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  ■2010岩国行動に結集しよう

  米軍再編計画粉砕!岩国基地大強化計画阻止へ




 このかん語られてきた、横浜APEC時の日米首脳会談において「新たな日米安保共同宣言を発出するか」という問いに対し、外相前原は、「しかるべき時期にそういったことも必要であれば行うことになる」としつつも「オバマ大統領が来られる時に発出するという予定がもともとあったとは引き継いでおりません」と回答している。十一月二日の外相記者会見でのことである。
 報道としてはあまり大きな扱いがされているわけではないが、この前原のそっけない態度にもかかわらず日本の支配層にとって事態は深刻であるといわなくてはならない。なぜなら、「日米安保改定五十年の節目の年に新たな日米安保共同宣言を」と喧伝してきたのは、旧自公政権であり、そしてまた現在の民主党政権であり、そしてまた日米同盟護持のために多くの紙面を割き番組を編成してきた「本土」のメディアだったのだから。「日米安保五十年」の節目を、こうして日米政府は何らの文書発出も行うこともできずに終えようとしているのである。
 強く確認しておくべきは、こうした状況を形成した最大の要因こそ、沖縄民衆を先頭にしてたたかい取られている「辺野古新基地建設反対」闘争の巨大な前進の地平であるということだ。決して「鳩山政権が日米関係をぐちゃぐちゃにしたから」などという謬論に惑わされるべきではない。その鳩山政権そのものがまさしく沖縄民衆の辺野古新基地建設絶対反対の声に押され続けたがゆえに「米軍再編見直し」を掲げて登場し、そしてそれが果たせないことが明らかになったとき、その政権を崩壊させざるをえなかったのである。沖縄における米軍再編計画、その重要な軸としてある「普天間基地の辺野古への移設」という攻撃に対して辺野古現地での実力攻防を基軸にしたたたかいが、幾多の日米両政府の攻撃や容認勢力の重圧をはねのけながら前進し、まさに勝利のステップを刻んでいるということである。
 アジア共同行動日本連と「岩国・労働者反戦交流集会実行委」がたたかいとろうとしている「2010岩国行動」は、この沖縄のたたかいと直結し「本土」での再編計画の一大基軸を打ち砕くための決定的な跳躍点となる。この成功をともにたたかいとるために全力を傾注しよう。


  ●1章 米軍再編計画の現段階

 〇六年五月の米軍再編「日米ロードマップ」日米合意(以下、「ロードマップ」とする)から四年半経過している。在日米軍再編協議が本格化した〇四年からはすでに六年も経過している。「日米同盟強化一辺倒」の路線を突っ走った小泉政権下で進められ合意されたこの計画は、安倍・福田・麻生の自公政権下において不動の方針として実行に移された。だが、〇九年八月末の総選挙と「政権交代」―民主連立政権の発足時点で「米軍再編見直し」が公約された。「日米関係のあり方の見直し」「日米地位協定の見直し」ということとともに公約された「米軍再編の見直し」ということは、にもかかわらず、旧自公政権勢力・外務・防衛官僚たち、日米同盟護持を喧伝する「本土」メディア、そして何よりも米政府による重圧と十字砲火の中で、次第に「米軍再編」そのものから「沖縄問題」そして「普天間問題」へと切り縮められ、ついには「五・二八普天間日米共同声明」(以下「五・二八共同声明」とする)をもって「普天間移設先は名護市キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及び隣接水域とする」という、旧来からの案に舞い戻ったのであった。「学べば学ぶほど在沖米海兵隊の『抑止力』の重要性がわかった」という、怒りなしに聞けない言辞を吐いた鳩山は、この「五・二八共同声明」を確認して退陣した。
 誤解のないように付加しておくが、鳩山は別に日米同盟不要論・解消論者では全くない。就任時点においても日米同盟の基軸性と日米同盟の深化の必要性は他に劣らず語っていた人物である。あえて言えば、鳩山は「自主防衛論者」としての観点から「米軍再編見直し」や「日米同盟関係の深化」ということを述べていたに過ぎない。だが、その鳩山をして「米軍再編の見直し」の実行をとことん迫りぬいたのは、沖縄をはじめ米軍再編計画にさらされる全国各地の住民とこれに結合する労働者階級人民の声とたたかいであった。
 ここでは、〇六年五月の「日米ロードマップ」合意以後、そこに盛り込まれた日米の行動計画の進捗状況について、@進展させられたた計画A進展を阻み決定的な局面を迎えている計画とに大別してまずとらえ、次いで、そこから見えてくるものを明らかにしておきたい。

