共産主義者同盟(統一委員会)






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   コンピューター監視法

   治安弾圧の拡大・強化許すな

              




 九月二日、野田政権が発足した。野田は、3・11原発震災下にあって原発再稼動を公言し、米軍再編においては、沖縄人民の反基地の意思を踏みにじって、日米合意を実行する方針を明確にしている。震災復興を口実とした大増税策動、「産業空洞化」対策を口実とした大資本優遇の姿勢など、あらゆる面で日帝ブルジョアジーの利害を前面に打ち出す政権としての性格は明確である。
 旧来秩序の流動化と、3・11を画期とする社会的な大混乱の中で、ブルジョアジーは自らの階級支配を維持するために、労働者階級人民のたたかいに敵対し、弾圧を繰り返している。座り込み闘争を続ける高江住民への「通行妨害」を口実にした不当な起訴攻撃、関生支部への弾圧、現闘本部裁判弾圧、そして、この間の反原発デモで繰り返される執拗な弾圧攻撃。これらの攻撃が、地域住民の生活を破壊し、日帝ブルジョアジーの利害を貫徹させるためにふりおろされている。
 そして、この間、「アラブの春」をはじめ、反原発運動でも労働者階級人民が闘争に立ち上がっていく中で、フェイスブックなどインターネットが広く活用されるようになっている。変化する社会状況に対応する権力側の必要から、日帝国家権力は新たな弾圧体制の構築を策動している。われわれには、こうした治安弾圧立法を許さないたたかいを前進させることが求められている。

 ▼1 権力の監視強化を弾劾する

 この原発震災下、六月十七日に「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」、いわゆる「コンピュータ監視法」の成立が強行された。
 これは、二〇〇三年に国会に提出されたが、大衆的な反対運動の力によって、過去三度にわたって粉砕されてきた「共謀罪」法案の一部である。「共謀罪」法案が「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」という名称であることからも分かるように、今回、成立強行された法律は、共謀罪に関する部分のみを切り取ったものである。
 その内容は大きく二つある。第一は、「コンピュータ監視法」の通称が明確に示しているように、コンピュータを利用した通信にかかわるものである。そして第二は、強制執行妨害関係の罪について、処罰対象を拡大し、重罰化を強行していることだ。
 まず、第一のコンピューター監視法についてである。これは以下の二点が軸となっている。一つには「コンピュータウィルスの作成・供用などの罪」を新設したこと。二つには、この罪の新設に基づいて、差し押さえの方法・権限を拡大・強化していることである。以下で、具体的に見ていこう。
 まず一点目として、今回の改正で刑法第百六十八条の二が新設されている。法文としては、「正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処す。一、人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な電磁的記録……(以下、略)」である。これが、いわゆる「ウィルス作成罪」である。次に第百六十八条の三「ウィルス取得罪」を見ると「正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管したる者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」となっている。
 「正当な理由なしに」という文言があるが、何を正当な理由として認めるのか、何を正当な理由でないと判断するのか、その基準は、全く法律にかかれていない。つまりその解釈は、そのときの政府の解釈により変わるし、実際に運用する法務・警察官僚や現場の警察官の判断に任せられる。これこそが核心なのだ。あらゆるプログラムにはバグ(誤り・欠陥)がある可能性がある。そして、自分のコンピュータにウィルスが入り込む可能性は誰にでもある。「ウィルス作成罪」や「ウィルス取得罪」などという新しい犯罪を作り出すことで、コンピュータを使用した民衆同士の通信を監視する根拠を作り出したのだ。
 そうした「犯罪の摘発」を口実にして、権力が狙いをつけた民衆の通信を日常的に監視し、たたかう労働者階級人民への弾圧に利用するのは目に見えているではないか。まさに権力を白紙委任するもので、絶対に認められないものだ。
 さらに二点目として、このようなウィルス作成罪や保管罪を「摘発」するために、捜査権限が大きく拡大強化されたことだ。これは重大だ。調べられる本人も分からないところで、通信履歴などが警察に調べられるのだ。
 警察による捜索・押収は、令状主義として、制限されているのが原則である。裁判所が出す令状に明示された捜索する場所と押収するもの以外には、警察独自の判断で持ち出すことは許されない。コンピュータ監視法では、その原則を取っ払って、大幅な権限拡大を警察に許しているのである。これらは具体的には、刑事訴訟法の法文に新たな一項目を加えるという形で行われている。例えば、刑訴法第九十九条第二項の規定では、権力が狙うデータを差し押さえるには、当該コンピュータだけではなく、それに接続しているパソコンや、さらにはサーバーなどまで、思うままに捜索できるようになっている。
 また第百九十七条には第三項が追加され、通信履歴の保全要請をプロバイダに要請できる権限が与えられている。これは裁判所の令状なしで警察独自の判断で行えることになっており、裁判所の規制すら外された権限―労働者階級人民を監視する権限を警察組織そのものに与えている。
 こうした改悪を推進する法務官僚や学者どもは、「差し押さえは限定的に裁判所の許可を得て行われるもので、無限に捜査の幅が広がることは無い」などと言っている。こうした宣伝の欺まんを暴露し、弾劾していかなければならない。
 まずそれは、裁判所が検察・警察の言いなりで捜索令状を出す実態を無視し隠蔽する意図に貫かれている。警察と裁判所の癒着の実態を隠蔽させてはならない。この間の反原発デモに対する弾圧、三里塚闘争への弾圧で、裁判所がどのような振る舞いを見せてきたのか。警察の言うままに令状を出し、勾留決定を乱発してきたではないか。家宅捜索においては、事件に関係の無いものまで押収していくのが警察権力の実態である。裁判所の許可によって、警察の捜査権限に枠をはめるというのは幻想に過ぎないのだ。
 「無限に捜査の幅が広がることは無い」などというのもまやかしだ。治安弾圧で重要なのは、現在の体制秩序を維持するために、権力が恣意的に狙った対象をいつでも弾圧できるという条件だ。治安当局は、このような条件を獲得するためにありとあらゆる策動を行ってきた。コンピュータ監視法も、まちがいなくその一環として位置づけられ成立を強行してきたのだ。労働者階級人民のたたかいを押しつぶそうとする治安弾圧立法を徹底弾劾しなければならなない。

