共産主義者同盟(統一委員会)
|
■08春闘に勝利しよう 労働者は団結し生活破壊・雇用破壊、 労働条件切り下げと闘い抜こう 貧困の拡大、格差社会の進行のなかで労働者が企業内、産別、地域で団結し、賃金闘争を要に政策制度闘争や反戦平和のたたかいを、全国的、同時的にたたかう春闘の意義は、ますます、重要となっている。労働組合の組織率が18%台といわれるなかで、多くの労働者が労使交渉の機会すら奪われている。組織労働者が自らの賃金、労働条件だけではなく、春闘を貧困化する下層労働者の生活をかけた大衆闘争、実力闘争を支援、連帯するたたかいとして実現できるか否かが決定的に重要となっている。 先進的労働者はこのたたかいの先頭に立ちながら日本帝国主義の戦争策動とのたたかい、反帝グローバリゼーションのたたかいを持ち込んでいかなければならない。自らと仲間の人間としての生存のために社会が変わらなければならないという意識とたたかいを強化し、そのたたかいと結合させて労働者にとっての帝国主義打倒と共産主義運動の革命的意義を鮮明化していかなければならない。〇八春闘を突破口にして、労働者階級の生存をかけたたたかいを強化し、全世界の労働者と連帯する帝国主義グローバリゼーションにたいする本格的な反撃戦を準備していかなければならない。 ●1 貧困と格差拡大のもとで進行する 生活破壊・雇用破壊、労働条件切り下げ強化 ▼@日本経済は「戦後最長の景気拡大」を続けている 大企業は史上空前といわれる利益を上げ続けている。大企業(資本金十億円以上)の経常利益と内部留保を、八五年と〇六年を比較した場合、全企業で二・五倍、大企業で二・九倍、内部留保は三・五倍の増加である。反して民間給与は、一・二倍、消費支出は一・一倍、非消費支出は一・二倍でしかない。 ブルジョアジーによる九〇年代以降のリストラ、労働強化、長時間労働、増税、社会保障制度改悪などによって多くの失業者、不安定雇用労働者、更にはワーキングプアーと呼ばれる低賃金労働者が生み出され、過労死が増大した。過労死やワーキングプアーに象徴されるように、労働者の雇用、生活、健康、そして社会の荒廃がもたらされた。これらすべてが日帝ブルジョアジーによってグローバリゼーションのもとでの「国際競争力の強化・勝利」を口実に、「競争と自己責任」が経済成長の鍵であるとして労働者に強制されてきたものである。 ▼A搾取、収奪の激化と生活不安の拡大 総務省調査によれば勤労者世帯(農林漁家世帯を除く)の月平均実収入は九七年から〇六年まで九年連続で低下している。国税庁の「民間給与実態調査」では民間労働者の年間平均賃金は、九七年の四百六十七万三千円から〇六年の四百三十四万九千円まで、三十二万四千円も低落している。同時に年収三百万円以下の労働者が〇六年で千七百四十万人(民間労働者の38・8%)を超え、年収二百万円以下の労働者が千二十二万人(民間労働者の22・8%)にまで増大している。女性労働者の二百万円以下の比率は43・6%であり、五千人以上の事業所では54%にものぼる。 このような賃金切り下げの中で、労働者の生活不安が増大している。厚生労働省の「平成十八年国民生活基礎調査」によれば、〇一年では「生活が大変苦しい」と「やや苦しい」をあわせた「生活が苦しい」が、51・4%だったのが〇六年の調査では56・3%に増加している。 高齢者世帯で「生活が苦しい」は、〇一年では44・3%だったのが、〇六年には56%になっている。このような高齢者世帯の生活困難は、日本銀行がおこなった「生活意識に関するアンケート調査」において、「何故、前年より支出を減らしたのか」という設問にたいして、「年金や社会保険の給付が減るのではないかという不安」という回答が上位となっていることにも反映している。内閣府の「国民生活に関する世論調査」によれば、日常生活の中で「悩みや不安を感じている」人は、九七年の60・6%から〇七年には69・5%に増加している。その「悩みや不安」の内容として、多いのが「老後の生活設計」「自分や家族の健康」「今後の収入や資産の見通しについて」が多く、いずれも九七年より〇七年の方が、増加している。とりわけ「今後の収入や資産の見通し」は、九七年から〇七年にかけては十三ポイントも増加している。 労働者は日帝・ブルジョアジーの高齢者切り捨ての実態を直視させられ、収入の減少にもかかわらず、将来の不安に備えて支出を切りつめさせられている。教育や社会保障などの公共サービスが金を出して購入する商品となるなかで賃金依存度が高まり、反して低下し続ける賃金水準は、労働者の今の生活の困難のみならず、生活の将来不安を急速度に拡大している。 ▼B改善されない長時間労働と有給休暇の取得 長時間労働も相変わらず改善されていない。〇六年度の労働者の平均労働時間は千八百四十二時間であるがパート労働者を含んでおり、正規労働者だけの労働時間は二千二十四時間であり八〇年代の水準に後戻りしている。週六十時間という「過労死ライン」を超える長時間労働を強いられている労働者は、二十代後半から四十代の男性労働者の場合、10%から20%といわれている。しかも許し難いことに過労死ラインの長時間労働を強要されているにもかかわらず、サービス残業も一向に改善されず、横行している。このような中でサービス残業による長時間労働で発症や死亡しても、労働時間の立証ができず、私傷病・死扱いされる労働者も多数存在すると推定される。 年次有給休暇も先進国の中では低い水準であるにもかかわらず、〇七年の取得率は〇五年とならんで、46・6%となった。労働政策研究機構などのアンケートによれば、取得しない理由として「取得しにくい雰囲気がある」「業務上、有休を取得する予定が立てられない」などが上位回答となっており、企業がそもそも有休を取得できるような要員体制を組んでいないこと、法律上認められている有休を取得しないことが企業に対する忠誠の証とされ評価の対象とされるような企業風土が、社会的に存在していることが明らかとなっている。 ▼C不安定雇用労働者の増大 アルバイト、派遣、パート、契約、請負など様々な名称で呼ばれる不安定雇用労働者も増大している。 不安定雇用労働者は〇六年には千六百六十三万人になり雇用者の三分の一となった。若年層(十五歳から三十四歳)ではパート、アルバイトは31・4%をしめておりバブル崩壊前の九〇年には15・2%だったことと比較すると二倍以上になっている。新卒者は九〇年代初頭には百八十万人、〇六年には百十七万人であり、65%に減っただけだが、求人数は百六十七万人から二十九万人と17%にまで減少している。ここからも明らかなように若年層におけるフリーターなどの不安定雇用労働者の増加は、バブル崩壊後のリストラと労働強化を労働者に強制しながら、企業が新卒採用を手控えたことの結果であり、構造的に作り出されたものである。