共産主義者同盟(統一委員会)
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■朝鮮民主主義人民共和国に対する「制裁決議」を撤回せよ 日米両政府は敵視政策を即時中断せよ ●1 国連安保理による制裁決議弾劾 五月二十五日に朝鮮民主主義人民共和国(以下「共和国」)が二回目の核実験を行った。これに対し、核兵器の大量保有国である米英仏中露および日本・韓国などで構成される国連安全保障理事会が、二〇〇六年の決議一七一八をさらに厳しくした制裁決議一八七四を全会一致で六月十二日に採択した。その骨子は、核実験への非難、武器輸出の全面禁止、人道・開発以外の新規融資・金融支援の中止、共和国を出入りする貨物の検査だ。 今回の決議は、武力行使は明記されなかったが、共和国に対する戦争への道に直結する危険な侵略宣言だ。特に問題なのは共和国を往来する船舶に対する臨検だ。確かに、日米提出案にあった必要時の武力行使は削除され、公海上の船舶に対する貨物検査は船舶所属国(旗国)の合意を条件とした。しかし、旗国の合意が得られない場合は検査に適当かつ便利な港へ船舶を導く、という条項が付け加わった。貨物検査は必ずやり抜く、ということだ。表現が和らげられたものの、共和国に対する軍事的経済的包囲を強め、追い詰めようとする侵略行為そのものだ。 忘れてはならないのは、中国の抵抗によって最終的に削除されたが、日米共同提出の制裁案には武力行使が明記されていた点だ。これが日米両政府の本音なのだ。共和国に対するあからさまな宣戦布告宣言だ。 この日米案も、採択された制裁決議も、朝鮮戦争の休戦状態の停止すなわち交戦状態の復活に直結している点は同じだ。実際、共和国は、休戦協定には拘束されない、国連安保理制裁決議は休戦協定の破棄とみなすと明言している。 ●2 帝国主義こそが「平和に対する脅威」だ こうした戦争勃発一歩手前の事態を招いた責任はひとえに日米帝国主義にある。日米両政府による共和国に対する敵視政策、および、軍事的な包囲と恫喝が今回の核実験をもたらしたのだ。 第一に、そもそも、無数の核実験を行い、現在も大量の核兵器を保有する米帝をはじめとする核保有国、それに、原子力発電をプルサーマル計画として進め、大量のプルトニウム燃料を備蓄してきた日帝に、他国の核実験および核兵器保有を非難する資格などない。 第二に、米国政府こそ、年間を通じた侵略反革命戦争演習で共和国に重圧を加え、朝鮮半島の軍事的緊張を高め続けている。オバマ政権はブッシュ前政権の軍事路線を受け継いでイラクとアフガニスタンで無数の民衆を殺戮し続けている。「核廃絶を目指す」といいながらイスラエル、パキスタン、インドなどの核武装は相変わらず容認し、敵視する国の核保有の動きに関しては強硬に対処するという二重基準を保持している。ブッシュと比べてより「ソフトで民主的」であるかのような幻想を全世界に振りまきつつ己の利害を貫徹しようとしているのが帝国主義者オバマなのだ。 そのオバマ政権のアジアにおける軍事外交路線は何も変わっていない。フィリピンではミンダナオ島をはじめ米比合同軍事演習という形態で軍事作戦を展開して民衆を殺戮し続けると同時に、朝鮮半島においても今年二―三月に共和国侵攻を想定した韓米合同軍事演習を例年通り強行した。現在、米政府内部では前政権以来の話し合い路線の放棄と強硬路線への回帰が始まっている。 第三に、共和国に対する敵視政策を継続させるとともに朝鮮侵略反革命戦争の準備を着々と進めて朝鮮半島における軍事的緊張を高めている張本人こそ日本政府だということだ。 麻生政権は、ソマリア沖への陸海空三軍の派兵、年間を通じた合同軍事演習の実施、米軍再編に連動した自衛隊の再編強化、沖縄における米軍新基地建設の暴力的推進などを通じて戦争国家化と日米軍事一体化をすすめている。同時に、共和国に対する独自の経済制裁を継続し、また、米韓合同軍事演習と連動して日米合同軍事演習を行うなど、朝鮮侵略反革命戦争突撃の準備を進めている。今年二月には共和国が発射した人工衛星をミサイルと決め付け、イージス艦出動など自衛隊の準臨戦態勢を作り上げて軍事的危機意識を煽り、同時に共和国に対する嫌悪感を振りまきながら民間レベルでの戦争動員態勢構築のための訓練を大々的に行った。 今回の核実験を機に自民党のみならず民主党でも敵基地先制攻撃論が沸き起こっている。