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  ■地方自治体で強まる排外主義の動向(熊本)

  朝鮮学校への差別・排外を許すな

  歴史歪曲教科書の採択を阻止しよう


                


 ●1 右翼排外主義に貫かれた朝鮮学校の無償化排除攻撃

 朝鮮学校への授業料無償化を巡り、地方自治体や議会でも排外主義が拡大してきている。大阪府の橋下知事や宮城県の村井知事(元自衛官・松下政経塾出身)などは昨年の十一月議会において、あいついで朝鮮学校への補助金の廃止を打ち出した。政府・自治体・右翼ファシスト団体が連携した朝鮮学校たたき、「つくる会」教科書採択を巡る排外主義攻撃は熊本でも例外ではない。昨年十一月招集の熊本県議会でもこうした危険な動きが見られたので報告する。
 十一月県議会で可決された意見書の一つが「朝鮮高級学校に関する前提条件なしの高校授業料無償化に反対する意見書」である。文科省は朝鮮学校を高校授業料無償化の対象から除外することの是非を巡って昨年五月に検討会議を設置した。検討会議は八月末に「(朝鮮高校の)個々の具体的な教育内容については基準としない」という内容の報告書をまとめた。これを受けて十一月五日に高木文科大臣は、報告書どおりに支給を認める発表を行った。熊本の県議会で採択された意見書は、無償化実施に危機感を強める右翼勢力が提出したものである。
 意見書の全文を紹介することはできないが、朝鮮学校では「金日成・金正日に対する徹底した個人崇拝」「朝鮮戦争は米国・韓国が引き起こした、大韓航空機の爆破事件は韓国のでっち上げ(中略)などの虚偽・捏造の歴史を教育し」「朝鮮学校の管理・運営は朝鮮総連の指導の下に進められており、朝鮮総連の影響は朝鮮学校の教育内容、人事、財政に及んでいる」など極右の機関紙化している「サンケイ新聞」や三流週刊誌並の記述があふれている。
 およそ県議会で議決するからには、その前提としての事実確認が必要であることはいうまでもない。朝鮮学校を抱えた他の都道府県では事実こうした調査も行われていると聞く。熊本には朝鮮学校は存在しないが、隣の福岡県には朝鮮初中級学校や幼稚園があり、調査を行うことが簡単にできるのである。しかし、県議会では十一月二十三日に発生した延坪島砲撃事件に触発されて、こうした冷静な事実確認すら行われてはいない。
 さらに意見書では「(朝鮮学校を)授業料無償化の対象とするか判断するに際しては、教育内容の是正および修学支援金が生徒の授業料の支払いに充当されることの審査を前提とすべき」であり、これを受け入れないなら無償化すべきではないと結論づけている。
 意見書は驚くべき無知をされけ出しながら人権侵害を引き起こしている。朝鮮学校は朝鮮民主主義人民共和国政府が管理する学校ではなく、日本の学校教育法に基づく教育機関であるということを理解していない。生徒は韓国籍が最も多く、朝鮮籍が続き、日本籍の人も。「私立学校法」により、私立の高校や専修学校、各種学校については、所管の知事ですら教育内容の変更を命ずることはできない。朝鮮学校にのみ、教育内容の是正を求めることは法令違反だ。こういうことを許せば、他のすべての外国人向けの学校でもその教育内容が「反日的」であるとして、それぞれの教育内容に介入する道を開くことになる。さらに、朝鮮学校への差別は、国連による日本政府への人権状況改善の勧告にも完全に背くことであり、国際的にも恥ずかしいことだ。
 十一月二十四日に菅首相が延坪島砲撃事件を口実に、朝鮮学校への高校無償化制度適用プロセスを停止するよう文部科学省に指示したが、これは一種の「超法規的措置」であり、許されるものではない。そもそも「高校無償化制度」の趣旨は、家庭の状況にかかわらず、すべての高校生が安心して勉強に打ち込める社会を築くこと、そのために家庭の教育費負担を軽減し、子どもの教育の機会均等を確保するところにある。すでに政府内での検討も終わり、朝鮮学校からの手続きも済んで支給するところまで進んでいたものを、政治的な理由で中止することは法治国家のなすべきことではない。菅首相のこの発言が、全国の地方議会や首長の朝鮮学校への排外主義的な対応を助長したのである。
 本会議でこの意見書に反対したのが、新社会党の岩中県議(荒尾市選出)ただ一人であったことにも驚きを禁じ得ない。(共産党は議席がない)


