|
■日帝の障害者差別政策を粉砕し、 障害者解放―日帝打倒をかちとれ! 河原 涼 ●1 障害者総合支援法を撤廃しよう! 障害者制度改革推進会議は二〇一二年度において解散し、昨年七月以降以前の委員とほぼ同じ構成で、「障害者政策委員会」が設置されたが、 二〇一二年十二月十七日、 「新『障害者基本計画』に関する障害者政策委員会意見」なるものが出されている。 「一基本的な方針」の項目の中で、「基本理念」として「他の者との平等を基礎とした障害者の権利の確保……相互に人格と個性を尊重し合う共生社会の実現」を謳い、「共通して求められる視点」という項目では、「インクルーシブ社会(「障害者または健全者」共生社会の訳語?―筆者)、社会モデルに基づく障害者の定義、格差の是正」などの文言がちりばめられている。 「政策委員会」の意見の中には、「近年、多くの国民が障害を理由とする差別や偏見が改善されてきていると感じている一方で、障害を理由とする差別や偏見があると感じる国民 が増えてきているという調査結果があり、新基本計画の期間においては、このような状況も勘案し、障害を理由とする差別や偏見を解消するためのより積極的な施策の展開が求められる」とあるが、具体的には空疎な文言がちりばめられているだけである。 二〇一二年四月の総合支援法の制度改正で、相談支援事業に関して、ヘルパー時間数が支給決定される前に、相談支援事業所が作るサービス利用計画を参考にする仕組みに変わった。二十四時間介護などの最重度障害者の介護からこの仕組みが始められている。これは、事業者の意向に添った形で福祉サービスが展開されることを示している。 また、計画相談支援(障害福祉サービスと地域相談支援の支給申請)の対象者には、介護保険利用者は(例外を除いて)含まれない。さらに、計画相談支援の対象者であったとしても、アセスメントの実施や、モニタリングの実施等煩雑な手続きが多く、実際に支給を申請することに対する壁があるのだ。 福祉産業主導の福祉ビジネスでさえ、福祉のセイフティーネットにかかっていない九十九パーセントの精神障害者には無縁である。また一パーセントに満たない対象者の精神障害者であっても障害認定が低く抑えられ、事業所の恣意的判断で介護の内容自体が事業所の質に大きく左右されてしまう。 現実には、千葉県南房総市精神障害者施設「ふるさとホーム白浜」では、 入所者をまごの手で叩き、全治十日の怪我を負わせたり、作業が終わるまで食事をさせない、節約を理由に水風呂に入れる、根拠不明な「借用書」を書かせ金銭を徴収する、あるいは、入所者に深夜労働を強制するなどの事態が起こっているのだ。また、本人に説明しないまま入所者の介護給付費や生活保護費を不正に請求し受給するなど、施設入所者を食い物にする実態があからさまにされている。 また、昨年七月大阪では、アスペルガー症候群の刑事被告人に対して、裁判所が求刑を上回る判決を下したのは記憶に新しい。被告が障害者であるがゆえに「許される限り長期間、刑務所に収容することが社会秩序の維持に資する」と言い切り、障害者に対する憎悪をむき出しにしている。 昨年年十月から障害者虐待防止法が施行されたが、それだけ差別虐待が多いことを示している。 現実に差別が横行していることとはうらはらに進められる障害者政策の排外主義的骨抜き政策を暴露していかねばならない。 ●2 精神障害者差別法を撤廃せよ 法務省、厚労省は二〇一二年七月「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律 の施行の状況についての検討結果」なる報告書を発表した。 「検討の結果」とした項目では、「検察官が医療観察法による審判の申し立てをした事件のうち、裁判所が完全責任能力を認定して申し立てを却下した事件の割合は約三パーセントであり」としている。検察官の申し立てのうち九十七パーセントに合意して、裁判所と検察が一体となって、医療観察法に基づく強制入院が行われていることが、あらためて浮き彫りにされた。 「まとめ」の項目では、「医療観察法の施行状況はおおむね良好であり、総じて、医療観察制度は、有効に機能しているものと考えられる。