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  ■日米安保―日米同盟破棄!

  反戦・反基地闘争の爆発で日帝による戦争国家化粉砕





 7・21解散をもって衆院における自民・与党勢力の圧倒的多数という事態はひとまずの終焉を迎えた。本稿を執筆している時点において次回衆院選の結果は不明であるが、自民議席の大幅な減ということは確実との公算であり「政権交代の可能性」も語られている。小泉・安倍・福田・麻生と続いたこの時期とは新自由主義的社会改変と一体に、「日米同盟」強化が叫ばれ米軍再編とこれをテコにした日本帝国主義の戦争国家化が大きく展開された時期でもあった。これに対する反発も含んだ形で日米関係のあり方をはじめ、「国連中心主義」でゆくか、はたまた「対アジア関係重視」へと外交政策の軸心を移動させるのかなどという形で「安保・外交」路線が選挙争点化する可能性は絶無とはいえない。だが、このかん強引に進められてきた日本の戦争国家化の現実を根底から突き崩し、日米同盟あるいは日米安保体制を破棄させてゆく方向における選択肢は選挙においては示されることはない。それはもっぱら、革命党と労働者階級人民のたたかいによってこそなしうることである。十一月岩国闘争を軸とした今夏今秋の反戦・反安保・反改憲のたたかいを進めてゆくために、このかんの日米同盟や米軍再編をめぐる状況、また日本の戦争国家化の現段階を押さえておこう。


 ●T、「核の傘」定期協議を確認したSSC

 七月十八日、実に九年ぶりの日米安全保障高級事務レベル協議(SSC)が外務省で開催された。米側からはキャンベル国務次官補・グレッグソン国防次官補が、日本側からは梅本外務省北米局長・高見沢防衛省防衛政策局長が出席した。朝鮮民主主義人民共和国(以下「共和国」)の核実験や中国の軍拡など東アジアの安全保障情勢の変化を踏まえたこの協議において、米国の「核の傘」を巡る定期協議の場を設置することが正式に合意されたところだが、さらに、米海兵隊普天間飛行場(沖縄・宜野湾市)の移設など在日米軍再編を着実に進める、来年の日米安全保障条約改定五〇周年に向け安保協力をさらに進めてゆくことも確認されたという。協議ではテロ対策、ミサイル防衛(MD)での日米協力、日本の新たな「防衛計画の大綱」の検討作業、米国の国防戦略見直し(QDR)についての情報や意見の交換がなされるとも報道されていたところではあったが内容は不明である。

 「核の傘」定期協議とは、「共和国」の核実験や中国の存在をあげつらいつつ一方でオバマ政権の核軍縮方針に懸念を示す日本側の一部世論に対して米側が「核の傘」をもって制動をかけるという従来のパターンを踏襲しただけのものではありえない。日米の安保・外交当局者が今後定期的に「核抑止力」について協議を重ねることを制度化した点に大きな転換がある。六月の米韓政府間における「核の傘提供」首脳間合意文書締結と同様に、日米間においても米国の核兵器をもってする「抑止力」の維持・強化が公然と協議されるということである。歴代政権が政策としてかかげてきた「非核三原則」に背反する「核密約」を継続しているという事態は大きく報道されているが、この流れの中では「核持ち込み禁止」緩和へと議論が進められてゆくことになりかねない。キャンベルは「九〇年代と違って今は、日米関係が平和と安定の基礎となっていることについて両国民の間に深い確信があり、より希望が持てる」と朝日紙とのインタビューで語っている。自らが取りまとめた九六年の「日米安保共同宣言」の「成果」を誇示したいという欲求を割り引くにしても、核抑止力を定期的に協議する制度を設置するまで日米同盟関係を「発展」させることまでは思ってもいなかったであろう。だが冷厳な事実として日米同盟は核兵器による安保体制を公然と認め合うものとして登場しているのである。