 ▼(1)進展させられている計画

 「日米ロードマップ」合意後、直ちに着手され急ピッチで進行したのは空自車力駐屯地(青森県)におけるXバンドレーダーシステムの設置であった。次いで嘉手納基地内に米軍パトリオットミサイルPAC3の配備強行がなされた。そして、「日米ロードマップ」に具体的な記載はないが、空自基地へのパトリオットミサイルPAC3の配備が順次強行されているところである。
 キャンプ座間(米陸軍・神奈川)への米陸軍第一軍団前方司令部移駐は、当初の改編計画の変更や司令部要員数の変更を伴いつつ順次移駐が行われ、当初計画よりも規模を圧縮した形で一昨年九月段階で完了した。とはいえ、これに付随して計画されている相模原補給廠内への「戦闘指揮訓練センター」は現時点ではまだ完成していない。また、キャンプ座間への陸自中央即応集団司令部の新設移駐計画も用地をめぐる協議がようやく終わった段階である。これらに対して、地元住民を先頭に粘り強い反対運動が展開されているところでもある。このキャンプ座間への米第一軍団前方司令部移駐と戦闘指揮訓練センター建設、およびこれと一体の陸自中央即応集団司令部座間移駐と戦闘訓練指揮センターでの自衛隊の訓練という問題は、当然にも現行日米安保と憲法の制約をはるかに超える問題であることは明らかでもある。
 横田飛行場(米軍横田基地)への航空自衛隊総隊司令部の移駐計画は、本年度までに完了するとされてきたが、すでに完了年度を超えることが明白となっている。基地内の用地の利用についての日米間の折り合いがつかないことが原因とされている。
 沖縄・嘉手納基地周辺住民の「負担軽減のため」と名分を付けて盛り込まれた「米軍機訓練移転」については、「日米ロードマップ」合意から十か月後の〇七年三月、築城基地における嘉手納からの米軍機訓練移転を皮切りとして、嘉手納、岩国、三沢の各米軍基地を移転元として、千歳、三沢、百里、小松、築城、新田原の各空自基地での日米共同訓練が行われている。防衛省は、タイプT、タイプUの二通りのパターンの訓練を合わせて各年十五回ほど行うとしてきたが、本年十一月中旬段階で実際にこれが行われた回数は通算二十二回である。そしてその訓練移転元基地の内訳とは、嘉手納からの訓練移転が計十一回、岩国からのそれが九回、三沢からは六回となっている(〇九年十一月に小松基地で行われた訓練移転は、岩国基地と三沢基地から米軍機が参加した)。特筆すべきは、嘉手納基地周辺における爆音の被害が軽減してなどいないし、逆に増大すらしているということである。タイプT訓練において五機ほどが一週間、タイプU訓練において十機程度で二週間ほどの米軍機が嘉手納飛行場を使用しないからと言って、他の所属機が飛行を止めているわけではない。そして加えて、「外来機」と呼ばれる他の基地からの米軍機の飛来と飛行が増大しているがゆえに、嘉手納での負担は増大しているというのが現状なのだ。嘉手納町はこの点を実際のデータをもって政府を徹底糾弾しているのが実際なのである。
 「日米ロードマップ」に記載されてはいないが、米海軍横須賀基地の強化もすさまじく進行させられた。いうまでもなく、米原子力空母G・ワシントンの配備強行(〇八年九月)という問題だが、同艦は、配備後ただちに米第七艦隊主力としてアジア太平洋地域での展開を行っている。
 同時に、米軍再編計画のいま一つの要点である日米軍事一体化という点についてであるが、ミサイル防衛体制づくりが急速度でおし進められ、日米共同訓練の質と量における拡大は人民の反対にもかかわらず進行させられているといわなくてはならない。座間や横田での日米軍事司令・指揮体制の「一体化」ということも進められてはいる。とはいえ、その日米軍事一体化ということを進展させる枠組みとしての日米同盟の深化ないし強化という問題についてみれば、これが米軍再編計画の進展と結びつくものであるがゆえに、現時点ではその枠組み自体が形成されているとはだれも言えない状況でもある。共同訓練や再編計画などの諸個別の実態が進展させられているとしても、あるいは、自衛隊の強化や配置計画の変更などを行ってみても、それらを含みこむ枠組みそのものを直接問うたたかいとして米軍再編計画とのたたかいは発展してきているのが現実なのである。
 「鳩山が米軍再編計画見直しを口にしたおかげで日米同盟が危機に瀕した」というような、自民党勢力や現在の菅民主党政権内部での評価、あるいは多くの「本土」メディアなどの言辞こそ、逆に米軍再編計画を粉砕することが日米同盟を直撃するたたかいであることを問わず語りに示しているのである。

