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 ■10春闘を闘いぬき、階級的反撃を開始しよう




 すでに一〇春闘が開始されている。今年の春闘は、中小・零細と非正規の労働者を中軸とする生存権をかけた闘いである。今や労働者の下層は生活することすら困難な状況であり、権利の解体も進行している。政府―資本と総対決し、労働運動の階級的前進をかけて勝利まで闘いぬこう。



 ●1章 10春闘をめぐる情勢


 日本経団連は経営労働政策委員会において、ベースアップについて「昨年と同様に困難とする企業が多数に上る」としてベアをおこなわないこと、また定期昇給の抑制もうちだし実質的な賃下げをうちだした。そもそも日本経団連は「業種や社員一律の賃上げを否定的する」ものであり、「賃金より雇用を重視した交渉の重要性」として、「雇用」を恫喝として賃下げをせまるものである。

 この日本経団連―独占資本の方針は、「新時代の日本的経営」という路線を堅持し、「総人件費の抑制」をさらにすすめようとするものである。正規労働者には、ベアの凍結や定昇の抑制、ボーナスのカット等の賃下げ、また諸手当の切り下げ、カット等がおこなわれ、また非正規化によって大幅な「総人件費」の切り下げがおこなわれてきた。労働分配率は下降しつづけている。

 その一方で内部留保は拡大している。独占資本の内部留保はこの十年間で二倍となり、現在四百二十八兆円までふくれあがっている。実に国家予算の約五倍である。主なところはトヨタの約十三兆四千二十六億をはじめとして、NTT九兆五千九百二十五億、三菱UFJ七兆六千七百三十三億、ホンダ七兆三百八十七億、パナソニック四兆二千百五十二億を上位五社として業種的にも、東京電力四兆千五百三十五億、三菱商事二兆九千三百九十億、JT二兆三千五十一億、JR東二兆千七百八億、JFE一兆九千二百六十一億、セブン&アイ一兆八千六百二十八億等と、すべての業種の独占企業にわたって巨大な内部留保をおこなっているのである。伸び率は二〇〇〇年以降になって急上昇している。

 「総人件費」、労働分配率の低下と対照的であり、独占資本が賃金の切り下げ、非正規化という労働者からの搾取の拡大によって肥え太っていることをものがたっている。

 この莫大な内部留保のうえで、「不況」をさけび「賃上げか雇用か」という恫喝をおこなつているのである。資本の利益のために徹底的に労働者を搾取するものとしての「新時代の日本的経営」の全面化である。

 これに対して連合は早くも全面的な敗北宣言をおこなっている。昨年十二月三日の中央委員会で「厳しい経済、雇用情勢を踏まえ、賃金水準の維持を基本とする」として「デフレや業績の低迷」を理由として「賃金改善要求」=ベアを見送ることを決定している。このもとに自動車総連ではトヨタをはじめとして見送り、電機連合、鉄鋼労連も同様である。

 定昇についても「賃金カーブ維持分の確保を図る」としているが、そもそも資本の論理に乗った上での「要求」では各個撃破されるのは目にみえている。

 資本の「総人件費抑制」に対して全面的に闘い、労働分配率の上昇を実現していくということを意図的に避け、「不況でデフレ」だからと労働者に賃下げを強制するのである。

 「パート時給の三十円程度引上げ」「非正規労働者の待遇改善」を主張しているが、連合加盟労組が「派遣切り」等に対して、企業利益の防衛を立場として容認し、非正規労働者の闘いを圧殺してきたのを見れば空語である。

 総賃金の引上げを要求し、非正規労働者の賃金の引上げを要求するのでなければ、一層の正規と非正規の固定化と分裂を拡大するだけである。

 一〇春闘は政府、日本経団連の「新時代の日本的経営」の路線と総対決し、連合の屈服と圧殺を突破し、非正規労働者賃金の大幅アップの実現をはじめとして「総賃金」の拡大、「労働分配率」の拡大を実現しなければならない。



