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■安倍の労働規制緩和を阻止しよう 解雇自由化、長時間労働を許すな! ●(1)成長戦略の本質は搾取と収奪の強化だ 全世界的な資本主義・帝国主義の危機の進行の中で、日本帝国主義も深刻な危機にあえいでいる。バブル崩壊後の「失われた二十年」によって、強い競争力を確保した自動車や家電をはじめとした製造業は、韓国・中国などに追い上げられ危機に追い込まれている。国際的独占資本の主戦場になっている金融市場における競争においても、米帝の後塵を拝している。 この過程でおこなわれた小泉政権による「自己責任と競争原理の強化」を掲げた構造改革は、貧困を拡大しワーキングプア、ロスゼェネ世代の中年化による貧困層の世代的定着と継続する若者の失業の拡大、過労死、ブラック企業などの様々な社会問題を引き起こしている。二十年近く続く賃金の低下、非正規雇用労働者が増大し全体の四割近くを占めるまでになった。他方で、大資本の内部留保は大幅に増加した。 帝国主義間の対立抗争の激化の中で日本帝国主義がおこなったのは、雇用破壊、生活破壊、社会福祉の切り捨てなどの伝統的な労働者、民衆に対する搾取、収奪の強化であり、これにより自己資本を拡大し危機を乗り切るという帝国主義の使い古した手法である。それは日本帝国主義の戦後復興を支え、世界第二位の経済大国に上り詰めるまでに大資本に利益をもたらした「均質の教育による良質で大量の労働力の創出、企業内組合、年功序列賃金、終身雇用制による労使関係の安定と、生産性向上への労働者の全人格的で効率的な組み込み」という「日本的経営」と、それを支えた「戦後民主主義体制」「一億総中流化社会幻想」などによる安定した戦後社会・政治体制を空洞化させた。社会不安、将来不安が広がり閉塞感が社会を覆う事態をもたらした。 しかし日帝ブルジョアジーのこのような社会状況に対する総括は、「小泉構造改革の挫折が原因」である。東日本大震災に際して「復旧ではなく復興」として、火事場泥棒的に最賃特区などを主張し、特区の導入によって様々な領域での規制緩和を目論んだことからもそれは明らかである。 巨大与党となった安倍政権は、日帝ブルジョアジーの意を受けて全面的な規制緩和政策を開始した。安倍首相は「強い日本」を掲げ、「力強い日本経済をたてなおす」、そのために「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と宣言している。その具体化である第三の矢の「民間投資を喚起する成長戦略」もまた、中心は労働法制の改悪、社会保障・福祉制度労働者保護制度の改悪による搾取、収奪の強化以外の何物でもない。 この搾取、収奪を覆い隠すために安倍首相が主張するのが、「企業の利益が確保されなければ雇用は拡大せず労働者の賃金、雇用は改善されない」である。この主張は新自由主義者が好んで主張する「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)する」である。このトリクルダウンが何の根拠もない出鱈目であることは、全世界で暴露されている。新自由主義によって世界で共通してもたらされているのは、利益が労働者の賃金の向上へと分配され、それが消費に回り経済成長が実現されていくという好循環ではない。利益は国際的な競争の激化にむけて資本に内部留保されたり、金融市場に投入されたりして、労働者に還元されていない。それが1%の富裕層と99%の大多数の労働者、民衆への分裂、貧困の拡大へと結果している。日本における小泉構造改革による貧困の拡大、アメリカでもレーガノミクスの破たんによる財政赤字と格差の拡大として、トリクルダウンの破たんは明らかである。 それでも安倍首相は恥知らずにも「企業が儲かれば景気が良くなり、労働者の賃金があがる」といいながら、復興特別法人税廃止、法人税税率軽減、消費税をはじめ大企業優遇の政策を打ちだしている。安倍首相の厚顔無恥なデマとペテンを許してはならない。 ●(2)強権的手法で突進する規制緩和を許すな 安倍首相は「世界で企業が一番、活動しやすい国にする」、そのためには「聖域なき構造改革をすすめ……企業活動を妨げる障害を一つ一つ解消する」ことが必要であるとのべている。とりわけ医療、教育、農業、雇用における規制を岩盤規制と規定している。これらの規制は個々的には様々な問題を抱えつつも、セフティーネットとしての役割を担ってきた。安倍首相はこれらを、「私のドリルからは無傷でいられない」として、戦略特区を先行的に導入しながら打ち砕いていくことを宣言している。 その政策遂行過程は徹底したトップダウンである。