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   沖縄人民の闘いで破綻した辺野古アセス

   
7月オスプレイ沖縄配備を阻止しよう!

   



 沖縄防衛局は昨年十二月二十八日早朝、辺野古新基地建設に関する環境影響評価(辺野古アセス)の評価書の搬入を強行した。それは何よりも沖縄人民の評価書搬入阻止の闘い、そして先頭に辺野古アセス違法確認裁判や「県」議会の環境影響評価書の提出断念を求める意見書採択などに追い詰められたなりふりかまわぬ不当なものであり、徹底して弾劾しなければならない。
 九七年名護市民投票の勝利をひきつぎ、沖縄人民は新基地建設に反対を貫いてきた。ボーリング調査のやぐらを建設に対する海上阻止行動や座り込み行動をおこない、基地建設反対の意思を明確に示してきた。
 九七年に成立した環境影響評価(アセス)法では、国や地方自治体または民間業者などが行う空港や道路・土地開発など大規模開発事業に際して環境の保全をはかることを目的に、環境への影響を調査・予測・評価し、環境保全措置を取らなければならないとされている。その手続きにおいては、事業者は最初に方法書(環境影響評価の調査方法を定めたもの)・準備書(調査結果と対策を記したもの)・評価書(準備書への住民意見を反映し、評価と環境保全措置を定めたもの)をそれぞれ作成公開しなければならならない。準備書では方法書で示された住民・知事意見、評価書では準備書で示された住民・知事意見を反映して作成しなければならない。評価書段階では住民の意見をきく法的規定はなく、知事の意見をきいて補正したうえで評価書は確定される、とされる。アセス法は事業そのものを前提としており、それを止める手続きはない。

 ●1 違法デタラメなアセス 「不可能」と知事意見

 防衛省は〇七年八月に方法書を、〇九年四月に準備書を作成・公開したが、これより前の〇四年にボーリング調査を開始して以降、〇七年四月に海上自衛隊掃海母艦ぶんごなどを投入する違法な事前調査をおこない、〇八年には希少生物ジュゴンの餌場や通り道に機材を設置し、またサンゴ礁を破壊する環境現況調査、事後調査などを強行してきた。最初からずさんで違法デタラメに行われてきた辺野古アセスの実態は、評価書作成・提出段階においてもより一層問題の多いものである。
 昨年末提出された辺野古アセスの評価書は飛行場建設部分(環境影響評価法に基づく)と埋め立て部分(沖縄「県」条例に基づく)について、およそ七千ページ。その内容は垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備がはじめて明記され、滑走路の長さや飛行経路など環境に著しい影響を与える変更が行われ、住民意見を無視した代物である。
 卑劣な沖縄防衛局の評価書搬入に対し沖縄人民の怒りに直面した仲井真知事は、審査会で十人の住民が直接意見をのべることを認めざるを得なかった。沖縄人民の闘いを背景とした三回の審査会と答申案をもとに、二月二十日「県」は飛行場建設部分について、前文で「地元の理解を得られない移設案実現は事実上不可能で普天間の県外移設と早期返還を求める」、評価書が示す措置では「生活環境や自然環境の保全は不可能」とする意見書を出した。また二十六分野で百七十五件の不適切事項を指摘した。さらに三月二十七日、埋め立て部分について、意見書前文で同様に「地元の理解が得られない移設案の実現は事実上不可能」として普天間基地の「県外移設」要求を盛り込み、評価書で示された保全策では「環境保全は不可能」とし、三十六項目四百四件に不適切事項があることを指摘した。


 ●2 オスプレイ配備と基地建設ありきの評価書の不当性

 評価書は防衛省が「環境保全上特段の支障はない」という結論を導き出し、オスプレイ配備と基地建設を正当化するためのアリバイを作り、アセス法にすら違反する不当なものである。