 ▼(2)膠着状況の中、決定的な局面にある計画

 上の進行している計画と併せて、現時点でいまだその進展がない諸計画もまた存在していることを確認しておこう。
 「日米ロードマップ」に書き込まれてはいるものの、いまだほとんど進展していない計画というものがある。鹿屋海自基地(鹿児島)へは、普天間空中給油機部隊の岩国移駐と関連して同基地とグァムにおいて訓練および「運用」をローテーションで行うとされている。ところが、普天間問題がのちに見るごとく頓挫の間際にある中で、そしてまた「運用」という文言をめぐる対立が生じているためにこの計画はほとんど手つかずという状態といってよい。「運用」とは、訓練とは異なり作戦行動を意味する概念だからである。また、これも岩国基地大強化と関連するが、厚木艦載機部隊の移駐とあわせて、艦載機の恒常的離発着訓練施設を岩国基地の周辺に新設するということが座礁している。これは、昨年七月段階までに場所の選定を行うこととされていたのであったし複数の候補地が取りざたもされてきたところだが、現時点においてもその場所の選定は進展がない状況である。
 座礁していると表現したが、何よりも辺野古新基地建設計画そのものが暗礁に乗り上げている。周知のごとく昨年から本年五月にかけてなされた普天間基地代替施設の新設先をめぐる動きは、「五・二八共同声明」をもって、日米政府間での再確認までは行われたところである。だがそれは、何らこの計画そのものの進展の展望を開いたことでは全くない。すでに一月名護市長選における稲嶺氏の当選、そして四・二五普天間の県外移設を求める県民大会九万の総結集、五・一六普天間基地包囲人間の鎖行動の成功などが日米政府の思惑を打ち砕く形で進展し、この「五・二八共同声明」という反動を打ち砕くに足る決定的な勝利が、この九月名護市議選における反対派勢力の圧倒的勝利、名護市議会における辺野古新基地反対決議の歴史的可決という形においてつかみとられてもいるところなのだ。
 東村高江へのヘリパッド新設の計画は、「ロードマップ」の記載事項ですらなく、九六年のSACO合意における北部訓練場の一部返還ということが米軍再編での「再評価」過程で突如打ち出されたものでもある。広大な北部訓練場のうち、使い切れない北側を「返還」すると見せかけて、実際は南側を拡充強化してゆく計画の基軸が高江へのヘリパッド新設計画である。これに反対する住民の座り込みが継続し、政府―防衛省はなんと座り込み行動を行う住民に対して、妨害排除の仮処分申請を行うという暴挙に及んでさえいる。当然にも工事はストップしたままである。
 辺野古新基地計画、高江へのヘリパッド新設計画が座礁状態にあり、「沖縄に関連する再編案は相互に結びついている」とされているがゆえに、嘉手納以南の基地・施設の返還作業も中断したままとなっている。他方、普天間代替施設の完成へ向けた具体的な進展と日本政府の資金貢献を条件と明記した沖縄海兵隊部隊と家族のグァム移転計画は、たんに辺野古新基地建設が座礁しているという理由のみではなく、米側の資金問題、グァム自治州政府の批判と反対などの理由をも加わる形で一層困難性を示しているところである。この点は米政府自身の問題へと、普天間問題が逆流し始めた問題としてとらえることも可能である。
 そして、これら沖縄における米軍再編計画の座礁状況は、名護・辺野古のたたかいを中心軸として日米政府をして計画の頓挫を想起せしめるに十分なリアリティを持つものであるが、その決定的な決戦事態が十一・二八沖縄知事選としてある。辺野古新基地計画への微修正要求という形で事実上の容認を示していた現知事仲井真自身、「沖縄内移設は事実上不可能」という姿勢を強調し、知事選での辺野古新基地問題の争点化を何とか避けようとしている状況である。「五・二八共同声明」は、国民新党系を除く全会一致で撤回決議をあげている沖縄議会はもとより、もはや沖縄の現知事にすら否定されている代物であるということでもある。ここでさらに辺野古新基地反対を明言し、普天間基地の閉鎖・撤去を主張する伊波予定候補者の勝利を引き寄せ沖縄民衆がたたかいをさらに発展させることができるなら、「ロードマップ」の基軸そのものを完全に破壊することとなる。まさにこのような局面が生じているのである。
 進展を阻み決定的な局面に至っているという点において、岩国基地の大強化とりわけ愛宕山への米軍住宅・施設をめぐる計画がある。滑走路沖合移設埋立土砂採取のための愛宕山売却に応じた地域住民に対する山口県当局と国の態度とは、愛宕山跡地への新住宅街建設計画を中断し、跡地を国に売却し、国はそれを買い取り、基地内では建設不可能な米軍用住宅と基地内のスポーツ・娯楽施設を新規に建設するというものである。沖合に拡張した基地への厚木艦載機部隊や普天間空中給油機部隊などの受け入れ配置機能図も作成されている。民間空港用の施設を含め、多くの新設される施設がレイアウトされている。米軍用住宅や現在基地内にある米兵用の諸娯楽施設のスペースすらない。それゆえに基地外にその用地を求めるわけであるが、それが愛宕山跡地であるというわけだ。理不尽極まりないこのような計画が、到底住民に受け入れられるはずもない。ここでのたたかいがひいては厚木艦載機部隊移駐計画そのものを直撃するものとなる。まさに、決定的な膠着情勢とその局面変化の過程が、岩国において問われているのである。
 すでに進展させられてきた計画のおおよそすべては、現在の基地内部における再編強化の攻撃である。そして逆に、進展を阻み決定的局面を迎えている計画とは、辺野古にせよ高江にせよそして岩国―愛宕山跡地にしても、日本政府が新規に用地や水面を取得しそれを米軍基地強化のために供与するという問題である。曲りなりにも枕詞として使われてきた「基地の整理・縮小」という言辞は、これらの計画においては全く逆転している。これらの計画においては、基地は拡大し新設されるのである。この問題は軽視できない。日米同盟の深化・強化とともに基地そのものが新規用地取得とともに拡大強化される現実を日本の労働者人民に突き付けているということだ。基地に隣接する水面の埋め立てによる基地拡張や愛宕山跡地問題にみられるような不法にして詐欺行為そのものの用地取得の手法が万一現実のものとされるなら、沖縄および「本土」において米軍基地は必要とあれば拡張可能となる。そのような局面であることを沖縄や岩国の現状は示しているところであるのだ。


