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■川内・高浜原発再稼働阻止! すべての原発を廃炉へ 敗戦七十年の節目をむかえる今年は、「戦争をする国」づくりへと突き進む安倍政権との全面対決の年である。原発再稼働阻止、沖縄辺野古新基地建設阻止、安保関連法案粉砕の闘いを三大決戦としてすえきり、安倍政権のあらゆる反動攻撃を粉砕して、安倍右翼反動政権を打倒していかなければならない。 福島第一原発事故からまもなく四年目を迎える。いまだ十二万人を超える人々が避難生活を余儀なくされている。過酷な生活を強いられている避難住民に心を寄せ、安倍―自公政権に対する怒りもあらたに再稼働絶対阻止の闘いに決起しなければならない。 昨年末の総選挙で権力を維持した安倍―自公政権。選挙前、安倍は今回の解散を経済政策を争点とする「アベノミクス解散」と命名。「勝利」が決るやいなや「(政権公約で)示している政策についてご理解をいただいた」「憲法改正は自民党にとっての悲願。憲法改正への理解が高まるように努力したい」と言い放った。改憲にむけた動きを加速させ、集団的自衛権行使にむけた安保関連法案の提出へと一挙に突き進もうというのだ。年明けには沖縄の四選挙区で全敗したにもかかわらず辺野古新基地建設の工事を再開させた。そして、世論調査で国民の約六割が反対している原発再稼働についても審査や地元の手続きが進んだ原発から再稼働させていくことをあらためて表明した。早速、選挙明け直後の一月十七日、原子力規制委員会は、関西電力高浜原発三、四号機について新基準を満たしたとして審査書案を了承した。九州電力川内原発一、二号機に続き今春にも再稼働させようというのである。今春、原発再稼働を阻止しようと立ち上がる全国の原発立地の地域住民を先頭に、原発再稼働阻止! 全原発を廃炉へ! を合言葉に川内原発、高浜原発の再稼働阻止闘争に全国から結集しよう。四月、川内原発再稼働を現地実力闘争で阻止しよう。 ●1章 原発再稼働に突き進む安倍政権 一月一日発行の電気新聞は、「二〇一五年を現状を打破し成果を出す年としたい」「早期再稼働へ業界を挙げて全力で取り組む」という電事連・八木会長(関西電力社長)へのインタビュー記事を掲載し、川内、高浜、伊方はもとより浜岡までも動かし、今年を再稼働元年にしようと強気の姿勢を明らかにした。 安倍政権は、反原発世論が盛り上がる中、三年前の衆議院選においては「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造を目指す」ことを公約として掲げていた。それが一昨年の参議院選においては「原子力に依存しない」という文字が消え、「今後三年間、再生可能エネルギーの最大限の導入促進を行い」「これまでのエネルギー政策をゼロベースで見直し、『電力システム改革』(広域系統運用の拡大・小売参入の全面自由化・発送電分離)を断行します」に変更した。そして、再稼働が見通せる段階に入った昨年の衆議院選においては「原子力については、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源との位置付けの下、活用してまいります」と原発を「ベースロード電源」として全面復活させることを明言したのである。そして「原発依存度については、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化により、可能な限り低減させます」と原発再稼働に反対の世論をにらんであたかも原発を削減していくかのようなポーズをしめした。しかし「可能なかぎり低減させる」とは「可能でなければ低減させない」と同義であり、そもそも端から原発の削減など考えていない安倍の選挙選を乗りきるための方便であることは明らかであった。 昨年四月に閣議決定した「エネルギー基本計画」において「核燃料サイクルの維持」を表明したのはなにがなんでも原発を維持する決意のという現われであった。