|
■汚染水漏れ事故徹底弾劾! 東電の責任徹底追及 全原発停止―廃炉へ 七月二十一日の参議院選挙において、昨年総選挙同様に安倍自民党が大勝し、自公で参議院の過半数を獲得した。これによって国会のねじれは解消し、安倍右翼反動政権は民族排外主義と戦争国家体制の構築を一層強めてくるであろう。 原発政策では自民党は、選挙公約において再稼動を明記、安倍政権がまとめた成長戦力「日本再興戦略」では、「原子力発電の活用」を掲げ再稼動に「政府一丸となって最大限取り組む」と、遮二無二再稼動に突き進む姿勢を鮮明にしている。また成長戦力として再稼動だけではなく、原発をインフラ輸出の切り札のひとつとして位置づけ、政府全体で各国への売込みを強めている。年内に策定するエネルギー基本計画では、中長期的にも原発を必要な電源として位置づける構えだ。 原発再稼動から推進へと突き進む安倍政権の下で、新しい規制基準に基づく再稼動審査が始まっている。半年と見込まれる審査の後には、「再稼動の嵐」がやってくる。 再稼動を阻止しよう。原発推進に回帰する安倍政権と闘わなくてはならない。いまだ福島第一原発事故収束の展望もなく、事故原因の究明もなされていない。原発事故による放射能汚染によって故郷を追われ生活と人生を破壊された福島をはじめとした被害者・避難者の支援・救済を政府として十分に果たしていない現状で、再稼動を行うことなど断じて許すことはできない。 参院選挙では自民は大勝したが、再稼動に反対する世論はいまだ多数だ。放射線被曝による人体への破滅的な悪影響、放射性物質の拡散によって大地や海洋に取り返しのつかない環境汚染をもたらした福島第一原発の事故を体験し、労働者人民は原発を拒否している。 「再稼動の嵐」を見据え、闘いを強めなければならない。再稼動を阻止しよう! 原発輸出を許すな! 安倍右翼反動政権を打倒しよう! ●第一章 ずさんな管理ゆえの放射能汚染水事故 福島第一原発では、地下貯水槽からの高濃度汚染水の漏出の発覚に続いて、高濃度汚染水を貯蔵する地上タンクからも大量の漏出が明らかになっている。経産省によれば、二〇一一年三月十一日の事故以来、ストロンチウムやセシウム、トリチウムなど猛毒を含んだ毎日約三百トンの放射性地下水が太平洋に流れ出ている。これによって海に放射性ストロンチウムが最大十兆ベクレル、セシウムは最大二十兆ベクレルという膨大な放射性物質が流出したと推計している。地上の貯蔵タンクからは、推計二十四兆ベクレルもの放射性物質が流出した。まさに人類最悪の環境汚染が進行しているのである。規制委も貯蔵タンクからの漏出をレベル三(重大な異常事象)に相当するとして、東電に対策を要求しているが、事態はもはや東電には制御不能になっている。東電による事故収束は破綻している状況だ。 これまでも地下汚染水の海洋への漏出は指摘されてきたことだ。もともと福島第一原発の建設された場所は、富岡湧水という名の大きな地下水脈が走っており、山側から海側へ一日千トンの地下水が流れ込んでいた。このため事故前建屋周辺に五十七箇所もの井戸を掘り、毎日八百五十トンもの地下水をくみ上げてきた。地震と津波によってポンプが使えなくなり、四百トンは原子炉建屋に流れ込んで汚染水となり、別の三百トンは建屋周辺の汚染土壌の影響で汚染水となり、海に流れ出ていたのだ。東電は、地下水の対策を怠り、汚染水を垂れ流し続けたのだ。 地上の貯蔵タンクも同じことだ。東電は汚染水を貯蔵するタンクに、コストが安価な鋼鉄製の、しかも溶接ではなくボルトでつなぎ、組み立てる構造のものを使用したことだ。ボルト式は緩んだり、止水用パッキンが劣化すると汚染水が漏れる懸念が指摘されていた。ボルト式タンクの耐用年数は四~五年と見られていたが、二年ももたなかったのだ。「汚染水には、地震、津波の影響でガレキも混じっており、タンクの傷みが予想より激しい」とは亡くなった吉田元所長の言葉だ。 漏洩がおきたタンクと同様のタンクは、汚染水を貯蔵したまま何百とあり、今後次々と漏洩が起きる可能性もある。しかし漏洩したタンクは線量が高く、内部に入って原因を調べることもできない状況にある。 政府は、地下汚染水対策として、周囲の土を凍らせて原子炉建屋への地下水の流入を防ぐ「凍土方式」の遮水壁を建設する案をまとめた。二年かけて広大な範囲の土を凍らせるために冷却材を地下に送り続けなければならない。このような工事は前例がなく、うまくいくのか効果は未知数である。