最大マイナス10・4%(和歌山県)、五年後の二〇一二年度ではマイナス18・8%(和歌山県)と、8・4ポイント拡大し、翌二〇一三年度改定ではさらに0・5ポイント拡大してマイナス19・3%となった。A社分析は、最賃の大幅な引き上げは「東京都、神奈川県、大阪府などの大都市圏においては……その影響範囲は多くの業種・業界に及ぶが、地方においては最低賃金の上げ幅も小さく、影響の範囲も少なくなっている」と地方の格差拡大を指摘している。この調査分析は、地方における最賃大幅引き上げ効果を示していると言えるだろう。
 表3のうち、流通、ライン労働の製造業などでは、パートを大量雇用しており年功制、ランク制という賃金体系の最下層は、最賃が基準になっている。コンビニ、ビルメンなどの最賃すれすれから始まる職種は、連動した階層構造の賃金制となっている。そして、郵政非正規職の約二十万人は、時給平均千四十円だが、その計算式は(地域最賃+二十円)+加算給(基礎評価給+資格給・スキル評価)とされており、最賃額と大きくつながっている。
 また、東北、沖縄、北海道、九州など賃金が低い地域のパート賃金は、最大多数の層で最低賃金の直近時給であり、最賃引き上げの影響は大きい。
 特に、東日本大震災復興連帯、全国一律最賃による被災地の賃上げ支援、除染労働者のピンハネ問題の側面支援の取り組みとしての意義がある。環境省による二〇一三年度除染工事等工事設計労務単価は、除染作業員日当一万六千円+危険手当一万円の合計二万六千円のところ、大手ゼネコンが重層的下請け構造を利用したピンはねをおこない、これを容認する労基署の「指導」もあり、危険手当一万円+福島の最低賃金(六百八十九円×八時間)の合計一万五千五百十二円しか実際に現場では支払われていないのだ。他に、岩手六百七十八円、宮城七百十円、福島六百八十九円の最賃ラインが、多くの非正規雇用の時給水準となっており、最賃引き上げは喫緊の課題だ。

  ●5章 最賃闘争は非正規の組織化に大きな役割を果たす

 最賃闘争は、最賃職場と化しているコンビニ、ビルメン、トラック、タクシー、システムエンジニア(SE)の組織化に大きな役割を果たす。特にタクシー、地場の中小型の配送業(一日九千円から一万円)は、十二時間から十四時間という長時間労働で最賃割れが多々あり、たとえ「世帯主」労働者であっても高校生・大学生の息子・娘のバイト代より低い場合がある。
 中小零細労働者の組織化にとって、一人職場、少数派組合などは職場の賃金闘争が組織できないことが多く、労組組織化の停滞の大きな根拠となっている。最低賃金引き上げに連動する形での賃金引き上げ要求を二~三年取り組めれば必ず成果が出るたたかいだ。

  ●6章 最賃闘争の前進にむけた闘いを

  ▼6章―1節 全国一律時給千円以上を


 二〇一〇年雇用戦略対話における「できるだけ早期に全国最低八百円、二〇二〇年までに全国平均千円をめざす」という政労使合意の実行を要求しよう。生活保護の水準は、若者単身で年間二百四十~二百七十六万円、時給換算千百五十六~千三百二十九円であること踏まえ、最賃全国平均千円を早急に実現していかねばならない。
 最賃法(九条)は、最賃決定の際に考慮すべき要素として、(1)地域における労働者の生計費、(2)地域における労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払い能力、の三点を掲げている。事業者の支払い能力をたてに、最賃引き上げが押さえ込まれてきている。地域別から全国一律の最賃制度への当然の転換をかちとらなければならない。そのために、かつての一九七五年労働四団体による「全国一律最賃制確立のための統一要求書」闘争を超える共闘とたたかいの発展をかちとろう。

  ▼6章―2節 生活保護改悪反対と最賃闘争の結合を

 最低賃金の水準が生活保護基準さえ下回る、いわゆる「乖離」という逆転現象が大きな社会問題となり、二〇〇七年最賃法改正で「生活保護との整合性」を定め、地方最賃審議会で二~五年間で解消するとした。当初二〇〇八年に「乖離」は十二都道府県であり、その後も二〇一二年度で北海道(三十円)・宮城(十九円)・東京(二十円)・神奈川(十八円)・大阪(十五円)・広島(十二円)など十一地域にのぼった(括弧の中は「乖離額」を示す)。全部解消予定の二〇一四年度でも北海道(十一円)・宮城(一円)・東京(一円)・兵庫(一円)・広島(四円)の五地域を残してしまった。
 安倍政権は、二〇一三年五月生活保護法の改悪で「水際作戦を合法化」した今、改正最賃法の「生保との整合性」を逆手にとった生活保護基準の引き下げと最賃引き上げ抑制の悪連動を目論んでいるのだ。
 生活保護改悪反対のために、次の五点を要求し主張しなければならない。(1)最賃時給計算で、法定労働時間百七十三・八時間ではなく、所定内実労働時間百五十時間を用いよ! (2)沖縄の低い最賃額と公課負担率を適用した可処分所得係数0・859の適用は是正せよ! (3)生活保護基準算定では都道府県ごとの人口加重平均を採用するな! (4)住宅扶助の実績値を採用せよ! (5)勤労控除を中央最賃審議会は目安で考慮せよ!

  ▼6章―3節 最賃闘争の地区共闘、全国運動としての発展を

 例年六月末中央最賃審への厚生労働大臣の諮問から、審議が開始され七月末に「目安」提示がなされる。そして地方最賃審への地方労働局長からの諮問を受けて、例年八月審議、八月末「答申」という日程となっている。これに合わせた具体的取り組みとして、地方最賃審の傍聴闘争、意見書・異議申出書の提出、審議会意見表明、そして審議会非公開を原則公開にさせよう。そのために審議会要求署名を集め、最賃割れ企業への抗議行動、街頭宣伝を行なおう。
 地区合同労組を拠点にして地域共闘でたたかおう。左派労働運動の最先頭で、全国最賃闘争の発展をかちとり、労働法制改悪阻止、戦争法制粉砕・改憲阻止にむけて、安倍政権打倒をともにたたかおう!

 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.