 ●2章 米軍再編の意味とこれに対する闘いの現局面

 米軍再編計画の現段階と人民のたたかいの現局面という点を概括するなら以下の諸点が浮かび上がってくる。
 第一に指摘しなくてはならないことは、「ロードマップ」の冒頭部分にかかげられている「個別の再編案は統一的なパッケージとなっている。これらの再編を実施することにより、同盟関係にとり死活的に重要な在日米軍のプレゼンスが確保されることになる」との、いわゆる「パッケージ論」自体がすでに破たんしている点である。「米軍再編の見直し」公約が「沖縄での再編問題」へ、さらに「普天間問題」へと切り縮められた経過はすでに見た。しかしそのことは裏を返せば、「パッケージ論」そのものの破たんということでもある。「岩国の再編計画は普天間問題の帰趨にかかわらず再編計画通りに進めることとする」という閣議決定が、すでに本年二月には行われている。実現するかどうかは不明であるが、菅政権は辺野古新基地建設の状況にもかかわらず「沖縄の負担軽減のために」と銘打って、嘉手納以南の不要施設・用地の返還を前倒しで行う方向を打ち出しもしている。グァムへの沖縄海兵隊部隊・家族の移駐方針にしても、実際のところ普天間代替施設の推移とは相対的に別個の要因で難航局面に至っている状況もある。これらのことは今次米軍再編計画の原則的指針とされた「パッケージ論」の破たんを日米政府自身が追認するしかないことを示すものである。
 そもそも日米政府間の合意にすぎない「ロードマップ」を日本政府が国内問題として実施するにあたって呼号してきた「負担軽減と抑止力維持」という標語自体が破たんしている。嘉手納での訓練移転にも関わらぬ負担増大の現実が鮮明に示しているところだが、もはや日本政府は「負担軽減」ということを声高に語れる局面ではなくなっている。
 「沖縄海兵隊が『抑止力』足りうるか」というような問題設定が世上ではなされているところだが、一方の「抑止力の維持」ということについてみても、あれやこれやの再編計画が実際には日米軍事力強化・日米軍事一体化を通じた世界規模での日米戦争体制づくりにほかならないことは明白だ。キャンプ座間への米第一陸軍前方司令部移駐や相模原補給廠内の再編計画、あるいは横須賀へのG・ワシントンの配備とその太平洋海域での展開に示されるように、まさに「抑止力」としてではなく、西アジア領域をも含む攻撃力の強化こそ、米軍再編の真の意味なのである。
 そして破たんの問題として言えば、在日・在沖米軍再編計画の終了年度は二〇一四年と定められているのだが、これはもはや不可能な局面に至っている。このことの意味は決して小さくない。日本における再編と同時に進行している在韓米軍の再編・再配置計画の終了年度もまた同じであり、グァムの米軍ハブ基地化ということも同年完了がメドとされている。これらは、すなわちアジア太平洋地域における米軍の展開と配備計画がこの年を終了年度としていることを示すものだが、これに後退を強制しているのが、沖縄「本土」、韓国あるいはグァムでの人民のたたかいだということでもある。「アジア太平洋地域国家としての米国」などと語りながら、この地域への経済的利害の増大と政治的軍事的関与を強化しようとしている米帝国主義が、その軍事的基盤をグァムのハブ基地化を軸として日本(沖縄)、韓国あるいはフィリピンなどでの米軍プレゼンス強化を通じて創造しようとすることに対して、沖縄をはじめ「本土」各地、アジア太平洋各国・地域のたたかいが鋭く対決しているというのが現局面なのだということも可能である。
 攻撃とたたかいの現局面という点の最後に、ひとたびならず指摘してきたところだが、つまるところ米軍再編をめぐる闘争の主体とは誰かという問題がある。いうまでもなく、一方に日本政府および米国政府の存在がある。そして決定的ないま一人のアクターとは米軍再編計画の当該地域住民でありこれと連帯してたたかう労働者階級人民である。この観点からすると、決定的なアクターとしての各地住民や労働者人民のたたかいが日米政府間合意をはね返し、そのたたかいが日米政府関係あるいは両国政府内部にはね返りながら波及してゆく構造にあることが見えてくる。辺野古新基地建設反対の沖縄民衆のたたかいは、米議会内においては、有力議員の沖縄海兵隊不要論の登場などとして反映してもいる。折からの中国脅威論への対処の方策にしても、菅政権や右派・排外主義勢力は、米軍再編計画進行の必須性や死活性としてそれを喧伝するばかりであるが、米政権に近い筋においても「米国のアジア政策の検討と日本とのすり合わせの必要性」という文脈で米アジア政策の再検討を要求する議論が登場するなどしている。各地での粘り強い反対運動が実際のところは決定的な要因として日米政府の米軍再編計画実施を打ち砕くのみならず、日本政府、米国政府・議会それ自体に逆作用をもたらす要素となりうることをこれらの事例は示している。米軍再編計画の実施が「同盟関係に死活的に重要な在日米軍のプレゼンス確保」と直結するという「ロードマップ」の基本認識は、逆からいえば、在日米軍プレゼンスを動揺させ続け、整理や縮小に追い込むことができるなら、それは日米同盟関係そのものの動揺に直結し、ひいては在日米軍そのものの消滅へとつながる道だということでもあるのだ。現局面とはそのような豊かな展望を生み出すための過程であり、胸突き八丁の局面なのでもある。たたかいをさらに発展させる中で道を切り開くべき時だ。