 ▼①MV22オスプレイ配備 アセス無視の記載

 垂直離着陸機MV22オスプレイの配備については、方法書(〇七年八月)や準備書(〇九年四月)に一切記述はなく、評価書で初めて「二〇一一年六月に沖縄配備が発表され、CH46をオスプレイに変更した」としている。防衛省のアセス規定によれば、飛行場建設にあたり第二条で方法書の作成段階で航空機の種類、第十八条で準備書の作成段階で航空機の種類及び数を書かなければならない、とされる。しかしその規定すら遵守していない。
 オスプレイ配備は公式的には昨年六月、「県」・名護市に通知され、米軍は〇九年段階で配備方針を公表していたが、防衛省はこれより先の九六年段階で配備を認識していたという事実が明らかになっている。また「方法書」「準備書」の段階で想定される機種と数について示すよう住民や「県」はそれぞれ意見を出してきたにもかかわらず、防衛省は一貫して配備方針を隠蔽しつづけ、住民の意見を封じる違法な手法をもちいてきた。
 さらに重大なことにMV22オスプレイ機は安全性について以前から疑問視されてきたのである。最近では四月十一日モロッコで訓練中のオスプレイが墜落、米兵二人が死亡した。昨年四月にはアフガニスタンでエンジントラブルにより墜落、米兵四人が死亡。一昨年五月米国で改良機のデモフライト中に十一名がけが、七名が病院に収容されている。オスプレイは開発段階から四回の墜落事故を起こし三十人が死亡するなど、当初から危険視されていた事故・欠陥機で、構造的な欠陥をもっている。
 辺野古のV字型滑走路の場周経路については、理由も示されないまま、従来の台形から楕円形に変更された。この変更は普天間のCH46の場周経路に近いが、そもそもオスプレイの場合安全に着陸できる機能が欠如している。また低周波音について評価書で「心理的・生理的影響」や「物的影響」も増大すると予測しながら、「飛行回数はわずか」「短時間で」「影響がでるとは限らない」としている。場周ルート変更による騒音予測について安部集落、国立沖縄工業高等専門学校で六十四デシベルとし、環境基準値のW値七十以上の騒音発生地域はキャンプシュワブ内と豊原沿岸域の一部とする一方で、場周経路の変更に伴う地点での騒音予測値や普天間基地・北部訓練場(高江)・伊江島などへの移動で発生する騒音予測値が示されていない。それらの地点での調査・予測・評価を欠き、アセスのやり直しを求める声があがるほどだ。
 また飛行経路も示されていない。米軍は住宅地を飛行する。平坦な海上では訓練に適さないため陸上を使う。米軍が示された飛行ルートをまもらないことは数々の証言でも明らかになっている(一月十二日アセス訴訟)。また米軍は「運用上の所用等により場周経路から外れることがある」と明言しており、集落地上空の飛行を回避することが期待できないのは明白である。ひとたび人口密集地、集落などにオスプレイが墜落すれば、取り返しのつかない重大事故につながる。オスプレイ配備の危険性ははかりしれない。またオスプレイが出す高温排気による周辺集落、動植物・自然環境への影響はおおきい。

 ▼②ジュゴン、サンゴへの影響評価が過小

 辺野古沿岸海域は準絶滅危惧種ボウバアマモなど海草藻場が分布している。 嘉陽海域の藻場には絶滅危惧種のジュゴンが生息し、藻場を餌場として利用しているが、評価書では「個体数は計三頭、辺野古沖の藻場を使う可能性は低い」として生息域を限定し影響はほとんどないとしている。しかし、昨年五月沖縄防衛局はジュゴンが泳ぐのを確認し、「辺野戸の沖合いから沖縄島の反対側まで移動し、行動範囲を注視すべきだ」という調査報告書を作成していたことがわかっている。昨年六月にも辺野古沿岸近くの藻場でジュゴンが海草を食べた跡が発見されている。また評価書は「調査はジュゴンの保全に配慮した」というが複数年調査を実施していないことを自ら暴露した。
 また大浦湾ではサンゴ礁地形が発達し、アオサンゴ群落などが確認されている。大浦湾河口域にはマングローブ林が広がる。多様な貴重種の魚類が生息する大浦湾の埋め立てがおこなわれると環境の回復は不可能である。辺野古・大浦湾は、世界的にも注目される生物多様性豊かな地域であるにもかかわらず、埋め立てに伴う影響について、「ジュゴンへの直接の影響はない。サンゴ礁などの生育基盤消失の可能性もない」としている。

