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   日帝の障害者政策を打ち破ろう

  震災、原発による労働者階級人民への犠牲の押し付けを許すな

                       川原 涼



 ●第一章 震災下、障害者の現状

 全国の同志、友人のみなさん!
 三月十一日東北地方、太平洋沖を震源とする大地震が発生した。数波にわたる大津波、大火災などを引き起こした今回の地震では、障害者の避難生活、地域生活に甚大な影響があり、まさに地域での差別と闘いつつ、自らの命をも自分で守らねばならないという切羽詰まった状況の中で、障害者は必死に生きざるを得ない現実にぶちあたっている。福島第一原発事故における放射性物質汚染、拡散に伴う農業破壊、漁業破壊、生命、健康破壊、警戒区域設定等、甚大な被害と格闘するすべての人々への救援運動、反原発運動の圧倒的な推進等と合わせ、闘わなければならない。特に、震災を契機とする東北地方での米軍、自衛隊による「制圧」が行われる一方、根拠も示さず線引きによる避難区域、警戒区域設定による立ち入り規制が行われてきた。労働者人民に対する言論統制などの治安強化は、かつてない規模と早さで襲いかかってきており、障害者総体に対する戦時抹殺体制は、いよいよ激化している。確実に長く続くであろう被災者への救援と、震災後の戦時体制との闘いに勝利しなければならない。
 震災の現実は、すさまじい。
第一に、障害者の現実である。障害者が生きて生活する場そのものが奪われ、生き死にの瀬戸際のなかにいるという現実である。
 特に施設、作業所が被災した障害者にとっては、選択肢そのものがない。在宅障害者は、訪ねてくるはずの行政の担当者は現れず、孤立を物理的に強制される。避難所はバリアフリーがない場所が多く、車いす障害者などが自宅に戻るという事も報告されている。
 「避難所から自宅へ戻った被災者が物資不足で困窮している。救援物資は避難所に優先的に配分され、在宅被災者向けの量が少ない。さらに物資があっても配分する人手が足りず、各世帯までなかなか届かない。在宅被災者からは「餓死しかねない」という声も上がっている」(四月九日『毎日新聞』地方版)とあり、在宅障害者にあってはさらに深刻な事態である事が容易に想像できる。
 停電による生命維持装置の稼働停止、介護者の不足、あるいは介護者そのものが獲得できないという現実は、障害者の生き死にに直結する。人工呼吸器などを使用せざるを得ない重度の障害者にあっては、まさに生き死にの瀬戸際である。
 四月十六日付『東京新聞』によれば、三月十一日地震当日、茨城県日立市内の病院が停電し、入院していたALS・(筋萎縮性側索硬化症)患者の人工呼吸器が停止し、残った医師達がが五秒に一回二十三時間手動ポンプを押し続けたという事も報告されている。
 四月九日付河北新報によれば、四月七日深夜に起きた余震後、山形県の女性(六十三歳)が「心肺停止状態で見つかり、死亡が確認された。装着していた酸素吸入器が、余震による停電で止まったためとみられる。重度障害者支援の不備は大震災後も指摘されていたが、教訓は生かされなかった」という。障害者は常に生死の際にたたされる事を余儀なくされて、地震後の生活を格闘して生きざるを得ないのだ。
 また、健全者との共生共闘のとりくみが組織されず、介護者との信頼関係が構築されない中、「避難所にいることができず、親族の家でも断られ、行き場のない精神障害者もいる。誰の支援も受けられず孤立した障害者が多くいる」(四月八日『毎日岩手』)事も報告されており、まさに地震後の地域社会が壊滅的に崩壊するなかで、行き渡らなければならない情報が断ち切られ、介護者との交通形態も構築されず地域的孤立を強いられる現実の中で生きざるを得ない恐怖が精神障害者の前にある。凄まじい現実が精神障害者をのみこんでいる。
 また、聴覚障害者には欠かせない手話通訳士の不足が、深刻な事態を引き起こしていることも報告されている。また、介護そのものの人手が足りない中、とりわけ入浴介護をいまだに受けられず着の身着のままを強いられる障害者が数多く存在する。
 原発崩壊による放射能汚染による農産物の出荷制限が各地で相次ぐ中、原発から五十キロ離れた福島県二本松の障害者施設でも、震災以来やっと三月二十五日に県産大豆による豆腐の生産を二十五日に再開したものの、出荷制限などの影響で客足がのびないという(四月七日読売)また同じ福島県郡山市の作業所においても生産されたブロッコリーやクキタチナなども出荷制限をうけているという。また、作業所がいわゆる農家ではないため、農協からの「つなぎ融資」も受けられず、まさに作業所の存続自治が危機におちいるという事態に直面しているのだ。