 ●3章 「本土」米軍基地の再編強化との闘いの意義

 沖縄・辺野古新基地建設絶対反対のたたかいが決定的に日米政府を追い詰めていることは述べた。このたたかいはさらに沖縄知事選過程でさらに増幅され、生み出されてくる新たな敵対勢力をも打ち砕きながらさらに前進してゆくこととなるだろう。このようなたたかいへの「本土」労働者人民の支援と連帯は決定的に重要である。だがしかし、一方で「本土」における米軍再編の状態に対してこれを重視したたかいを進めるべき時でもある点を明らかにしておこう。
 「本土」における米軍基地は、主要なものを列挙すれば、三沢(米空軍)、横田(米空軍・在日米軍司令部)、横須賀(米第七艦隊)、座間・相模原(米陸軍)、厚木(米海軍・航空部隊)、岩国(米海兵隊・航空部隊)、佐世保(米海軍)などである。(全体の内訳は、専用施設五十七、共同利用施設二十八、一時利用可能施設百十九であり、一時利用施設を除く専用施設と自衛隊との共同利用施設の総計は八十五、うち沖縄のそれは三十三となっている。また面積からみれば、沖縄のそれは約二万三千六百ヘクタールであり、二位の青森県約二千四百ヘクタール、三位の神奈川県約千八百ヘクタールをはるかに超えている。
 在日(沖)米軍の歴史過程を見るなら、サンフランシスコ条約発効の一九五二年時点で、二千八百二十四箇所に及んだ「本土」の米軍基地・施設は、朝鮮戦争終結後の五五年段階で約四分の一=六百五十八箇所に激減した。さらに継続的にその数は漸減してゆく。これらの背景には、在日米陸軍地上戦闘部隊撤退方針の決定と実行(五七年〜五八年)やその後の在日米軍施設・区域調整計画などがある。さらに、沖縄「返還」過程と時期的に重なりつつなされた「関東計画」(関東平野合衆国空軍施設整理統合計画)の合意と実行がある。これらは「本土」の米軍基地にのみ該当する諸事象であり、沖縄の米軍基地はこれらを通じて、増加と再編強化がなされたのでもある。
 このようにして「本土」における米軍基地・施設は、日帝敗戦直後の米軍等駐留時点から大きな変化を経てきたのだが、逆に、上記した諸主要米軍基地が何故残りそのことの意味とは何かという点が今こそ問われるべきだと思われる。これら「本土」の米軍基地とは、まさに朝鮮戦争やベトナム戦争時の状況が示すとおり日米安保体制および米軍の対アジア軍事戦略上不可欠の存在であるがゆえに残り、そしてまた米軍再編過程でその米帝にとっての意義、日米安保体制にとっての意味合いを強化・変質させながら現在あるのだという点が押さえられる必要がある。この点をいっそう重要視しなくてはならないのだ。
 ところで、圧倒的な米軍基地が「本土」から消失してゆく中でおきた変化という問題がある。
 五十年代の米軍基地の撤退などは、基地所在地の住民たちによる基地被害・米兵の犯罪に対する断固たるたたかいがそれを促進させたという問題もある。ある意味では決定的な要素でもあったし継承させ拡充させるべきたたかいの経験でもあった。だがそれが米軍基地の撤退を促進し、目前の米軍基地が消滅して時間的に経過してゆく中では、日米安保体制がまごうかたなき軍事条約でありその実体を形成しているのは紛れもなく米軍および自衛隊という軍隊そのものであるという意識が希薄化してきた点は否めない。この点を「安保に対する意識」について「本土」と沖縄を比較する形で見てみよう。