 ▼2 闘争つぶしの重罰化を許すな

 次に、強制執行妨害関係について見ていく。重要なのは次の二点だ。
 まず第一に、刑法第九十六条の封印等破棄について、従来の規定では「二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金」だったが「三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と重罰化されている。第二には、第九十六条にて項目が新設され、その第三項では「偽計又は威力を用いて、立ち入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、三年以下の懲役 若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」となっている。
 われわれは、こうした重罰化を弾劾する。自らの職場を根拠に正当な権利を要求してたたかう労働者、あるいは農地を武器にしてたたかう三里塚農民のたたかいを刑罰の対象にし重罰というどう喝をかけてきているのだ。労働者階級人民のたたかいを抑圧する重罰化を許してはならない。重罰化規定の適用・執行を阻止する陣形を作り出していこう。

 ▼3 共謀罪新設を許すな

 今回の「コンピュータ監視法」自体がもつ不当な罪の新設、捜査権限の拡大、罰則強化を弾劾しなけれならないが、課題がそれに留まらないことを、はっきりと見なければならない。それは、法務・警察官僚どもが狙っているのが、共謀罪の新設であるということだ。
 われわれは、断固として共謀罪の新設を阻止していかなくてはならない。過去三回の上程に対して、断固たる反対運動が展開され、すべて廃案に追いやってきた法案である。
 あらためて共謀罪の本質を暴露・弾劾し、断固として新設阻止をたたかって行こう。
 共謀罪は九九年八月に強行された「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制に関する法律」の改正案として出されようとしている。核心は第六条の改悪だ。現行では「次の各号に掲げる罪で、これに当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものを犯す目的で、その予備をした者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首したものは、その刑を減軽し、又は免除する」として、一号に殺人罪、二号に営利目的等略取及び誘拐の罪が記されている。
 法務・警察官僚どもは、この第六条に次の一項を加えることで「共謀罪」を新設しようとしている。すなわち「第六条の二 次の各号に掲げる罪にあたる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀したものは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首したものは、その刑を減軽し、又は免除する。/一 死刑若しくは禁固の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁固/二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁固の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁固」である。具体的には、窃盗・恐喝をはじめ建造物等損壊、有印私文書偽造など五百六十近くの罪が、該当することになる。刑法で規定されている罪の大半について、新たに共謀罪を作るというのだ。
 これは単なる「刑法改正」ではない。現行刑法の体系では、起こった犯罪を処罰するのが原則になっている。これに対し、共謀罪は、実行していないのに「共謀」しただけで罪にするという規定だ。その共謀罪を、刑法で規定されたほとんどの罪について新設するというのだ。まさに、現行刑法の体系そのものを根本から覆す大改悪である。この悪辣な本質は、次のような法務官僚自身の言動にも表れているだろう。すなわち、日帝の法務官僚自身が、国際組織犯罪防止条約の検討段階では「すべての重大犯罪の共謀と準備の行為を犯罪化することは、我々の法原則と両立しない。わが法制度は、具体的な犯罪の実行になんら関係のない一定の犯罪集団への参加の行為を犯罪化するなんらの規定をも有していない」といっていたのだ。