若者の意識やその親の教育の問題ではない。 派遣労働者も九九年の派遣対象業務の原則自由化以降、六年間で一・八倍の二百五十万人にまで急増している。派遣契約期間は三カ月以上、六カ月未満が31%、六カ月以上、一年未満が29・4%であり、細切れ雇用が繰り返されている。派遣労働者の年収は二十代から三十代で二百万円台、四十代で三百万円台であり、一般労働者の六割程度となっている。また一日、六千円程度の日雇い派遣の労働者も増大している。 更に見過ごせないのは女性労働者の52・8%が不安定雇用労働者であるということだ。このような低賃金労働者の底辺に、実習生や研修生といわれる外国人労働者、オーバースティの労働者が、法律を無視する経営者によって最低賃金以下の低賃金、社会保険なし、十二時間を超える長時間重労働や「単純労働」を担わされている現状がある。 失業率も改善されておらず〇六年度の完全失業率4・1%、完全失業者二百七十五万人であり若年層(十五歳から三十四歳)では、7%前後と言われている。 ▼D増税・社会保険料引き上げによる労働者負担強化 〇六年の定率減税全廃などで増税が強行された。日本の課税最低限度額は「先進国」でもっとも低く百十四万四千円であり、生活保護基準はもとより最低賃金レベルの収入より更に低賃金の労働者にも課税されている。生活ができないとして公的扶助の対象である生活保護基準より低く、最低賃金水準より低いということは、生きている限り、働いている限りどんな低所得者にも課税するという過酷な税制であり、かぎりなく人頭税に近い性格である。更に、低所得者に負担の大きい消費税10%〜15%への引き上げが画策されている。消費税が導入された十九年間の税収は百八十八兆円になるが、同じ期間に法人税の税収は百五十八兆円も減収となった。法人税の減収分を消費税がまかない大企業が大儲けしたということだ。更に配当や株式譲渡益にたいする税率は〇三年以降、10%であり大企業への配当金は四倍にも増えている。消費税増税に典型なように、労働者が生きていくために絶対に必要な生計費にたいする増税をおこない、大企業には減税で利益を確保させようとしているのだ。 〇六年の「骨太方針二〇〇六」では「十一年度には財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する」という方針のもと、社会保障予算の自然増抑制にむけ、五年間で国・地方あわせて自然増のうち一・六兆円の削減が目論まれている。このようななかで医療構造改革と称し医療制度の改悪が目論まれている。保険料負担の増加と給付水準の低下、国の負担軽減のための医療機関にたいする各種給付の削減による医療サービスの質の低下、看護士、医師不足による医療サービスの低下、病院の倒産、閉鎖などが増加することは避けがたい。この影響は都市部のみならず、過疎地において決定的な事態となる。 〇八年四月から実施される後期高齢者医療制度は、全国平均月六千二百円の保険料を年金から一方的に天引きし、天引きされない労働者(月一万五千円以下の年金受給者、無年金者)が滞納したら保険証を取り上げ、治療を受けてもいったん全額支払わせるという代物である。天引きできないような労働者がどうして保険料を支払えるのか、彼らが病気になったとき医療費を全額払わなければならないのなら、どうして治療をうけることができるのか、低年金、無年金の七十五歳以上の高齢者にたいして病気になれば治療などを受けず死ねといっているに等しい。非道の所業と言わざるを得ない。 それのみならず、この制度の導入と前後して、大阪や京都ではこれまで長年にわたって未納世帯の保険料徴収をおこなっていた、各々百名以上の公務非常勤の労働者が、「これからは未納者には文書を送って督促し、差し押さえする」ということを理由に、解雇されている。行政として必要な徴収員による納入者にたいするきめ細かな対応は廃止し、支払えないものには差し押さえをちらつかせて、身ぐるみはぎとるということである。更には長年にわたって徴収業務にあたっていた公務非常勤労働者の雇用も奪おうというものである。 制度破綻といわれる年金問題がある。消えた年金問題はまったくめどがたっていない。それどころか国民年金の未納者は、四割と言われている。少子高齢化のなかで納入率の低下は制度そのものを空洞化させ、保険料の引き上げに反比例する給付水準の切り下げのなかで、空洞化が進行している。 このように社会保険、医療に関する経費削減をすすめながら、一方では社会保障制度を守るためと称して、消費税引き上げを画策している。そして大企業に対しては様々な形で減税策をこうじている。その結果、増税と社会保険料引き上げなどによる〇二年度から〇七年度における国民負担増は十三兆円といわれている。 ▼E切り下げられるセーフティーネット 最後のセーフティーネットといわれる生活保護費も二兆円から四千億円切り下げられ、母子加算も〇九年で全廃されようとしている。生活保護世帯は捕捉率が20%前後であるにもかかわらず、受給世帯は百万世帯を超えており、今後、増加は避けがたいにもかかわらず予算の削減が目論まれている。現行の生活保護は本来の制度の趣旨から逸脱し、水際作戦などによって、就労世帯への支給は10%程度という運用の中で、受給者は圧倒的に就労不能世帯である。そして厚生労働省の調査ですら、生活保護世帯では、低収入やそれにともなう社会的活動への不参加などから、そこからの離脱は困難と認めているにもかかわらず、更に支給を切り下げ、恒常的に社会の最底辺に貼り付けようとしている。生活保護費削減はそれにとどまらず、生活保護基準の周辺に多数、存在する低賃金労働者を社会的に隠蔽していくという意味をもつのだ。生活保護基準の周辺に放置された低賃金労働者はワーキングプアーといってもよく、それらに対して何の対策も講じてこなかったのは政府の責任を生活保護基準を引き下げることによって逃れようとするきわめて卑劣な性格をもつものである。日帝ブルジョアジーが再チャレンジや格差対策として懐柔策を繰り出しているのは、若年層や細切れ雇用に使えると判断した女性労働者、中高年労働者だけであり、それ以外の人々に対する社会的コストは可能な限り切り下げようとしているのだ。まさに「さっさと死ね」といわんばかりの扱いである。 ▼F労働者階級の貧困化、窮乏化 賃金切り下げ、長時間労働と労働密度の強化、不安定雇用労働者の増大、増税と社会保障切り捨てなど搾取と収奪の強化のなかで、労働者階級の貧困化、窮乏化が進行している。貯蓄ゼロ世帯が22・9%となり、OECDの調査によれば貧困率も先進国ではアメリカについで第二位となっている。 法律どおり働いても生活できないワーキングプアーといわれる労働者の存在も社会的に認知されている。ワーキングプアーは、日本経団連などは「就職氷河期」に突然あらわれたかのごとき主張をしているがそうではない。