 「本社加盟の日本世論調査会は十三、十四両日、面接による全国世論調査を実施し、安全保障に関する国民の意識を探った。日米安全保障条約改定からことしで五十年を迎える節目に日米同盟の評価を聞いたところ『現状のままでよい』との答えが59%を占めた」(『東京新聞』三月二十八日付)という。上の調査は沖縄をも含む調査であるが、昨年十月三一日と十一月一日に琉球新報社と毎日新聞社が合同で行った沖縄県民世論調査では次のような結果が出ている。「米軍の日本駐留などを定めた日米安全保障条約については、『平和友好条約に改めるべきだ』が42・0%で最も多く、『維持すべきだ』は16・7%にとどまった。『多国間安保条約に改めるべきだ』15・5%、『破棄すべきだ』も10・5%となり、一九六〇年に改定され、来年一月で締結五十周年を迎える日米安保の見直しを半数以上が求めた」という(『琉球新報』〇九年十一月一日付)。
 すなわち、「本土」での民衆意識調査結果が大半を占めると思われる日本世論調査会の調査では、日米安保現状維持が六割を占めるのに比して、沖縄においてその割合はなんと一割六分にすぎない。多国間安保体制への転換を含めて、八割強の沖縄民衆が現在の日米安保に反対であるともいえる。
 関連して、憲法九条の改定に対しては、「本土」(全国)と沖縄とでの意識は大差なく約六割近くが九条改定反対という結果もある。つまり、いまや「本土」においては、憲法九条改定に反対する割合と日米安保維持に賛成する割合とがほぼ同じだということだ。これに比して沖縄においては、憲法九条改定に反対する割合を越えて日米安保に反対する世論が存在しているのである。現状ではさらに日米安保に反対する割合はさらに増加しているということも聞く。
 明らかに、米軍再編計画の根底をなす日米安保、日米同盟に対する批判意識の希薄化や基地あるが故の被害の実相への無感覚化ということが、目の前から米軍基地が消失して時間を経る中で進行したことが指摘されなくてはならないし、またそのことが沖縄への基地の集中を無意識的には支え、そしてまた、「本土」において残されるべくして残された米軍基地群を残存させている根拠といって過言ではないのではないだろうか。そして今、沖縄のたたかいを通じてあらためて日米安保や米軍基地存在の不合理性と日米政府の犯罪性や理不尽さなどを感得し始めた「本土」の労働者人民が、次に目を向けるべきは、沖縄とともに「本土」の米軍基地が一様に米軍再編計画を通じて大強化されようとしている現実である。「沖縄にも『本土』にも(そしてアジアにも)基地はいらない」という合言葉はいまこそ字句通りに実践に移されなくてはならない。沖縄のたたかいと「本土」でのたたかいが一体となって発展するとき、「危機に瀕している」と数年来語られ続けた日米軍事同盟はまさに消滅への道をたどり始めるのである。