加えて、船舶検査に関する特別措置法案を成立させようと狙っている。自衛隊を出動させて共和国船舶に対する臨検を強行しようというのだ(六月十六日現在、自民党は海上保安庁に限定する方針に変えたと報道されている)。 第四に、大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への全面参加を李明博政権が五月二十七日に表明した韓国では、核武装論が保守派によって叫ばれ始めている。西海では南北双方の兵力が増強され、軍事衝突の危険性が高まっている。 共和国は以前から韓国によるPSI参加を自らに対する宣戦布告をみなすと警告していた。このため、李明博政権は全面参加の発表を数度にわたり延期してきたが、今回の核実験を絶好の機会として発表に踏み切った。さらに、同政権は六月に入って、共和国を除く米中露日韓による五カ国協議の開催を提案するとともに、韓米首脳会談で朝鮮半島有事における「核の傘」をはじめとする両国間のより緊密な軍事協力を確認した。 要するに、日米韓三角軍事同盟による共和国に対する軍事的な圧力と包囲こそが朝鮮半島における再度の戦争勃発の危機を生み出しているのだ。 共和国への軍事侵攻を目的とした米韓および日米の合同軍事演習が年間を通じてひっきりなしに行われている。その目的ゆえ、共和国は万が一の事態に備えて臨戦態勢をとらざるを得ない。こうした軍事的緊張の高揚が、好むと好まざるとにかかわらず多額の軍事支出を強制し、人と物を消耗させ、社会建設自体に計り知れない打撃を与えているのだ。 そうした軍事的重圧を加え恫喝しておきながら「話し合いに応じろ」と民主主義者づらをすることが欺瞞でなくて何か。人類を何度も滅亡させるほどの核兵器を保有し、あるいは核開発を行いながら、共和国に対してのみ「核実験は平和に対する脅威」「絶対に止めさせる」と平和主義者づらをすることが二重基準でなくて何か。全世界で平和への脅威となっているのは帝国主義の方なのだ。 ●3 朝鮮―アジア人民と連帯し、侵略反革命戦争阻止! われわれは帝国主義足下の共産主義者として、現在の朝鮮半島における軍事的緊張の激化に立ち向かっていかなければならない。被爆者、被爆二世・三世・四世に連帯して全世界の核廃絶を求めるとともに、すべての核兵器の実験と保有、および、原子力発電所などのあらゆる核開発に反対するわれわれは、共和国の核実験を絶対に認めることはできない。しかし同時に、日朝人民の歴史的関係のなかで今回の核実験を捉える必要がある。 第一に、共和国の先軍政治、その突き詰めである今回の核実験、および、朝鮮半島における軍事的緊張の高まりを作り出した要因として、@共和国自身の軍事外交路線(と、それを選択している朝鮮労働党の路線)、ならびに、A共和国の壊滅を最終目標とする帝国主義の敵視政策の二つが並立しているように見える。だが、本質的にはAが@を規定し、強制している。 なぜ共和国が、飢餓や先軍政治をはじめとして今のような状態にあるのかを考えるとき、さまざまな要因が絡まっているが、その中でも最も大きいものが南北分断だ。この南北分断の原因は日帝の朝鮮植民地支配だ。そしてこの南北分断ゆえに、朝鮮戦争が起きて数百万人の朝鮮人民が死に追いやられ、全民衆が塗炭の苦しみを味わい(それは離散家族問題などとして現在まで続いている)、帝国主義による分断支配が可能となり、韓国では独裁政権が長期にわたって成立して民衆に対する血の弾圧を繰り返し、外国勢力による共和国への包囲・孤立化政策が続いてきたのだ。 われわれから見れば絶対に手を染めてはならない核実験を強行するところにまで共和国を追い込んでいるのは、この南北分断という条件を作り出し、利用してきた日米帝国主義なのだ。そしてわれわれ日本の労働者階級人民とその一部である共産主義者は、この日米帝国主義による共和国壊滅策動をいまだにとめることができていない。南北の自主的平和統一支持を掲げてはいるが、しかしこれに敵対する帝国主義者の動きをいまだにつぶすことができていない。 朝鮮半島情勢を把握し――共和国が行った核実験への批判も含めて――、朝鮮侵略反革命戦争阻止闘争と日韓・日朝連帯運動を推進する上で、朝鮮人民に対するわれわれ帝国主義足下の労働者人民の以上のような歴史的および現在の責任、言い換えれば、朝鮮―アジアにおける資本家階級とわれわれ労働者階級の、そして各国の労働者階級の間の国際的な関係を捉え返し押さえることが大前提だ。