 第二には、震災による被災者の多くが、いわゆる社会的弱者に集中しており、また原発事故の犠牲も末端の労働者に集中されているという事態である。
 とてつもない数の被災の犠牲。製造業破壊による生産停滞、大失業問題。そして原発崩壊、放射能汚染拡大による生命、健康の破壊。農業、漁業破壊など多くの労働者階級人民、「社会的弱者」と言われる人々に犠牲が集中している。
 福島原発においては、三月二十四日水蒸気爆発の後処理に追われた三人の労働者が、高濃度に汚染された地下水の中で作業していて被曝したと報じられた。長靴を履かされていなかった。原発は労働者の被曝によって成立している産業である。東電社員ではなく、下請け、孫請けの作業員が、作業に必要な情報は知らされず、十分な指導、教育も受けずに、生活のために被爆覚悟で作業を行う。被爆しても労災認定も受けられず、多くが何も知らされる事なく犠牲を強制されている。東電は、事故以後においては「一日四十万出す」という募集で、危険を承知で作業員を募集していることも報告されている。また、四月二十日『東京新聞』によれば、「政府が一時、志願して現場で救命活動にあたる民間作業員や公務員に限り、放射線の被爆線量を『限度なし』とするよう検討していた事がわかった」という報道もある。まさに神風特攻のイデオロギーを「国難」を名目に労働者人民に強制するファシズムが横行している。
 第三には、被災地には戦時体制の強化、治安維持のための戒厳令体制がしかれていることだ。
 日米共同作戦による東北における軍事的「制圧」、多くの民間ボランティアが被災地に近づけないなか、自衛隊、米軍による救援活動の「感動秘話」が再生産されている。さらには、風評被害や、ネット上での「流言飛語」などを根拠にしたネット上における言論統制が横行している。四月六日、総務省は、総務省総合通信基盤局長名の通達で、インターネット関連業者に対して、「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する電気通信事業者関係団体に対する要請」なる通達を配布した。通達は、「国民の不安をいたずらにあおる流言飛語が、電子掲示板への書き込み等により流布している状況に鑑み……サイト管理者等に対して、法令や公序良俗に反する情報の自主的な削除を含め、適切な対応をとることを要請し、正確な情報が利用者に提供されるよう努めることとされています」としている。通信事業法第四条違反、あるいは憲法二十一条の「通信の秘密」をおかす重大な憲法違反をおかしつつ、震災情報、あるいは原発の放射性物質拡散を規定する気象情報などを隠蔽し、震災、原発事故における治安維持、言論統制をつよめている。
 原発利権によるばらまきと、欺瞞のエネルギー政策、「安全、安心、コスト安」のまやかしで地域経済を原発に依存させ原発を推進してきた階級的犯罪を、徹底的に断罪しなければならない。多くの労働者人民に利権のうらで生命をむしばむ被ばくを強制し放射能の拡散による人間の尊厳をもてあそんだ犯罪を明らかにし、完全な補償をかちとらねばならない。
 政府・電力会社は、原発から半径二十キロメートル圏内の人々に対して、理不尽な警戒区域設定を強い、同時に、日々の生活を平穏に暮らしたい人々に容赦のない放射能汚染の拡大を強制し、住民は生命、健康への甚大な被害を強制されている。一刻も早い全面的な補償を行わせなければならない。
 第四には、差別排外主義、民族排外主義の横行を断じて許してはならない。甚大な被災を被った多くのひとびとは、当然日本人だけではない。多くの外国人・在日朝鮮人も同じように被災した。そのなかで、在日も日本人も同じ命を救おうと、在日朝鮮人の人々が力をあわせて、ともに救援をおこなった。四月四日付『京都新聞』においては、「宮城県と福島県の朝鮮学校が校舎などを避難所として開放。日本人を受け入れたり、支援物資を各地に配ったりして力になっている。『民族を問わず命を救いたい』在日朝鮮人たちの思いは一つだ」の記事が掲載されている。こうした中、三月三十日埼玉県上田知事が埼玉朝鮮初級学校に対する助成金の二〇一〇年度分の支給を保留する意向を学事課へ伝えた。四月一日には、被災地である宮城県は二〇一一年度当初予算に計上されていた東北朝鮮初中級学校への補助金を交付しないと決定した。宮城県知事はマスコミの取材に「二二年度分については人道的な見地から交付した。二三年度は条件に合わないことから交付しないこととした」と説明した。宮城県知事は二〇一一年一月にも性犯罪者にGPSの携帯を義務づけ、常時監視する条例制定に動くという報道もあり、今回は、在日朝鮮人に対する言われない排外主義を前面化させてきている。震災における世界的な救援運動が叫ばれている中で、戒厳令的監視体制、言論統制、排外主義を前面化した治安強化が横行している。われわれは、こうした戦時体制を徹底的に打破しなければならない。


