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   治安管理と弾圧強化を狙った

           改悪入管法を徹底弾劾する
   




 本年七月九日、出入国管理及び難民認定法(以下入管法)・日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(以下入管特例法)・住民基本台帳法(以下住基法)が改悪施行されようとしている。これらは二〇〇九年七月に成立・公布されたものだが、三年間の猶予を経て、いよいよ本年本格的な施行を迎えるものである。戦後六十年続いた外国人登録法(以下外登法)は廃止され、「新たな在留管理制度」に移行する、まさに歴史的な大転換である。
 これによって外国人登録証明書(以下外登証)は廃止され、中長期在留者(=特別永住者を除く三ヵ月以上の在留資格を持つ外国人)には「在留カード」、特別永住者には「特別永住者証明書」が導入される。入管法と外登法という二つあった法律を一本化し、また国による在留審査・許可、自治体による外国人登録、となっていた「二元処理」を解消して、国が外国人の在留情報を一元的かつ継続的に管理することになるのだ。
 一方外国人にも住基法が適用され、「登録原票記載事項証明書」はなくなり、新たに外国人にも「住民票」が発行されることになる。

  ●「新たな在留管理制度」とは

 「新たな在留管理制度」の対象は在留資格を持つ中長期在留者であり、在留期間が九十日以内の短期滞在者や特別永住者は除かれる。在留許可を「化体するもの」として、法務省が上陸した空海港で「在留カード」を交付する。施行前から在留している外国人については、現在持っている外登証と引き換えに地方入管局にて交付される。
 「在留カード」には、ICチップが搭載され、カード番号・氏名・国籍・生年月日・性別・住居地・在留資格・在留期間・就労制限の有無等が記載され、十六歳以上であれば顔写真が添付される。受領・提示・常時携帯(十六歳以上)が義務づけられ、拒否すると一年以下の懲役または二十万円以下の罰金が科せられる。有効期間は在留期間満了日であるが、「永住者」については交付日から七年間。登録事項に変更がある場合は十四日以内の届け出が必要で、遅れると二十万円以下の罰金が科せられる。住所地以外の変更は地方入管局への届け出となり、虚偽申請は在留資格取り消しとなる。
 外国人が所属する機関(企業、学校等)では、個々の外国人について「在留カード」の有無・就労の可否を確認し、国に情報提供する義務を負うことになる。法務省では、外国人が届け出た情報とその外国人の所属機関から提供された情報とを照合し、在留期間更新や在留資格変更の審査、在留資格取消手続や退去強制手続においてそれを活用する。
 在留期間の上限は三年から五年へと引き上げられ、「みなし再入国許可」制度(=一年以内に再入国する場合は再入国許可申請の必要なし)が今回新たに導入される。
 一方の「特別永住者証明書」にもICチップが搭載され、特別永住者証明書番号・氏名・国籍・生年月日・性別・住居地・有効期限が記載され、十六歳以上は顔写真が添付される。外登証にあった国籍国の住所・出生地・旅券番号・旅券発行の年月日・世帯主の氏名・世帯主との続柄・署名は削減される。
 常時携帯義務は削除されたが、「提示義務」があり、「入管職員等から提示を求められた場合は保管場所まで同行するなどして提示することが必要」(法務省入管局の「よくある質問」より)となっている。常時携帯となんら変わりない。また七年毎の更新はこれまで同様であり、受領や提示拒否、更新遅延の際の一年以下の懲役または二十万円以下の罰金という罰則規定もそのままである。

  ●治安管理強化を狙う「在留カード」

 「在留カード」の導入と常時携帯の義務化は排外主義と民族差別にみちみちたものである。
 二〇〇七年十一月施行の改悪入管法で「テロの未然防止」という名目のもと特別永住者や外交官などを除く十六歳以上のすべての外国人に対し、上陸審査時に指紋と顔写真を提供することが義務づけられた。今回それを更に強化するものとして、ICチップという大容量の媒体に膨大な個人情報を集積し、それの常時携帯を義務づけ、ネットワークで結合することによって、外国人個々人の日常的な行動をも細部にわたって国が把握し監視しようとしているのだ。治安弾圧そのものであると言っても過言ではない。個人情報が無制限に流出する恐れも十分予想される。
 学校や企業で「在留カード」をチェックすることは、たとえ当人にその意思がなくとも必然的に市民による外国人の監視につながる。社会全体で外国人監視網を作り上げることを担わされるのだ。
 「在留カード」を持たない難民申請者や非正規滞在者は、「住民基本台帳」からも排除される。七月九日から三ヵ月以内に外登証を入管局に返納することになっているが、そうすると公的に個人を証明するものが何ひとつなくなり、「見えない存在」へと追いやられてしまう。外国人登録制度では、非正規滞在者であっても登録可能であったのだが、新しい制度下では完全に制度の枠外となり、医療や教育といった最低限の行政サービスからも排除されてしまうのだ。
 法定受託事務として一定の裁量権が認められてきた自治体は、入管とのオンライン化が導入されると、ただの端末機関に成り下がってしまう。これまで窓口交渉などを通じて作り上げてきた自治体との信頼関係もなし崩し的に崩壊してしまいかねない。