それ以前にも零細な農漁業従事者、高齢の労働者、外国人労働者、不安定雇用労働者などとして存在し、女性労働者の多くが不安定雇用労働者のみならず正規雇用労働者も含めてそのような状態におい込められていた。「二重構造」といわれる大企業と中小零細企業の格差の中で、中小企業の低賃金労働者層として、大企業の社外工や季節工として存在し続けていた。ワーキングプアーは一時的な現象ではなく、資本主義が生み出す産業予備軍として労働者下層に存在し続けていたのである。それは、 グローバリゼーションのもとでの賃金切り下げ、社会保障改悪、増税、公共サービスの市場化などによって、その数を増加させ、「今より確実に悪くなる将来に対する不安」の拡大の中で社会的に顕在化したものである。 同時に日帝ブルジョアジーの言う「多様で柔軟な働き方」のできない労働者、日帝ブルジョアジーにとって労働力商品たりえない高齢者、障害者などの「社会的弱者」は徹底して社会から排除されていくことになる。彼らは低収入であっても容赦なく税金や社会保険料をはぎ取られ、保険料を払えなければ医療なども一切、受けられなくなる日が目前にまで近づいている。まさに金のない労働者は生きられない、ブルジョアジーにとって、今、現在、価値を生み出さないものは社会から抹殺の対象とされているのだ。 今後、ワーキングプアーに示される生活できない労働者は増加せざるを得ない。ブルジョアジーにとって価値をもたらさない労働者の切り捨ては、下層労働者の将来不安と社会に対する構造的な不満を促進し、ブルジョアジーへの怒りと抵抗を恒常的に蓄積していかざるを得ない。ブルジョアジーにとって統治の正統性を揺るがす問題であるが、日帝ブルジョアジーはこれを解決できない。ブルジョアジーは、いくばくかの懐柔策を繰り出しながらも暴力的弾圧によってしか対抗できず、それが彼らの生存をかけたたたかいを加速していく以外にない。労働者階級全体にとっても、彼らのたたかいは人ごとではなく更なる労働者のたたかいの前進へと結果して行かざるを得ない。 これら全てはグロバリゼーションのもとでの国際競争に勝利することが日本の延命の唯一の道として労働者、民衆に強要してきたことの結果である。 ●2 〇八春闘をめぐる情勢 ▼@日本経団連報告批判 〇八春闘を前にして日本経団連は「経営労働政策委員会報告」(経労委報告)を「日本型システムの新展開と課題」という表題で公表した。 日本経団連はこの「経労委報告」で、〇八春闘(日本経団連流には「春討」)にのぞむ基本姿勢として、「グローバル競争の視点を重視し、日本の賃金はトップクラスであることを意識すること、賃金水準だけでなく賞与、社会保険料、退職金など所定内給与の一・七倍になる総額人件費を認識しておくこと、企業は五年連続の増益であるが国際的にはサブプライム問題、国内的には増税、社会保険料負担率の引き上げなど個人消費の増勢鈍化が懸念される、これらから第一に自社の支払い能力を基準に、第二に、業績改善は一時金、賞与で、第三には、横並び、市場横断的なべースアップはありえない」としている。 ほぼ例年どおりの主張である。ただ大企業を中心に史上空前の利益をあげており、大企業の儲けすぎのなかで家計が圧迫されそれが内需の低迷を生み出していることは否定できない事実なので、一定の賃上げはやむなしという態度をしめしている。しかしそれはみせかけであり、賃上げは利益を上げている企業だけ、基本給はあげず一時金、賞与に反映、横並びの賃上げはありえない、などと様々な制約をつけている。日本経団連の主張に従うならば労働者の多数が働く中小企業では、大企業による取引価格切り下げなどにより業績回復は遅れており、多くの労働者にとって賃金はあがらないことになる。賃金があがるのは大企業労働者だけであり、更に格差が拡大していく。 この「経労委報告」は、基本的には〇七年一月に発表された「御手洗ビジョン」といわれる「希望の国・日本」を基本的内容としているが、〇八春闘をすすめるうえで「御手洗ビジョン」にもふれながらブルジョアジーの階級的利害に貫かれたその反労働者性を暴露していく。 第一に批判されるべきは、「グローバル化は世界経済に参加するすべての国々に経済を発展・成長させる機会をひらくものである、さらなるグローバル化に備えた生産性の強化、国際競争力の強化こそが、日本経済の生き残りの唯一の道である、それを実現する企業活力の維持、向上が国民の所得や雇用の拡大につながる、経済的な格差の固定を防ぐためにも生産性の向上を通じた経済成長が必要」、という基本認識である。 グローバル化が全世界で先進国と途上国の、そして各国国内で貧富の格差を拡大していることは世界的に広がる見解であるが、日本経団連はそれらを意識したのか経済発展の成功を約束するとはいわず、「機会を開くものである」という表現をおこなっている。成果を上げている国として欧米以外は、中国、インド、ロシアなどをあげるのみである。しかしこれらの国でも貧富の格差は大きな社会問題になっている。グローバル化が全ての国にとって経済を発展させ成長を維持するものでないことは、この間のアジア、アフリカ諸国、中南米諸国の債務危機の現実などであきらかになっている。前述してきたように、グローバル化の進展とあわせた規制緩和と構造改革によって、全世界で富める国と貧しい国、そして各国内部での格差は拡大し、労働者の賃金は低下し続け、不安定雇用労働者は増加している。その結果、全世界的規模で労働者、民衆の反グローバリゼーションのたたかいが前進している。それは労働者、民衆レベルのたたかいにとどまらず、ベネズエラのチャベス政権をはじめとして、国家レベルで反グローバリゼーションを標榜する国も存在している。このような動きは、米帝はもとより日帝も含めた全世界のブルジョアジーにとって無視しえないものである。 それにも関わらず日本経団連が、グローバル化のなかで勝ち抜くことが日本経済発展の唯一の道と主張するのは、自らアジア、アフリカの途上国をその生存を脅かすまで搾取、収奪を重ね、利益を拡大してきた米帝、EU内諸国帝とならぶ帝国主義ブルジョアジーであるからにほかならない。 それらを踏まえ御手洗ビジョンでは、戦力不保持を謳った憲法九条二項の見直しを、「憲法上、自衛隊の保持を明確化する、自衛隊が主体的な国際貢献をできることを明示する、国益の確保や国際平和の安定のために集団的自衛権を行使できることをあきらかにする、憲法改正要件の緩和をおこなう」と主張している。日本経団連は全世界で搾取と収奪を強行しながら、アメリカ帝国主義の世界戦略と結合して、グローバリゼーションのもとで「死かたたかいか」を迫られ反撃のたたかいに立ち上がった労働者、民衆を軍事的に封殺し、帝国主義ブルジョアジーとしての自らの利権を確保しようとしているのだ。 