しかも工事の間にも地下汚染水は海洋に流出し続けるのだ。 原発の再稼動や原発輸出にかける費用や時間があるなら、事故収束を東電任せにせず、政府が責任を持って汚染水対策に総力を挙げるべきである。東電を解体処理し、事故収束にすべての英知を結集し、対策に費用をつぎ込むべきである。 ●第二章 再稼動ありきの規制委審査を許すな 発電用軽水炉型原子炉の新規制基準(以下新規制基準)施行の七月八日、即座に電力四社によって五原発十基の原発の再稼動が原子力規制委員会(以下規制委)に申請された。申請したのは、北海道電力・泊一、二、三号機、関西電力・高浜三、四号機、四国電力・伊方三号機、九州電力・川内一、二号機、十二日には、九州電力・玄海三、四号機の申請が行われた。高浜三、四号機と伊方三号機は、使用済み核燃料から取り出したウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料を使って発電する「プルサーマル」を前提として申請された。これらの原発は、いずれも比較的運転年数が短く、福島第一原発とは異なる加圧水型(PWR)で、審査を通りやすい原発を選んで申請がなされて来た。 これら原発とは別に、昨年七月再稼動が強行された関西電力大飯原発は、八月に三、四号機の定期検査終了後の再稼動審査を申請した。 再稼働申請から一ヶ月が経過した現在、規制委は、申請のあった六原発十二基のうち、地震や津波の面で課題が少ないとされる、四国電力・伊方三号機、九州電力・川内一、二号機、玄海三、四号機の審査を先行して進めている。 他の原発、泊一、二号機は、過酷事故対策の評価で構造が異なる三号機のデータを用いており、補正申請など適切な資料が提出されるまで審査が保留された。泊三号機も津波想定の不備が指摘されていた。高浜三、四号機では新規制基準で求める地下深くの構造の詳細な把握ができておらず、津波も福井県の想定を反映していないと規制委から指摘され、新たな浸水対策が必要となった。関西電力は、この指摘を受けて想定される最大級の津波の高さを評価しなおすことを決定し、この見直しへの規制委の回答が九月以降とされ、年内の再稼動は困難な状況に追い込まれている。規制委は、各原発に対して行ったこれらの指摘をクリアしなければ、過酷事故対策や設備面の審査に入らないとしている。 昨年民主党野田政権が再稼動を強行した大飯原発三、四号機は、規制委が敷地内断層の見解を取りまとめるまで審査が行われない。三、号機は九月に定期検査のため稼動を停止する。これによって再びすべての原発が止まることになる。 これ以外にも、東京電力が柏崎刈羽原発の六、七号機の再稼動申請を狙っているが、地元新潟県への事前説明もなく再稼動申請を決めたことに知事が猛反発しており、申請ができない状況に追いこまれている。 再稼動を急ぐ電力各社は、新規制基準が要求する調査や対策を十分にやらないまま申請に踏み切ったことは明らかだ。電力各社が準備の整わないなか強気の申請を行ったのは、再稼動に前のめりになる安倍自民党政権の誕生、そして規制委が新規制基準の審査を行わないまま大飯原発三、四号機の運転継続を認めたことが影響している。大飯原発では事故時の作業拠点は建設中だが、規制委は一、二号機が停止中であることを前提に、一、二号機の会議室の代用を認めた。地下構造の調査も不十分だが、本番の審査で中長期的にやればよいとなった。まさのこうした規制委の姿勢を見た電力各社は、「大飯方式」に続けとずさんな申請を強行してきたのだ。 現在規制委は、原子力規制庁に再稼働審査のために四チーム(うち一チームは地震・津波専従)を設置し、約八十人態勢で審査を行っている。しかし自民党や財界など再稼働の強力な圧力をうける規制委は、最近再稼働審査スピードアップの人材確保のため電力会社の技術者を募集していることが明らかになっている。さらには、福島第一原発の高濃度汚染水の海への流出が続き、甚大な海洋汚染が進行している現状で、規制委の汚染水対策の検討会合は十日に一回のペースで、再稼働の審査会合は週三回のペースで開かれているのだ。まさにこの一点からも、規制委が再稼働審査を最優先していることがわかる。 規制委―規制庁は、再稼動に反対する世論と出来るだけ早い再稼動を狙う政府・自民党・財界の圧力のなかで、電力各社との安易な妥協も出来ないが、再稼働ありきで審査を総力で進めている。 四国電力の伊方三号機、九州電力の川内一、二号機 玄海三、四号機の審査が先行して進んでおり、「もっとも稼動に近い原発」として早ければ年内の再稼働容認の可能性もある。