 ●U、戦争国家化へ拍車をかける新「防衛計画大綱」策定

 日米同盟というものが核安保をも含んで語られるまでに至った状況とあいまって、日本の戦争国家化の現実もまた急速に進行した。七月十七日に閣議了承された『〇九年版防衛白書』においては、これが年次報告書であることから今後の政策・方針については記述を控えているが、日帝―政府の安保・軍事方針の大筋を浮かび上がらせるものとなっている。「わが国をとりまく安全保障環境」においては、地域紛争や国際テロ活動についての記述とともに、「北朝鮮(ママ)の核・ミサイル問題はより深刻なものになっている」として「共和国の脅威」を強調している。さらに中国について「近年では台湾問題への対処以外の任務のための能力獲得にも取り組み始めている」、「より遠方の海域での作戦遂行能力の構築を目指している」として警戒感をあおっている。そのような情勢認識のうえに、今回あらたに「宇宙開発利用・海洋政策」の項目を特設し、前者は宇宙の軍事利用について、後者はソマリア沖派兵や海賊対処法についての説明をも行なっている。さらに「防衛力のあり方に関する検討」という項目も新設し、新「防衛計画の大綱」「新中期防」策定の方向性を示すものとなっている。まさに『〇九年版防衛白書』とは、日米同盟の強化が進められた小泉から麻生に至る時期と一体に日本の戦争国家化がなされたことの一定の集約文書であり、今後この方向をさらに進める上での里程標ということもできる。以下、この点に詳しく立ち入ってみよう。


 ●V、新「防衛計画大綱」策定の経緯

 いま急ピッチで進行している新「防衛計画の大綱」策定作業は本格的な日帝の派兵国家・戦争国家化への道を開くものである。大急ぎでここに至る経緯を確認しておこう。

 自衛隊発足後四次にわたる「防衛力整備計画」(一九五八年〜八六年)が策定され、このもとで自衛隊の増大化がなされてきたところである。この計画の基本的な考え方は「直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行なわれるときはこれを排除する」というところにおかれていた。

 その後、三木内閣の下で国防の基本的指針を示すとして「防衛計画の大綱」策定方式、およびこのもとでの「防衛体制づくり」の具体的方策として中期業務見積もり(現在の中期防=中期防衛力整備計画)という形で自衛隊の装備および後方支援体制づくりが行なわれてきた。この時期における防衛計画の大綱とは「基盤的防衛力構想」と称せられるように、「独立国家に必要な最小限度の防衛力を整備する」ということを基本線にして策定されていたところである。もちろんそれ自体が憲法に違反するものであることも確かなところではあるのだが。

 大きくこの「基盤的防衛力」整備という考え方が転換したのが、〇四年小泉政権によって策定された現行「防衛計画の大綱」(〇四年大綱)であった。ここでは従来の「基盤的防衛力構想」について「わが国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となってわが国周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという考え方」であったとして総括付け、@「新たな脅威や多様な事態は、予測困難で突発的に発生する可能性があるため、従来のように防衛力が存在することによる抑止効果が必ずしも有効に機能しない。そのため、今後の防衛力には、脅威の顕在化を未然に防止するとともに、各種事態が発生した場合に有効に対処し、被害を極小化することが強く求められる」(事態への実効的な対処)、A「新たな脅威や多様な事態といった問題は、一国のみでの解決がますます困難になっている。このような状況のもとで、わが国の安全保障を確固たるものとするため、国際安全保障環境の改善のために国際社会が協力して行う活動(国際平和協力活動)について、防衛力をもって主体的・積極的に取り組む必要」がある(国際平和協力活動への主体的・積極的な取組)として、従来の考えを否定し去ったのである。小泉政権のもとで日米同盟強化が叫ばれ、米帝・ブッシュ政権のアフガニスタン侵略戦争への支持と「テロ対策特措法」制定―インド洋上での給油活動(〇一年)やイラク侵略戦争への支持協力とイラク特措法に基づく自衛隊イラク派兵(〇三年)がなされたことと軌を一にするものであった。同時に、現在の米軍再編『日米ロードマップ』に至る形で〇二年から開始された日米間の「防衛態勢見直し協議」に即した形の防衛計画大綱策定なのであった。