 ●4章 再編計画の合意事項を超える岩国基地大強化

 「ロードマップ」では、岩国基地に関して厚木艦載機部隊の移駐とSACO合意を継続させた普天間空中給油機部隊の移駐という点が主要に示されるのみである。だが、岩国基地大強化とはその記載事項にとどまらない。
 滑走路沖合移設ということが意味しているのは、沖合への滑走路移動がそのままほとんど基地の沖合拡張であったということである。約二百十五ヘクタールの基地面積の増加である。問題はそれにとどまらない。沖合への基地拡張は水深十三メートル、広大な岸壁港湾施設をももたらした。必要とあれば空母さえも接岸できる最新施設を併せ持った新軍港の現出である。数年前に米軍が世界各地に展開している米軍基地の輸送能力を調査したが、岩国に出現する新港湾は米軍の戦略的輸送拠点能力を持つと太鼓判を押されたものである。
 厚木艦載機部隊移駐と普天間空中給油機部隊の移駐ということは、現有の米海兵隊航空部隊五十七機と艦載機部隊五十九機、給油機部隊十五機の総計百三十機もの米航空兵力が密集する東アジア最大規模の基地へと岩国基地が変化することを意味する。だが問題はそれにとどまらない。米海兵隊航空部隊と米海軍航空部隊とが統合運用されるということがこれに重なる。艦載機にしても海兵隊航空部隊にしても、米軍の「敵地」侵攻作戦においてその第一撃を空からもたらし、その後の地上作戦を空から支援する任務を持つものである。これが意味するのは、最大規模の純攻撃用航空兵力の密集基地として岩国基地が変化を遂げるということだ。しかも、厚木基地が不要となるわけでは全くない。米軍は厚木基地も活用し続けるであろうことは、現在厚木基地内にある基幹的な補修・整備施設がそのまま厚木に残されることや、訓練空域の返還が論議すらなされないという現実が示すものである。
 普天間空中給油機部隊の移駐は普天間問題の帰趨に係る問題であるが、再編計画当初日本政府の説明ではその機数は十二機とされてきた。ところが、最近明らかにされた「一一年米会計年度米海兵隊飛行計画」によれば、その機数は十五機とされている。三機もの機数増加である。加えて、その飛行計画書には、イラク・アフガン戦争の経験から地上で展開する海兵隊部隊への海兵隊自前での空からの作戦支援火力が必要だとして、給油機の機体に対地ミサイルや三十ミリ機関砲を搭載することが順次なされてゆくとされている。偵察機能をも付加するともいう。まさに、空中給油機が給油や兵員・物資の輸送のみならず、対地爆撃機、対地攻撃機および偵察機として活用されるということだ。明らかに米軍再編計画での合意事項を超え出る基地機能強化に他ならない。現在のFA18ホーネット機に代えて最新鋭機F35Bが配備される計画であることも明らかになっている。
 これらに加えての愛宕山開発跡地への米軍住宅・施設の新設なのである。諸施設の林立する基地内部にかろうじて米軍の単身者中心の高層住宅一千戸強を作るにしても、庭付き低層の将官用住宅は「基地外」に新規用地を取得して建設するというのが愛宕山米軍住宅化である。その戸数はなんと二百七十戸前後だとされている。そして、これもまたペテンそのものなのだが、地元の容認勢力が愛宕山米軍住宅新設容認と抱き合わせで要望した「市民も利用できるスポーツ施設を」ということに耳を貸すふりをして、手狭になるがゆえにもはや基地内部ではレイアウトすらできない野球場やサッカー場などの米兵用施設・設備を愛宕山跡地に新たに作るとしている。米兵が訓練している昼間に限っては市民も利用可能という触れ込みで、米軍住宅・施設新設にゴーサインを出させようとしているのである。だが、住宅であれ、市民も利用できるというスポーツ施設というものであれ、それらが米軍への新規用地提供でありそこに作られるものが米軍施設であることに何の変化もあり得ない。九月七日に起きた岩国基地所属軍属による住民の轢殺事故は、昼間の訓練から解放された米兵たちがスポーツ・娯楽施設めがけて密集する事態によって何が引き起こされるのかということを予測させるに十分な出来事であった。この軍属は「通勤途中であったから公務中」とされ、第一次裁判権すら日本の側から奪われたのであるが、ビール片手に球技などに興じた米兵が基地への帰路で交通事故などを起こした場合にも、公務中の認定をもって裁判権は米側に保持されることになるであろうこともまた明らかなのである。