 ●2章 10春闘の課題


 一〇春闘における闘いの課題の第一は、中小・零細の労働者、そして非正規労働者の「生活できる」大幅賃金の引上げを闘いとることである。

 戦後、総評の春闘においては、民間大手の賃上げは課題となっても、多数である民間中小・零細の労働者の賃上げは、課題とされることはほとんどなかった。そのことが総評の弱体化と腐敗、そして解体の根拠としてあった。戦後型春闘の解体のなかから、民間中小・零細の労働者の賃上げを中心とする春闘が開始され、闘いぬかれてきた。

 この闘いこそが中心とならなければならない。そして、「新時代の日本的経営」以降拡大してきた非正規雇用の労働者の生存権をかけた賃上げの闘いとも連動した闘いこそが、労働運動の新たな前進を切り開いてきている。政府―資本によって最も搾取・収奪され、かつ多数をしめる労働者の自らの労働条件を自らの闘いでかちとる闘いである。

 全労協は、「月給者は一律一万七千四百円、時給労働者は百円/時の賃金引上げ」「全ての労働者に月額十七万円、千二百円/時の最低保証」の要求を春闘の方針にしている。連合が「ベア」を放棄するなかで、労働者の「生活できる賃金」を獲得するための現実的な要求である。そしてこの要求は「すべての労働者」、雇用形態や性別、国籍等を問わない全ての労働者の要求としてある。この賃上げ要求を実現していくことが必要である。このために、ストライキという労働者の当然の権利の行使をふくむ闘いが必要である。

 この要求の実現の闘いは、労働者の労働条件の全体的な劣悪化への反撃としてもある。「新時代の日本的経営」によってより拡大してきた労働条件の劣悪化、「成果主義、能力主義」による賃金は労働者間の「競争」と、長時間労働とサービス残業等を拡大してきた。この撲滅が必要である。

 また、全国平均で七百十三円(時間額)でしかない最低賃金の引上げを実現しなければならない。この賃金では生活することはできない。大幅な最低賃金の引上げが早急に必要である。同時に、公契約条例によって労働条件を規定し、外注化等による労働者の賃金の低下をなくしていくことが必要である。「生活できる賃金」の実現のためにこの闘いは重要である。

 そして均等待遇の実現の闘いである。「同一労働、同一賃金」という要求の実現のための闘いである。パート、派遣、請負、契約等のいわゆる非正規雇用の労働者は実に35・4%に拡大している。その賃金は、いわゆる「ワーキング・プア」といわれるように劣悪であり、生活自体が困難である。また女性労働者の賃金は男性の65・8%であり、非正規になると50%に満たない。また外国人・移住労働者の状態も劣悪である。研修生・実習生では最低賃金以下で残業代も支払われないという状態である。このような状態の労働者の労働条件の引上げを実現する闘いこそ重要である。

 全ての労働者の労働条件、賃上げを実現し、基本的に「同一労働、同一賃金」のもとに生活できる賃金を勝ち取っていく闘いこそ、現在の政府―資本に対して労働運動が実現すべき闘いである。

 第二は労働法制をめぐる闘いである。この間の労働法制の改悪にたいする反撃の闘いである。現在的な中心的課題は派遣法の抜本改正である。

 「労働者派遣法」は一九八五年に制定され、一九九九年に「派遣業務の原則自由」化という改悪、二〇〇三年に「製造業への派遣解禁」という改悪がおこなわれてきた。そして構内下請の派遣化、女性労働者の派遣化、情報処理サービスの派遣労働者化等という資本にとってのみ利益のあがる、労働者のつかいすての拡大をみちびいてきた。「労働力流動化」のもとに労働者を低賃金と不安定雇用にたたきこんできたのである。

 この事実に対する反撃のなかで、現在三党案をめぐって労働政策審議会で審議がおこなわれている。@日雇い派遣の禁止、A登録型派遣の禁止、B製造業派遣の原則禁止、C直接見なし雇用規定の創設、D均等待遇規定、E派遣先の団交応諾義務・派遣先責任の強化、F法律の名称・目的に「労働者保護等に関する法律」の明記をめぐって経営側や一部公益側委員から反動的なまきかえしがおこなわれ予断を許さない状況である。派遣法の抜本改正を全労働者の力で実現しなければならない。