 ▼③埋め立て土砂の調達先・運搬方法が未定

 埋め立てが実施されると環境に大きな影響を与え、現況の自然への回復がほぼ不可能になる。そもそも計画立案(方法書・準備書)段階で示すべき問題であるにもかかわらず、評価書は埋め立て面積約百六十ヘクタール、埋め立て土砂二千百万立方メートルのうち約80%の千七百万立方メートルの土砂調達先や運搬方法を示していない。さらに「県」外から調達するとしている埋め立て土砂について、東日本大震災の瓦礫が搬入される可能性がある。阪神大震災後には瓦礫が神戸港、神戸空港などの埋め立てに利用された。
 また、有害物質・耐震性・津波対策について不備が指摘されている。

 ▼④防衛省天下り先企業がアセス業務を受注

 防衛省が辺野古アセス事業(三十四件の業務)を発注したのは九社、そのうち五社(元職員七人が入社)の防衛省天下り民間会社が、アセス事業にかかる費用総額八十六億円のうち落札率九割以上八十億五千四百万円を受注していた。このうち元職員六人はアセスが始まっていた〇九年六月から十年三月にかけ「再就職」したことがわかっている。また〇七年に入社した元職員は、防衛施設庁(当時)建設部長時代に同庁の官製談合に関与し、家宅捜査前に資料廃棄を部下に指示し懲戒処分を受け、評価書に関連する潜水業務を下請けしていた会社にいたことが暴露されている。あらかじめ契約企業を選定する指定委員会が沖縄防衛施設庁(当時)の局長や職員で構成されており、入札などまともに行われず、防衛省天下り先企業に独占的にアセス業務の発注がおこなわれていた。

 ▼⑤沖縄と米国の基地建設における二重基準

 十八年までにオスプレイ二十四機が配備される予定の米国ハワイ州カネオヘベイ海兵隊基地に関する環境影響評価にたいし、米環境保護庁が児童生徒の就学時間中には騒音を四十五デシベル以下に抑えるよう勧告している(『沖縄タイムス』本年年一月二十六日)。カネオヘベイのアセス準備書は学校への騒音は五十五デシベル以下としている。辺野古アセスでは沖縄工専で六十四デシベルを予測しており、米国基準にてらせば重大な変更を余儀なくされるはずである。米国では国家環境政策法によって基地の運用変更でも環境への影響が大きい場合、アセス実施を義務付けている。ところが米軍は沖縄での米国基準の見直しやオスプレイ配備予定の普天間基地のアセスを実施しない。防衛省も普天間・高江などでの騒音予測を示していない。
 昨年十一月前沖縄防衛局長田中聡の差別発言につづいて、違法でデタラメな辺野古アセスを行ってきた防衛省の犯罪性を断じて許すことはできない。辺野古アセスをめぐる政府のうそと詭弁を徹底的に弾劾し、「埋め立て申請」を許さず、新基地建設攻撃を完膚なきまでに打ち砕こう。
 普天間基地において大規模補修工事が実施され、七月オスプレイが配備されようとしている。また海兵隊の輸送にあたる強襲揚陸艦ボノム・リシャール(四万五千トン)が四月佐世保基地に配備された。オスプレイ配備と一体に軍事機能が強化されようとしている。
 沖縄人民の闘いは辺野古新基地建設の破綻という事態を生み出している。沖縄人民に連帯し、オスプレイ配備阻止に立ち上がり、普天間基地の前線基地固定化・沖縄の自衛隊強化・日米軍事一体化攻撃とたたかいぬこう!



 

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