第一に、内閣府に設置された「経済財政諮問会議」が経済財政運営の司令塔として「基本設計」をおこない、第二に、内閣官房に日本経済再生の司令塔として「日本経済再生本部」を設置し、第三に、その本部の下に産業競争力会議がおかれ、「人材力強化や雇用制度改革」など七つのテーマ別会合、分科会、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)が設置され労働規制改革へ関与し、第四に内閣府の審議会の一つとして設置された「規制改革会議」が雇用WGを設置し労働規制改革全般への提言をおこなうという形で進められている。 この四つの会議は、竹中平蔵、大田弘子、長谷川閑史竹田薬品会長、新浪剛史ローソン社長など、規制緩和論者で知られた面々が、民間議員、委員として参加し、経産省の官僚がその実務を取り仕切るという形で運営されている。 労働規制をめぐる問題であるにもかかわらず、労働政策と労働立法の担当官庁である厚労省はわき役とされている。ILOが労働政策決定の根本原理とする政労使の三者構成による審議なども全く無視されている。そして矢継ぎ早に閣議決定され、巨大与党のもとでまともな国会審議もなく法案が成立していく構造が作られている。 大学関係者の強い要請を受けて、労働契約法一八条により有期契約が五年で無期転換権が発生することに対する例外規定として、研究者や大学の有期契約職員にかぎり十年とする研究開発強化法等改正法などは、時間がかかるとばかりに巨大与党を背景に、まともな議論もなく議員立法で成立した。 このように四つの会議で一挙に規制緩和を進め、それでも遅いとなれば国会での多数を背景に議員立法で強行突破していくという手法が取られている。 ●(3)安倍政権の労働政策許さず労働破壊を阻止しよう 安倍政権が狙う労働の規制緩和とは、「行き過ぎた雇用維持型」から「労働移動支援型」にシフトすることである。その象徴として雇用調整助成金の大幅縮小、民間人材ビジネスを活用した労働移動支援助成金の抜本的拡充などがしめされている。 安倍政権が当面もくろむのは、①解雇規制の緩和、②有期労働契約の規制緩和、③労働時間規制の緩和、④ジョブ型社員の導入による解雇しやすい正社員の創出、⑤これらの攻撃の突破口として派遣法改悪による間接雇用の原則容認である。 ▼3―① 解雇規制の緩和 規制緩和論者は日本の解雇規制は厳しすぎて、それが成熟産業から成長産業への円滑な労働力移動を妨げていると主張している。日本の解雇規制が厳しすぎるというのは嘘であることは労働法学者の常識であり、労働契約法一六条の「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合はその権利を濫用したものとして無効」という規定は、EU諸国などと比較して特段厳しいわけではない。むしろこのような規定があるにもかかわらず日本の企業では、「社長がお前を気に食わない」など理由ならざる理由、「公助良俗に反する」という理由による不当解雇がまかりとおっている。解雇規制をこれ以上、緩和するとは解雇を使用者の自由意志において理由の如何を問わずおこなえるものとする、という以外にありえない。戦略特区が解雇特区と批判されたように、そこで主張されているのはまさにそういう内容である。 解雇が無効であっても一定の金銭の支払いによって労働関係を終了させることができるとする解雇の金銭解決も執拗に導入がもくろまれている。金銭さえ支払えばいつでも解雇できるという案もある。雇用契約という労働者の生活の根幹を規定する問題をこのように取り扱うことは、労働者の奴隷化を意味し絶対に許すことはできない。このような金銭解決がまかりとおると、使用者が労働組合活動家を裁判で敗北することを承知で解雇しても金さえ払えば職場から追い出すことが可能になることを意味する。 解雇規制の緩和、解雇の金銭解決の双方とも使用者に自由に解雇できる権限を与えよ、使用者の問答無用解雇を法的に認めよと、というとんでもない主張である。 ▼3―② 有期労働契約の規制緩和 有期労働契約の規制緩和も執拗に目論まれている。一二年成立の労働契約法一八条一項において有期雇用労働者が五年を超えて反復更新されて働けば、労働者の申し出があれば無期契約への転換が可能になるという改正がおこなわれた。六ヵ月のクーリング期間があれば、通算年度はゼロに戻るという抜け穴もあり、五年という期間も長すぎるが、使用者がいつまでも有期契約で労働者を使用することができなくなるという意味で、使用者にとっては大きな規制となっている。資本の側は対象労働者の発生は一八年度であるにもかかわらず、早々とこの緩和を要求しだしている。 この無期転換権は多くの不十分点はあるが、有期雇用労働者が戦力化され彼らが利益確保の源泉となっているような流通業、ライン労働の製造業などにおいては大きな闘いの武器になっていく制度である。これらの企業は長年にわたって雇用してきた熟練した有期雇用労働者の存在が利益の大きな源泉の一つであり、そう簡単に五年を目途にして雇止めすることはできない。有期雇用から無期雇用へと転換した労働者が自らの低労働条件に沈黙しているはずはない。これに恐怖して無期転換権に対する無力化がもくろまれているのである。 ▼3―③労働時間規制の緩和 労働時間規制の緩和も目論まれている。