そのため、現時点において早急に医療観察法を改正すべきものとまでは認められない」と自画自賛している。医療観察法が裁判所、警察、医療機関、地域等の相互監視のもと、保安処分体制の強化をもくろむことを許してはならない。 また、厚労省は、精神保健福祉法の見直しも画策している。保護者制度を廃止するといいつつ、医療費負担は本人という事や、医療保護入院に保護者の同意をはぶいて、指定医一名の判断のみで強制入院を可能にし、原則一年とする等、精神障害者に対する差別体制をますます強化してきている。こうした目論見を粉砕しなければならない。 ●3 経済格差―貧困の広がりを許すな 国会では生活保護バッシングが横行している。 「生活保護の不正受給が横行している」「働くより生活保護をもらったほうが楽で得の風潮が蔓延している」「不良外国人の生活保護受給が日本の福祉制度を壊す」など、排外主義にもほどがある内容が跋扈している。 バッシングのねらいは明白であり、生活保護制度の利用自体を批判の対象とし、生活保護の受給イコール「悪」とし、社会保障制度全体の切り下げを正当化するものである。 生活保護受給者の増大は、いわずもがな、経済的格差の広がり、深化が深刻化している事にほかならない。相対的貧困率は、国民一人ひとりの所得を順番に並べ、中央の値の半分より低い人の割合である。相対的貧困率は、民主党政権になって初めて公表された。 二〇〇九年の相対的貧困率は十六パーセントで二〇〇六年時点での数値より悪化。生産年齢人口の相対的貧困率は、米国に次ぎ二位であり、一人親世帯の貧困率が特に高く、五十パーセントを超える。日本は(母子家庭)女性の貧困率が特に高く、社会保障給付を分配した後の子供の貧困率が悪化した唯一の国である。 生活保護下での「餓死、孤立死」が蔓延し、保護の給付を受けているにもかかわらず、生きられない。給付水準自体が、命をささえるものになっていないのだ。 若者の非正規雇用率が五十パーセントを越え、雇用保険の失業給付を受けている人は二十パーセント。八割は失業しても何の給付もない。 一方、経済格差の深刻さの露呈は、日本の終身雇用制を前提とした社会保険制度が破綻したことをも表面化させる。しかし、女性の貧困はそれよりもはるか以前より、深刻化している。 「現代思想」二〇一二年十一月号に掲載された伊田久美子(大阪府立大教授)著「女性の貧困は、なぜ見えにくいのか―再生産労働概念からの再検討―」によれば、伊田氏は、「この間論議されてきた派遣規制も女性が多い分野は事実上対象外である」「男性が一般に結婚できない事が深刻に受け止められるのは、『女手』と呼ばれる不払いの再生産労働を確保できない事の男性にとってのダメージの大きさ」として、女性が担ってきた再生産労働の市場への影響を語っている。いわく「労働は、労働市場の中にのみ存在するのではないこと」「市場の外の労働は、市場に貢献する労働であること」などを語っている。 七〇年代初期イタリアのフェミニズム運動家、マリアローザ・ダラ・コスタの言葉を借りて、「家事労働は労働力商品の生産、再生産を行う資本主義経済に不可欠でありながら不払いの『労働』であり、不払いであるが故に剰余価値生産に貢献する、搾取される労働」という言葉を引用しつつ、伊田氏は、「『再生産労働』と『不払い労働』は経済のサービス化と再生産労働の市場への包摂がすすむにつれ、その『ずれ』が明確化してくる」とする。これは、とりわけケア労働と呼ばれる介護労働者などの処遇に大きく影響しているといわざるをえない。 資本主義経済を根底的に支える要素としてありながら、強収奪をほしいままにする資本主義の残忍さと同時に、天皇制家父長制度が併存している現実の中で、女性や若者を中心とする非正規雇用労働者が呻吟しているということである。 労働者人民の皆さん! 日帝の押し進める経済政策、社会保障政策一切は、労働者人民すべてをなぶりものにし、全資本家を擁護する態度を明確にしている。 とりわけ障害者総体を標的とした差別政策は、戦時障害者政策として差別抹殺攻撃を激化している。 あらゆる障害者差別を許さず、障害者の自己解放―日帝打倒を掲げ闘おう! |
当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.