 ●5章 岩国行動の大成功かちとり、日米同盟深化路線と総対決を

 沖縄のたたかいへの注目と支援とともに、「本土」における米軍再編計画とのたたかいに注目し自らのたたかいとして展開することが「本土」の労働者人民には強く求められている。とりわけ、これほどまでの基地大強化が計画され実行されようとしている岩国のたたかいに全国からの注目と支援の輪を早急に拡大し、岩国基地大強化反対―愛宕山米軍住宅・施設新設反対の大運動をただちに形成してゆかなくてはならない。その全国からの注目と支援に応えうるたたかいは、すでに岩国においては継続的かつ発展的に存在している。
 井原勝介前岩国市長が提起した〇六年三月の米軍再編計画の是非を問う岩国住民投票を起点にして、めざましい広がりと発展を遂げた岩国における基地大強化反対運動は、その後の政府や県当局あるいは福田現岩国市長や議会内容認派、地元財界などの容認派勢力の圧力や敵対とたたかいながら、さらに発展し拡大している。住民投票で示された厚木艦載機部隊移駐反対過半数超の民意は何ら変わることなく継続している。一昨年来、岩国基地強化と岩国基地存在そのものを問う裁判が相次いで提起され継続もしている。基地滑走の民間使用(民空化)と引き換えに愛宕山米軍住宅容認への道筋を協議した「テーブルの裁判」(公文書非開示処分取消訴訟)は、終結したが、公有水面埋立承認取消訴訟(海の裁判)、岩国爆音訴訟(空の裁判)、愛宕山開発事業承認取消処分取消訴訟(陸の裁判)は、毎回多数の住民の参加によって継続している。そして、政府が愛宕山跡地の買い取りと米軍住宅・施設建設計画を公然化し始めた時期に合わせ、愛宕山地域住民を先頭にした「愛宕山跡地見守りの集い」が開始されている。
 「岩国は負けない」の合言葉は健在であり、全国からの注目と支援をもってそれを実現させることができるか否かということがまさに問われている。
 アジア共同行動日本連絡会議と、2010岩国・労働者反戦交流集会実行委が呼びかける「2010岩国行動」が十二月四日、五日にわたって開催されようとしている。アジア各地での米軍再編計画にそれぞれの国・地域でたたかう人々も結集する。今回は韓国から駐韓米空軍クンサン基地の拡大に反対する活動家や朝鮮半島の自主平和統一を労働運動の只中から実践している民主労総訪日闘争団も参加する。「本土」の米軍基地強化に注目したたかうとともに、沖縄のたたかい、そしてアジア太平洋各地での米軍基地と米軍存在とたたかう人々と結合してこのたたかいをいっそう強固に推進するべき時である。それをもって、日米同盟深化路線との全面対決をいっそう促進してゆこうではないか。

 

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