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 ■目安による最低賃金抑制を許すな!

  全国的な闘いとして最低賃金闘争の強化を




 昨秋の最賃法改正以降、〇八年の最低賃金引き上げに多くの労働者の注目が集まっている。例年、五月に開始される中央、地方最低賃金審議会も、七月改正最賃法施行と合わせる形で七月開催となった。その間、中央円卓会議が開催され政労使で中長期的な最低賃金の引き上げ幅を合意するというのが全体の流れであった。しかし六月二十三日に開催された中央円卓会議において中長期的な目標として合意されたのは、「小規模事業所の高卒初任給の最も低い水準を勘案し、今後、五年程度でひきあげる」というとんでもない最低賃金抑制の内容であった。労働側は小規模事業所を平均額が七百五十五円になる「十人から九十九人」とすることを主張した。使用者側はそれすら反対し、更に低額の水準となる、統計すらない「二十人以下」とすることを主張し、小規模事業所の定義や具体的金額の合意にはいたらなかった。

 合意にいたったとしても、「五年で七百五十五円」というのは、「最低賃金制度が十分なセーフティーネットとして機能するよう必要な見直しをおこなう(安倍前首相)」という政府、自らの言辞すら否定する、許しがたい低水準のレベルである。更に、格差拡大、貧困の増大の中でワーキング・プアー対策の目玉として打ち出された最賃法改正の意義すら形骸化させるものである。

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 このようななかで八月六日、中央最低賃金審議会から四十七都道府県をAからDの四ランクに分けたうえで、Aランク十五円、Bランク十一円、Cランク十円、Dランク七円、全国平均では十五円の引き上げという目安の答申がおこなわれた。最低賃金が生活保護基準より下回る十二都道府県については、生活保護基準と最低賃金の乖離額を二年から五年で割った数字とランク別金額を比較し、高い方の金額を採用するという答申がおこなわれた。一見すると昨年の全国平均十四円より一円と高く、昨年来の最低賃金引き上げの動きを維持したかにみえるが、中央円卓会議における政労使合意による最低賃金抑制を、更に固定化するものである。

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 最大の問題は生活保護基準を下回るのが十二都道府県とされたように、目安では生活保護基準が不当に低く設定されていることにある。目安による生活保護基準は「若年単身世帯の生活扶助基準の都道府県人口加重平均」に「住宅扶助の実績値」を加えたものとされている。

 労働者の多くは県庁所在地などに集中するが、目安のように「県内平均」で生活保護基準をとると、労働側が主張する県庁所在地などを基準とした場合よりも低水準となる。従って最低賃金も低水準になる。また基礎控除などが除外されたので、実質的な生活保護基準より低い水準とならざるをえない。

 この目安の計算による生活保護基準と最低賃金の乖離が最も大きい県は神奈川県である。目安の計算によれば神奈川県の生活保護基準は八百二十五円となり、〇七年度の神奈川県の最低賃金は七百三十六円なので、乖離額は八十九円となる。目安の生活保護基準の考え方では、「生活保護との整合性を配慮」という点で、神奈川においては最低賃金は八百二十五円以上にはならないということだ。沖縄など最低賃金は六百十八円で最低ランクであるが、目安の基準では生活保護基準を下回っておらず、Dランク七円が目安による最低賃金引き上げ基準となっている。沖縄では七円あがっても六百二十五円である。今回の目安提示は最低賃金を抑制するのみならず、地方格差を更に拡大するという代物である。今回の目安は低すぎる最低賃金がワーキング・プアーを作り出してきたといわれたこれまでの最低賃金制度の問題点を再生産するだけである。

 日本商工会議所などは、「最低賃金の大幅な引き上げを強行すれば価格転嫁が困難な中小企業の経営、ひいては雇用に重大な影響を与えることが懸念される」として今回の最賃抑制の目安について概ね歓迎している。しかし価格転嫁を困難にしているのは、大企業であり、当然のことながらそれに対する批判は一切ない。日本商工会議所の主張はまったくのでたらめである。

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 今回の目安は最賃抑制のみならず、目安が採用しなかった基礎控除や冬季加算などの各種加算などが生活保護から剥ぎ取られ生活保護切り下げの口実に使われていく可能性が拡大していくという問題を孕んでいる。最低賃金と生活保護は「ナショナルミニマム(国民最低生活保障)」の両輪であり、働く労働者の「最低生計費」を保障する最低賃金引き上げの闘いが、生活保護基準を引き上げ、ナショナルミニマムを引き上げていく関係にある。労働者の最低賃金闘争が弱体で、その結果、「最後のセーフティネット」と言われる生活保護基準が切り下げられることなどあってはならないことなのだ。働く労働者の最低生計費を保障しなければならない最低賃金がこのような低水準に固定されることに対し、反撃していかなければならない。

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 今回の目安は、中央円卓会議の政府と連合が合意している「小規模事業所の高卒初任給の最も低い水準、五年で七百五十五円(金額は使用者側は認めていないが)」に大きく規定されたものである。連合のこのような最低賃金抑制の策動を許してはならない。

 働く労働者の最低生活を保障する最低賃金がこのような低水準に切り下げられるのを許してはならない。放置すれば日本の最低賃金は七百円から八百円という低水準に固定される。「欧米主要国」の最低賃金は千円から千二百円である。労働団体の多くが時給千円以上を要求している。最低賃金の大幅な引き上げを実現し低賃金労働者の全国的な賃金闘争として、最低賃金闘争を強化しよう。

 

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