第二の批判は、国際競争力の強化を実現するために「全員参加型社会の実現」が主張されているが、自らが格差拡大、不安定雇用労働者、ワーキングプアー拡大、失業者拡大の張本人であるにも関わらずそれには一切、言及せず、ブルジョアジーにとって都合のよい細切れ雇用を更に拡大し、ワーキングプアーを拡大していこうとしていることである。 日本経団連は若年労働者を中心にして、九五年以降の「就職氷河期」に就労の道を閉ざされた労働者を、いわゆるフリーターとしてその存在をしぶしぶ認め、「全員参加型社会」の実現のために彼らに「長期雇用」の道を開いていくことの必要性を認めている。それどころか大きな危機感をもって「御手洗ビジョン」などでその重要性、解決の必要性を強調している。しかしブルジョアジーが関心をもっているのは少子高齢化社会の到来のなかで、ただでさえ少数の若年労働者が、ブルジョアジーの期待する「イノベーションを実現する担い手としての高度人材」にならないどころか低賃金労働者、不就労者として労働者下層に滞留し、社会保険料や税金もはらえないどころか、次の世代につながる貧困層となり、社会的コストになることである。それ自体はブルジョアジーの利害に徹頭徹尾、貫かれたものである。それを如実にあらわしているのは、中高年労働者や女性労働者にたいしては「長期雇用」ではなく、「短時間勤務や在宅勤務などの多様で柔軟な働き方」だけが対置されていることにみてとれる。 第三の批判は、必要最低限のセーフティーネットを掲げ少子高齢化を口実にした社会保障、福祉切り捨て、消費税切り上げをとなえながら法人税切り下げ、社会保険料切り下げを強く要求していることである。 「経労委報告」は、〇六年度で社会保障負担は八十三兆円であるが、十五年には百十四兆円と経済成長率を上回って拡大していく見込みであり、そのまま税と社会保険料の負担率が増大していけば、経済成長にマイナスの影響を与えざるをえないとして、企業の負担率の軽減を要求している。「御手洗ビジョン」では更に踏み込んで、小さな政府にむけた政府の役割の再定義の最大のポイントは社会保障制度改革であると位置づけている。九〇年から〇六年の国の歳出増による国債残高増加額百三十兆円のうち約九十兆円は社会保障関係費の増大にあると口汚く罵り、公的制度のかかわる範囲を大幅に縮減し、社会保障給付の増大を徹底的に抑制し、経済の身の丈にあったものに近づけていくことが必要としている。そして「骨太方針二〇〇六」の〇七年から十一年の間の一・六兆円の自然増削減だけではなく、二〇一二年度以降は、社会給付の伸びを「高齢化で修正した成長率(名目成長率に公的年金のマクロ経済スライドを考慮したうえで、高齢化の進行率を加算したもの)」以下にとどめる必要があるとしている。 とんでもない主張である。高齢者人口は増え続けているのであり、御手洗ビジョンでは名目成長率は3%として設定し、上述の修正をかければ給付水準は大幅に低下する。そもそもこの御手洗ビジョンにおける社会保障制度にたいする見解は、少子高齢化の到来は社会保障制度の空洞化を招き、放置すれば企業の税と保険料負担が増大し企業の経済活動に支障がでるからというブルジョアジーの階級的利害のみから打ち出されている。少子高齢化社会の到来による社会保障制度の危機にたいする国家的取り組みであるかのような枠組みを掲げ、労働者、民衆をたぶらかしているが、企業に課せられる税と保険料負担の軽減にその狙いがある。その前提となっている十一年にプライマリーバランスの黒字化をめざすということなども、防衛費や米軍再編費用の三兆円などはあらかじめ除外されている。 自らの税と保険料負担の軽減、軍事費の聖域化を前提にして、社会保障制度の危機を煽り立て、低所得者層から自己責任で税と保険料をむしり取り、それすらできず社会的コストをかけなければならない高齢者や、労働力商品として価値を生まない労働者は社会から切り捨てることを目論んでいるのだ。 第四に、同一価値労働・同一賃金論の否定、多様な働き方を口実にした労働法制改悪、最低賃金引き上げ反対を目論んでいることである。 日本経団連は同一価値労働、同一賃金について異を唱える立場ではないことを明確にしておきたいといっておきながら、同一価値労働とは将来にわたる期待の要素も考慮して企業に同一の付加価値をもたらす労働である、として独自の同一価値労働論を展開する。職種別賃金にも言及し、事業所が異なれば生産性がことなる、立地や時期が異なれば、労働需給も異なる、職種別同一賃金は労働市場の流動性が低下する、就業者のキャリアアップの意欲を削ぐ、産業構造の高度化が進まなくなると全面的な反対の立場を表明している。 日本経団連は、いつでも好きな時に外部労働市場から、低賃金でスポット的に使える細切れ雇用の調達を利益確保の重要な柱の一つとしている。それをライフスタイルと価値観の多様化にもとづく多様で柔軟な働き方の必要性の増大という形で、現在の派遣、アルバイト、請負、などの低賃金、細切れ雇用が労働者のニーズであるかのように言いくるめてきた。しかし雇用の流動化が進む中で、正社員の仕事をこれらの非正規雇用の労働者に代替させていくなかで、労働時間の長短や転勤の可否など女性差別支配を背景にして成立している男性世帯主の働き方を口実にして、正規社員との均等待遇を否定してきた経過がある。しかし前述した細切れ雇用の拡大の中で、世界的な標準である同一価値労働・同一賃金に対して表だって反対とはいえず独自の解釈をもちだしてきたとしか考えられない。経営者の将来にわたる期待の要素など経営者による労働者の企業に対する忠誠心や協調性や人間性などの恣意的、主観的評価、転勤できるか否か、雇用契約の違い、労働時間の長短、男女などの要素を排除し、労使を貫いて現在の労働の価値の比較のみで評価するのが同一価値労働、同一賃金原則の常識であり、日本経団連の主張は、実質的には同一価値労働・同一賃金論の否定である。 職種別同一賃金論にたいしては色をなして反論している。賃金水準は個別企業の利益に応じてという日本経団連の立場と、企業間競争の生き残りを経営的努力でおこなうのでなく、労働者の賃金切り下げ競争でおこなおうという魂胆が丸見えである。職種別賃金を日本経団連が恐れるのは労働者が企業を超え職種別に団結し、賃金交渉をおこなう条件が形成されるからである。日本経団連の同一価値労働・同一賃金論も、職種別賃金批判も、総額人件費抑制、低賃金強要のためにする主張である。 労働法制改悪については、「これまでの批判、問題指摘も十分ふまえ、国民に丁寧な説明が必要」としてホワイトカラーイグゼンプション導入の野望を捨てていない。また職安法改悪による休職者手数料見直し、民間職業紹介機関の強化、現行六カ月の紹介予定派遣の派遣期間の緩和、常時雇用の労働者である特定派遣労働者に対する雇用契約申込義務や派遣期間の制約廃止などが主張されている。いずれもが人件費削減、多様な働き方と称する細切れ雇用促進が狙いである。 