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  ■新「防衛計画の大綱」批判

  朝鮮戦争絶対阻止! 「動的防衛力」構想粉砕!



 十二月十七日、菅政権は二〇一一年以降十年間の防衛政策の指針を示す新たな「防衛計画の大綱」(以下「新大綱」)と五年間の防衛装備の計画について、具体的数量まで示した「中期防衛力整備計画」(以下「中期防」)を閣議決定した。結論的にいえば、これこそ日帝の歯止めなき軍拡と日米軍事一体化をおしすすめ、日米同盟と日米安保体制を中軸にして、アジア太平洋地域での戦争・紛争事態に軍事的に対応してゆこうとするものであり、日帝の「防衛政策」の大転換を示すものに他ならない。「対等な日米関係」「米軍再編の見直し」を掲げて政権を獲得した民主党政権が、ついに明らかにした防衛政策はこのようなものであり、緊張する日本周辺の情勢を徹底して利用しながらその「正当性」を押し出すのであるが、その内容とは、日本のそしてアジアの人民を軍拡と戦争の道に引き込みそのたたかいを解体しようとする攻撃である。労働者人民はこの防衛大綱の狙いを鮮明に見抜き、絶対にうち破らねばならない。


 ●(1)「基盤的防衛力」を「動的防衛力」へ

 新大綱の最大の特徴は、従来の「基盤的防衛力」という構想を放棄し、「動的防衛力」構想を導入していることである。
 一九七六年、当時の自民党三木内閣が最初の「防衛大綱」を決定した時に基調として打ち出したのが「基盤的防衛力」という構想である。政府によると、日本に力の空白が生じて周辺地域における不安定要因にならないために戦力をもつが、それは専守防衛の原則にのっとったものであること、基盤的防衛力とは小規模な限定的な侵略に対応するものであり、そのために必要最小限の防衛力を準備しておくというものであった。もちろん、これは口実であり、本質的には、日本の一貫した軍事力増強に対する日本人民の、そして近隣諸国・アジア人民からの批判、たたかいに直面し、それを避けようとするためのものであった。そして、それはまた、政府にとって憲法九条との矛盾を覆い隠すギリギリの選択であったのである。
 七六年以降、「防衛大綱」は二度改定されたが、政府はこの「基盤的防衛力構想」を変更することはできなかった。しかし、今や、新大綱においてこれは次のように放棄された。
 「防衛力を単に保持することではなく、平素から情報収集・警戒監視、偵察活動を含む適時・適切な運用を行ない、我が国の意志と高い防衛能力を明示しておく」。
 「防衛力の存在自体による抑止効果を重視した、従来の『基盤的防衛力構想』によることなく、より実効的な抑止と対処を可能とする活動を能動的に行ないうる動的なものとしていくことが必要である。即応性、機動性や柔軟性などを備え軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力を構築する」。
 もはや防衛力の保持・存在では役にたたず、相手の軍事動向に対して実際に攻撃・戦闘し、相手の軍事力に対応して軍拡をしていくと宣言しているのである。そしてこれはもはやとうに形骸化したとはいえ、日本政府が一貫して防衛政策の基本理念としてきた「専守防衛」を最終的に放棄するものである。動的防衛力とは珍奇な用語であるが、それは政府のいうような防衛的なものどころか、実は米軍の新軍事戦略と深く連動している。
 この新大綱を準備するために設置された首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会(安保懇)」は、名うての親米派=日米同盟重視派ロビイストで占められ、昨年八月末に報告書を出した。それは、日本が「受動的な平和国家」から「能動的な平和国家」に「成長」することを呼びかけて概略つぎのような危険な内容を提起している。
 @専守防衛・武器禁輸政策と集団的自衛権の解釈を変更する、A基盤的防衛力構想は有効でなく、動的抑止力を構築する、B米国向けミサイル撃墜を可能にするよう集団的自衛権の解釈を変える、C非核三原則によって米国の手を縛らない、DPKO参加五原則は事態に合うように修正する。
 そして、これが十一月に民主党外交・安全保障調査会で追認され、新大綱に継承されたのであった。この安保懇が米国の新軍事戦略を模倣して随所に取り込み、報告はそれに沿った内容となっている。
 すなわち、米国は昨二〇一〇年二月、QDR(四年毎の国防戦略見直し)を発表し、そこにおいてJASB(海空統合作戦)構想を打ち立てた。これは西太平洋において米軍の戦力展開を阻むほどに軍事力を高める中国への対応が軸になっており、その認識と根拠をつぎのように述べている。すなわち米国は、海・空・宇宙・サイバー空間など特定の国に属さない公共の領域を国際公共財(グローバル・コモンズ)という概念でよび、この国際公共財が近年脅威にさらされていることを許容しない、と説明している。
 直截にいえば、JASBは中国の海軍力強化などを通じたアクセス拒否能力の増大を脅威として対抗し、海・空軍を一体的に運用して中国を封じこめ、その反撃を鎮圧する戦略である。具体的には、中国の対艦ミサイルによる反撃を粉砕し米空母が中国沿岸に接近して艦載機で攻撃する、というもので、自衛隊はその一部に組み込まれるというものである。その際の自衛隊の役割は次の南西諸島防衛において明らかにされる。