規制委が安全と判断した原発については政府が積極的に地元の同意を取り付け再稼動を強行しようとしている。規制委―規制庁の拙速な審査を許さず、再稼動を阻止しなければならない。再稼動を許さず、すべての原発を廃炉にしなければならない。日本の原発は、平和利用の建前で米帝を中軸とする帝国主義の核独占管理体制に組み込まれている。世界で第三位の原発大国日本において、原発を廃炉に追い込むことが出来れば、帝国主義の核独占管理体制に強烈な打撃を与えることが出来る。反戦反核闘争、被爆者解放運動が切り開いた地平を継承する反原発運動を大胆に推進しよう。 ●第三章 政官業一体の原発輸出阻止せよ 安倍首相は、五月参院予算委員会において、四月下旬から五月にかけて行ったサウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコの訪問を踏まえて、「日本の高い技術に期待が寄せられている」「事故という経験を経たがゆえに安全性が高まった」と言い放ち、福島第一原発の事故収束も全く見通せないなか、日本の「安全な原発」を積極的に輸出していくことを公言してはばからない。 首相に就任してからの安倍の原発セールスマンぶりは、すさまじいものがある。 今年一月には日本経団連の訪問団百三十人を引き連れ、ベトナム、タイ、インドネシアを訪問、原発建設計画があるベトナムに日本の原発を売り込んできた。 四月下旬から五月にかけては、サウジアラビヤ、アラブ首長国連邦、トルコを訪問。アラブ首長国連邦とトルコとは、核物質や原子力機材の輸出入の前提となる原子力協定を締結、サウジアラビアとは交渉開始を確認。この訪問には、三菱重工業社長や原発輸出への融資を検討する政府100%出資の国際協力銀行総裁らが同行し、「政官業」一体となって原発の売込みを行った 五月二十九日、来日したインドのシン首相と、原子力協定について協議を再開し早期締結にむけ交渉を加速させることを盛り込んだ共同声明を発表。 六月のフランス大統領オランドとの日仏首脳会談では、「原子力エネルギー分野における協力」の確認文書に署名。核燃料サイクル分野では、六ヶ所村の使用済み核燃料再処理施設の操業にむけ協力。また他国への原発輸出の連携を強化することも確認。 六月、東欧四カ国(チェコ、ハンガリー、スロバキア、ポーランド)の首脳と会談。経済、科学技術、安全保障など五分野の共同声明を発表。日本の原子力技術について「原子力安全上の貢献が自らの責務」と協力方針を明記。 六月来日したブラジル、ルセフ大統領と原子力協定の推進で合意。 安倍政権は、二〇二〇年の日本企業のインフラ(鉄道や発電所など産業基盤)受注額を現在の約十兆円から三倍の約三十兆円に拡大する目標を掲げた「インフラシステム輸出戦略」をまとめ「成長戦略」に盛り込んだ。エネルギー分野では、二〇二〇年の日本全体の受注額を推計で九兆円と見込み、このうち原子力は現状の三千億円から二兆円に拡大すると見込んでいる。 「命よりも金」という原発輸出の推進は、輸出体制のずさんさからもわかる。原発立地予定地域の住民に安全性などに関する情報が十分に公開されているかどうかを確かめる「指針」について、当時の麻生政権が二〇〇八年に策定を約束しながら、五年たった今も作成されていないことが明らかになっている。また原発輸出にともない従来行われてきた相手国の規制体制(①適切な規制体制を整備しているか②放射線防護など原子力の安全確保に関する国際的な取り決めを守っているか等)を調べる国の「安全確認」と呼ばれる手続きが実施不能になっていることも判明している。従来は、経産省の原子力安全・保安院が担当してきたが、福島第一原発の事故を受けて解体、新しく原子力規制委員会ができたが、規制委はこの業務を「実質的に審査は不可能」と引き継ぎを拒否、「安全確認」の手続きが出来ない状態なのだ。 福島第一原発の事故によってこれほどの被害と環境汚染が広がっているにもかかわらず、その原発を他国に売り込み、事故があったからさらに安全性が高まったと、事故をも輸出推進に利用するなど言語道断の所業である。まさに「命よりも金」、原発利権の死守が独占資本と安倍政権の最優先事項なのだ。原発の再稼動とともに進められる原発輸出を阻止しなければならない。 |
当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.