 ●W、煮詰まる新「防衛計画大綱」策定作業

 新「防衛計画の大綱」策定作業とは、〇四年策定された現行大綱にある「五年後の見直しと修正」を受けたものであるが、「見直し」「修正」というよりもそれは新たな主体的・客体的な状況変化を前提にして策定されてゆく日帝の安保・軍事戦略方針書といって過言ではない。その作業は「わが国の安全保障環境は、引き続き、大量破壊兵器などの拡散や国際テロなどの新たな脅威や多様な事態が課題であることに加え、国際平和協力活動への積極的な取組への期待がさらに高まっており、今後、このような安全保障環境により適切に対応していくことが必要」(『〇九年防衛白書』)という認識のもとに進められている。

 昨年九月、防衛大臣を長とする「防衛力の在り方検討のための防衛会議」が設置され、以降五回にわたる会合が行なわれている。

 また、本年一月麻生首相の下に諮問機関として「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長 勝俣恒久・東京電力会長)も設置され、五月二十九日まで十回に及ぶ会合を開催している。

 このいずれの会合も@大量破壊兵器拡散や「テロ」といった「新たな脅威」への対応A日米関係の変化や周辺国の新たな事象への対応B自衛隊の国際平和協力活動の本来任務化に踏まえた新たな防衛計画の策定という点では共通した問題意識の下に行なわれている。
 こうした二つの会議と別に、これをリードしてゆく意図もあからさまに自民党国防部会防衛政策小委員会は六月九日『提言・新防衛計画の大綱について』を取りまとめて公表した。ここでは「策源地(敵基地)攻撃能力保有」や「早期警戒衛星の研究・開発」あるいは、武器輸出三原則の見直しなどが盛り込まれ、自衛隊の定員増や防衛費縮減撤回が強く打ち出されてもいる。もちろんこれらの政策提言の根幹に「憲法改正」を主軸として押し出していることは言うまでもない。

 この直後の六月二十日、政府が進める新防衛計画の大綱策定に向けた基本方針が報道された。報道によれば、中国の軍事的な台頭や共和国の核・ミサイル開発を踏まえ「装備、要員の縮減方針の転換を図る必要がある」と明示し、削減傾向にある防衛予算を増額させる方向転換を打ち出しているという。また「情勢の変化を踏まえた選択肢の確保」との表現で、敵基地攻撃能力の保有を検討する姿勢を示唆しているともされている(共同通信報道)。

 いまだ全体像は見えないし、何よりも衆院選の結果を待たなければなんら確定的な事はすでにいえなくなっている状況である。だがしかし、このような意図の下に日帝の安保・軍事戦略が検討されている状況であることは押さえておく必要がある。この策定作業には、日本経団連などの財界もまた深くかかわっているのであり、どのような政権が総選挙後成立しようともこの方向で圧力が加えられてゆくことは必至といわなくてはならないのである。上記「安全保障と防衛力に関する懇談会」(第六回)においては、日本経団連防衛生産委員会・日本防衛装備工業会がそろって、武器輸出三原則の見直しや、防衛産業・軍需産業の維持・強化のための財政支援を含む防衛産業政策策定を強く要求しているところでもある。


 ●X、米軍再編「日米ロードマップ」三ヵ年の状況

 先に、拍車のかかる日帝の戦争国家化への過程を見てきた。これがまさに「日米同盟」強化という呼号の中で推進させられたことはしっかりと押さえておく必要がある。そしてその「日米同盟」強化を具体的に示すものが在沖・在「本土」米軍再編であった。

 米軍再編は、〇五年二月「地域および世界における共通戦略目標」合意、同年十月「日米同盟:未来のための変革と再編」(いわゆる『中間報告』)合意、そして〇六年五月の「再編実施のための日米ロードマップ」(『最終報告』、以下「米軍再編『日米ロードマップ』」とする)の合意へと至ったのであった。現段階はこの米軍再編『日米ロードマップ』に込められた諸計画を実施してゆく段階であり、これをめぐる直接的な攻防が展開されている段階である。

 この五月、朝鮮半島情勢が大きく扱われているさなか、米軍再編『日米ロードマップ』政府合意から三年目を迎えた。いまや再編合意における「負担軽減と抑止力維持」という言辞は明々白々なペテンでしかなかったことが満天下に明らかになっている。『琉球新報』、『沖縄タイムス』の沖縄二紙はこぞってこの点を指摘している。