 その基礎をつくるのが現場における派遣労働者の闘いである。パナソニック電工の佐藤さんの闘いは全国的な闘いとして実現され勝利した。現場からの反撃を基礎に闘おう。

 労働法制をめぐる闘いは「派遣法」にどまらず、有期雇用―有期労働契約の問題がある。労働者の使い捨てと低賃金を許さない闘いが必要である。性別・民族・国籍・雇用形態の違いによる差別をゆるさず、均等待遇を実現する労働法制の実現へと闘っていかなければならない。

 第三は、完全失業者が三百五十万人をうわまわる状態でたかどまっているなか、一層の首切りや非正規の雇い止めが拡大しようとしている。「不景気」「デフレ」をキャンペーンし、労働者の解雇を資本の好きなようにしようとしている。これを絶対に阻止しなければならない。膨大にためこんだ独占資本の内部留保をつかえば、首切りや雇い止めは必要ない。とわけ中小・零細に対する単価の切り下げ等による中小・零細の経営の困難と賃金の低下は独占資本の利益をつぎこめば解決するのである。

 独占資本の利益のためだけの首切り・雇い止めを許さず労働者の雇用を拡大しなければならない。同時に、公務職場における行革―民営化・外注化にたいする闘いによって公共サービスと、そして公務員と外注先の労働者、非正規労働者の労働条件の防衛と拡大を実現しなければならない。

 第四は、正念場をむかえている国鉄闘争を先頭とした、すべての争議の勝利にむけ全力をあげることである。

 国鉄闘争は二十三年を経過し、闘いのギリギリの攻防の局面にある。闘争団をはじめとする千四十七名の仲間は「闘争団の納得する解決」を求めて、裁判闘争をはじめとした日々の闘いを全力で推進している。

 「雇用、年金、解決金」において二十三年におよぶ闘争団の血のにじむような闘い、五十一名の闘争団(全体では五十九名)の仲間の無念の死が報われるような解決を絶対実現しなければならない。2・16日比谷野音集会を勝利集会とするために闘いぬいている闘争団の闘いと結合し全国で闘おう。2・16日比谷野音に総結集しよう。

 全国で闘い抜かれている争議こそ、一〇春闘の中心であり、労働者の未来を闘いとるものである。全国・地域で闘いぬこう。

 第五は、労働運動の反戦闘争への取り組みを拡大していくことである。労働運動、労働者階級にとって、反戦平和の闘いは不可欠のものである。労働者自らの利益と労働組合の社会的位置にとって反戦闘争は不可分のものである。

 実際、米軍再編反対、基地撤去、軍事訓練反対の闘いが全国の労働者によって闘いぬかれている。その数は確実に拡大している。

 正念場をむかえている沖縄における普天間基地即時撤去、辺野古新基地建設阻止の闘いは今春において重要な攻防となっている。また岩国においても四つの裁判闘争がおこなわれている。愛宕山の買取り予算が計上され、住民の怒りは拡大している。神奈川の闘いもふくめて、米軍再編を粉砕し、基地撤去の闘いを労働運動の総力をあげて推進しなければならない。

 一〇春闘の勝利にむけて、全国ですでに闘いが開始されている。けんり春闘全国実行委員会が二月三日に結成され、総行動、マーチ・イン・マーチ等が闘われ、ストライキが準備されている。四月七日の春闘総決起集会を中心とする闘いを全国で総力をあげて闘いぬこう。



 ●3章 階級的労働運動の前進をかちとろう


 一〇春闘の闘いの只中において、労働運動は新たな階級的前進を実現していかなければならない。すでに、春闘は戦後的な春闘構造の崩壊のなかで中小・零細の労働者の現場からの争議をはじめとした闘いへと転換し、新たな構造の闘いへと前進している。この闘いは非正規労働者の生存権をかけた闘いと結合し、労働者下層の闘いへと前進を実現しようとしている。この闘いをさらに前進させることが必要である。

 そのためには、第一に政府―総資本にたいして「総人件費」の抑制という「新時代の日本的経営」を撤回させる闘いが必要である。「労働分配率」をひきさげるという搾取と収奪の攻撃を粉砕することである。「内部留保」という経営と株主の利益を労働者の賃金へとださせることが必要である。また、独占資本の中小零細への利益の分配を拡大し、中小・零細の労働者の賃金の引上げを実現することが必要である。