そして、さらに安倍は原発の建て替え、新設をも狙っているのである。一月十一日付の朝日新聞は、九州電力は十月に運転開始から四十年を迎える玄海原発一号機(佐賀県)を廃炉にする方針を固め、同様に老朽化した原発計六基を抱える関西、中国、日本原子力発電の電力三社も、関電高浜原発一、二号機を除く四基について、廃炉にする方向で地元自治体との調整に入る、各社とも年度内に正式決定する見通しとの報道を行なった。廃炉を検討している原発は、どれも出力五十万キロワット程度で通常の原発の半分程度の大きさである。原発を減らすかのような姿勢を示して比較的新しい原発の再稼働を納得してもらうというものだ。経産省と電力業界は原発再稼働と並行して、原発の建て替えや新設をも見据えた新たな動きをみせているのである。 さらに、九州電力は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の下で、太陽光発電のポテンシャルが予想以上に高まったことから、昨年九月中旬に「買い取り中断」を一方的に発表(その後「接続申し込みへの回答保留」を一部解除)。理由は、再生可能エネルギーが送電線に殺到すると、周波数が乱れ、停電を引き起こす恐れがあるためとしているが、原発を維持するための再生可能エネルギー潰し以外のなにものでもないことは明らかである。安倍政権と経産省、電力各社は、今年を再稼働元年としてなにがなんでも再稼働へと踏み込もうとしている。川内原発を突破口に高浜原発の再稼働をも狙っている。川内原発の再稼働を阻止することで全原発の廃炉にむけた突破口を切り拓こう。 ●2章 「川内方式」粉砕!欺瞞に満ちた「適合性審査」 昨年九月、九州電力川内原発一、二号機をめぐる原子力規制委員会の主要な審査が終わり、規制委は、新規制基準を満たすとする審査書を正式に決め、設計変更の許可を九電に出した。一方で、この日は審査書案に対して寄せられた約一万八千件のパブリックコメントの概要も公表された。そこには巨大噴火や航空機の衝突をめぐるリスクなどのほか、自治体がつくる住民避難計画についての指摘も多くなされていたが、避難計画や原発の是非などは意見募集の対象外とされた。審査書案に対するさまざまな指摘は、たんなる文言や表現の修正にとどめられ、全国から寄せられた公募意見は完全に無視された。「審査合格」の体裁を整えるためにのみ利用されたのである。そして、安倍政権は、川内原発の再稼働にむけた手続きを「ひな型」として、「川内方式」として確立しようとしている。この「川内方式」なるものを徹底批判し、続く再稼働審査を粉砕していかなければならない。 第一は、地震審査そのものが不十分であり、審査のやり直しを求めざるをえないような代物であるということだ。そもそも新規制基準なるものは、規制委員会委員長である田中自らが語るように「安全」を保障したものではない。そのうえ地震審査においてデタラメが行なわれているのである。「原発震災」を早くから警告してきた地震学者の石橋克彦・神戸大学名誉教授は、審査書は無効だと訴える。原発の安全上重要な施設は、基準地震動に対して無事であることが求められている。そのため、「内陸地殻内地震」「プレート間地震」「海洋プレート内地震」について、敷地に大きな影響を与えると予想される地震を複数選び、それらによる地震動を検討することになっている。しかし九電は、活断層による内陸地殻内地震しか検討していないのである。プレート間地震と海洋プレート内地震については、揺れは震度五弱に達せず、原発に大きな影響を与えないとして無視しているのである。九電は、内陸地殻内地震による基準地震動については、原発から少し離れた活断層で起こるM7・2~7・5の地震を想定して、最大加速度五百四十ガル(加速度の単位)としている。これに対して審査書は、川内原発の基準地震動は六百二十ガルに引き上げたから問題ないというのだ。