また格差拡大のなかで政府が中長期の最低賃金の引き上げの方針を検討していることに対しても、生産性を無視した引き上げは、現行でも約七割が欠損法人で、新興国の工業に激しく追い上げられている中小企業のコスト構造を決定的に悪化させ、企業の雇用維持に悪影響を与えると恫喝し、企業の生産性向上を基準にすべきであると主張している。更に地方最低賃金より八十円程度高い、産業別最低賃金の廃止を要求している。中小企業の業績回復を遅らせているのは、大企業の中小企業からの取引価格の引き下げなどが大きな要因となっている。それらを不問にしたまま最低賃金引上げは生産性向上の範囲でと主張するのは、言語同断といわざるをえない。 以上、みてきたように「経労委報告」は、日本にとってグローバリゼーションのもとでの国際競争の勝利、それにむけた企業の生産性向上が唯一の道であり、そのために企業負担になりそうな税と社会保障負担の軽減、貧困と不安定雇用労働者の増大を前提としたうえで全員参加型社会と称する中高年、女性、不安定雇用労働者への低賃金細切れ雇用の強要による搾取、収奪の強化を目論むものである。そして日帝ブルジョアジーにとって労働力として価値を生み出さない、高齢者、障害者に対しては、一切の社会的・国家的責任をとろうとせず、放置、抹殺する立場である。「御手洗ビジョン」の必要最低限のセーフティーネットという主張は、そのことを如実にあらわしている。必要最低限という主張は、現状では必要以上になっているという認識が前提になっており、セーフティーネットは公的制度のみにゆだねるのではなく民間のボランティアを活用し、公的におこなうにしても地方にその役割を担わせよ、民間委託せよと主張していることにあきらかである。まさに国家責任の完全な否定であり、貧困者の救済を寺や教会などの宗教施設にゆだねた封建時代の発想である。「〇八経労委報告」とそのベースとなっている「御手洗ビジョン」はブルジョアジーの階級利害に貫かれた主張であり、それが実現されればブルジョアジーにとっては「希望の国、日本」であるが、労働者、民衆にとっては「絶望の国、日本」であり徹底したたたかいが必要である。 ▼A〇八春闘に向けた連合、全労連の基本的立場 〇八春闘にあたって連合は、「格差社会の脱却」「誰もが幸せになる人間らしい暮らしの実現」をかかげ、労働分配率の改善、パート労働者の組織化と処遇改善、中小共闘強化とそれによる賃上げ、最低賃金引き上げ、時間短縮、「時間外割増50%、休日割増100%」を要求するとしている。連合自身も格差の拡大による労働者の貧困化や不安定雇用労働者の増大に対して、危機感をいだき上記のような取り組みを本格化させようとしている。 連合のこのような動きは労働組合の組織率が18%台となり、大企業、官公労における正規社員労働者を中心とした労働運動だけでは、正社員の権利すら守れないことによる。ゼンセン同盟内部のいくつかの労組ではパート労働者の組合員への組織化を進めているが、それは業績好調な企業が企業内部に低賃金の熟練労働者を安定的に確保しようとする動きと連動したものである。今後も予想される正社員と不安定雇用労働者の格差の拡大の進行は、放置すれば地域労組や地域ユニオンと結合した不安定雇用労働者の独自の労組結成につながることに対する警戒感もある。これまでまったく未組織であったパート労働者が、どのような反動的な労働組合であろうと、労働組合という団結組織へと参加することは意義がある。最低賃金引き上げについても、連合は中心的な課題として取り組みを本格化させている。これまで産別最賃にしか興味をもっていなかったことと比較すれば一歩、前進である。 このように連合は従来と比較するならば不安定雇用労働者、低賃金労働者の問題に積極的なとりくみをおこないながらも個別企業内では、企業内最賃のパート労働者への適用などの企業内におけるパート労働者の労働条件改善の取り組みはほとんどなされていない。 春闘において重要であり、多くの労働者の賃金引き上げに大きな影響力をもつ統一ベア要求は打ち出さず、産別まかせとなっている。春闘相場に強い影響力をもつ鉄鋼、造船、重機などの基幹労連傘下の大手労組は二年間で三千円の賃金改善要求であり、トヨタも千五百円引き上げである。NTTにいたってはベア要求を見送っている。これらは単に要求額が低いだけの問題ではない。賃金が低く定期昇給もなく、大幅引き上げが必要な民間中小の労働者の賃金引き上げや、パート労働者の賃金の千五百円以上への引き上げが困難になることを意味し、彼らにとっては引き上げの重しになる金額である。 連合の「格差社会からの脱却」「誰もが幸せになる人間らしい暮らしの実現」は、実際的には連合主力単産によって踏みにじられている。他方で、二極化による低賃金労働者、不安定雇用労働者の増大のなかで、彼らの組織化ぬきには連合といえども労働組合として社会的影響力を保持し得ない段階にまで達していることもしめしている。連合によって組織された低賃金労働者、不安定雇用労働者の一部が、その本工主義ゆえに連合労働運動のみならず、労働組合運動そのものに絶望する可能性は否定できない。しかし多くの労働者が自らの生存と団結に関する経験を積み、連合労働運動を食い破る条件も拡大しているのだ。それを促進するものこそ困難であっても低賃金労働者、不安定雇用労働者の権利を擁護し、原則的にたたかう階級的労働運動の前進、われわれの労働運動の前進である。 全労連は〇八春闘を、「なくせ貧困、ストップ改憲!つくろう平和で公正な社会」を掲げてたたかおうとしている。 彼らの春闘方針は、労働者の貧困化にたいするたたかい、不安定雇用労働者の権利擁護、社会保障・福祉制度改悪反対、増税反対、改憲策動に対するたたかいなど、労働組合運動としてはそれなりに原則的で体系的でもある。実践的にも各地方組織のもとに地域ユニオンや若者ユニオンを組織し、社会保障改悪阻止や最賃闘争を精力的にとりくむなど評価できるたたかいも多くある。 彼らの基盤は官公労の正規雇用労働者が中心であり、公務サービスの民営化と連動してその影響力を低下させている。またその本工主義も根深いものがある。この間の様々な労働者攻撃がグローバリゼーションの結果であることは認めるが、日本帝国主義の攻撃であることは見ようとせず、その結果、労働者の国際連帯を通じてこれとの対決を実現していくという観点も極めて希薄である。更に日本帝国主義を否定する議会主義、本工主義ゆえに下層労働者の生存をかけた実力闘争が位置づけられないという致命的弱点がある。労働法制の改悪のなかで、労働者の法的権利は奪われていく。下層労働者、低賃金労働者にとって法的根拠がなくとも大衆実力闘争で突破していかなければならない時代、そのようなたたかいを全国的に蓄積し、法的権利として確立しなければならない時代が本格的に開始されようとしている時、彼らの議会主義、本工主義は大きな弱点になりかねない。 ●3 先進的労働者は〇八春闘攻防の最先頭で闘おう 〇八春闘は福田政権による貧困化、戦争攻撃と正面から労働者・人民が対決するたたかいでなければならない。先進的労働者は貧困化、窮乏化による下層労働者の生活の苦しさ、子供の未来も含めた将来に対する危機感、それを生み出している競争社会としての現在の社会に対する閉塞感、絶望感などと正面から向きあう必要がある。彼らをたたかいへ組織化することによって危機感や不安感を、ブルジョアジーに対する怒りへと押し上げ、資本主義との非和解性を自覚させ、世界の労働者と連帯し反帝反グローバリゼーションのたたかいを担う労働者階級へと形成していかなければならない。 そのための第一のたたかいは、〇八春闘において大幅賃上げ、長時間労働反対・時間短縮のたたかい、命と健康を守るたたかい、労働条件を一挙に改悪する労働ビッグバンなどの労働法制改悪反対のたたかいを推進していくことである。 マスコミの論調でも景気回復が社会全体に実感されないのは、九年連続の賃金の低下にしめされる家計の冷え込みによる消費支出の低迷が根拠であること、輸出依存型の景気回復はサブプライム問題などの影響を直接に受け、内需の拡大なしには本当の景気回復とは言い難い。そのためには格差の縮小、賃金引き上げをという論調も少なくない。しかし日本経団連はサブプライム問題による信用不安、原油高による物価上昇、増税と社会保険料負担の増加、将来不安などから個人消費の増勢鈍化が懸念されるとして、賃金引き上げは業績好調企業のみの例外的措置としている。 「〇八年度の賃金に関する動向調査(帝国データバンク)」によれば、正規社員の賃上げをおこなうとした企業は45%であり、〇七年度より1%ほどであるが上昇している、賃金引き上げをしないと答えた企業は北海道、東北、北関東、北陸、四国、九州の地方圏に集中している。引き上げをしない理由は、業績低迷が68・3%をしめている。非正規雇用労働者の賃上げをおこなうと答えた企業は21・7%しかない。大都市圏と地方、正社員と非正規社員、大企業と中小企業の格差は拡大していくと予想している。個人消費縮小の懸念は72%の企業が感じているという調査結果もあわせて公表されている。 このようにたたかわなければ賃金引き上げは到底、実現できない状況である。とりわけ賃金水準の低い民間中小労働者、パート労働者は断固としたたたかい抜きには一円たりともあがらず、増税、物価高などで生活は益々、苦しくなる。わずかばかりの賃金改善も日本経団連がいうように業績向上見合い分は一時金としての支給となる可能性も高い。月例賃金に反映されたとしても、その原資は成果主義賃金における様々な考課反映部分の原資に充当され、賃金の個別化、総額人件費抑制にむけた制度補強に利用される可能性は充分にある。このような状況に屈することなく、あくまでも「生活できる賃金」をかかげ、たたかい抜く必要がある。 同時に重要なたたかいは、企業内最低賃金要求とその引き上げ、適用対象の不安定雇用労働者への拡大や、同一価値労働、同一賃金の原則にもとづく均等待遇を原則的立場とし、企業内に多数存在するアルバイトやパートの不安定雇用労働者の賃金要求も取り上げていくことである。この問題は多くの労働組合が企業内本工組合であることから企業業績が厳しければ厳しいほど本工組合員の反発を買い組織分裂を生みかねない困難がある。しかし不安定雇用の拡大のなかで同一価値労働、同一賃金の原則にもとづく均等待遇実現の労働組合運動にとっての死活的重要性と、経営状況の厳しい時期にはより低賃金の労働者の賃上げを優先しなければ、必ず本工も含めた労働者全体の賃下げに結果することを、組合員のたたかいを通じて、労働者自身に理解させていかなければならない。全労協などが呼びかけている「全ての労働者に時給千二百円以上を!」などを突破口にしてたたかい抜かなければならない。 大幅賃上げと関連して重要なのは長時間労働の阻止、サービス残業の撤廃である。長時間労働の問題点は、低賃金の温床となるのみならず、労働者の健康破壊、家庭生活の破壊、労働者の労働組合活動を含めた社会的活動にさく時間が大きく制限されることである。労働者の社会的活動への参加の困難は、労働者の企業外の人間関係を希薄とし、企業意識をベースにした企業内競争主義の浸透の根拠にもなっている。 当然のことながらサービス残業は、長時間労働の温床になると共に労基法違反の犯罪行為である。しかし実態的には多くの職場で蔓延している。管理職と名がつきさえすれば残業賃金を払わなくてもよい、役職手当を支払えば、何時間残業しようとそれ以上支払う必要はないなどの労基法違反が社会常識化しているのが実態である。労働者のたたかいの前進によりマクドナルド判決のような偽装管理監督職に対する割増賃金支払いを命じる判決、労基署の是正指導も増大している。これらを背景に徹底してサービス残業撤廃のたたかいを作り出していく必要がある。 全労協などは、「時間外労働は月二十時間、年間百五十時間に規制、時間外労働の割増率を50%、深夜・休日労働の割増率を100%に引き上げる」ことを要求している。先進的労働者は原則的にこれらの要求を支持しながら、職場の実態を踏まえたたたかいを作り上げていく必要がある。 職場における「命と安全」をめぐるたたかいも重要となっている。人員削減のもとで進行する長時間労働と労働密度の強化のなかで、五十人以上の企業の労働者の健康診断において有所見率は九〇年には23・6%であったのが〇六年には49・1%と二倍以上になっている。 前述したような長時間過密労働が原因の過労死、パワハラ、セクハラ、過重労働のストレスからくる精神疾患など様々なメンタルヘルスの問題が発生している。精神疾患の労災決定件数は〇二年で二百九十六件、〇六年で六百七件で二倍に増えている。とりわけパワハラ、セクハラによる精神疾患などは認定が極めて困難であるとともに、それが原因で退職せざるえない労働者は治療を優先させざるをえず、企業の責任追及を断念しなければならないケースが多い。脳、心臓疾患の労災申請件数、決定件数も増加している。アスベスト問題も何らかの補償、救済を受けた人は〇七年五月までに中皮腫瘍(ほぼ100%アスベストを原因とするガン)で亡くなった人の四割にすぎず、引き続き継続する課題である。加重労働、危険労働、いじめ、パワハラ、セクハラで、精神的、肉体的疾患を発症させ、たたかう能力も気力も奪い取って労働者を路頭に放り出すようなことが日常的にまかりとおっているだけでなく増加している。 先進的労働者はこのような個別企業内における賃金・労働条件改善、命と健康を守るたたかいと結合させて、労働ビックバン、労働法制改悪とのたたかいを進めなければならない。日帝ブルジョアジーは、派遣労働の規制緩和を雇用通知義務の撤廃や紹介予定派遣の期間制限の撤廃などによって進めようとしている。