 ●(2) 沖縄への自衛隊配備増強の狙い

 新大綱の第二の柱は、沖縄を含む南西諸島を焦点化し、そこに自衛隊を増強することを狙っていることである。
 基盤的防衛力構想をとなえていた時代、とりわけ五〇年代から八〇年代まで自衛隊はソ連の侵攻・上陸を阻止するシフトを基軸に、陸上自衛隊を主力にして全国的にほぼ均等に部隊を配置していた。それは米国の対ソを軸にした戦略と連動するものであった。
 しかし、今回の新大綱においては、部隊、装備を南西諸島における即応体制と展開に集中して再編するものとなっており、全国の部隊をも状況に応じて機動的に輸送し展開させるものとなっている。これは、日帝がソ連崩壊後、とくに九四年以降一貫してとってきた「朝鮮脅威論」―朝鮮民主主義人民共和国(以下「共和国」)に対する対決戦略に加えて、中国にたいする軍事面での対決をも想定し、米帝と連動してそのための封じ込めのシフトを宣言したことに他ならない。
 新大綱ではそれを次のようにいいくるめようとしているのである。
 「北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発配備拡散を継続するとともに大規模な特殊部隊を保持し、朝鮮半島で軍事的な挑発行動を繰り返している。わが国を含む地域の安全保障における喫緊かつ重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防止の努力にたいする深刻な課題となっている」。
 「中国は国防費を継続的に増加し、核・ミサイル戦力や海・空軍を中心とした広範かつ急速な近代化を進め、戦力を遠方に投射する能力の強化に取り組んでいるほか、周辺海域で活動を拡大・活発化させており、軍事や安全保障に関する透明性の不足とあいまって地域、国際社会の懸念事項となっている」。
 不安定要因や懸念事項などと表現しているが、この認識はいうまでもなく、両者を日本と東アジア地域における脅威と見て仮想敵国規定しているものである。もちろん、昨年、「領土」をめぐる一連の問題が生起し東アジアにおける緊張が高まったことを、日本政府は排外主義を扇動しながら、ここぞとばかり最大限利用している。
 昨年九月は釣魚諸島付近で海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件があり、日中政府が対立を深め、十一月には朝鮮半島において共和国による延坪島への砲撃事件があった。しかし、事実と背景をみるならば、前者については、日本政府が一九七八年の日中平和友好条約における「帰属問題の棚上げ」という暗黙の合意を破棄して、「領土問題は存在しない」と宣言し中国漁船員を逮捕拘留したことからする対立であり、後者は、共和国を敵視威圧する韓国の軍事演習の最中で、かつ共和国が韓国との海上境界線(北方限界線)を否認している背景のもとで起きた事件であった。政府の情報管理のもとで「緊張」や「不安定化」が仕組まれ煽られているのである。
 この「懸念」に機動的に対処し、「実効的に抑止」するために、新大綱は多くの分量を割いている。
 「……わが国およびその周辺において常時継続的な情報収集、警戒監視、偵察活動、による情報優越を確保するとともに、各種事態の展開に応じ迅速かつシームレスに対応する」。