ホワイトカラー労働者の一部の層にたいして、時間外労働の割増賃金を支払わなくてよいようにする、ホワイトカラーエグゼンプションである。 労働者にとって労働時間をめぐる中心的問題は長時間労働の規制であり、命と健康、ワークライフバランスである。脳神経疾患の過労死認定基準における時間外労働時間が百時間であるにもかかわらず、日本では三六協定さえ締結すれば何時間労働させようと違法ではないとされている。それが過労死や家庭生活を崩壊させるような長時間労働を跋扈させている。 規制改革会議の「労働時間の見直しに関する意見(一三年十二月五日)」では、①労働時間規制の適用除外の労働者の範囲の決定を労使協定(および労基署への届け出)にゆだねる、②労働時間の上限規制、(EUでいう休息時間)や休日、休暇取り組みにむけた強制的取り組みとセットにする、とされている。 この労使協定で適用除外労働者を決定するということは三六協定と同様の仕組みであり、この仕組みの下で長時間労働がはびこり過労死が多発しているのだから、ますます長時間労働がはびこると言わざるを得ない。労使協定に適用労働者の範囲をゆだねている限り、何時間働かせようが残業代を払わないで済む労働者が一挙に広がる。 労働時間の上限規制をかけたとしても、生活できないので長時間労働をせざるを得ない実情があるので、割増賃金のつかない八時間以上の労働時間が今まで以上に増えるということ以外は意味しない。休日、休暇の強制取得はサービス出勤などが横行する中で、どこまで実効性があるか疑わしい。 長時間労働の規制を割増賃金でおこなうことの問題点は存在するが、過労死を生み出している現状を踏まえるならば、現状における長時間労働の規制の手段はホワイトカラーエグゼンプションの対象労働者に限らず全労働者を対象にした上限規制の新設と、時間外労働の割増賃金の維持・引き上げである。 ▼3―④ ジョブ型社員の導入 「解雇しやすい正社員」の創出にむけたジョブ型正社員の導入も目論まれている。規制改革会議はジョブ型正社員を「職務、勤務地、労働時間いずれかが限定される社員」と規定し、「専門性に特化したプロフェッショナルな働き方、子育てや介護との両立、正社員への転換を望むも無限定な働き方は望まない非正社員、等の受け皿として重要」としている。 ジョブ型正社員であるからといって整理解雇の四要件などの適用、とりわけ配置転換などの解雇回避努力などは、使用者が配転命令権を有している正社員と全く同様というわけではないが、無条件に使用者が逃れられるわけではない。労働者が配転に同意すればそれに対して使用者は相応に努力する義務が発生する。 最大の問題は「無限定社員」という形で「社蓄的な働き方」が法的に容認され、それとの関係で法的にはかならずしもそうではない限定社員は、解雇しやすい労働者という認識が社会的に広がり、それが判例法理に影響を及ぼしていく可能性である。 非正規と正社員の巨大な処遇格差を埋めるというのが規制改革会議などのうたい文句であるが、このジョブ型社員の導入によって目論まれているのは、「無限定社員」「ジョブ型社員」「パート、アルバイト」の三層化であり、下層労働者の拡大である。 ▼3―⑤ 派遣法改悪を許すな 安倍政権の労働の規制緩和の先陣として派遣法改正案が閣議決定され、本国会で決定されようとしている。人を変えれば同一職種で何年でも派遣労働者を使用することを可能とすることによって派遣法の原則であった「常用代替の否定」を空洞化せんとしている。不十分と言われた一二年派遣法改正すら全面否定し、「派遣労働の固定化、恒常化による低賃金、生涯派遣」が現実化しつつある。このような形での派遣法の改正は、ILOフィラデルフィア宣言が「労働は商品ではない」とし、労基法六条が「他人の就業に介入して利益をえてはならない」という形で明示してきた、直接雇用原則に対する全面的な否定である。派遣法改悪を許さず、今後の労働分野の規制緩和に関する一大反撃の闘いに立ち上がらなければならない。 安倍政権の労働の規制緩和とは、多くの労働法学者が「労働法の危機」と認識するような事態であり、労働者保護制度の根幹である解雇規制、労働時間規制などに全面的に手をかけようとする代物である。経済成長のための円滑な労働力移動の阻害要因の排除のための規制緩和というが、移動を妨げている最大の要因は移動先の賃金、労働条件の低処遇である。更に、国家の社会保障・福祉政策の後退の中で、「企業福祉の否定」を条件の一つにして成長する成長産業に対する不安である。労働力の円滑な移動、多様な働き方(多様な働かせ方と読むべき)、全員参加型雇用(一人残らず少しでも時間があれば老若男女を問わず)とは、その耳触りのよさげな語感とは異なり、社会福祉・社会保障を切り捨て、労働者、民衆に低賃金、低処遇で老若男女を問わず、生存の為に長時間労働を強制するもの以外の何物でもない。安倍政権の労働の規制緩和と全力で対決していかなければならない。 |
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