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   4・14高浜原発運転差し止め仮処分決定

       
電力会社と政府は原発再稼働を今すぐ断念せよ



 高浜原発三・四号機の運転差し止めを住民らが求めた仮処分訴訟において、福井地裁・樋口英明裁判長は四月十四日、「三号機及び四号機の原子炉を運転してはならない」とする仮処分を決定した。この決定はただちに効力を発揮し、それが覆されるまでは、関西電力は停止中の高浜原発三・四号機を再稼動させることはできない。今年十一月中の再稼動を計画してきた関西電力、そして原発推進内閣としての安倍政権に、この決定は大きな打撃を与えている。

  ●1章 仮処分決定の内容について

 今回の福井地裁による高浜原発運転差し止め仮処分決定は、大飯原発三・四号機の運転差し止めを命じた昨年五月の福井地裁判決に次ぐ画期的な決定である。と同時に、今回の仮処分決定は原発の「安全性」をめぐる議論について、より踏み込んで具体的な指摘を行っている部分もある。
 福井地裁が運転差し止めを命じた根拠は以下の点にある。
 第一に、基準地震動の問題性である。基準地震動とは原発に到来すると想定される最大の地震の揺れのことであり、原発の耐震設計の基礎となる。関西電力が採用している基準地震動は七百ガルだが、福井地裁はそれを超える地震動が過去十年のうちに四つの原発に五回にわたって到来しているという現実を指摘すると同時に、基準地震動の策定方法自体の問題性をも指摘して、「基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っている」と断じている。
 第二に、使用済み核燃料の保管の困難性である。福井地裁は、使用済み核燃料は日本の存続に関わるほどの被害を及ぼしうるにもかかわらず、それは「格納容器のような堅固な施設によって閉じ込められていない」と現状を指摘する。そして、「国民の安全が何よりも優先されるべきであるという見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ない」と関西電力の対応を批判している。
 第三に、そして今回の決定に関わる最も重要な点としての、新規制基準そのもの問題性である。福井地裁は、高浜原発の脆弱性とそれを解消するための措置について言及しつつ、原子力規制委員会による新規制基準そのものについて「合理性を欠く」とはっきりと言い切っている。それゆえ、「その新規制基準に本件原発が適合するか否かについて判断するまでもなく住民らが人格権を侵害される具体的危険性すなわち被保全債権の存在が認められる」として、高浜原発三・四号機の運転差し止めを命じる仮処分決定を下したのである。新規制基準そのものの不合理性を指摘する今回の福井地裁の論理からすれば、当然のことながら、日本のすべての原発は現状では運転してはならないということになる。

  ●2章 福井地裁決定の意義と鹿児島地裁の反動的決定

 かつて、伊方原発訴訟において最高裁は、「原子炉の安全性審査に関しては、将来の予測も含む専門技術的な総合的判断を要すること、さらに、これを制度的に裏付けるものとして、原子力委員会の意見の尊重が法定されていることから、これについて裁判所が独自の立場から判断を下すことは法の趣旨に反し、不適切である」という見解を表明した(一九九二年十月)。それ以降、ほとんどすべての原発訴訟において、各裁判所はこの最高裁の見解を踏襲し、司法としての独自の判断を放棄し、それによって原発を維持するメカニズムのなかに自らを組み込んできた。
 それに対して、福井地裁は自ら新規制基準そのものを検討し、「新規制基準は合理性を欠く」という司法としての独自の判断を下し、高浜原発を動かしてはならないという結論を導き出したのである。その意味で、画期的で勇気ある決定と言えよう。
 今回の福井地裁の仮処分決定はまた、福島原発事故がもたらしている深刻な被害の現実を踏まえたものとして導き出されている。福井地裁は、関西電力による「裁判所の各認定が……抽象的な危険性の認定にとどまっている」という主張に対して、「当裁判所の認定はその多くが福島原発事故おいて実際に生じた事実ないしは生じるおそれがあった事実に基礎を置く」としてはっきりと反駁している。
 このような福井地裁の決定を引き出した根底的な要因は、原発のない社会、二度と原発事故の被害にさらされることのない社会への福島の人々をはじめとする全国の労働者人民の希求とその実現に向けた闘いにある。そしてこの訴訟においては、高浜原発をはじめ若狭の原発群の廃炉をめざして連綿と取り組まれてきた地元若狭の人々の粘り強い闘いがあった。福井地裁の決定は、そのような労働者人民の声に樋口英明裁判長をはじめとする裁判官が真摯に向き合おうとした結果とも言える。3・11以降の無数の労働者人民の立ち上がりが司法権力をも動かしたのである。
 これに対して、川内原発一・二号機の運転差し止め仮処分の申し立てを却下した四月二十二日の鹿児島地裁・前田郁勝哉裁判長による決定は、まさに反動的決定であった。
 鹿児島地裁の決定はまず、「裁判所の審理・判断は……新規制基準への適合性判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである」とする。そして、新規制基準については「専門的知見を有する原子力規制委員会が相当期間・多回数にわたる審議を行うなどして定められたもの」だとして、その審議の中身をまったく検討しないまま、だから「その内容に不合理な点は認められない」と結論する。そのうえで、川内原発は新規制基準による適合性判断に合格しているので「本件仮処分命令の申立てには理由がない」と切り捨てるのである。まったく無内容であり、司法としての独自の判断を放棄した、初めから「結論ありき」の決定と言わざるを得ない(鹿児島地裁の決定にはさらに、カルデラ火山の破局的噴火の活動可能性や避難計画についての事実誤認や過小評価があるがここではいったん置いておく)。われわれはこのような反動的決定を徹底的に弾劾しなければならない。

  ●3章 原発再稼働阻止―安倍政権打倒の闘いへ

 福井地裁による高浜原発運転差し止め仮処分決定を覆し、何としても高浜原発を再稼働させようとする動きはすでに始まっている。
 関西電力は四月十七日には仮処分決定の取り消しを求める保全異議を福井地裁に申し立てた。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「十分に私どもの取り組みが理解されていない点がある」などと不満を述べ、今後も「粛々と」審査を進めていくとし、原発推進機関としての原子力規制委の役割を忠実に果たそうとしている。さらに、安倍首相は「世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発について、その判断を尊重し、再稼働を進めていくのが政府の一貫した方針だ」として、あくまで原発再稼働へと突き進もうとしている。また、産経や読売などの右派メディアは福井地裁決定へのバッシングを強めている。
 このような反動的な攻撃を粉砕し、原発再稼働を阻止するための闘いをさらに強めていかねばならない。福井地裁による仮処分決定をも活用しながら、関西電力をはじめ電力独占資本をさらに追い詰め、原発再稼働を推進する安倍政権の打倒に向けた闘いの発展を勝ちとろう。

 

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