 「島嶼部への攻撃にたいしては機動可能な部隊を迅速に展開し、平素から配置している部隊と協力して侵略を阻止・排除する。巡航ミサイル対処を含め、島嶼周辺における防空体制を確立するとともに、周辺海空域における航空優勢および海上輸送路の安全を確保する」。
 このために自衛隊の体制をどうするのか。
 「冷戦型の装備・編成を縮減し、……南西地域も含め、警戒監視、洋上哨戒、防空、弾道ミサイル対処、輸送、指揮通信等の機能を重点的に整備し……空白地域になっている島嶼部について、必要最小限の部隊を新たに配置し……島嶼部への攻撃に対する対応や周辺海空域の安全確保に関する能力を強化する」。
 具体的な部隊・装備については、新大綱と同時に決定された「中期防」でのべている。その主なものは、第一に、最も南西端の島である与那国島に、陸自の沿岸監視部隊を新編して配置する。また、石垣島、宮古島に初動を担う部隊を新たに配置し、緊急時には全国から動員する準備をする。
 第二に、海上においては、弾道ミサイル攻撃に対抗するためとしてイージス艦を増強し、周辺海域の哨戒のために潜水艦を増強する。潜水艦については従来の十六隻であったものを一気に二十二隻の体制にする。これは島嶼防衛をこえて、この海域での中国の潜水艦を制圧し、米空母の自由な侵入と中国への作戦を防衛しようとするものである。
 第三に、空域においては、高性能新戦闘機を導入し、戦闘機部隊、航空偵察部隊、航空輸送部隊、空中給油・輸送部隊を増強すること、那覇基地に戦闘機部隊一個飛行隊を移動させ、二個飛行隊に改編し一個航空団を新設することを決定した。
 また、警戒監視活動を強化するために、移動警戒レーダーを南西地域の島嶼部に展開し、早期警戒機E2Cを常時継続的に運用する、あわせて、弾道ミサイル攻撃に対抗して地対空誘導弾PAC3配備を強化する、としている。警戒監視活動とは、単なる偵察ではなく、敵の軍事行動の兆候を察知したら直ちに攻撃態勢に移っていくというものであり、きわめて攻撃的・臨戦的なものである。すなわち早期警戒で中国の軍事動向を監視し、ミサイル発射などの兆候があればその基地を攻撃し、発射された場合はPAC3で迎撃し、米空母の展開と攻撃を防衛するというものである。
 新大綱のいう「各種事態の展開に応じ迅速かつシームレスに対応する」というのはこのことに他ならない。そしてこれらを日米共同で統括・指揮するために、「米軍との相互運用性を高めるため」と称して、横田基地に航空総隊司令部等を移転するのである。
 マスコミでは、自衛隊定員の一千人の削減、戦車の削減などを取り上げているが、それは対ソ連を基軸にしていた基盤的防衛構想の変更に伴うものに過ぎず、全体的な軍事費縮減という意味はまったくない。財政危機が叫ばれる中でも軍事費は「聖域化」しており、許せないことに、公表されているかぎり、「中期防」五年間で最低でも二十三兆四千九百億円の血税を投入するのである。
 あわせて、見逃すことができないのは、この南西諸島の大増強とはとりもなおさず、沖縄に臨戦態勢の最前線を強制するものであり、巨大な米軍基地の存在に加えて自衛隊の増強という大きな犠牲を強いるものであることである。沖縄に対して日帝は戦前において侵略の前線として位置付け、第二次大戦において「本土」防衛の盾に使って多くの住民の命を奪い、戦後も米軍直接支配のもとに捨て石にしてきた。今また、そのような歴史を強制しようとする新大綱を絶対にゆるしてはならない。