 「進まぬ負担軽減 米軍再編合意三年」(五月一日琉球新報)においては「在沖米海兵隊のグアム移転やその経費負担、本島中南部の施設返還などを盛り込んだ米軍再編の最終ロードマップ(行程表)が日米で合意されて一日で三年が経過した。地元負担の軽減が目的の一つとされてきた。だが、依然として軽減が進まない中、米空軍嘉手納基地では最新鋭のF22戦闘機など外来機の飛来による騒音激化が象徴するように、逆に負担増の側面だけが表出しているのが実態だ」と指弾している。『沖縄タイムス』紙五月二日付け記事では、「政府『普天間』軟化 知事意見が焦点に/米軍再編合意三年」という見出しのもと「負担減?地元疑問視」「グアム移転 政権交代しても『縛り』」「普天間移設『機能追加』地元反発 環境予測評価を疑問視」「嘉手納以南返還 計画遅れ跡利用に課題」とそれぞれ小見出しをつけて沖縄における米軍再編のペテン性や沖縄民衆への負担強化を批判している。

 米軍再編計画がもたらす地域住民への負担強化やそのペテン性に対する怒りとたたかいはいやましに高まっているといわなくてはならない。沖縄では辺野古新基地建設に反対するたたかいが昨年七月の辺野古新基地建設反対県議会決議を生み出し、これをテコにしたたたかいがいっそう激化している。いま防衛省が進める辺野古新基地建設のための環境アセス準備書に対してもその撤回とアセスのやり直しを求めてたたかいが進められている。ヘリパッド新設に反対する高江のたたかいも、住民排除の仮処分申請という前代未聞の政府―防衛省による住民提訴への怒りも込めて展開されている。嘉手納・普天間での爆音訴訟をはじめ基地被害に対するたたかいもいっそう強力におしすすめられているところだ。たたかいは沖縄のみに限定されない。原子力空母G・ワシントン配備強行がなされ、キャンプ座間への米陸軍第一軍団前方司令部移駐や戦闘指揮訓練センター新設がなされている神奈川においてもたたかいは継続している。そして厚木艦載機部隊移設が計画されている岩国においても愛宕山米軍住宅化反対のたたかいや岩国爆音訴訟の提訴と展開という形でたたかいは発展している。

 このように、米軍再編というものが本質的に「地元住民への負担強化」をはらみながら基地の新設や拡張を含む強化のみを目的とするものであるがゆえに、これに対するたたかいが、発展することはあっても止むことはないのである。このたたかいは非和解的であり基地存在そのものの消滅まで永続化するたたかいだ。

 こうした各地住民のたたかいが示すものに大いに注目しなくてはならない。基地強化がもたらす基地被害の増大や日常の生活の場への軍事の浸透という点に対するたたかいが日米帝国主義・政府の安保・軍事政策との正面対決という観点から見れば、これを決定的に規制し対立するたたかいとしてあるということだ。各地住民・市民の米軍再編に反対するたたかいが日米同盟そのもの、この同盟関係にもとづく軍事路線を直撃するものとしてあるという内実に、反帝プロレタリア革命の勝利に向けた労働者階級人民総体のたたかいが合流し結合を果たす時、反戦闘争・反安保闘争あるいは反改憲闘争はいっそう内実を豊かに深化させ発展してゆくといえるのだ。


 ●Y、日米同盟の現状

 日米安全保障高級事務レベル協議(SSC)に参加した米国務次官補・キャンベルが「九〇年代とは違って」日米同盟が強固だという趣旨の発言を行ったことは先に紹介した。だがしかしそれは真実か。キャンベル自身が知悉(ちしつ)しているにもかかわらず黙して語らない問題がある。まさしく上記した米軍再編計画に反対してたたかう各地元住民・市民のたたかいがそれであり、これと固く結合して米軍再編計画に反対し、日米同盟強化に反対する日本の労働者民衆の声とたたかいがそれである。

 日米同盟が米軍再編を許さないたたかいによって動揺を続けている点について触れておこう。

 米軍再編『日米ロードマップ』合意そのものが、国際的(日米二国政府間)問題としての側面と国内的問題(日本政府と地元自治体・住民間)という側面という二つの側面を持つものであることは当初から指摘されてきた。

