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■新自由主義と排外主義の道を突き進み、 格差と貧困を拡大する橋下・維新の会 労働者階級人民の闘いで打ち倒そう 大阪では、大阪市長・橋下徹が率いる「大阪維新の会」が大阪府、大阪市や堺市の知事・市長選で当選したり、議会で過半の議席を獲得するなど、急速に勢力を伸張させている。 橋下は「大阪から日本を変えよう」といよいよ国政へと打って出ようとしている。 橋下は、「教育とは二万%強制」「日本の政治で大事なのは独裁」「(公務員は)国民に対して命令をする立場に立つ」「選挙で勝ったのだから白紙委任」などの発言を繰り返している。これらの「ハシズム」などと揶揄される強権的手法と徹底した管理、上意下達の組織づくり、労組敵視、人件費や福祉・公共サービス予算の大幅削減など、労働者や住民に多大な犠牲を押しつけるこの勢力が、経済の停滞や政治の混乱という日本社会の閉塞感につけ込んで、ある種の期待を集めている。 これは、文字通り、日本を「貧困と格差社会」へと引きずり込んでいった新自由主義政策の新たな装いでの登場に他ならない。労働者民衆を更なる貧困と抑圧の中に押し込めようとするこの危険な動きと断固対決し、これを粉砕しよう。 ●1 衆議院選―国政進出狙う橋下・大阪維新の会 三月十日、大阪市長・橋下徹が代表を務める「大阪維新の会」は、次回衆議院選挙に向けて政策集「維新版・船中八策」原案を発表した。続いて二十四日には、全国から募集した二千人あまりを塾生とする「維新政治塾」を開講、橋下は「国を変えるための戦とは選挙。大戦(おおいくさ)に備えて準備していこう」と挨拶し、国政進出の具体的な一歩を踏み出した。「日の丸」を掲げ、「君が代」斉唱で始まった開講式に続いて、堺屋太一(元経企庁長官、大阪府・市特別顧問)と中田宏(前横浜市長、大阪市特別顧問)が「統治機構改革」をテーマに初日の講義を行った。 また、四月になって大阪維新の会の幹事長・松井一郎(大阪府知事)は、次回衆議院選挙で他党と連携して過半数を目指すと発言、具体的な目標を明らかにした。目指すのは「みんなの党」や東京都知事・石原慎太郎、名古屋市長・河村たかしら、超右派の集団や政治家との連携である。 さらに橋下らは、現在停止している関西電力大飯原発の再稼働に多くの住民が反対していることを背景に、「原発」と「再稼働」を次回国政選挙の最大の焦点の一つに据えて「民主党政権を倒すしかない」などと攻勢を強めている。 ●2 「維新版・船中八策」資本・企業の利潤優先 「維新版・船中八策」とは、現段階における大阪維新の会の綱領ともいうべきものだ。「日本再生のためのグレートリセット」と題した、維新政治塾のレジュメとされているそれは、前文にあたる「維新が目指す国家像」と、「①統治機構の作り直し ②財政行政改革 ③公務員制度改革 ④教育改革 ⑤社会保障制度 ⑥経済政策・雇用政策・税制 ⑦外交・防衛 ⑧憲法改正」の八項目とからなる簡単なものであり、また、中には相互に矛盾する内容も含んでいる。 「国家像」では、「自立する個人、自立する地域、自立する国家」の実現という自己責任の徹底と、新たな国家運営モデルの構築を訴える。 ①では、「道州制」「首相公選制」「参議院改革(廃止を含む)」、②では「国民総背番号制導入」「国会議員の定数と歳費の削減」、③では「公務員の総人件費削減」「公務員労組の政治活動規制」などが主張され、つづいて④「教育委員会の抜本改革(廃止を含む)」と「首長に権限を持たせる」⑤「最低生活保障制度の創設」、⑥「衰退産業から成長産業への人材移動」「徹底した規制緩和」「自由貿易圏の拡大(TPP、FTA)」「グローバル人材の育成」、⑦「日米同盟を機軸」、⑧「憲法改正要件(九六条)を三分の二から二分の一へ緩和」などが、その主要な内容だ。 これらの総体に通底しているのは、「グローバル経済に対応するための国家改革と人材育成」であり、このもとでは格差の拡大と社会的弱者の切り捨てが大きく進行し、成長戦略という名の下に資本・企業の利潤と権益だけが優先されることは必至である。 ●3 差別排外主義、人権無視、労組潰し攻撃強める橋下 橋下徹は、二〇〇〇年代に入ってテレビなどに登場し、「茶髪、サングラスという出で立ちで奔放な発言の異色の弁護士」として知名度を上げていった。その課程でも、人権無視の問題発言・差別発言などを頻繁に行ってきた。 二〇〇八年に大阪府知事に立候補し、当選。