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   2013年「経営労働政策委員会報告」批判

    新自由主義路線にしがみつく日本経団連

                  



 ●1章 厚顔無恥の経労委報告

 日本経団連は一月二十二日に「経営労働政策委員会報告」を発表した。「報告」は、世界的な危機と連動し日本でもデフレが進行し、貧困と社会的閉塞感が拡大し、更にデフレが進行していくという悪循環をどう克服していくのかというということとは全く正反対に、労働者を困窮に落とし込め、社会的危機を更に促進するものとなっている。それは日帝ブルジョアジー自らも危機に追い込みかねない代物であり、日帝ブルジョアジーがもはや社会を維持していく能力を大きく後退させているあかしであるとともに、危機の深さをしめしている。
 その主張は企業の利益があがれば日本経済は活性化し、結果として労働者の生活も向上するという出鱈目を大前提に、①円高の是正、②TPPなどの経済連携の推進、③法人の税負担の軽減、④一層の社会保障の改革(企業負担の軽減と給付の切り捨て)、⑤エネルギー、環境政策の推進(原発再稼動)、⑥労働規制の見直し、などの国内事業環境の早期改善を一気呵成に実施せよ、と迫るものである。このような政策を実行しなければ産業の空洞化が進行し、国際競争力を失い、貿易立国としての存立が困難になり労働者の雇用は失われると居丈高に恫喝している。
 企業が儲かれば結果として労働者は潤うというトリクルダウン的な発想が、全くの誤りあることは小泉構造改革の結果として明らかになっている。「毎月勤労統計調査」によれば〇〇年には三十五万五千四百七十四円あった月平均現金給与総額は、一一年には三十一万六千七百九十二円と、三万八千六百八十二円も低下している。非正規雇用労働者は〇一年には約28%だったのが、一一年には約35%となっている。反して企業の内部留保は金融、保険を除く大企業約五千社で、〇〇年百七十二兆円が一一年には二百六十七兆円へと増加している。大企業は莫大な内部留保をため込んだが、中小零細企業はやせ細り、労働者内部では貧困と格差が拡大し、閉塞感が社会を覆い尽くしたというのが現実である。解消されないデフレの主要な要因は、賃金低下、社会保障切り捨て、貧困の拡大により、内需を支える労働者の購買能力と意欲が低下していることにある。企業業績第一主義は企業そのものもむしばんでいるのである。
 企業あっての社会という傲慢な「経労委報告」には、日本のような「高コスト社会」では国際競争に勝てないとして、小泉政権が構造改革を推進し、貧困を拡大し社会を荒廃させたこと、今日のデフレの大きな要因を作り出したことに対する何の反省も総括もない。しかし仮に強搾取と強収奪が成功したとしても、貧困の拡大による社会的閉塞感・社会的荒廃の拡大によって、社会的コストが増大しそれを切り捨てることによって、社会がますます荒廃しそれに対処する社会的コストが増大し非効率になっていくという悪循環から抜け出ることはできない。
 「経労委報告」は、これ以上、国内事業環境の整備が遅れると、生産が海外へ移転し産業空洞化が進展すると恫喝している。しかし海外生産で様々なリスクを負うのは日帝ブルジョアジーの方である。アルジェリアでの製油所襲撃事件を見るまでもなく、帝国主義グローバリゼーションによる世界的な貧困の拡大のなかで、帝国主義国の世界企業、大企業に対する労働者、民衆の怨嗟は膨大に蓄積されている。城内平和によって得られる民族国家の軍事力を背景としない、生産の海外移転など戯言にすぎない。労働者、民衆の立場から言えば、「出ていくのなら勝手に出て行け!」ということでしかない。
 また新時代の日本的経営による雇用の流動化政策や、成果主義賃金制度の導入、更には相次ぐリストラなどで日本の良質と言われた人材が枯渇しだしている。「報告」はそれに危機意識を抱き、「競争に打ち勝ち、成長を続ける人材戦略」の必要性を打ち出している。日本の職場は荒廃し、製造業では技術の継承もままならない事態となり、ブルジョアジーが危機意識を持つゆえんである。それゆえに「海外で高い成果をあげるためには、ローカルスタッフからも一目置かれる高い専門性や課題解決力、周囲から尊敬と信頼を得られる高い人間性が求められる」と述べたりしている。しかし過労死するほどの長時間労働でこき使い、成果主義で追い込みメンタルに支障をきたす労働者を数多く発生させ、挙句は「追い出し部屋」に放り込んで、退職を強要するようなことをくり返している企業が多数をしめるなかで、どのようにして「高い人間性」が獲得されるのか、「御教示」いただきたいものである。
 日帝ブルジョアジーのみならず、全世界の帝国主義ブルジョアジーは「経労委報告」にみられるように破たんした新自由主義路線による強搾取・強収奪による延命の方策しか持ち得ていない。それはますます貧困を拡大し、国境を越えた労働者階級の団結による反帝国主義の闘いを強化するだけである。