更にホワイトカラーイグゼンプション導入、昨秋成立した労働契約法による就業規則にもとづく労働条件の不利益変更、解雇の金銭解決など労働法制改悪に向けた一連の攻撃を準備している。個別企業内における労働条件改善のたたかいの先頭にたってたたかうと同時に、政策制度改悪のたたかいを推進しなければならない。 第二のたたかいは、「全国一律最低賃金要求」「公契約における公正賃金・公正な労働条件確立」などを要求し、低賃金労働者の全国的な賃金闘争構築のたたかいをすすめていかなければならない。 「その世帯が一人あるいは複数がフルタイムではたらいているか、あるいは働く準備があるにもかかわらず最低限度の生活水準が保てない世帯」いわゆるワーキングプアといわれる労働者が増大している。このような中で最低賃金は、「健康的で文化的な最低限の生活を営む権利(憲法二五条)」を実現するものでなければならない。 最低賃金は〇七年度にこれまで数円程度の引き上げだったのが最低賃金法改正の動向とも関係し全国平均で十四円引き上げられた。それでも全国平均で六百八十七円にすぎない。フルタイムで働いても月十二万円台半ばである。このような賃金水準の労働者は不安定雇用労働者で社会保険未加入の場合が多く、国民年金や国民健康保険料を支払えば可処分所得は十万円以下となる。飢え死にしないことで精一杯であり住居の確保すらおぼつかず、「健康的で文化的な最低限の生活」とは程遠い。 日本の最低賃金は、仏―千二百九十五円、英―千二百三十四円、アイルランド―千五百二十円などスペインをのぞいて千円を超えている西欧諸国と比較すると極めて低い水準にある。これまで日本より低額であったアメリカでも〇九年度には八百五十六円まで引き上げられる。平均所得にたいする最低賃金の比率は、英―44%、仏―54%、オランダ―51%、カナダ―41%であるのに比して日本は32%と極端に低水準となっている。 日帝ブルジョアジーにとっても帝国主義諸国のなかで極端に低い最低賃金は国際的な摩擦の要因になりかねないこと、ワーキングプアーなどの顕在化による貧困の拡大などで、最低賃金引き上げが大きな政策課題となってきた。〇七年には従来から比較すれば大幅となる全国平均十四円の引き上げがおこなわれた。「成長力底上げ戦略円卓会議」では中小企業の生産性向上とならんで、〇七年度中に中長期的な最低賃金引き上げ幅を決定するとされた。最低賃金法も改正され、従来の決定原則とされていた、「労働者の生計費、類似の労働者の賃金および通常の事業の支払能力」のなかで、貧困の拡大に配慮し、「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限の生活を営むことができるよう、生活保護との整合性も考慮する」という労働者の生計費の具体的水準をしめす内容が付加された。 これらは全く不十分とはいえこの間のたたかいの成果である。他方、産業別最賃から罰則規定が外れたのは日本経団連の産別最賃廃止に道を開くものでもある。更に当初から危惧されたとおり最低賃金より高い生活保護基準の見直しキャンペーンがおこなわれ生活保護切り下げが進行している。それのみならず安倍退陣のなかで本来ならば〇七年中には、最低賃金の中長期的な引き上げ幅が決定されるはずであった「成長力底上げ戦略円卓会議」においては、昨年、十二月二十六日に開催された第四回会議で、「労使双方の意見の隔たりが大きいのでかならずしも年内にこだわらない」という確認がおこなわれ、最賃引き上げにむけた動きは、一旦、とん挫している。 先進的労働者は〇八春闘において全国一律最賃制と最低賃金大幅引き上げを要求していかなければならない。 最低賃金闘争は、正規労働者、不安定雇用労働者、組織労働者、未組織労働者を問わず低賃金で苦しむ労働者の全国的な賃金引き上げ闘争の武器になるたたかいである。現状の全国平均六百八十七円ではその引き上げで賃金が上がる労働者はごく少数である。だが七百四十円になれば未満率はパート労働者の約17%であるが、七百七十円になればパート労働者の未満率は28%程度となり、時給八百二十円から八百三十円あたりまでの労働者がその影響をうけることになる。そうなれば最低賃金は組織労働者はもとより未組織の低賃金労働者の充分な武器になる。企業、職種、男女を超えた全国的な低賃金労働者の政府に対する賃上げ要求闘争となり、政治闘争としての性格をもつたたかいとなる。このような性格を踏まえるとき先進的労働者は、ここ数年をかけて全力で最低賃金引き上げを実現していく必要がある。そうしなければ、低賃金労働者は賃金引き上げを長期にわたって断念させられ、彼らの組織化もまた困難となる。 同時に、最低賃金闘争引き上げと生活保護基準の引き上げを結合してたたかうことが決定的に重要になっている。そうしなければ、生活保護は切り下げられるとともに、最低賃金の引き上げ幅も抑えられることに結果していく。低賃金労働者、不安定雇用労働者、未組織労働者の賃金引き上げ闘争の武器としての最賃闘争、低賃金労働者を全国的に組織された階級として団結させる武器としての最賃闘争の実現にむけ、全力で全国一律最賃制と最低賃金大幅引き上げを要求したたかう必要がある。 公務サービスの民営化のなかでの業務委託労働者だけではなく地域の低賃金労働者の賃金引き上げに大きな影響力を与えるたたかいが、リビングウエッジや公契約条例などの「公契約における公正賃金・公正な労働条件確立」のたたかいである。 国や自治体は民間企業と契約(公契約)を結び公共施設の建設、整備、業務委託、備品購入などをおこなっている。これらで働く労働者は一千万人以上といわれている。公務サービスの民営化の進行、官民競争入札、指定管理者制などの導入などで増大している。公務員よりも安く働かされ、企業も利益を得るのだから必然的にそこで働く労働者の賃金・労働条件は劣悪なものとなる。現に競争入札によって労働者の賃金は低落し、サービス残業をはじめとする賃金未払いも増加している。契約にさいしあらかじめ雇用する労働者の必要最低限の生活を保障する賃金、労働条件、男女雇用参画の取り組みの基準、不当労働行為の有無などを明示させ、これらの基準をクリアすることが入札参加の最低条件とするような公契約条例制定運動を作り出していく必要がある。 このたたかいは民営化職場や入札業者の職場で働く労働者の賃金と労働条件を守るたたかいのみならず、地域の低賃金労働者の賃金、労働条件を防衛していくたたかい、更には正規公務員による本工主義克復のためのたたかいでもある。そしてこのたたかいの相手は行政であり個別資本の支払能力より、突破しやすい側面もあり、その賃金水準を地方の民間業者の賃金相場に反映しやすくなる。このようなたたかいを正規公務員、民営化職場の労働者、地域の低賃金労働者が一体となってたたかう必要がある。 