二〇〇七年新潟県中越沖地震(M6・8)では東京電力柏崎刈羽原発の一号機の岩盤で一六九九ガルを記録している。地震の想定や地震動の計算の不確かさを考えれば、六百二十ガルに引き上げたといっても何の保障もないばかりか、想定される複数の地震動を選んで検討するという審査手続きそのものも無視した「耐震偽装」ともいえる代物であり、こうしたことが川内原発の「適合性審査」としてまかり通っているのである。 第二は、東日本大震災をふまえ自然災害への対応として新規制基準に火山対策が盛り込まれたが、これにも大きな問題がある。二〇〇三年に火山噴火予知連絡会は「概ね過去一万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義し直し、 活火山の数は現在百十となっている。そして、今回の大震災を引き金として全国の火山が活発化していることも確認されている。こうした中、今回、九州電力は規制委が策定した「原子力発電所の火山影響評価ガイド」(火山ガイド)に従い、川内原発から百六十キロ圏内にある火山を調べ、噴火の可能性や対策を検討し、桜島の噴火で、敷地に火山灰が十五センチメートル積もっても対応可能とした。一方、「破局的噴火」については、原発の運用期間中に「発生する可能性は十分低い」。念のために、地殻変動や地震活動をモニタリングし、破局的噴火の可能性がある場合は、原子炉を止め、核燃料を搬出するなどで対応するとしている。規制委はこうした九州電力の主張を鵜呑みにし、川内原発一、二号機は新規制基準に適合すると判断したのだ。 川内原発の周辺には、数万年に一度、カルデラ噴火と呼ばれる超巨大噴火を起こす地帯が複数存在する。約三万年前の姶良(あいら)カルデラの噴火では、南九州全域が火砕流にのみ込まれている。規制委は、昨年八月から火山学者らで検討チームを作り、モニタリングの方法などについて議論を行なってきたが、火山学者たちからは異論が次々と出されている。東京大学地震研究所の中田節也教授は、「巨大噴火の時期や規模を予測することは現在の火山学では極めて困難」と述べている。 さらに、モニタリングの主体が電力会社とされていることにも、複数の火山学者から疑問の声があがっている。「何かの前兆があって電力会社が原発を止めても、十年、二十年たっても噴火が起こらないことも考えられる。その場合、原発を止めたことによる損失を株主にどう説明するのか。何が巨大噴火の前兆かという明確な基準もない中で、原発を止める判断が本当にできるのか」(石原和弘・京都大学名誉教授)と。そして、委員長の田中は「巨大噴火はここ三十年、四十年の間に起こるものではない。天災がいつ起きるか分からないので社会的活動をやめてください、という考え方では仕事はできない」と本音をもらしている。ここ三十、四十年は巨大噴火は起こりそうにもないので大丈夫だろうというのである。これが「審査」かと思うと開いた口が塞がらない。巨大地震は起こらないだろう。巨大噴火は、数万年に一度だから大丈夫だと。しかし、世界最大級の地震がおこり、巨大津波が福島第一原発を襲ってきたのではなかったか。九電が「破局的噴火が発生する可能性は十分に低い」と何を根拠に言っているのかまったく不明であるが、これを鵜呑みにする規制委員会の「適合性審査」のデタラメさも明らかである。今回の基準によれば、原発十七カ所のすべてが再評価の対象となり、多い所では十以上の火山を圏内に擁しているのだ。いかにも規制基準を厳しくしたかのように装うために導入された火山噴火の危険性の審査もものの見事に骨抜きにされており、再稼働ありきの「審査」の実態が明らかとなっているのである。 第三には、全国的に共通して大問題となっている原発立地自治体とはどこであるのかというもんだいであり、原発から三十キロ圏とされる避難計画の問題である。そもそも避難計画の策定は審査基準にもなっておらず、事故がおこれば地元の自治体にまかせるという無責任きわまるものである。