 「地元負担の軽減・負担の分散といっても負担分散先の地域にこれを明らかにすれば地元は反対するに決まっている。だから地元への説明などしない」(小泉)というような理屈をもって地元の頭越しに決定されたのが米軍再編『日米ロードマップ』であってみれば、国内問題としての米軍再編計画が対象とされる地元地域に受け入れられることがないのは明らかであった。これに対し政府は「米軍再編交付金制度」を編み出しながら、カネと強権をもって再編計画を地元に強要してきたことはこのかんの経緯で明らかである。そしてこのような手段をもって地元首長の「容認」を取り付けたところで、住民の大多数が再編計画に反対であり続けていることは火を見るよりも明らかでもある。

 ところが、遅々として進行しない日本国内での再編計画に対して不信と怒りを募らせているのが米政府・軍である。すでに閉鎖と移設が合意されて十年以上が経過する普天間基地問題がいっこうに進展しない状況に対し「日本政府は約束を守らない」と米政府の元国務省幹部は口にしたというが一事が万事である。日本政府が「米軍再編計画の着実な実施を」とことあるごとに力んでみせてもそれがはかばかしく進捗するはずもない。

 フェンスの中で行なわれる米軍基地の再編強化に対して手をかけてゆくことはいまのところできないが、辺野古や高江あるいは岩国などにおける米軍再編計画に対しては地域住民は果敢に闘争を継続している。それがもたらす日米同盟そのものへの影響は多大である。

 六月四日、米上院軍事委員会において米海兵隊トップのコンウェイ総司令官は、普天間飛行場(沖縄・宜野湾市)の移設や海兵隊員のグアム移転など在日米軍再編計画について、「検討に値する修正案がある」と証言し計画を見直す可能性があることを明らかにした。さらに、来年二月までにまとめる「四年ごとの国防戦略見直し(QDR)」の中で、世界各地での米軍施設見直しとともに在日米軍再編も再検討されるとも述べた。後段の証言については同日ワシントンのシンクタンクで講演したカートライト米統合参謀本部副議長も同様の発言を行っている。つまり、オバマ政権の本来的な国防・安保戦略はいまだ策定中だということがわかる。逆に言えば現在進められているオバマ政権の安保・軍事方針とは「現状維持」と「既定方針の実行」という意味合いが強いものだととらえられるということを意味する。米軍再編計画もまたその一部であるともいえる。

 問題は、前段のコンウェイ発言についてである。より詳細にその発言の真意を見るならば、@「移転先で普天間基地と同じ程度の機能を備えることが不可欠」という主張であり、Aとして「グァム移転後の訓練場の不足」ということであり、B「グアムへの移転経費が当初の想定より膨らむ見通しである」という三点においての主張であることがわかる。普天間と同程度の機能という点は、辺野古新基地における滑走路がX字型二本の千六百メートル滑走路であることに対して、すでに暴露されている新基地へのオスプレイ配備計画にもとづく場合滑走路の長さは千八百メートル必要という点がある。A、Bの主張も含め、それ自体をとってみれば軍の側からする軍事機能拡充や予算的制約を突破したいという欲求の表明でありこれ自体徹底して排斥すべき内容である。だが問題はこのような発言が米軍トップから相次いだという点にある。日本政府がつねに地元に対して恫喝として語ってきた「国際的約束」という米軍再編合意が当の相手国内においてすら流動的なものであることが明らかになったのである。しかもこのような発言が、本年初頭のクリントン国務長官来日時に「日米同盟」の強固さの証として調印された「グァム移転協定」発効の直後、また本年度予算から本格化したグァム米軍新基地建設のための日本側資金供出がなされ始めた直後になされたことの意味は多大であると言わなくてはならない。米軍再編問題が日本の国内問題であったはずが、米国内の問題に逆進し、さらには日米間の国際問題に至る可能性があるということだ。日本政府、米政府ともにたちどころにこの発言に反応し、米軍再編計画は合意どおり進めるという見解を打ち出してはいる。だがしかし政治的見解や立場とは別に、実務的に再編計画を実行する部署においては成り行きを見守るしかないというのが実状でもある