 かつて「団体」への弾圧立法としては、昭和初期の治安維持法があった。戦前の治安弾圧体制の象徴であった治安維持法では、ある団体を弾圧対象と規定するには「国体を変革することを目的として結社を組織したる者」などの条件があった。しかし共謀罪では、こうした「団体」の目的すら問うことなく、罪が成立することになっている。二人以上の人間が集まれば、サークルだろうが、労働組合だろうが、はては友人や家族といった関係さえ「団体」に当てはまるのが共謀罪である。つまり、警察権力が弾圧しようと狙う人間関係はすべて、共謀罪が対象とする「団体」として弾圧の対象にするということだ。
 さらに重大なのは、共謀罪の新設によって、警察権力の捜査権限が大幅に拡大することだ。犯罪行為を罰するためには、その行為が行われたことを立証しなければならない。しかし共謀罪では、話し合ったこと自体が罪になるのだ。なにをもって「共謀」したことを立証するというのか。普段われわれが会話しているなかで、何らかの記録として残るものがどれくらいあるだろうか。会話したことやその内容は、一般的に「物証」として残らない。
 そこで共謀罪を立件するために必要な証拠を手に入れるために「新たな捜査手法」が必要だとして、盗聴法の強化や司法取引、さらには虚偽証言の犯罪化、黙秘権の否定までとんでもない政策が政府内で研究されている。
 このような反人民性に貫かれた共謀罪を、法務官僚が何を根拠に出してきているのか。その唯一の根拠は国際組織犯罪防止条約である。しかし、その成立過程では米帝を先頭とした帝国主義国の警察官僚どもが「対テロ」を口実に、帝国主義の支配秩序を維持することを目的にし、そのための治安弾圧体制を構築することだけが追及されてきた。これに加えて、この条約を批准するために必ず「共謀罪」の制定が必要だという、法務省の宣伝は全くのデタラメであることも暴露しておかねばならない。
 反人民的なプロセスで形成されてきた国際組織犯罪防止条約をもって、労働者階級人民のたたかいを弾圧する意図に貫かれた共謀罪を、こっぱ微塵に打ち砕いていこうではないか。

 ▼4 国会再上程策動を粉砕しよう

 成立強行されたコンピュータ監視法案の審議期間は、衆参両院でわずか六日間である。短期間でろくな審議もせず、成立が強行された。この審議過程で、日帝支配階級が何を画策しているのかが明らかとなっている。それは、なんとしても共謀罪を成立させるということだ。自民党は原発震災下において「原発テロに対処するために共謀罪が必要」などと叫び、当時の法相であった江田は「自公政権時とは異なった共謀罪新設」を目指していると公言している。
 過去三回にわたる共謀罪新設策動の中で、法務省原案が出され、それに対して民主党からは修正案が出されてきた。おそらく今後出される「民主党の共謀罪法案」はこの修正案を土台にして作り出されてくるだろう。民主党の修正案は、次の点を中心に修正を求めていた。対象犯罪をさらに絞りこむ、共謀以降の顕示行為を要件とする、組織犯罪集団規定を見直し国際的犯罪に限定するなどである。
 しかし、「話し合っただけで罪にする」という共謀の単独処罰という本質は一切変わらない。たとえ越境性が条件に加わったところで、それは労働者階級人民のたたかいに対する弾圧手段である。とりわけ現在は、沖縄・岩国・神奈川の住民が韓国をはじめとしたアジア各国の反基地住民闘争と実践的な連帯関係を構築しながら、反基地闘争の前進をかちとってきているのだ。労働者階級人民の国際連帯闘争が前進している中で、共謀罪の新設など絶対に許してはならない。
 四たびの「共謀罪」国会上程を許さない広範なたたかいを作り出していこう。



 

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