昨年末行なわれた共同通信によるアンケートでは、原発再稼働の地元同意手続きについて、対象を九州電力川内原発の立地自治体の鹿児島県と薩摩川内市に限定した「川内方式」を「妥当」としたのは、全国の原発の半径三十キロ圏に入る百六十自治体のうち、約二割の三十五自治体にとどまることが分かった。川内方式について「妥当」は十六自治体、「どちらかといえば妥当」が十九自治体に対し、「妥当でない」が三十三自治体、「どちらかといえば妥当でない」は二十二自治体だった。この批判的な計五十五自治体は全て立地以外だった。このアンケートからも明らかなように「川内方式」への反発は極めて強い。当たり前といえば当たり前の話であり、「同意」に関与できるわけでもないのに事故を想定して避難計画だけを押し付けられているのであり、今後ますます全国的問題に発展していくことは目に見えてあきらかである。しかし、安倍政権は他の原発の手続きも「川内原発の対応が基本的」(菅義偉官房長官)としており、変更するつもりは毛頭ない。 再稼働を急ぎ既成事実化していくためにこの「川内方式」によって正面突破しようというのである。そうであればこそ、関係自治体、三十キロ圏住民、さらにはその周辺もふくむ地域住民の広範な反対世論をさらに高めていく必要があるのだ。昨年五月の地元アンケート(南日本新聞)でも、「川内方式」に賛成する人はたった7・4%にすぎず、いくら地元薩摩川内市議会と市長、鹿児島県議会と知事が承認しようとも被害をうける可能性のある住民みずからが圧倒的に反対している現実は、決定的である。薩摩川内市の場合、「原発のおこぼれ」といっても、年間たった総生産の1.6%程度。薩摩川内市には九州新幹線の駅があるが、新幹線の開通後、原発関係者も続々と脱出しているという。原発が危険であることがあきらかとなり熊本あたりから通勤しているというのだ。原発があって街に活気とお金が落ちる構造にはないのである。原発利権のある商工会議所や一部の政治家だけが恩恵をうけているのだ。事実、川内原発の安全対策の調査を担当し、再稼働に同意した鹿児島県議二人や親族の経営する建設会社計四社が、福島第一原発事故後の三年間で、川内原発や九電の関連工事を計二十六件、二億九千万円分受注し、この二県議は会社から報酬を受けていたことがあきらかとなった。ともに自民党の県議である。 次に原発周辺三十キロ圏の避難計画の問題である。川内原発の三十キロ圏の住民は、およそ二十一万五千人。九電は、事故がおこった場合「協力・援助する」とまったくの他人ごとのように口先だけの対応をおこなっている。また、鹿児島県知事の伊藤は、「十キロまでの計画はつくるが、三十キロまでの避難計画は現実的でなく、作っても機能しない」と完全に開き直っている。鹿児島県では病院・社会福祉施設の避難対策は、対象施設が七カ所ある五キロ圏内では策定済み。また、しかし、十キロから三十キロに範囲を広げると、対象施設は二百二十三カ所に急増する。このため、受け入れ先となる病院・施設の確保など解決困難な問題が予測され、避難は絶対に不可能なのだ。同様のことが全国の原発周辺三十キロ圏で起こるのだ。薩摩川内市をはるか上回る規模の諸問題が生まれることも想定される原発立地自治体も多いのだ。 ところでこの三十キロ圏そのものの設定がおかしいのだ。福島第一原発の事故が起こったとき、米政府は、自国民の避難を半径八十キロと設定した。首都圏でも放射線量の高い地点がいくつもあることが確認されている。そして、昨年出された大飯原発運転差し止め請求訴訟の判決では、二百五十キロ圏内に住む住民に運転禁止の訴えを認めている。これは、二百五十キロという広い範囲の住民に「人格権を侵害される具体的な危険がある」ということを示しているのであり、そうであるならば避難範囲も最低二百五十キロ圏と設定されなければならないのだ。そして、福島第一原発の事故による避難にともない六十人からの尊い命が奪われている。寝たきりの老人をはじめとする要援護者や子どもたちをどう避難させるのか、避難先はどうなっているのか。