 航空自衛隊の次期主力戦闘機選定をめぐる経緯も日米同盟そのものの動揺性を示すものだ。この四月米国防長官ゲーツは世界最強を誇るステルス戦闘機F22の製造中止を決定した。米議会内でこれに対する反対の意見も浮上したが、オバマが大統領拒否権行使に言及し最終的に製造中止は既定の方針と化したようである。このF22を日本政府―防衛省は次期主力戦闘機と目して日本への売却をことあるごとに米側に要求してきた。折からの経済危機の中、高額なF22を調達する必要性はないという判断や、日本に売却してハイテク技術が流出すること、あるいは日本に売却した場合、同じくこれを要求しているイスラエルからの要望を断るわけにはゆかなくなり中東情勢にも影響あり、というのがF22を日本に売却しない根拠だといわれている。だがしかし、日本側は日本軍需産業の育成と技術レベルの向上・継承という点からは不可欠の要素として次期戦闘機にF22を調達したいという根底的な意図があった。

 関連するが、五月一日、防衛大臣浜田は訪米しゲーツ米国防長官との間で日米防衛首脳会談に及んだ。日本のメディアではF22の日本への売却要請ばかりが報道されたが、浜田の意図は来年初頭に策定されるという米国防戦略見直し(QDR10)の内容について質しつつ、新「防衛計画の大綱」策定作業とのすり合わせを進めたいという点、また、米軍再編計画の見直しの有無を議論したいという点にあったといわれている。ところがこれに対してゲーツがまともに応えることはなかった、とも言われている。すでに政権の命脈が尽きた相手との論議には及ばないと考えているのでもあるだろうが、上記のコンウェイ証言を見るなら、そもそも国防総省内部においてすら対立と不一致が続いていることがわかる。

 さらに日米政府間には、朝鮮半島情勢への認識とアプローチにおいての相違という点も依然として続いている。


 ●Z、反戦闘争の深化のために

 これまで、日米同盟や米軍再編計画の現状とたたかい、同時に日米同盟強化と軌を一にして進行させられてゆく新「防衛計画大綱策定」の動向を急ぎみてきた。この二つが同時一体的に進行している状況をしっかり押さえ、米軍再編計画粉砕のたたかいと日本戦争国家化阻止のたたかいを一体のものとしてたたかうことが決定的に重要である。この点を確認する意味で沖縄の状況について少し触れておこう。

 日米軍事支配打破が沖縄解放闘争の当面の課題だが、いま沖縄においては辺野古新基地建設計画や高江ヘリパッド新設計画などの沖縄における米軍再編との全面対決が大きな課題である。もちろん嘉手納や普天間における基地被害とのたたかい、基地そのものを撤去させるたたかいがこうした米軍再編計画とのたたかいの根底をなしていることは言うまでもない。だが、沖縄におけるたたかいはいまやこれのみではなくなっている。現在の「防衛計画の大綱」にも明記されているところだが、「島嶼部防衛」ということがある。これは沖縄においては「宮古列島、八重山列島、釣魚台(『尖閣諸島』)」を指しここの「防衛」のために自衛隊を活用する方針も具体化されている。そのためにこそ五月、防衛省設置法改定がなされ、陸上自衛隊第一混成団(那覇市)の旅団への格上げがなされたのである。その上で、北村防衛副大臣は「先島を含む南西地域の必要な機能充実と防衛力の質的向上を図る」と答弁し、この地域への部隊配備を進める考えを明らかにした。そして七月、与那国町長独断の「百名の自衛隊部隊配備要望」を渡りに船とばかりにこれを実行に移そうとしているのである。島嶼部防衛という点は新「防衛計画の大綱」においても記載されてゆくことになるのは間違いないが、問題は釣魚台(『尖閣諸島』)の領有をめぐって中国あるいは台湾との間に紛争のある地域、その最前線部にあえて自衛隊を配備させるという意図があらわれているということだ。もちろんこの事態をとって対中戦争の危機などを叫ぶ必要はない。だがこの事態は、日本が「国内外のさまざまな事態への『対処能力』」(防衛計画の大綱)を保持し行なうことが可能となったことを示している。この問題は沖縄の先島諸島地域の問題だけではない。まさに日本の戦争国家化の現段階を示すものである。