そうした立場から情勢認識と実践方針を確立しなければならない。 第二に、国連による共和国に対する制裁決議をはじめとする現在の帝国主義による共和国孤立化―壊滅策動が激化する情勢において、すなわち、今後韓国軍・駐韓米軍と共和国人民軍との軍事衝突の可能性が極めて高まっている中で、軍事的衝突が起きるかもしれない将来を見据えた上でわれわれがどういう立場からいかなる行動を取るべきなのか、という点だ。 結論。われわれは再度の朝鮮戦争勃発と日本軍=自衛隊の参戦に対しては革命的祖国敗北主義に基づく(=日帝の敗戦を目標とする)反戦闘争を、在日を含めた朝鮮人民への歴史的責任をかけて最後まで貫徹し、勝利することである。 先述の通り、共和国は核実験を強行し、PSI参加を表明した韓国に対し、その表明を宣戦布告とみなすと発表し、一九五三年の休戦協定にも今後は縛られないとまで宣言した。さらに三回目の核実験の準備に入ったという報道もある。加えて六月十三日には共和国政府が、新たに抽出するプルトニウムの全量の兵器化、および、ウラン濃縮作業への着手を表明した。南北間の軍事衝突の可能性が日増しに高まっている。 こうした共和国の軍事的戦術は、しかし帝国主義による軍事的経済的重圧がもたらした結果だ。アメリカ・アズ・ナンバーワンの復活を目標に掲げる帝国主義者オバマのあきれるほどの朝鮮半島情勢に対する無関心と無策、共和国に対する無視は――国内の経済立て直しと中東安定化で問題意識が一杯になっているからだが――ブッシュ以下の水準だ。 今になってオバマ政権は共和国のテロ支援国リストへの再登録と六カ国協議の無効性をほのめかしている。軍事制圧に踏み込む野望をあからさまにしようとしているのだ。西海などでの共和国軍と韓国軍の交戦が勃発した場合、それがどのように展開するかは予測できないが、これまで米帝は作戦計画五〇二七をはじめ共和国侵攻から平壌占領―共和国壊滅にいたる計画をすでに持っていて、それに基づいた軍事訓練を日米および米韓の軍事同盟の下で長年にわたり行ってきていることを片時も忘れてはならない。米帝側の準備はすでに整っている。 われわれは、帝国主義による再度の朝鮮侵略戦争を絶対に阻止する。 国連安保理は制裁決議を直ちに撤回せよ。 米帝オバマ政権は、共和国を敵視する政策をただちに撤回し、共和国に対する軍事的包囲網をただちに解き、駐韓米軍をはじめとするアジア駐屯米軍をただちに総撤収させ、朝米国交正常化交渉に入れ。 日帝麻生政権は、独自の経済制裁をただちに撤回し、日米合同軍事演習を中止して日米軍事一体化の動きを止め、拉致問題を口実にした排外主義扇動を中断し、戦争国家化策動を全面的に撤回した上で、二〇〇二年の日朝平壌宣言に基づいて共和国との国交正常化交渉に入れ。 同時にわれわれは、戦争突撃策動と一対のものとしてある民族排外主義の嵐が吹き荒れる中で、これに抗する労働者階級人民の主体力量を高めるために全力を傾注する。 朝鮮半島――なかでも共和国をめぐる――情勢をどのように捉え、たたかいの方針をどのように立てるか。これが帝国主義国日本の左翼の本質を問う試金石になっている。この点で社民党と日本共産党は国会決議などでブルジョア政党と完全に歩調を合わせるという民族排外主義的な本性をさらしている(それはこの間の「独島問題」においても、後者が外務省見解支持を明言するなど、はっきり表れた)。他の左翼グループにおいても、共和国に対する嫌悪と憎悪をむき出しにする、あるいは、帝国主義とスターリン主義の二項対立=パワーゲームとしてのみ状況を把握するなど、民族排外主義に絡め取られた部分が少なくない。 われわれは、こうした左翼の残骸を乗り越えて前へ前へと進んでいく。差別・排外主義と対決している仲間たちと固く結び合って反帝国主義とプロレタリア国際主義を掲げた統一戦線をもっともっともっと広げ、深めていく。南・北・在日の朝鮮人民と連帯し、自主的平和統一支持の旗を掲げながら、日米帝国主義による再度の朝鮮侵略戦争策動を木っ端微塵に打ち砕くのだ。 勝利は労働者階級人民のものだ。 同志、友人のみなさん。 勝利に向かってさらに進んでいこう。 |
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