 ●2 歴史歪曲教科書の強要は教育への不当な介入だ

 さらに、十一月県議会へ右翼団体の日本会議熊本から提出された「教育基本法・学習指導要領の目標を達成するため最も適した教科書採択を求める請願」も岩中県議以外の議員の賛成で採択された。
 この請願は、今年春に行われる中学校の教科書採択を巡り、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)が数年前に分裂し、そのうちの一派「教科書改善の会」が育鵬社から出版する教科書を採択させることを狙う請願である。日本会議は機関誌などで育鵬社の教科書を支持する活動を繰り広げている。特定の教科書発行者と結びついた売り込みといえるものであり、教育への不当な介入に他ならない。同種の請願は宮城県議会へも右翼団体から提出されている。日本会議が全国的に行った議会対策の一つであろう。
 どの教科書を採択するかは教育内容に関わることであり、それについて議会が決議するのは、教育基本法一六条(四七年教育基本法一〇条)が禁止する「不当な支配」にあたる。県議会で決議すべきことではない。そもそも教科書検定に合格した教科書は「教育基本法・学習指導要領の目標を達成する」教科書である。このような請願は自己撞着であり無意味といえよう。そこに日本会議の焦りが見える。
 問題なのは、これに当然反対する立場にある教組推薦の議員が「何の問題もありません」とこの請願に賛成していることだ。自民党が圧倒的多数を占める県議会ではあるが、民主党政権になって「与党意識」が芽生えたのかどうかわからないが、社民党や民主党の影響下にある議員たちの排外主義への屈服は目に余るものがある。
 今春には中学校の教科書採択が始まる。「つくる会」分裂により、歴史・公民の「あぶない教科書」が四種類も登場することになりそうである。独島(竹島)、釣魚台(尖閣諸島)、北方領土が「日本固有の領土」であるとの記述や、愛国心をすべての教科で取り上げることなどを巡り、偏狭なナショナリズムと排外主義が吹き荒れようとしている。
 ポピュリズムを背景に登場した知事や首長が増えつつある中で、地方議会での排外主義の跳梁を許さない闘いが求められている。



  〈資料〉
 教育基本法・学習指導要領の目標を達成するため
 最も適した教科書採択を求める請願


 [要旨]文部科学省は、教育基本法および学校教育法の改正、学習指導要領の全面改訂を受け、平成二一年、新しい教科書検定基準を告示しました。文部科学省教科用図書検定審議会は、教育委員会が装丁や見栄えではなく、内容を考慮した綿密な調査研究を公正かつ適正に行い、適切な教科書を採択していくことや、教育基本法の改正内容や新学習指導要領に基づく検定審報告書を参考に適切な採択を行うよう求めています。つきましては本県におかれましても、新教育基本法、新学習指導要領の目標を達成するため、最も適した教科書採択が行われるよう要望いたします。
 [理由]教育基本法および学校教育法の改正、学習指導要領の全面改訂を受け、文部科学省は、平成二一年、新しい教科書検定基準を告示しました。その中で、教科書は「公共の精神を尊び、国家社会の形成に主体的に参画する国民」および「我が国の伝統と文化を基盤として国際社会に生きる日本人」育成のため、豊かな情操と道徳心、伝統文化の尊重や我が国と郷土を愛することなど教育基本法の目標と一致していなければならないと定めています。
 文部科学省教科用図書検定調査審議会は、教育委員会が装丁や見栄えではなく、内容を考慮した綿密な調査研究を公正かつ適正に行い、適正な教科書を採択していくことや、教育基本法の改正内容や新学習指導要領に基づく検定審報告書を参考に適正な採択を行うよう求めています。
 以上を踏まえ、教育委員会におかれましては、検定審の提言を踏まえ、教育委員・学校関係者への教育基本法改正・学校教育法改正・学習指導要領改訂について内容の周知徹底を行うとともに、教育基本法の目標や学習指導要領の目標や内容を達成するため、最も適した教科書を採択していただくよう求めます。
            請願者 日本会議熊本 会長



 

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