 第二に「同一労働同一賃金」の当然の要求を実現していくことである。性別、国籍、雇用形態等にかかわらず「同一労働同一賃金」の実現は労働者の当然の要求である。

 企業別、その大小、雇用形態等によって賃金に格差をつけ、かつ「成果や能力」によって格差をつけることによって労働者を分断していくという労働者支配に対して闘っていかなければならない。このために、最低賃金の引上げや均等待遇の実現の闘いを強化していかなければならない。

 かかる闘いは、労働組合としての社会的存在をかけた闘いであり、労働者間の分断によって、団結・階級的共同性の解体によって実現される資本の支配に対して労働組合がその存在の階級的位置を拡大していくものである。

 この闘いは、戦後的に形成されてきた「賃金」や「労働組合」の転換を要求することとなる。

 いわゆる「電産型賃金」といわれる「企業内労組」を前提として、賃金を諸手当等をふくめる賃金からの転換が必要である。企業内的な労働者支配を根拠として階級支配を行うという戦後的な支配は、「新時代の日本的経営」のなかで、実質的に解体され産みなおされんとしている。「成果主義」賃金の導入によって賃金の格差や諸手当の剥奪がおこなわれ、賃金はきりさげられている。その上で企業内正社員の競争的、排外的意識の組織化がおこなわれている。連合はこれを推進しているにすぎない。

 これに対して、「企業内賃金」から「職務型賃金」「産別型賃金」等の賃金闘争の内容の転換等が模索されはじめている。

 「同一労働同一賃金」の実現と、社会保障の「企業」ではなく「国家」における実現ということとセットとなったものとなる。これは当然にも、労働者の社会的位置、国家との関係等における現状からの転換を要求するし、労働組合の位置と形態の転換も必然化していく。

 従来の企業内労組を基礎とする「産別」ではなく、職種別、産業別の労組への転換もはらむものである。だが、単純に大企業の労働者を中心する産別ではなく、労働者の多数をしめる中小・零細の労働者、非正規労働者をふくめた地域を根拠とする労働者を中心とするものでなければならない。また、現場での闘いを中心とするものでなければならない。

 同時に、このことは、労働者階級にとっていかなる社会をめざすのかということが課題となる。資本主義の歴史的な危機と矛盾の全面化のなかで、搾取され、収奪され、分断される存在としての労働者の歴史的、社会的位置が露骨に現実化されるなかで、生存権すら解体されんとする労働者が、現在の社会に対していかに反撃するのかにおいて不可避の課題としてつきつけられている。

 政府―資本の攻撃のなかで、戦後的な春闘の解体のなかで、民間中小・零細、非正規の要求と闘いを中心として闘いとられてきた春闘の闘いは、その地平の上に労働運動―労働組合の階級的な前進をいかに実現していくのかという課題が問われている。

 このことと真正面から向き合い、労働者の生活と権利、生存権の防衛と拡大のために闘わなければならない。

 同時に、このことは労働者階級、とりわけその先進的な部分に、階級闘争の前進のための実践的展望をあきらかにすることを要求する。ソ連崩壊等うけ帝国主義者、ブルジョアジーは「資本主義の勝利」と「共産主義の幻想」を宣言した。だが、現在の「世界恐慌」にしめされるごとく資本主義という存在そのものが歴史的な危機をしめしている。

 このなかで「アメとムチ」をつかいなから世界的に一部の「プロレタリア上層」をひきこみ、独占資本はプロレタリア下層からの強搾取と収奪によって延命しようとしている。問われているのは下層の分解と帝国主義国と第三世界の労働者の分裂を突破し、その団結を根拠にプロレタリアの解放の歴史的な展望と社会主義を目指す闘い、そしてこの展望と現実的な要求を結合していく闘いである。

 われわれは、一〇春闘の闘いの只中から、このための闘いを推進しなければならない。全ての闘う仲間のみなさん。一〇けんり春闘の勝利のために総決起しよう。
 

 

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