 ●2章 賃金引き下げを許すな

 13春闘に関し「経労委報告」は、労使で自社の置かれた状況を正しく共通認識し、「総額人件費の適切な管理」と「自社の支払い能力」を考慮した交渉を要求している。実際には社会保険負担の増大などを口実に、総額人件費抑制、あわよくば切り下げを目論んでいる。一時は賃上げ凍結も示唆し、「労使は定昇の負担の重さを十分に認識する必要がある」として、定昇制度の見直しなどにも言及している。
 自社の置かれた状況について労使の認識を共有するというが、中小零細企業では、決算書を提示しないところがほとんどである。開示しても赤字の年の単年度の収支だけであり、貸借対照表も含めた決算書を提示するときは、倒産か、倒産寸前という事態が大半である。「経労委報告」が想定する大企業でもマスコミ発表用の決算書レベルは開示されるが、中長期の経営計画、原価率、月次決算、借入金の内容、その他、諸々の実際に必要な数字は企業秘密などと称して要求してもほとんど開示されない。日本経団連の主張する「自社の支払い能力論」は、多くの企業でその前提が存在しない。
 また「経労委報告」では、「個人消費が落ち込んでいる大きな要因は、国民の将来に対する不安であり、それが払拭されない限り、所得だけ増やしても、消費より預貯金に回る可能性が高い」と主張している。一体、誰が将来の不安を作り出したのか。労働者の苦しい生活を歪曲した許しがたい主張である。このような主張は社会保障を切り下げ、生活不安を作り出すことが、賃金引き下げの道と主張していることと同じである。まさに「生かさぬよう、殺さぬよう」という主張であると言わざるをえない。
 安倍政権はアベノミクスと称して消費増税の環境作りのために、公共事業投資の拡大、金融緩和、成長戦略の推進を掲げている。安倍にとっても一定の賃金引き上げがなければ、アベノミクスの実現は不可能であることは認識されており、安倍政権の閣僚はテレビ出演などで、賃金引き上げが不可避であることを述べている。しかし日本経団連はそれに応じる姿勢をみせていない。アベノミクスは上手くいくか否かは不明であり、そうしたとしても実現されるか否かは不明だが、最低、労働者の賃金の引き上げがなければ物価が上がるだけ、大企業が儲けるだけ、財政赤字がさらに拡大するだけ、という絶望的な事態になることは誰の目にもあきらかである。こうしてすでに日帝ブルジョアジーは政策の整合性を整えることもできない事態に陥っているのだ。
 このように13春闘において大幅賃上げがなければ労働者の生活は苦しくなるだけである。大幅賃上げの闘いを組織し、その闘いを勝利させ更に消費税増税を打ち砕こう。

 ●3章 最低賃金引き下げに反対しよう

 「経労委報告」は最低賃金制度についても言及し、最賃引き上げは毎年、中央最低賃金審議会が示す「目安」の範囲内におさめること、生活保護との整合性については生活保護基準の切り下げ後に、見直すことを主張している。二〇一〇年の「雇用戦略対話」における、「できる限り早期に全国最低八百円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均千円を目指すこと」という合意の見直しにも言及している。
 この間、最低賃金引き上げは「生活保護基準との整合性」と、「雇用戦略対話」の合意を梃子に引き上げられてきた経過がある。中央と地方の格差を拡大する目安に対して目安の提示額が低い地方を中心に、それを上回る引き上げが実現されてきたことに対する圧力を許すことはできない。また生活保護基準の引き下げを前提に、最低賃金との比較に用いる生活保護基準額をこれまで様々な手口で低く計算してきたにもかかわらず、その比較基準すら見直し、一層、生活保護基準を低く見積もろうというようなことなど絶対に認めることはできない。それのみならず地域最賃よりも百円程度高かった特定最賃(産業別最賃)を廃止せよと主張している。
 この間、貧困の拡大と最低賃金の引き上げの中で、沖縄や東北、北海道などでは、非正規雇用労働者の賃金で一番、多い層は最低賃金水準の前後に張り付いている。
 日帝ブルジョアジーは雇用破壊、生活破壊の中で近年、低賃金労働者の賃金を下支えするという本来の役割を発揮し出した最低賃金を、目の敵にしだしている。日帝ブルジョアジーの最低賃金引下げを許してはならない。同時に最低賃金や就学援助をはじめとする様々な控除の基準となり、低賃金労働者の生活を守ってきた生活保護基準の切り下げ阻止の闘いと結合して闘う必要がある。

 ●4章 労働法制改悪に反対改悪に反対しよう

 「経労委報告」では労働規制の見直しにも強く言及している。労働側から見たらきわめて不十分な、「労働契約法」「派遣法」「高齢法」の改正でも、日帝ブルジョアジーにとっては認めがたいものである。これらの法改正は「若年者をはじめとする全労働者の雇用を奪うもの」と決めつけている。しかし非正規雇用の増大が次世代における貧困層を拡大し、次の世代に大きなつけを回すことに結果することについては何の言及もない。
 以上、簡単に見てきたように「13経労委報告」は、ブルジョアジーの身勝手な主張、短期的な利益確保のためのなりふり構わぬ主張である。労働者の賃金、労働条件を悪化させるのはもちろん、日帝ブルジョアジーの危機感を示して余りあるものとなっている。
 13春闘における大幅賃上げの実現、闘争勝利だけが、労働者の生活を改善する道である。それのみならず日本社会をよりましな形に前進させる道であることを確信し、正々堂々と闘おう。



 

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