 沖縄における反戦闘争がいまや米軍基地とのたたかいのみならず自衛隊とのたたかい、その臨戦的配備とのたたかいを課題とする段階に至ったということを確認することは、ひるがえって「本土」における反戦闘争の内容深化と課題の鮮明化を必然とするものである。米軍再編計画とのたたかいをいっそう強力に推進することとあわせ、日本の戦争国家化そのものとのたたかいを全面的に開始すべきときである。


 ●[、米軍再編粉砕―11月岩国へ総決起しよう

 反戦闘争の内実を深化させつつ今夏・今秋のたたかいをすすめてゆくうえで、一定の有利な政治的条件がうみだされようとしている。八・三〇衆院選とその結果がその条件を形成する可能性をもつ。もちろん米軍再編や戦争国家化に首尾一貫して反対をつらぬくことのできる議会内勢力・議員はきわめて少数であることに変わりは無い。民主党にいささかの幻想をも持つことはできない。米軍再編計画を頓挫させてゆくたたかいにせよ、軍事大国化、派兵国家・戦争国家化に反対するたたかいにせよ根本的には議会の外で、日米軍事基地所在地の住民をはじめとした労働者人民の実力によって、そのたたかいが全国化し国際的な連携をもってたたかわれることを通じてのみ決着が付けられることを忘れるわけにはゆかない。だが生起するであろう日帝政治支配体制の変動や流動化という時期において反戦勢力が手をこまねいていることはできないのも事実である。失業・貧困問題の解決をはじめとして新自由主義的社会改変の中で極端に劣悪化した労働・生活問題の根本的解決を要求するたたかいを激発させるとともに、反戦闘争の発展をいまこそおしすすめるべきだ。

 何よりも国民投票法の廃止を含めて憲法九条改悪論議の最後的封印をめざしたたたかいを強力におしすすめなくてはならない。〇五年の自民党新憲法草案公表以後、衆参ネジレ状況や安倍政権の自壊をもって、明文改憲の波はいったん停止してはいるが、麻生政権のもとで「集団的自衛権解禁」などの政府解釈変更論議の再生やソマリア沖派兵などの実質的な改憲は現実に進行している。「国益」と派兵が一体となったのも憲法改悪をめぐる新たな局面を形成するものでもあった。テロ特措法の廃止・インド洋給油活動の停止と撤退、ソマリア派兵部隊の撤収などとともに改憲論議の封印を自・公・民諸党に強制するべきときである。

 戦争国家化阻止のために進められている新「防衛計画の大綱」策定作業の停止や「防衛力のあり方検討のための防衛会議」「安全保障と防衛力に関する懇談会」の停止と解散を実現してゆかなくてはならない。自衛隊の装備面の飛躍的強化がこのかんなされてきたところだが、これを完全に逆転させる形において圧倒的な軍事費縮減の要求をたかくかかげなくてはならない。宇宙の軍事開発計画とともにミサイル防衛計画の進展を停止させ、ミサイル防衛システムの撤廃を要求しなくてはならない。

 そして日米同盟強化路線の下でこのかん進行してきた米軍再編計画の白紙撤回をかちとらなくてはならない。日米地位協定の根本的な見直しや日米安保密約の完全公開と廃止の宣言、思いやり予算の停止とともに米軍再編計画の白紙撤回にこそ最重点をおいてたたかいを進めよう。

 憲法九条改悪阻止、戦争国家化阻止、日米同盟と米軍再編反対を軸としてさらにさまざまな要求課題が提起されうると思われるのだが、反戦闘争の分野におけるこのような課題提起は議会内諸政党を突き上げて実現させてゆく性質のものではもちろんありえない。

 全労働者民衆が新自由主義的社会改変の圧力と、「共和国」や中国の脅威論とともに正当化された日米同盟強化論の圧力から一定程度距離を置くことが可能となる政治状況を活用して反戦闘争の高揚を展望し実現してゆくことこそが求められているのである。

 その原動力は激烈かつ強靭に展開されている米軍再編反対のたたかいの中にこそある。

 十一月岩国闘争への総決起を中心基軸にして、今夏今秋の反戦闘争を戦略的かつ広範に組織してゆこう!

                             (七月二十七日)


 

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