避難経路と避難時間は。薩摩川内市の担当課長は、「地域の中で助け合ってもらわないとしょうがない」というだけに止まっている。これが避難計画なるものの実態である。福島の悲劇を繰り返すことは絶対に許されない。 そもそも「適合性審査」にしろ「避難計画」にしろすべて原発を再稼働させることを前提にしたものである。原発を無くせばまったく必要のないものである。全国の反原発を闘う勢力は、「適合性審査」を一層厳しくしろ、「避難計画」をより実効性あるものにせよ、と要求しているわけではない。すべての原発を即時に廃炉にし、原発と原発事故による一切の危険性を取り除けと要求しているのである。全国の原発再稼働のために定式化されようとしている「川内方式」を徹底して批判し、規制委員会による「適合性審査」そのものを破綻へと追い込むことが求められているのだ。電力各社、原子力規制委員会、立地自治体に対する抗議、圧力を強め川内原発の再稼働を断念へと追い込もう。 ●3章 原発事故被害者の完全救済・健康被害の防止を 東京オリンピックの招致に際して安倍が述べた「アンダー・コントロール」の発言以降、意図的とも思えるほどテレビ・新聞における福島原発事故にまつわる報道や記事は、著しく減少した。しかし、福島第一原発では今何がおこっているのか。避難住民の生活は、一体どうなっているのか。福島第一原発の現状と避難住民の声にしっかりと立脚して原発再稼働阻止の闘いを強化していかなければならならない。 福島第一原発では、溶けた燃料が落ちている建屋地下に地下水が流れ込むことで、高濃度汚染水が増えつづけている。タンクには一月中旬現在で汚染水が二十八万トンあり、タンクはどんどと増え、タンクからの汚染水漏れ事故もおきている。漏れれば当然にも海の汚染を拡大させる。東電は一昨年九月、今年度内の汚染水処理完了を約束したが、鳴り物入りで導入された多核種除去設備ALPS(アルプス)は一昨年春の稼働後からトラブルが続き、処理が進んでいない。昨秋には増設したようだが、それでも年度内の処理終了は困難となっているのだ。そこで東電は昨秋、汚染の多くを占めるストロンチウムだけを除去する装置を投入し、これも「処理済み」として扱うことにしてつじつまを合わせようとしている。しかし、タンク内の高濃度汚染水がなくなっても、低濃度汚染水は残り、新たに発生する高濃度汚染水の処理も引き続き必要になる。大量の汚染水の処理すらできていないのが現状なのだ。また、地下水の浸入を防ぐ目的で作業がおこなわれている凍土壁もうまく凍らないなどの技術的トラブルに見舞われ、増え続ける汚染水対策は見通しのつかない状況に叩きこまれているのである。また、福島第一、第二の現場で先月、二名の労働者が死亡するという事故も起こっている。ピンはねが横行し、放射線管理もずさんなまま被曝労働が強制され、現場の安全管理も不十分なまま人身事故も続いているのである。 震災関連死は、すでに千八百人を超えている。四年にわたる避難生活そして展望のない生活が人々の健康と生命を日々奪い続けている。また、福島第一原発事故の被曝による子どもの甲状腺への影響を調べている福島県の検査で、受診した約三十万人のうち百十二人が甲状腺がんやその疑いがあると判定されたことが判明した。チェルノブイリの経験から事故発生から四年を経過したころから甲状腺ガンが多発し始めたことを考えるならば、今後この数字は、増えることが十分に予測される。しかし、県はここでも「被曝の影響とは考えにくい」としている。今回の調査結果を見るならば疑いも含めると十万人当たり三十人以上の割合でがんが見つかった計算になる。事故前から実施されている宮城県などのがん登録では、十代後半の甲状腺がんの発生率十万人当たり一・七人であり、これに比べると今回の福島県の三十人以上はかなり高い。しかし、県は「単純に比較できない」とあくまでも原発事故との因果関係を否定しようとしているのである。