しかし二〇一一年十一月に、府知事の任期を残したまま辞職し、大阪市長選挙に立候補。知事と市長のダブル選挙の結果、橋下が大阪市長に、大阪維新の会幹事長の松井一郎が大阪府知事に当選した。 大阪維新の会は、二〇一〇年に橋下が掲げる大阪都構想に賛同する大阪府議会の会派として登場し、四月に地域政党「大阪維新の会」となった。 一一年四月の統一地方選挙では、大阪府議会では過半数、府内の二つの政令指定都市(大阪市、堺市)で第一党となるなど、多数の議席を獲得し勢力を伸張させてきた。 橋下は、大阪府知事時代に、職員基本条例、府教育行政基本条例と府立学校条例などの制定をすすめてきた(今年三月に大阪維新の会と自民、公明の賛成で可決、成立)。 前者は、「概ね5%(の職員)を最低評価」とする相対人事評価制度や「継続して任命権者が定める基準を下回る場合」には「免職とする」などという制度を導入して職員を抑圧し、管理を徹底強化した上で、知事に忠実な職員以外はすべて免職できるというとんでもない条例だ。 後者では、「知事が府教委と協議して教育振興基本計画を作成する」「知事が教育委員の罷免権を持つ」ことなども明文化するなど、教育委員会制度を実質的に否定し、知事が教育を支配していこうとするものだ。 そして、大阪センチュリー交響楽団への補助金の廃止、府立国際児童文学館の廃止(中央図書館へ統合)など、文化事業や各種団体への助成も大幅に切り捨てた。 こうした動きは、橋下が市長に就任した大阪市においても変わることはないどころか「教育」「職員」条例案などは、よりひどい内容になっている。 橋下は大阪市長に就任すると直ちに、市庁舎内にある職員労働組合の事務所の撤去に向けて動き、職員全員に対して労働組合活動に関するアンケートに回答するよう職務命令を発令するなど、市職員と労組を敵視し労組つぶしの姿勢を露わにした。しかし、労組の激しい反撃の闘いの中で、市の非常勤職員による「労組の選挙活動資料」のねつ造事件なども発覚した。こうした橋下らの常軌を逸した、思想・信条の自由を蹂躙し、違法な手段をも活用した労組攻撃に対しては、府労委もアンケートの一時中止を勧告した。特別顧問としてこれらを主導した野村修也は、回収したアンケートや集計データを破棄せざるを得なかった。 また橋下は、府知事松井とともに、就任直後に法的根拠もない府市統合本部を設置し、大阪府内で行われている公共事業の統合や民営化、病院や大学の統合、市交通局(地下鉄・バス)の民営化、人件費の大幅削減などを行おうとしている。 四月には「三年間で約五百五十億円の歳出削減」という市政改革試案を発表。この中では、公共交通の敬老パスの半額自己負担と使用回数の制限、国民健康保険料の引き上げ、上下水道福祉措置の廃止などが盛り込まれている。 橋下は、今年四月の新職員入庁式においても「日の丸」を掲げ、新人全員を起立させた上で「気を付けの姿勢で」と訓示して「君が代」を斉唱させた。入学式や卒業式での「君が代」の強制と、それに抵抗する教職員への処分も含めて、きわめて不当な強制を繰り返している。 さらに、私立高校授業料無償化の対象から朝鮮学校を排除するなど、排外主義・民族差別を扇動し続けている。 こうした橋下らの言動は、在特会などの排外主義右翼集団のそれと全く同じだ。 原発に関して見れば、「維新八策」にも「脱原発依存」は盛り込まれている。しかし「原発に代わる代替案」というエネルギー政策としては、既存の化石燃料や自然エネルギーの活用という程度のことであり、実際には中東諸国からのガス輸入への依存などを想定している。問題は「日本の競争力を弱めない」ための安全なエネルギーの安定的な確保のために「日米同盟を基軸」にしていくということである。つまり、軍事力を以てエネルギーの確保を狙っているということだ。そして核武装論者である橋下が狙うのは、歴代の政権がやってきたような原発の研究・開発を隠れ蓑にした核技術の開発などではなく、核兵器の開発そのものを真正面から訴え、人民をそこに取り込んでいくことだということを見抜いておかねばならない。 今年になって市民団体「みんなで決めよう『原発』国民投票」が橋下徹・大阪市長に直接請求した市条例制定について、橋下は反対の立場をとり、反・脱原発の住民運動には敵対している。 彼の言う「脱原発依存」とは、必ずしも原発を止めることではなく、原発問題を国政選挙に流し込んで争点化することなのである。 ●4 福祉切り捨て、利益優先、新自由主義政策の推進 橋下らの主張は、現在までの約二十年におよぶ日本資本主義の危機を、幕末・開国、第二次大戦敗戦に続く「第三の敗戦」と位置づけるものである。