  ●住民基本台帳への登録

 住民基本台帳には中長期在留者や特別永住者のほか、一時庇護許可者及び仮滞在許可者が登録され、「住民票」が発行される。短期滞在者や非正規滞在者、難民申請中の仮放免許可者等は対象外となる。「住民票」の記載内容には国籍・在留資格・在留期間といった外国人特有のものが含まれる。外国人と日本人の複数国籍世帯でもひとつの世帯として住民票に一覧で表示され、外国人も世帯主になることができる。一方、外登法にはなかった「転出届」が新たに義務化され、十四日以内に届け出ないと五万円以下の過料が科せられる。
 本年五月七日を基準日として、各自治体で「仮住民票」が作られ、外国人の自宅に送られてきている。記載の修正等を行い、施行日に住民票に移行することになっている。これによって外国人も住基ネットに組み込まれることになる。住基カードも取得できるようになる、と宣伝されている。

  ●在留資格取消事由の拡大

 これまでよりも簡単に在留資格が取り消されてしまいかねない。
 在留資格取消制度の新たな対象として ①不正な手段により在留特別許可を受けた ②配偶者の身分を有する者としての活動を継続して六月以上行わない ③正当な理由なく住居地の届出をしなかったり、虚偽の届出をした、ことが加えられた。
 外国人はこれまで各自治体窓口で行っていた変更登録(在留期間更新・在留資格変更以外)を、住居地以外の変更については今後は全国に七十六ヶ所しかない地方入管局で行わなければならない。煩雑な手続きは外国人にとって大きな負担である。とりわけ十六歳になる外国人は学校を休んで地方入管局に出向き申請しなければならず、その精神的苦痛は計り知れない。

  ●外国人労働者の序列―分断化制度を許すな

 このように、法務省・入管局の権限は格段と強化され、その業務は集中し肥大化することになる。国家による外国人の監視と管理を目的としたシステムの構築に、市民をも動員しようとしているのである。
 少子高齢化が進む中、不足する労働力を補うため外国人労働者については専門技術者だけでなく単純労働者の受け入れも検討されはじめている。環太平洋経済連携協定(TPP)の下で外国人労働者の流入規制を取り除き、安価な賃金で受け入れようとする一方で、相変わらずの「テロ対策」「外国人犯罪者」キャンペーンで排外主義を煽ってもいる。この「受け入れ」と「排除」という一見背反するテーマを「デジタルジャパン」戦略とも連動させながら同時に遂行しようというのである。
 新自由主義政策推進の一環として、来たるべき「移民社会」をも視野に入れた今回のこの法制度化は、一方で「アメ」をちらつかせながらも結局のところは政府によって管理された労働力のみの受け入れであり、これまで以上の監視体制の強化という排外主義に貫かれたものに他ならない。
 五月七日より「高度人材に対するポイント制による優遇制度」が導入された。学術研究分野、高度専門・技術分野、経営・管理分野で高い専門知識や技術を持つ外国人に学歴・職歴・年収・研究実績に応じた点数を付け、高得点者に永住許可や出入国管理上の優遇措置を講ずるというものだ。これによって「高度な外国人材」の受入れを促進しようというのである。「在留カード」に「高度人材外国人」に該当していることが明記されることにもなっている。外国人を労働力商品としてのみ見なし、優劣をつけ点数化し分断しようとするものであり、断じて許すことはできない。
 また、この「在留カード」の次には、全国民を対象とした「マイナンバー法案」(=税金と社会保障の個人情報を一つにまとめる「共通番号制度法案」)が来ていることも合わせて考えていかなければならない。

  ●差別排外主義を許さず闘おう

 一九四七年天皇最後の勅令として制定された外国人登録令は、一九五二年外登法として法制度化され指紋押捺や外登証の常時携帯が義務づけられた。
 当初より民族差別・人権侵害として批判が強かったが、一九八〇年、故・韓宗碩氏が「たった一人の反乱」として指紋押捺を拒否したのを皮切りに、一九八五年を頂点に全国で一万四千人もの在日朝鮮人・中国人が指紋押捺拒否闘争に起ち上がった。
 そのような闘いの中で一九八七年、指紋押捺は最初の申請時のみ(それまでは五年に一回)に改訂(八八年施行)、一九九二年には「特別永住者」「永住者」の指紋押捺廃止(九三年一月施行)、そしてついに一九九九年には指紋全廃をかちとったのである(二〇〇〇年四月施行)。五十万人とも言われる多くの被弾圧者、逮捕・投獄者を出しながら血のにじむような闘いの中でかちとった実に偉大な勝利であった。
 自治体との粘り強い交渉の中では、自治体の裁量権をおおいに活用させて、期間指定書の発行や「拒否者を告発しない」こと、「機関委任事務(のちに法定受託事務)であっても唯々諾々と行わない」こと等を実現させてきた。「法違反者とは面会しない」と強硬な姿勢をとっていた法務省と拒否者との直接交渉を実現させる画期的な地平をも切り拓いたのだ。
 現在、在日に対しては拉致問題を契機とした「北バッシング」の激化、朝鮮学校の無償化からの排除・補助金の打ち切り 、更には在日政治犯の在留資格の抹消等、民族差別・排外主義攻撃が強まってきている。在日が闘いとってきた当然の権利を「特権」と言い放ち、差別襲撃を繰り返す在特会等は今回の改悪施行によってますます攻撃を激化させてくることも予想される。
 差別排外主義と対決し、たたかう在日と固く連帯して、入管法・入管特例法・住基法の改悪施行を粉砕しよう。指紋押捺拒否闘争の勝利の地平を引き継いでたたかおう。



 

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