 ●(3)自衛隊海外派兵の恒常化と強化

 第三の柱は、自衛隊の海外派兵の恒常化・強化をめざしており、そのためにグローバルな課題を強調していることである。
 「中期防」はその中心的な担い手として陸自の「中央即応集団」を増強することを明らかにしている。中央即応集団とは、陸上自衛隊の特殊部隊であり、テロ、ゲリラ等の緊急事態を鎮圧する部隊として、また「国際平和協力」の名のもとに海外派兵の切り込み部隊として、二〇〇七年に陸自内に編成された。自衛隊の建前である「国土防衛」に制約されない「殴りこみ部隊」、攻撃部隊としての性格をもち、米軍の海兵隊と同様の存在を目指している。実際に、二〇一二年には本拠を座間に移し、そこに存在する米陸軍第一軍団司令部との緊密な連携が予定されている。中央即応集団はすでにイラク、ハイチ等で海外展開経験をふんでおり、いつでもどこへでも海外展開可能な特殊部隊として大増強されようとしている。また、そのことを通じて自衛隊全体の性格を専守防衛の戦力から「殴りこみをかけ、攻め込んでいく」攻撃的戦力へと転換させることを狙っているのである。
 そのために、国連平和維持活動への参加における制約を撤廃することを目指している。周知のようにPKO法は参加する際の基本方針として、(1)紛争当事者の間で停戦合意が成立、(2)受け入れ国を含む紛争当事者の同意、(3)中立的立場の厳守とし、(4)以上の条件が満たされない場合は撤収可能、(5)武器使用は要員の生命防護などのための必要最小限に限る、という五原則を定めている。新大綱のなかでは「国連平和維持活動の実態を踏まえ、PKO参加五原則等我が国の参加の在り方を検討する」と述べている。まず、武器使用の緩和をおこない、これらを通じて米国、EUの行なっているアフガニスタン侵略戦争に参戦しようとしている。そして海外派兵の恒常化を狙っているのである。
 しかし、当然のことながら、このような政府、防衛省の海外派兵強化政策には大衆的な同意はえられていない。実際に、近年には、長年の自民党支配のもとでの対米追随の安保政策と日米関係を疑問視する世論は大きくなっている。在日米軍と米軍基地の存在が、彼らのいうような「日本の防衛」のためですらなく、米国の世界的権益の防衛のためであることが否定しようもなく露呈してきているのである。それと対決する大衆的な運動が沖縄を先頭として拡大してきているのである。
 新大綱はそれに対してまったくの御都合主義的な政府の認識を執拗に宣伝している。なぜ、日本の防衛といい、専守防衛といいながら海外派兵を行なうのか?新大綱はこれについて、不安定化していく世界情勢のなかで、日本自身の防衛はアジア太平洋地域の安全保障環境の安定化ぬきにありえず、また、グローバルな安全保障環境の改善なしにはありえないので、国際平和協力活動の強化が必須であるとして、次のように述べる。
 「わが国の安全保障の第一の目標はわが国への直接の脅威の排除……第二の目標はアジア太平洋地域の安全保障構築の一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善により脅威の発生を予防すること……」。
 「一国で生じた混乱や安全保障上の問題の影響がただちに全世界に波及するリスクが高まっている。……武力紛争には至らないグレーゾーンの紛争は増加する傾向にある。中国、インド、ロシア等の国力増大ともあいまってグローバルなパワーバランスに変化が生じているが、米国は引き続き世界の安定と平和に最も大きな役割を果たしている。……グローバルな安全保障課題は一国で対応することは極めて困難であり、利益を共有する国々が平素から協力することが重要となっている」と国際平和協力なるものを位置づけている。
 だがわれわれ労働者階級人民は、新大綱のいう世界の不安定化とは誰にとってのどういう事態であり、世界の安定と平和とは誰にとってのどういう安定であり平和であるのか、をまず問わねばならない。事実関係、原因や背景に立ちいって見るならば、経済的政治的支配層やその政府が自己の利益のために、必要に応じて緊張を作り不安定化を作りだしているのである。ブルジョアジーにとって防衛力とは、もはや国境や領土を防衛するものでなく、「国益」という名のみずからの権益を防衛し拡大するものに他ならないのである。


 ●(4)日米安保体制―軍事同盟の強化

 大綱の第四の柱は、従来から進めてきた日米安保体制の軍事同盟としての強化であり、そしてまた、日米安保を基軸として、韓国、オーストラリアなどと連携し、アジア太平洋において中国、共和国を封じ込める多層の強固な楯を作ることである。
 「……日米同盟は必要不可欠である。駐留米軍の軍事的プレゼンスは地域における不測の事態発生にたいする抑止・対処力でありアジア太平洋地域の諸国に大きな安心をもたらしている。……日米同盟を深化発展させていく。……地域における不測の事態にたいする米軍の抑止・対処力を強化し、日米協力の充実をはかる……」。
 この焦点が、米軍再編の完遂、沖縄―辺野古への新基地建設強行、米軍との共同作戦基盤の強化、軍事一体化を推進することにあることはいうまでもない。
 「中期防」ではその一端を明らかにしている。それによると、警戒監視活動における日米協力、日米以外にも韓国やオーストラリアなど他の国も参加しての合同軍事演習の拡大・強化、自衛隊と米軍施設の共同使用と日常的な協力の拡大、国際平和協力・緊急援助・海賊対処・宇宙・サイバー空間における対応、海上交通の確保、などあらゆる活動で一体化を深化するという。
 新大綱はあからさまに、これらがすべて、米軍の抑止力の強化を目指すものであり、日本の協力すなわち自衛隊の参加をもって行なう、とのべている。日米政府は安保条約の制約をすらはるかに突破したこの日米同盟の深化を、東アジアの緊張を煽りながら進行させるのである。
 そしてまた、「アジア・太平洋地域において二国間・多国間の安全保障協力を多層的に組み合わせてネットワーク化することは……不可欠である。米国の同盟国であり、我が国と基本的な価値および安全保障上の多くの利益を共有する韓国、オーストラリアとは二国間および米国を含めた多国間での協力を強化する……」と述べ、米国中心に形成されようとしているアジア太平洋地域での軍事的安保体制構築に積極的にのめりこもうとしている。民主党政権の当初に掲げられた「東アジア共同体」構想は決定的に後景化されている。