県のこうした態度は、本当に子どもたちの甲状腺がんを気遣い、心配し治療を行なう気があるのか、疑わざるを得ない状況である。子どもを抱える多くの親たちが県や甲状腺がん検査について強い不信と疑問をもっているのも当然といわざるを得ない。今は異状がなかったとしても今後いつ発病するかもしれない不安の中で避難生活を続けざるを得ない過酷な現実が今も続いているのである。 さらにこうした過酷な避難生活に追い討ちをかけるように、国は昨年段階から避難地域の解除を開始した。あたらな被曝の強制のはじまりである。福島第一原発事故の損害賠償の指針を決める国の原子力損害賠償紛争審査会が先月二十八日に開かれ、昨年、避難指示が初めて解除された福島県田村市の都路(みやこじ)地区で慰謝料の打ち切りがこの三月末に迫っていることについて、能見善久会長は審査会後、打ち切りは妥当との考えを示した。 原賠審は二〇一三年十二月の指針で、原発事故の避難者が東電から受けている慰謝料(一人月十万円)について、「避難指示解除後一年を目安」に打ち切ると決めている。これは指針に従ったものてあるが、避難地域の解除、慰謝料の打ち切りという住民の見殺しが本格的に始まったということである。 福島では、原発事故から四年経った現在も、避難地域以外にも避難地域を上回る線量の高い地点(ホットスポット)が多数存在する。避難地域における除染は、全国的にも大きく報道されたが、手抜き作業がおこなわれていたり、一回除染作業を行なっても再び線量が戻ったり、とても帰還できるような状況になっていない。そのために多くの住民が避難解除の中止を求めて福島復興局を訪れている。年間二十ミリシーベルトという通常の二十倍の危険きわまりない値で解除が強行され、場所によってはそれ以上の値でも解除が行なわれようとしているのである。今も飯館村に近い場所では地表が毎時十マイクロシーベルトを超えるところもあるという。指定の解除が行なわれれば、賠償は打ち切られ避難している住民はさらなる被曝を覚悟で自宅に戻るか自力で避難を続けるかといった選択を迫られるのである。 こうした福島住民の切り捨て、新たな被曝の強制を許してはならない。福島をはじめとした全国に避難する原発被害住民の切り捨てを許さず被害者全員の完全救済、健康被害の防止を政府・東電に行なわせていかなければならないのである。収束のメドもつかない福島第一原発の事故、帰還のメドもつかない十二万人を超える福島避難住民の現実。これこそが原発再稼働阻止、全原発を廃炉へと追い詰めていく原点である。 ●4章 再稼働阻止―安倍政権打倒!差し迫る再稼働といかに闘うか 昨年十一月七日、鹿児島県知事・伊藤は、薩摩川内市議会での再稼働同意を受けて、県として川内原発の再稼働を容認することを明らかにした。これにより川内原発を突破口に高浜原発も今春にも再稼働させられようとする決戦的段階へと入った。差し迫る再稼働といかに闘うか。あらゆる闘いを準備し、再稼働阻止闘争の高揚をかちとらなければならない。 第一には、現地闘争を軸に実力闘争で闘うことである。国民の六割が再稼働に反対しているにもかかわらず、安倍が強硬に再稼働を推し進めるのであれば、これを実力で阻止するしかない。そうした権利を人民はもっている。総選挙において沖縄全選挙区で惨敗したにもかかわらず辺野古への新基地建設を推し進める安倍に対して沖縄人民を先頭に闘う勢力が実力闘争に決起している。これはまったく正当な権利であり、こうした闘いが再稼働阻止決戦にもとめられているのだ。昨年四月、台湾では第四原発をめぐって建設停止を求める数万人が台北駅前の幹線道路に座り込んで交通を遮断させ、工事凍結へと追い込んだ。人民の実力決起こそが再稼働を止めることができるのだ。原発再稼働阻止―安倍政権打倒をかかげ川内現地闘争に総決起しよう。 第二には、経産省前テントの撤去攻撃と闘うことである。川内原発でも原発そばの久美崎浜に昨年、テントが建てられた。テントの存在は、人民の原発反対の意思を可視化し、闘う人民の結集と連帯の場として実力闘争の戦端を切り拓くものである。