 ●第2章 障害者基本法改悪案を許すな

 四月二十二日、この間、障害者当事者も交えた「障害者制度改革推進会議」の中で議論してきた障害者基本法の改悪案が、震災の混乱に乗じて閣議に提出され、閣議決定された。その日のうちに衆議院送付された。この法案は、徹頭徹尾障害者差別法である。
 障害者制度改革推進会議こそは、障害者が自立支援法で被った経済的負担などの損害賠償請求訴訟をとりさげるなかで、民主党政権がたちあげた障害者権利条約の批准、差別禁止法などの法的整備を内閣主導で行う障害者をも巻き込んだ政策会議である。日帝の障害者政策の基本的方向性を規定するものと言える。
 以下、この法案について具体的な項目での批判をあげると、
 ア)まず第一条関係の「目的」条目の項では、基本法の目的について「障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること」とある。これは障害者当事者のためではなく、障害者の「自立および社会参加の支援」という事が目的と謳われていて、障害者そのもののための法律ではない事がまず規定されている。
 イ)旧第三条において展開された「基本理念」の項目においては憲法二十五条での「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の重大な侵害、障害者の地域における生活権の重大な侵害を公然とおかす事を宣言している。
 「地域社会における共生など」とされた条文では、「二 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することができること」とある。地域での生活全般について、「選択の機会が確保され」るというのは、あくまで機会が確保されることが強調されているのであり、無条件ではない。「可能なかぎり」という文言によって制限が常態的に固定化される事を前提とする。
 ウ)また基本的理念条項ではあらたに新法案では「差別の禁止」と言う項目が設定され、「2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について合理的な配慮がされなければならないこと」と替えられた。
 「社会的障壁の除去」いわゆるバリアフリーに関して、「その実施について合理的な配慮」を要求している。これは、障害者にとっての差別の禁止という角度から地域社会を整備する気は全くない事を意味する。
 エ)また、この法案において、障害者の法的地位を差別的に細分化する事を規定している。
 特に「障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて」という表現が至る所にちりばめられている。第八条関係の「施策の基本方針」、十二条関係の「医療、介護」、十四条関係「教育」の項目などにおいてそうした表現が散見される。また十六条関係「雇用の促進等」においては「障害者の特性に応じて」という文言を添えて、「個々の障害者の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならないこと」とある。これは明らかに障害者を障害別にふりわけ、日帝足下における労働者として資本につかえる部分をよりわけ、教育、医療、介護、雇用その他あらゆる生活分野において、障害者を管理する事を狙うものである。
 オ)一方においてこの法案では、第十九条関係「情報の利用におけるバリアフリー化」において障害者に提供する情報の統制を行う事を宣言する。特に非常時、災害時においては「安全を確保するため必要な情報」と前置きし、「特に配慮する」として情報社会の中で障害者の生活環境を管理していかんとする。
 「2 国及び地方公共団体は、災害その他非常の事態が生じた場合に迅速かつ的確に障害者に伝えられるよう必要な施策を講ずるものとする……」
 カ)この法案は障害者差別法そのものである。
 二十三条関係の改悪案では「1 国及び地方公共団体は、障害の原因となる傷病及びその予防に関する調査及び研究を促進しなければならないこと。2 国及び地方公共団体は、障害の原因となる傷病の予防のため、必要な知識の普及、母子保健等の保健対策の強化、当該傷病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなければならないこと」とある。
 障害の発生予防、優生思想を地でいく差別的な内容である。
 障害者を、日帝足下の差別的能力主義社会の中にいかに位置づけ、法的地位をいかに管理して統治していくのか、という問題意識のもと、精神障害者以外の障害者を位置づけた法案である。医療観察法とあわせ障害者総体を統治していこうとする日帝の戦時政策を粉砕しなければならない。


 ●第三章 震災以降強まる戦時的統制体制粉砕

 すべてのみなさん。これまでも見てきたように、震災を契機とする統治再編の動きは、大きな地響きをたてて労働者人民に襲いかかってきており、障害者総体においても、戦時体制の強化が急速に進行し始めている。被災した岩手には独立行政法人国立病院機構・花巻病院があり、医療観察法における保安施設がある。そこに強制入院させられている精神障害者も、この大災害の中で不安な日々をおくっていると察せられる。二〇〇八年六月千葉県の柏水会初石病院においても、精神科閉鎖病棟において火事があり、鍵をかけられたまま男性患者が焼死するという事件があった。こうした大災害、震災が起きたとき、逃げ場のない多くの精神障害者が、鉄格子の中で殺されてきた。差別虐殺を許してはならない。
 障害者差別糾弾、解放運動勝利に向けて、われわれは地域拠点化、障害者差別糾弾、解放運動勝利、日帝打倒闘争勝利に向けた闘いを日々闘いとっている。山口においては、訪韓をはじめとした日韓連帯運動の推進、岩国基地反対運動における地元住民との連帯、上関原発反対運動の推進など、反戦反差別共同闘争の推進を最先頭で担ってきている。
 東京においても、医療観察法下、保安施設を建設する松沢病院抗議、糾弾のビラ情宣の展開、地域の路上生活者支援運動などを取り組んできている。路上生活者救援運動では、地域住民とともに駅前での声かけ、河川敷での声かけなどをおこなってきた。ある人は鮎の稚魚を獲って漁協に売り、生計をたてているという人もいる。路上生活者などの救援運動を地域的に推進し、排外主義的襲撃と対峙しながら闘っている。
 こうした取り組みを、解放運動的視座において闘いとり、差別と闘う障害者解放運動の潮流的登場を断固としてかちとらねばならない。ともに闘わん!




 

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