 ●(5)武器輸出の緩和・解禁に道を開く

 第五の柱は、武器輸出の緩和・解禁にむけて道を開いたことである。
 いわゆる武器輸出三原則は、一九六七年、政府が打ち立てた@共産圏、A国連決議で武器輸出禁止となっている国、B国際紛争の当事国またはその恐れのある国、にむけた武器輸出を認めない、とする政策であり、追って七六年三木内閣の時期に、それ以外の国に対しても輸出を慎む、と強化された政策である。
 しかし、以降この三原則は緩和され、八三年に日米安保の効果的な運用という名目によって対米武器技術供与が進められた。この緩和を要求し主導したのは「防衛産業の強化」を主張している財界である。また、ウィキリークスの暴露によると、米国もミサイル防衛計画のために三原則見直しを日本に迫ったという。
 こうした緩和については新大綱を作るにあたって大きな焦点となっていたのであり、民主党執行部は三原則の見直しと緩和の立場を決めていた。ただし、この緩和を文面に明記することについては社民党の連立参加よびかけとの関係で見送られてきたといわれる。しかし、新大綱においては「国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化を実現しつつ、コストの高騰に対応することが先進国で主流になっている。このような大きな変化に対応するための方策について検討する」とはっきりと緩和の道を開いているのである。


 ●(6)反戦・反基地・反帝国際連帯の前進を

 以上、新大綱と中期防の文面からその特徴を概括し今後十年間をカバーするという新大綱の危険な側面を検討してきた。もちろん「大綱」という作文に表明されていることは事態のほんの表層にすぎない。しかし、この危険な側面は、すでに新大綱の決定を待つまでもなく現実のものとなっている。
 昨年十一月、共和国の砲撃を口実として、朝鮮半島西側沖において韓米共同軍事演習が行なわれた。米原子力空母ジョージ・ワシントンと艦載機が黄海に進入し、共和国西部を射程に収め威嚇した。また、これに引き続いて十二月、米軍と自衛隊が島嶼防衛、ミサイル防衛などを中心とした日米共同軍事演習を沖縄周辺海域はじめ本土各地で両軍計四万五千人と過去最大規模で行なった。これには初めて韓国軍がオブザーバーとして参加した。この演習は新大綱の実働化以外の何物でもない。米・日・韓軍が共同で共和国を攻撃し、また中国を包囲し封じ込めることを狙ったものである。
 共和国はもちろんのこと、中国も黄海に米空母が入ることは中国の国家主権に対する脅威であるとしてこの演習に反発し、また日本の新大綱に対しても警戒を強めている。
 さらに一月には、北澤防衛相が訪韓し、日韓防衛相会談を行った。北澤は韓国に対して、日韓間の物品役務相互提供協定(ACSA)および軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に向けた協議に入ることを強くはたらきかけたのだ。
 新大綱は、鳩山前政権が日米関係の見直しに言及した一時期をへて、今菅内閣の下でより公然と日米主軸、日米同盟の深化を掲げた。裏で画策した米国は安堵し、これを挙国一致の大合唱で主導してきた政府、財界、マスコミなど政治的・経済的・社会的支配層は、「防衛政策は政権交代によって変わるべきものではない」と前述の「安保懇」の報告に沿って、次の攻勢を準備している。集団的自衛権の解禁に突き進もうとしている。「防衛政策」の危険な大転換を人民の目からおし隠し、それをあたかも情勢の変化、緊張の増大に対する必要な反応であると偽っているのである。誰がどのように緊張を増大させているのか、どう解決すべきか、には一指もふれることをしないのである。
 これに対して、われわれは今こそ新大綱に含まれる重大な転換とその危険性を余すことなく暴露し、大衆的に訴え、たたかいを拡大していく。新大綱にともなう官房長官談話は、みずから放棄した専守防衛・平和国家という言辞を弄しつつ、「米軍の抑止力を維持しつつ沖縄地元の負担軽減をはかる」と述べている。「抑止力維持の範囲で負担軽減」なる欺瞞は絶対に許せないものであるが、この談話は沖縄をはじめとする人民のたたかいが新大綱の成否を決定することを吐露しているのである。
 「専守防衛論」の廃棄、「武器輸出三原則」の破壊、「集団的自衛権解釈変更」に彩られた新大綱は、現憲法破壊―憲法改悪と一体の攻撃にほかならない。
 「自衛官全力で米軍再編反対、沖縄新基地建設反対、普天間基地撤去、安保粉砕のたたかいを繰り広げ、沖縄、岩国、神奈川など全国の人民の反基地闘争を支援し、連帯し、勝利しよう。韓国、共和国、中国、アジア人民と総団結し、米軍基地の総撤収、日米同盟反対のたたかいを推進しよう。



 

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