一昨年三月、国は、経産省前テントの撤去と土地明渡の請求訴訟を起こした。さらにテントの二名を「被告」とし、あろうことか一千万円の損害金なるものも請求してきたのだ。そして、昨年十二月、再稼働を前に裁判所は、弁論に先立つ「進行協議」の場で突如として「結審」して裁判の打ち切りを強行してきたのである。明らかに再稼働を前にテントを撤去し、闘争拠点の破壊を狙ったものであり絶対に許すことはできない。経産省前テントは、首都の権力中枢にあって千二百日を超え全国の反原発―再稼働阻止の先頭に立っている。絶対に撤去攻撃を阻止しよう。今後、川内原発の再稼働が差し迫る中、久美崎浜のテント撤去も策動されてくるであろう。九電本社前テントへの公安、「在特会」一体となった妨害活動がエスカレートしてくることも予想される。政府、原発推進勢力のいかなる妨害、テント破壊策動も許さず闘いぬこう。 第三は、電力各社、規制委員会、立地自治体に対する闘いを強化することである。特に、三十キロ圏の避難計画問題が今後、ますます原発立地自治体と周辺地域で大きな問題として発展してくる。避難計画の非現実性や、国は「万が一の場合、責任を取る」と口先だけの対応に終始している現実を福島の現実から徹底して暴露・批判し、圧倒的な住民の組織化を促進しなければならない。 第四には、全国各地で起こっている原発再稼働の差し止めをはじめとする様々な裁判闘争に勝利することである。昨年出された大飯判決を徹底して活用し、原発再稼働阻止、新設許可の取り消しなどあらゆる裁判闘争への支援を強化しよう。 そして、何よりも沖縄辺野古新基地建設阻止、秘密保護法撤廃の闘い、安保関連法案反対など安倍政権と闘う全国の人民が相互に連携を深め、安倍政権打倒にむけた隊列を強化することである。秘密保護法の撤廃闘争との連携強化は反原発闘争にとっても極めて重要である。福島第一原発事故では、メルトダウンの事実もSPEEDI(緊急迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報も汚染水の漏洩なども、すべて市民・住民の生命・安全に関わる重大な事実が隠蔽されてきた。第一原発事故では、SPEEDIの情報が迅速かつ適切に公開されなかったために線量のきわめて高い場所に避難していたことが事後にあきらかとなり、住民の健康を著しく害したことが大きな問題となった。これまでも使用済み核燃料の「再処理」や「もんじゅ」などが原爆の材料となるプルトニウムを扱うということで関連情報も「安全保障」の名のもとに規制が厳しくおこなわれてきた。さらに原発は「テロ」の対象であり、原発に関する情報の多くが「テロ防止」の名のもとに広範に「秘密」とされる可能性が極めて高いのだ。また、原発輸出に関することも「外交」上の秘密とされていく可能性もある。国は原発のあらゆる情報を秘密扱いにし、反原発運動の息の根を止めようとしている。 全有権者の四分の一程度の得票で国会の三分の二の議席を独占した安倍―自公政権。選挙を権力闘争、権力の維持のみに利用した悪辣な自民党と公明党は打倒の対象でしかない。あまりに露骨なこうした安倍の政治手法は議会そのものを空洞化させ、ますます国民の意思と乖離し、議会内の「圧倒的」勢力を保持しているにもかかわらず、必ずや崩壊せざるを得ない。原発再稼働、辺野古新基地建設、秘密保護法、安保関連法案、そして改憲という安倍のかかげるあらゆる政策に人民の過半数が反対の意思を表明しているのだ。川内原発再稼働阻止を突破口に安倍政権打倒の突破口を切り拓こう。左派の総結集―闘う人民の総結集で安倍―自公政権打倒をかちとろう。敗戦七十年目の今年、安倍右翼反動政権打倒をかちとり日帝の改憲―戦争策動の息の根を止めよう。全国の人民は、川内原発再稼働阻止に総力で決起しよう。 |
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