そして、自民党から民主党への政権交代も含めて、共産党以外の政党が一度は政権の枠組みに加わったが、今の日本の危機には対応できていないと総括する。それゆえ「人事の交代や政策の変更ではなく、体制(システム)を変えること」が必要だと主張する。(橋下・堺屋『体制維新―大阪都』文春新書など) 何のことはない。帝国主義間競争の激化の中で、ブルジョアジーたちが自らの権益を守るために繰り返し主張してきたことの焼き直しにすぎない。 従って、「大阪都構想」「道州制」などの実現などは、あくまで彼らが唱える国家改造の一つのモデルケースとしてあるのだ。 橋下が知事在任中、大阪府の予算では、教育や医療・福祉予算を削減しつつ、高速道路、ダム、鉄道の整備などの大型開発プロジェクトを残し、国際経済特区構想、大阪湾ベイエリア開発などをすすめてきた。 また、大阪府と大阪市には、二十数名の特別顧問や参与が起用されている。とりわけ、堺屋太一、上山信一(慶応大教授)、古賀茂明(元経産省官僚)など中心的な七名は府市特別顧問となっている。元中央省庁の官僚であり、小泉内閣をはじめとしたかつての自民党内閣のブレーンをつとめていた人物が多数起用されているのも特徴の一つだ。そして彼らに共通しているのは、「国でできなかったことを地方(大阪)でやる」「大阪を突破口にして国を変革する」という意識だ。 福祉・住民保護政策を削減し、規制緩和と物流・人流インフラの整備、企業誘致などを推進して都市間国際競争にうち勝つ大都市の形成をめざす、という新自由主義政策そのままである。「大阪を変え、大阪から日本を変える」というのは、こういうことなのだ。 ●5 反橋下掲げ起ちあがる労働者人民 こうした動きに対し、大阪では、橋下の知事在任中から、自治体労働者・教育労働者を中心に、とりわけ「日の丸・君が代」の教育現場への強制とそれに抗う教職員に対する処分の攻撃に対して、激しい抵抗がわき起こっている。そしてそれは、大阪府内だけではなく、全国規模の闘争として闘われている。もちろん、公立学校の教職員たちは、「処分」を覚悟の上で卒業式・入学式で「日の丸・君が代」の強制に反対して堂々と闘った。 また、三月十六日には、大阪全労協を含む在阪七労組(大阪労連・大阪全労協・全港湾関西地本・国労近畿地本・全日建連帯近畿地本・関西マスコミ文化情報労組会議・おおさかユニオンネットワーク)が共同して闘いに立ち上がった。大阪市に対する申し入れと約四百名の参加で市庁舎前での大宣伝行動とを行い、大阪全労協傘下の大阪教育合同労働組合の組合員たちは、終日ストライキを闘い抜いた。 さらに、庁舎内からの立ち退きを求められている自治体各労組も、その不当性を裁判や労働委員会で争うなど、各現場で抵抗の闘いは続けられている。 先に見た「職員アンケート」問題も、こうした闘いの中で、橋下らの目論見を断念に追い込んでいったのだ。 ●6 労働者人民の闘いで、橋下・維新の会打倒 自治体・教育労働者や労組が、橋下や大阪維新の会の真の狙いを明らかにし、個々の攻撃に対してねばり強く闘っていくことは非常に重要なことだ。そして、全国の労働者・労組がここに合流し、大阪の闘いを支援し、ともに闘って勝利していくこともまた重要だ。 他方で、大阪維新の会が目指しているものが、一地方自治体の改変などではなく、日本全体の「国の仕組み(体制)」を根本から覆そうとしてるものである以上、これと闘う視点・態勢を広範に構築していかなければならない。 橋下らのねらいは、新自由主義のもとで日本社会を改造していくことにある。この延長線上には、貧困と格差の拡大があることは明らかだ。かつて小泉純一郎が「構造改革」と称して行った新自由主義政策の帰結が、二〇〇八年後半から大量の「派遣切り」にあらわれた労働者人民の困窮の深まりであったことは記憶に新しい。しかし、貧困と格差の拡大に対する大衆的批判を背景にして誕生した民主党政権は、自民党政権と何ら変わらず、人民の期待を裏切って社会の閉塞状況をますます深めていることもまた、我々の眼前の現実である。 ここにおいて橋下らは、再び新自由主義を強固に推進し、貧困と格差とを労働者に押しつけようとしている。そしてこれは、財界の強固な要求でもある。 我々はこれに抗し、安心して働き人間らしく生活できる社会を目指していく闘いを提起し、実践していかなければならない。 |
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