第三のたたかいは、社会保障、福祉制度の空洞化、公務サービスの民営化反対のたたかいと、公務員労働者への攻撃に対するたたかいを結合させることである。 公務サービスの民営化が全国で進められている。保育園が丸ごと民間事業者に委託され、学校給食も給食サービス事業者がまとめて作り各学校に配達するというやり方が全国に広まっている。最低限のセーフティネットである「児童扶養手当」の段階的削減が行われている。全国の町や村は自治体再編の中で統合され、人口が減り続け、人が住むために必要なサービス(医療や教育)すら行われない廃村寸前の「限界集落」が増え続けている。 自治体労働者に対しては、「公務員は給与が高すぎる」「夕張のように財政破綻したくなければ賃下げを受け入れろ」等の賃下げ攻撃が行われ、東京都二十三区では現業労働者への9%の賃下げが強行された。北海道でも引き続いて賃下げが行われている。こうした公務員給与の引き下げは、社会福祉法人などの給与や公務関連労働者への賃下げなどに連動している。 こうした賃下げ攻撃に対して自分たちだけの既得権を守り続ける運動から労働者全体の賃金の底上げを目指した運動への転換が求められている。公務職場に働く非正規雇用労働者の賃上げのみならず、民営化職場で働く全ての労働者の賃上げ、公務関連職場(庁舎清掃を行っている委託労働者、道路や公共の建物を建設する労働者など)の賃上げということも公務員組合の課題とする賃上げ闘争を実現しなければならない。 また、地方自治体の財政破綻の真の原因は、公務員賃金や少子高齢化による社会保障、福祉の財政負担の急増ということだけが問題ではない。夕張市の破綻で明らかなように、建設業者にだけ恩恵がある建物を借金(起債)して建てる、その借金を返すためにまた借金をするという自転車操業、自治体へ貸し続けることで儲ける金融資本という構造こそが問題なのである。また地域ボスの様々な利権と結びついた無駄な公共事業なども数え切れないほど存在する。その責任を公務員や住民に押し付けるあくどいやり方に対する反撃を組織しなければならない。このような地方自治体の財政的困難につけ込み、岩国のように米軍再編に協力しなければ補助金を渡さないなどという卑劣な攻撃もおこなわれている。 日帝ブルジョアジーがかかげる「簡素で効率的な政府」は、政府の責任としての社会保障、福祉制度を自助・自己責任のもとに切り捨て、必要最低限の部分すら市場化し労働者を収奪していこうとするものである。その口実に「一千兆円を超える借金」と「公務員高コスト論」がある。しかし軍事費や米軍のグァム基地移転費用一兆円の肩代わりなど日米安保の再編をめぐる負担などには湯水のごとく支出している。 先進的労働者は、社会保障、福祉制度の切り捨てが、財政危機にあるのではなく、ブルジョアジーによる国際競争勝利にむけた膨大な利潤の確保と、全世界での権益確保のための軍事予算優先の結果であることを暴露してたたかいぬかなければならない。 同時に、公務員高コスト論を口実にした民営化がかならず労働者の負担増とサービスの低下という二重の改悪につながることを鮮明にしていかなければならない。とりわけ下層労働者にたいし、官公労労働者の権利に対する理不尽な攻撃とたたかい抜くことは、結局は社会保障、福祉制度と公共サービスを守り、自らの賃金・労働条件防衛の橋頭堡を守り抜くことにつながることを提起し、たたかいぬかなければならない。 第四のたたかいは、〇八春闘勝利、戦争反対、改憲阻止、労働法制改悪反対などのたたかいを全国闘争として構築することに全力をあげ、そのたたかいのなかで国際連帯の強化、資本主義・帝国主義打倒、共産主義の実現を訴えていくことである。 全労協などが二月から春闘討論集会や各地方での決起集会、全国一斉労働相談、各自治体交渉、各県労働局交渉の提起や、「4・3春闘中央決起集会」を呼びかけるなど、民間中小における〇八春闘を全国闘争としていくためのたたかいが推進されている。三月十二日には連合の第一次の集中回答日も設定され、〇八春闘も本格化することになる。 他方、米軍再編を軸に日帝ブルジョアジーの戦争体制構築の策動も急ピッチで進行している。新テロ特措法が強行可決され自衛隊はイラクに派兵されたままである。改憲策動も自民党、公明党はもとより民主党も巻き込んで進行している。 春闘勝利を要にした労働者の活性化と結合し反戦平和、国際連帯をはじめとする政治闘争を同時一体的に推進することは労働者の階級形成にとって決定的に重要なたたかいである。戦争反対、改憲阻止、労働法制改悪反対などのたたかいは、全国闘争として実現されなければ社会的影響力を拡大していくことはできない。「4・3春闘中央決起集会」はそのようなたたかいであり、先進的労働者は各地方においてこの集会への参加を呼びかけていかなければならない。 先進的労働者は〇八春闘攻防の先頭にたちながら、帝国主義グローバリゼーションのもとでの国際競争激化が戦争と貧困化の根源であり、帝国主義の差別分断をはねのけ労働者が国際的に団結してたたかうことが勝利の要であることを訴えていかなければならない。アジアの労働者の低賃金とそれとの競争を理由に生活破壊・雇用破壊攻撃がおこなわれることは許されないこと、「テロの脅威」「北の脅威」「中国の脅威」などの排外主義的な宣伝による安保強化、軍備増強は許されないことを、〇八春闘のなかで活性化する労働者と真剣に論議しなければならない。 〇八春闘攻防のなかで労働者にとってアジアをはじめとする全世界の労働者と連帯し、資本主義・帝国主義を打倒し共産主義社会を実現することが、戦争をやめさせ搾取・収奪を廃止していく唯一のたたかいであることをしめしていかなければならない。同時に世界の無数の労働者が生存のために血を流し、殺されながら勝ち取った成果をもって、法的権利を勝ち取ってきていることを理解させなければならない。日本の労働者にとって法的権利は重要であるが、労働法制改悪の状況では、それに依拠するだけでは労働者の生存を守ることができない時代に突入していること、一人でも多くの労働者と団結し弾圧を恐れず大衆的実力闘争でたたかうことが、労働運動にとって重要な課題になっていることを明らかにしていかなければならない。 われわれが主要に依拠する民間中小労働者にとって〇八春闘は、依然として厳しい状況である。また春闘は集団的労使関係のもとでの労使交渉であり、未組織が多数をしめる下層労働者や低賃金労働者にとってほとんど無縁なものという問題もある。先進的労働者は自らの任務として未組織の労働者にたいしても集会やデモ、学習会などへの参加を組織し、労働組合つくり、労働組合参加の契機にしていく必要がある。〇八春闘勝利にむけ、たたかいぬこう。〇八春闘に勝利し階級的労働運動の前進を勝ち取ろう。 |
当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.